進撃世界に人類最強として生まれたけどエレンがうるさい   作:ちゃっぱ

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第十七話、調査兵団より、地下街のゴロツキへ

 

 

 

 

 

 ファーランが連れ去られた後、貴族共には口を閉ざしてもらっているのか、これと言った事件は何も起きていない。

 ただ俺についての悪い噂が流れている程度。ゴロツキとして名が売れたこともあり、ただ歩いているだけで人に避けられるか喧嘩を売られることが多くなっただけである。

 

 エレンはあの後何も言ってこない。

 何かを覚悟したような目で俺をじっと見つめているだけ。

 

 エレンにとっては何か都合の悪い事でも起きたのか。俺にはよくわからないが、何かあった場合こちらもちゃんと対処しなきゃいけないと言うのは分かる。

 

 いつの間にか記憶を消去されること、意図的にエレンが何かをしなければだが……。

 

 

 ファーランはあっけなく連れ去られたことでいろいろ思うことが出来たらしい。

 地下街で住んでいるんだ。明日死ぬかもしれないぐらい厳しい場所なのだから、ファーランが今回の事件で一人でどう対処すればいいのか考えて悩むことぐらいは必要だろう。俺がずっとここに居られるわけじゃないし。

 

 あれから数日。……いや、一か月ぐらいだろうか。

 カレンダーがないせいでどれくらい日にちが経ったのか分かりにくい。地下街だからなおさらだ。とりあえず眠くもないし外で活発に動いている人を見る限り今は昼間の時間帯なのだろう。

 

 

「リヴァイ」

 

「あぁ?」

 

 

 不意に、ファーランがものすごく嫌そうな表情を浮かべながら部屋に入り話しかけてきた。

 

 

「リヴァイ……なんか、商会から詫びの品物が大量に届いてるんだけど……」

 

「必要な物以外全部売り払っとけ」

 

 

 宅急便なんか頼んだ覚えはない。

 というかそういう品物が届くことなどありはしないが、ある特定の商人のロゴが刻まれている木箱をみて理解した。これあいつの仕業だと。

 しかもまだ多く届いているようだ。馬に乗せられた品々がこちらへ近づいている様子が窓の外から見えたため、溜息を吐く。

 

 

「リヴァイさーん! なんかすっげえ食べ物が届いた! あと紅茶も!」

 

「それは置いとけ。後で分ける」

 

「リヴァイ様、他に必要な物はございますか!」

 

「帰れ!」

 

 

 いつの間にか侵入してきたファナティカーを足蹴にして外へ叩き出しつつ、品物はもらい受けておく。

 足蹴にしているのに喜んでいるような顔なのはなぜなのか。知りたくもねえが……。

 

 エレンが「どうするんですかこれリヴァイさんのせいですよ」というような目でじっと見つめてくるのが妙にムカつく。何も言ってはこないけれど圧かけてきているのが分かる。あいつが話した未来を意図的に変えたことにまだ怒っているのか。

 

 

「……リヴァイさん」

 

 

 俺の考えていることを読み取ったのか。それとも偶然か。

 エレンが俺に向かって話しかけてきた。

 

 しかし今はファーラン達がいる。だから無言で奴を睨んでやった。

 チビ達は俺がファーランを助けに行く前、エレンと話していた時の記憶を失っていたからな。あの時はいろいろあったし狂人扱いされても構わないと思っていた。俺以外誰にも見えないエレンと話している姿はあまり見せない方が良いと思うし。

 

 そう思っていると、エレンはまた口を開く。

 

 

「俺が話しても話さなくても未来が変わる。これから先どんな未来になろうとも、直前で変わる可能性があると身に染みて理解しました。地上へ出るのは確定していても……だからもう、これは俺の意地です」

 

 

(はっ?)

 

 

 

 よくわからず首を傾けた、瞬間だった────。

 

 扉が盛大に開かれたのだ。

 蝶番が壊れたのかと思うぐらいの勢いで開かれた扉の先にいたのは、マントを着た子供。

 

 チビ達が急に来た訪問者に警戒し、ファーランの背中へ隠れる。

 敵かと思い身構えたが、よく見ればそれは汚い格好をしているハンジだった。

 

 そういえば訓練兵となってからもう数年が経ったのか。

 成長し俺より背が高くなりやがったクソ眼鏡は、原作に近い姿をしていた。眼鏡はゴーグルに近いものを身に着け、髪の毛も伸びてハーフアップにし軽く結んでいる。

 

 というか本当にデカくなりやがったなこいつ。以前は俺より低かったくせに頭一つ分ぐらい違いがあるぞ。

 クソ。成長期にしてはでかくなりすぎだろうがクソが……。

 いや俺もまだ成長期だ。少しずつではあるが伸びているはず。

 

 ハンジは何故か頬に泥が付いているし、髪の毛からゴミのような臭いにおいがする。

 こいつ風呂に入ってないな? それとも徹夜明けか?

