進撃世界に人類最強として生まれたけどエレンがうるさい 作:ちゃっぱ
地下街で生活していくうちに、少しやり過ぎたのだろうか。
子供達の面倒を見ていくうちに自立を促すためいろいろやってはいた。いわゆる孤児院のようなものだ。でもある程度一人で生きられるようになっても帰る家は変わらない。住む場所を変えて、家を持って────つまり、自分のテリトリーを作ってもなおチビ達はご飯を食べにこちらへ帰ってくるのだ。
ただ傍に居たいが故の執着心か、それとも家族をもう二度と失いたくないための恐怖かは分からない。
こいつらだって今は豊かに暮らせていても────ファーランが救おうと動かなければきっとこのまま死んでいただろう。家族を失い路上で生活し、そうしていつか飢えていくだけの地獄だったはずだ。
荷物を整理している俺に邪魔ばかりする子供たちを背負い投げしたりベッドの上へ持ち上げてシーツで簀巻きにしても身体中を使って暴れまくっている。
ファーランは俺の荷物整理を手伝いながらも苦笑していた。
子供達に荷物を奪われそうになったらすぐ取り返すが、埒が明かない。
「リヴァイさん何で外に行くの? 地下街でも別に楽に暮らせてるじゃん!」
「そうだよイザベル姉ちゃんの言う通りだよ!」
「リヴァイにいしゃん、いかにゃいでぇ……」
「このまま帰ってこないの?」
「我儘言ってんじゃねえぞチビ共。やりたいことがあるだけで別に二度とここに帰らねえわけじゃねえ」
「嘘だ!」
「……イザベル」
まだまだ幼いが、チビ達よりかは姉貴分になっているイザベルがしゃがみ込んで服を畳んでいる俺の背中に抱き着く。
それに連鎖するように他のチビ達も抱き着いてくる。
「行っちゃヤダ……兄貴……」
「聞き入れろイザベル。他の自立したチビ達も離れていっただろ。地上に行った奴もいた。あいつらと何が違うって言うんだ」
「違うじゃん! だって、リヴァイさんは……調査兵団に行くんだろ。巨人に食われるかもしれない場所に……行くんだろ!!」
だから怖いのだとイザベルは言う。
自分がそうなるわけじゃないのに。そこへ行ったら本気で死ぬと思っているような目をしていた。
他の子供たちはただ行かないでという執着心、親が離れるような寂しさから来ているように見えたのだが……。
────おや、と少しだけ首を傾けた。
(……原作でのイザベルは、こんな性格だったか?)
漫画を読んだ記憶はあまりにも朧げになっているが、外を異様に怖がるような感じじゃなかったはずだ。それだったら何か印象に残っているか、記憶に刻まれているはずだから。
だからきっとこれは俺のせいなのだろうと思う。
もしかしたら育てていくうちに何か、影響があったかもしれない。
チラリと部屋の奥、俺達を観察するエレンを見たが、あいつは真顔で俺と視線を合わせただけだった。
「……お願い、死なないで。リヴァイさん」
グスリと泣き言を言うイザベルに引きずられて子供たちも泣き言を喚く。
「舐めてんのかクソが」
「えっ」
「巨人に食われるために俺は地上に行くわけじゃねえよ。やりたいことがあるから行くっつっただろうが」
「……でも」
「でももクソもあるか。良いかチビ共、怖いって怯えてて何かいいことがあったか? この地下街で生活してて、怖くて怖くて仕方がねえって閉じこもったままで良い事なんて何かあったか?」
俺の言葉にハッと我に返ったのだろう。
涙をこぼさず真面目な顔になった子供たちに向き合いながらも、俺は頷く。
「喚いてばかりでいるように育てたつもりはねえぞクソガキども」
「っ────分かったよ兄貴! 私……ううん、俺もリヴァイさんみたいに調査兵団に入る!」
「私も!」
「俺もおれもー!」
「いやそれは駄目だ。断る」
却下を下すと即座にブーイングが飛ぶが、そこらへんはファーランに任せておこう。
地上での活動でやるべきことはまだたくさんある。地下街でもまだまだ根回しをしてほしいぐらいだ。あの変態商人にでも頼んでしまえばこいつらの奉公先ぐらいは見つかるだろうし、大丈夫だろう。
「ファーラン、後のことは頼んだぞ」
