進撃世界に人類最強として生まれたけどエレンがうるさい   作:ちゃっぱ

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第二十二話、エレンはかなり怒ってる

 

 

 リヴァイさんマジやってくれたな、と。

 地団駄を踏んでぶん殴ってやりたい程度にはエレンはキレていた。

 まあそれをやったところでリヴァイさんに反撃されて痛い思いをするのはエレン自身だと彼は理解していたが。だからこそ額に青筋が浮かぶほど怒っていても何も言おうとはしないのだ。

 

 リヴァイがやらかしたのは自虐。自殺行為のような賭け。

 確かにエレンは訓練兵たるリヴァイならば何もしないだろうと少しだけ離れたことがあった。何故かと言えばそれはジークが『道』にいたせいである。アルミンはまだ捕まえていないので『道』にはいないが……。

 

 しかしジークはやらかそうとした。本来であれば一瞬だが、『道』の中ではもうとっくに数年……いや数百年という規模の長い時間が流れていた。

 その間、少しの時間リヴァイと一緒に居たせいか彼に影響を及ぼしたらしく、ジークは始祖ユミルを説得しようとしたり穴にもう一度落ちてみようとしたりと変な行動に出るようになったのだ。

 

 なんで今更ジークがやらかしてんだとエレンはキレ散らかした。

 時間差によるリヴァイの影響は恐ろしいと背筋がゾッとしたが、エレンは恐怖を怒りに塗り替えて抵抗することにした。

 

 これでジークがまたリヴァイに手を出して来たら面倒な事態になる。

 

 始祖ユミルはミカサに執着している。リヴァイには目を向けようとしない。だからきっと大丈夫だとは思うが────それは確実とは言えない。

 始祖ユミルがあの未来のチビなおっさんを気に入るかはまだ分からないのだ。なんせ彼のフラグは本当にエレンの斜め上にぶっ飛んで成立しまくっているから。

 

 未来を覗き見た時にエレンはギョッとした。

 このまま先を行けば彼は調査兵団にならないと分かったからである。

 

 少し前に見た時は何もなかったはずなのに、何で急にこうなったのかとエレンの目は死んだ。いつも通り死んだ魚の目でリヴァイを睨みつつ原因究明をしていた。

 

 だから理解したのだ。

 リヴァイが訓練兵でも行動を制限する意味はなかったと。

 

 未来が急に変わった理由が何故かと言えばそれはエルヴィン団長との手紙のやり取りを注視していたら、いつの間にか団長が勝手に噂を流したせいだった。

 

 リヴァイさんが勝手に行動したわけじゃない。ただ「俺の背後に悪魔がいるようだ」というリヴァイさんの前世の知識を借りるなら中二病のような痛い文章が並ぶ手紙のせいである。

 それは勝手に誰かに読まれる危険性を考慮したものであり、エレン自身に対する文句でもあると認識していたはず。

 

 しかしその手紙を送った後、彼はあからさまにエレン自身に話しかけるようになった。

 モブリットなどがいても構わず「頭がおかしくなったか?」とドン引きされても何も否定せず。その噂を聞いたエルヴィン団長が自身の判断で噂を流したのだ。

 

 これはエルヴィン団長による王政府がどう対応してくるのか見ようとする検証。そしてリヴァイがどう対応するかの観察も含まれていたのだろう。

 なんせ何もせず誰にも気づかれず訓練を終えて調査兵団へ来てもらうはずが、なんか悪魔がいるとかそういう話が流れるようになったから、このまま来てもらっても危険因子として見られる可能性が高い。それに何故そんな行動をするのかリヴァイの考えが気になったのだろう。それで遠回しに協力しているようなものか。

 

 

 このまま先へ進めば確実にリヴァイは人類最強という看板を背負うことなく終わる。

 憲兵団が動いている理由は王政府が彼の噂を聞いて「馬鹿げているがまあ少しばかり様子を見るか」といった程度のものだから。

 そろそろ次の継承時期だが、ウーリ・レイス王は弱りながらも彼を気にしていた。ケニーにとっての甥にあたる人物なのに、悪魔だのなんだのよくわからない話が流れているからだった。

 

 何があったのだろう。

 何かよくわからない事件にでも巻き込まれているのか。

 

 アッカーマンの性を使わないということはそれなりにケニーが教えなかったからかもしれない。

 しかしこのまま放っておいて死ぬわけにはいかない。

 