 目に隈があるし、テンションがおかしい。

 

 

「……お前、こんな地下街で何してやがる」

 

「数年ぶりに会った友人にそんなこと言うなよリヴァイ~! ああ~ひっさしぶり~!!」

 

「抱き着こうとするな汚物。おい誰かこいつを庭に連れていけ! 風呂に入れるぞ!!」

 

「はい!」

 

「うんリヴァイさん! 分かった!」

 

「えぇちょっと待って私すぐ地上に帰らなきゃだからちょっとぉ!」

 

 

 連行し服を引っぺがし髪の毛を念入りに洗うよう指示する。

 シャツを脱がせようとした瞬間「リヴァイのエッチ!」と変なことを言って抵抗してきたため、もうしょうがないとチビ共に任せることにした。清潔第一な習慣を身につけさせたチビ共ならこいつを綺麗にすることぐらい簡単にできるだろう。

 それに中性的な顔をしているせいで性別がよくわからなかったからな。主にイザベルにやってもらうよう頼んだ。

 

 幸い高級品たる石鹸もあの変態商人から貰っている。それをたくさん使って綺麗になってもらおう。

 その後またすぐ風呂を掃除しよう。きっと汚れちまってるだろうし。

 

 室内にて椅子に座り、庭から聞こえるハンジの呻きと騒音に眉を顰めた。俺の苛立ちに気が付いたらしいファーランが苦笑する。

 

 

「リヴァイ、あいつ誰だ?」

 

「ハンジっていう好奇心旺盛な変態だ。あいつがテンション高い時は容赦なく腹をぶん殴れ」

 

「あー。あのさリヴァイ、変態とは関わらない方が良いと思うぞ? あと友人は選んだ方が良いんじゃ……」

 

「うるせえクソが」

 

 

 苦笑しているファーランに紅茶を入れてもらい気ままに飲んでいると、ピッカピカで石鹸の香りがするハンジが戻ってきた。服は────ああそうか。俺のは小さいからファーランのを渡したのか。シャツと黒ズボンを着たハンジは文句も言えないぐらい疲れた様子だった。

 ドヤ顔で褒めてもらいたそうなイザベルを筆頭としたチビ達の頭を撫でておく。すごく嬉しそうにしているのでお菓子もやろう。

 

 

「全く、まさか地下街で綺麗にされるだなんて思わなかったよ……」

 

「お前何時から風呂に入ってねえんだ」

 

「……さぁ」

 

「きたねえ。クッソ汚ねえな汚物野郎。お前もう俺達に近づくな」

 

「ドン引きした顔で言わないでくれないかな!」

 

 

 先ほどよりテンションが低いハンジが椅子に座って俺の呑んでいた紅茶を奪ってくる。それに苛立ち足蹴にしてやった。しかし攻撃しても紅茶を離さないので、仕方なく新しいコップを出したファーランから紅茶を受け取る。

 ちまちまと飲んで少しは落ち着いたのだろう。

 

 深い溜息を吐いたハンジが俺を見た。

 

 

「まったく、酷い目に遭った……あの子達本当に容赦がないね。石鹸でゴシゴシ身体中洗われたよ……」

 

「それだけお前が汚かったってことだろ。……それで、訓練兵を卒業したお前が何しに来た?」

 

「手紙の返事を届けに、だよ。あとお誘い」

 

「あぁ?」

 

 

 にっこりと笑ったハンジが、俺に二つ手紙を渡してくる。

 一つには「地下街生まれのリヴァイ君へ。スミスさん家のエルヴィン君より」という宛名が丁寧に書かれた手紙。

 もう一つは訓練兵になるための書類だった。

 

 

「エルヴィンと話したけど結構気さくでいい人だったよ。それでリヴァイに直接話がしたいって言ってたんだ」

 

「……話がしたいってんならなんで奴がここに来ねえんだよ」

 

「いや何言ってんの、分隊長だよ? いろいろと忙しい身だからね。本当はリヴァイに直接会いに行きたかったって言ってた。手紙だけで来れなくて済まないってさ」

 

「そうか」

 

 

 思わずエレンの方を見た。

 あいつは何も言わず俺の方をじっと見つめていた。

 

 

「それでね。あなたにはいろいろと話したいことがあるんだ。でもってリヴァイは強いだろ? どうせなら私たちと同じ調査兵団に入ってほしいって思ってさ。今のうちに訓練兵に────」

 

 

「駄目だ!」

 

 

 机を勢いよく叩いたイザベルが、ハンジを睨みつけた。

 

 

「リヴァイさんを連れて行くな!!」

 

 

 泣きそうな顔で、俺の腕を必死につかんだまま叫ぶ。

 親をとられたくない子供が泣き叫ぶような声だった。ファーランも他のチビ共も何も言わないが、同じ気持ちなのかもしれない。

 

 

「あ、はは! 凄いねリヴァイ。ほんと、皆に慕われてるなぁ羨ましいぐらいだよ!!」

 

「うるせえ」

 

 

 ハンジは居心地悪そうな顔で頬を掻きつつ、笑ったのだった。

 

 

 

 

 

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