「ああ、分かってるよリヴァイ。こっちは任せてくれ」
「チビ共もしっかりやれ。しくじるなよ」
「うん!」
「分かってる!」
「大丈夫だよ兄貴! 俺頑張るから!」
「掃除も頑張るからね!」
子供たちの頭を撫でて、荷物を受け取り外へ出ていく。
後ろを振り返れば涙を流す子供たちと少しだけ寂しそうなイザベルとファーランの姿が見えた。
彼らは全員手を振って「すぐ帰ってきてね!」と言っている。
かつてはここはケニーと俺が暮らしていた家だった。今となってはチビ達が暮らす手狭な家になってしまったが……。
(……いつかまた、絶対にここにケニーを連れて帰ってやる)
その時が少しだけ楽しみだ。
あのケニーがガキどもに囲まれて老後を過ごす顔を見て笑ってやろう。そう思いながらも俺は家から離れ前へ歩いて行った。
・・・
訓練兵には様々な人間が存在する。
個性豊かと言った方が良いのか。早くも怒鳴られ走らされている人がいれば、ちょっとした諍いで喧嘩をしている人もいた。
血気盛ん。正義のためにと未来を夢見て動く者。壁の外に興味を抱き空を見つめる者。好きな人と豊かな生活を送るため憲兵団を目指す者もいた。
そんな中、教官から言われた言葉をメモしつつ歩く女性がいた。
「教官は私に向かって────きゃっ!」
「おっと、すまない。大丈夫か?」
「は、はい……すいません……」
メモを取っていた彼女が別の女性訓練兵にぶつかり尻餅をついて転んでしまった。それに恥ずかしそうに地面に落ちた手帳とペンを拾っていく。
「立てるか?」
手を伸ばしてきたのはぶつかった方の────眼鏡をかけた女性訓練兵だった。
それに若干恥ずかしく思いつつ手をつかみ立ち上がった彼女は愛想笑いを浮かべる。
「す、すいません。私はイルゼ・ラングナーです! 今期訓練兵として志願いたしました!」
「身構えないでくれ。私も今期の訓練兵で、リコ・ブレツェンスカという。イルゼと呼んでもいいか?」
「は、はい! では私も、リコさんと呼んでも構いませんか?」
「敬語は止めてくれ」
「あっ、すいません……癖でして……」
「まあいいが」
微笑ましく挨拶をする二人。
少しばかり雑談をしつつ歩く横を通るのは同じく荷物を持った少年────いや、青年だった。
「あれ、彼も同じ訓練兵ですかね? それにしてはずいぶん威圧感がありましたね。いえ、身長から見たらずいぶん小さいですが……私達より年下の子供ですかね?」
「ああ。おそらくは……訓練兵の入隊最低年齢は12歳だからな。おそらくは彼もそれぐらいだろうよ」
「なるほど」
「いや何でメモを取ってるんだ君は」
「これも癖です!」
「……そうか」
呆れたようなリコと「えへへ」と照れ笑いを浮かべるイルゼ。
チラリと二人を横目に見つつ、少年が向かったのは男性寮の室内だった。
荷物を置くために来たのだろう。
扉を開けようとしてドアノブへ手を伸ばそうとするが、それより先に手を取って勝手に開けた人がいた。
「荷物多いけど大丈夫?」
「……ああ」
「手伝うよ」
そう言って勝手に少年の荷物を持ちつつ部屋へ入った男。お人好しなのか「何処におけばいい?」といろいろ聞いてきて、動き。荷物を置いた後は窓を開けて空気を入れ替えてくる。
「私はモブリット・バーナー。同じ寮室の仲間として歓迎するよ。これから先も共に頑張ろうね」
「……リヴァイだ」
握手は何もしなかった。部屋が汚いと掃除を始めたリヴァイに付き添うようにモブリットもまたやるようになり、そこから何故かリヴァイに対して自然と敬語になっていくようになる。
モブリットもまた、リヴァイに影響を受けるのかは未知の領域だ。
影響を受けた先の未来がどうなるのかもまだ分からない。
彼らの様子を見ていたエレンは────前途多難な訓練兵生活の未来を垣間見たのだった。
アンケート協力ありがとうございます!
というわけで上位三名を同期として決めました。よろしくお願いいたします。
次から新しい章の『訓練兵 暗躍するエレンとリヴァイの攻防(疲弊気味)』が始まります。よろしくお願いいたします!