 死は怖くないが、後悔を残したまま死ぬには惜しい。

 それになんだか妙な胸騒ぎがする。だからちょっとだけ会ってみよう。ウーリ王としてではなく、ただのケニーの友人として。

 

 そんなフラグを作り出したのだ、リヴァイさんとエルヴィン団長は。

 

 訓練兵として生きているという話を聞いたのもその時であり、「友人の甥だし見てみよう」という軽いノリとこれから先このままだと彼が危険因子として処分されるからそれを取りやめてもらおうとする動き。そしてケニーがリヴァイの噂を聞いて近寄ろうとする未来。

 

 ────つまり、ケニー・アッカーマンに近づき憲兵団入りするフラグが見えたのだ。エルヴィンと手を組んだ状態のままという最悪の未来が。

 

 

 リヴァイが人類最強を目指すことなく終わると言うのは、原作崩壊ということ。

 今いる自分が始祖ユミルと協力することが出来ず、自由を求めて進撃することなく終わるという意味だ。

 

 

(……ふざけんなよリヴァイさん)

 

 

 ほんとアンタのそう言うところだけはムカつく。

 俺が導いた調査兵団入りへの未来へ進めばいいはずなのに。何で訓練兵でも構わず変な未来を作り上げてしまうのか。エレンはリヴァイの行動原理が知りたかった。

 

 

(いや、俺のせいか……)

 

 

 正直に言えばエレンは疲れていた。

 なんせもうこれを何度繰り返したことかわかりはしないから。

 

 

 始まりはリヴァイが前世の記憶を思い出したせいだった。

 ちょっとだけ話をしようと思って彼に始祖ユミルの力を使おうとした。アルミンやミカサと同じように、自分が死ぬその時まで会っていた記憶を消して今までのお礼とかそういう恥ずかしい遺言を残そうとしていた。

 

 だがその時、リヴァイは前世の記憶を思い出したのだ。

 それは過去を繰り返す前────最初にリヴァイがそれを思い出したのは始祖ユミルと手を組んだ始まりだった。

 そこから未来が唐突に変化し自分が生きながらえてしまいエルディア人に平穏すら来ないまま戦争へ突入するような変動が何度も繰り返されてきた。

 

 これはおかしいと思ったエレンが理解する。

 リヴァイがなんで急に前世の記憶を思い出したのか。自分が何をしようとして、リヴァイは全てを思い出したのか。

 

 過去を何度も繰り返していくうちに気づいたのだ。

 彼が前世を思い出す可能性は、自分が始祖ユミルの力をリヴァイに使おうとしてしまったから。

 

 だからエレンは彼に使う時期を早めて始まりより先に思い出させつつ、未来変動を防ごうとした。

 

 やらないという選択肢はなかった。

 もうリヴァイに使ってしまったから、前世の記憶を思い出さない可能性は無いに等しい。

 

 だからきっかけを増やした。

 エルヴィン団長がまだ生きている頃に思い出させ過去を変動させたこともあった。まだ彼が兵長と呼ばれていない頃に手を出したこともあった。

 

 そうしていろいろ繰り返していくうちに気づく。

 変動させた過去以降は、リヴァイが思い出しているせいで変に修正することが難しくなっていると。

 

 いわゆるバグが増えたような状態だった。エレンが変に動かしたせいで。

 

 それでもエレンは諦めなかった。

 常人であればとっくに発狂してもおかしくないほど何百何千と繰り返しても止まらず、自分が望んだ最初の未来へ戻るために。

 

 そうしてようやく掴んだのは、リヴァイがケニーと別れた直後の過去。

 それより以降はもう過去を変えることはできない。ケニー・アッカーマンと共にエレンを止めようと足掻く未来しか残されていないようなもの。こう言いたくはないが、エレンはもうこれ以上の過去変動を行えない程度には詰んだ状態だった。

 

 

 だからエレンはリヴァイにキレる。

 これ以上ない未来たる平穏で分かりやすい道を歩ませようとしているのに、何でそれを飛び越えて雑草が生えた明らかにやばいと分かっている獣道を歩もうとするのか理解が出来ない。

 

 とにかくこのままだとウーリ王と接触し、ケニーと再会する未来が早まる。

 それだけは阻止しなきゃいけない。だからもう面倒くさいが手を打つことにした。

 

 

「……はぁ」

 

 

 エレンはかなり疲れていた。主にリヴァイが休む暇を与えてくれないせいである。

 

 

 

 

 

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