進撃世界に人類最強として生まれたけどエレンがうるさい   作:ちゃっぱ

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第四話、物置

 

 

 

 物置の整理を任された。

 地下街に住む身分の証明も何も出来ないただのガキに対して、地上でも立派に商売をやっている男どもがだ。

 

 

(まあどうせ、俺を潰しに来たのか何かだろうが……)

 

 

 ケニーと一緒にいた頃。

 目立った行動をした結果どうなるのかを見たことがある。それはもう言葉にしたくないほど酷いありさまだった。その悲惨な末路を辿るまいと誓ったはずだった。

 

 今の俺を見たらケニーは何と思うだろうか。

 ……まあ嗤うよな。心底馬鹿にしたように笑って、そんで「そんな風に育てた覚えはねえぞドチビ。頭まで小さすぎて分からなかったか?」とか、また馬鹿にしてくるんだろう分かるぞ。

 

 とりあえずうまく罠から逃げて、金だけでも貰っておこう。そうじゃないとやってられない。

 それに今回の仕事は報酬が大きいし、うまくいけば俺がずっと欲しいと思っていたあの掃除セットが手に入るかもだし。

 

 

(ってか、連中が流してるあの噂もそうだけど、あれ絶対に俺のせいじゃないだろクソが)

 

 

 俺としてはエレンと遭遇した結果目立ったせいでもあるので不本意なんだが……。

 まあ噂と言っても俺以上に変な奴は地下街にたくさん存在する。手足が動かず飢えて死んでいく奴もいるし、頭がおかしくなって突然暴れる奴もいる。

 地下街はイカれた奴らが集う場所だ。だから俺の噂はいつか流れて消えていくだろう。

 

 ケニーがいた頃も、あいつの噂でいっぱいだったけれど、それを気にした様子はなかった。

 いつの間にか消えていった噂に、ケニーが何かやったのかと質問したことがあるが、それを一蹴してきた。

 

 だから俺は分かっている。噂を気にしなくてもいいと。

 他の頭の狂った奴らによって消えることを。

 

 

「さて、と……」

 

 

 与えられた仕事は物置の整理だが、俺の部屋よりは少しだけ広い室内。壁に汚れが付いており、天井には蜘蛛の巣があった。

 それと同じく地面をよく見れば埃が舞っている。俺が歩くだけで足跡が埃ではっきり見えそうだ。

 

 とりあえず窓を開けて換気だけしておこう。

 

 

「チッ」

 

 

 クソ汚ねえ場所で荷物整理とかやってられねえな。樽やら何やら、荷物が雑に積み上げられてるし、ガキに任せる仕事じゃないのは確かだ。

 

 つまりあれだろう。俺が満足に仕事を出来ないようにして、それに文句を言ってなにかを要求するのか。それともただの嫌がらせか。

 

 

「リヴァイさん……」

 

「うるせえエレン」

 

 

 真面目な顔で俺を見下ろすエレン。 

 先ほどの騒動のせいか髪を解いて長髪を肩へ伸ばした状態のままだ。

 だから少しだけ不気味に見える。影が大きく、顔の表情があまり見えないせいだろうか。

 

 じっと見つめてくるエレンに少しだけ寒気がした。

 危機察知とはまたわけが違う。なんか嫌な感じがする。

 

 

「何でお前は今の俺の事を心配するんだ。どうせお前にとっては俺は過去の存在だろ?」

 

 

 過去の出来事だったら、そこまで心配しなくてもいいはずだ。

 むしろこれからどうやって俺から記憶を奪うのかに専念しなきゃいけないはず。それなのにエレンは無駄に俺を心配する。それが気がかりだった。

 

 

 

「……言ったはずだろ。リヴァイさん」

 

「あぁ?」

 

「アンタは俺の力から完全に外れてる。未来もリヴァイ兵長だけは正しく読むことは出来なかった。俺の行動で兵長の動きが変わるんだ」

 

「……ああ、バタフライエフェクトか」

 

「そうだよ。前世の記憶で見たアンタの知識通りだ。確定している未来とは違う。俺がこうやって過去に来たから、リヴァイさんが今ここで死ぬ可能性だって残されてる」

 

 

 未来は常に変化する。

 ユミルの民。あの『道』が辿る未来とは違って、俺は大きく外れた存在だからとエレンは言う。

 

 心配しているのは、そういう未来を辿る俺を見たのか。

 俺のせいで未来が複数に分かれたということは、それ相応に悲惨な未来も残されているかもしれない。今の段階でも俺はこいつのいる未来を変えているのか。

 

 それに俺は理解した。エレンが俺の記憶を早く消したいのも分かった。

 でもそれとこれとはわけが違う。最悪の結果なんてクソくらえだ。俺は記憶を消したくない。だからこいつの意思には従わない。

 

 

「まあつまり、お前は俺が死ぬかもしれないから離れないのか。……なら、エレン。お前ちょっと外に出てろ」

 

「はい?」

 

「ここで俺が死なないためには、俺に協力するしかないはずだろ?」

 

 

 姿が見えない幽霊的なエレンは、俺にとっての大切な目と耳になる。人が誰もいないと思ってつい嘲笑って話す内容を俺が知ることも可能だ。盗聴器的な役割だな。

 掃除しつつ笑った俺に、エレンが何故か己の両腕を擦って変な目で見てきた。そんなに変な顔してただろうか。心外だ。

 

 

「俺はリヴァイさんに使われるために来たんじゃないんですけど……」

 

「俺を目立たせた噂を作ったお前の落ち度だ。てめえが立てた失敗はてめえでなんとかしろ」

 

「はぁ……今日だけですよリヴァイさん。俺はアンタの記憶を消すためにここにいるんだ」

 

「知ってる」

 

「あークソっ。なんで話しちまったんだろ……」

 

「お前が俺の記憶全部見たんだからな。お互い様だ」

 

 

 綺麗に掃除できたし、荷物整理だけ。

 普通の子供だったら持てないはずの荷物も、アッカーマンとしての血のおかげか、余裕で持つことが出来た。エレンが注意してくれたおかげで荷物が壊れることもなかったし、盗難騒ぎも起きなかった。

 

 商人が俺の事を苛立った目で見てきたのでいつか痛い目に遭わせようと誓うことにした。

 

 

 







「ケニーんとこのガキが捕まらなかったんだと」

「知恵も回るとは末恐ろしいガキだ。やっぱりここで殺した方が良い」

「ああ確かにそうだな。捕まえて金持ち共のペットにとか依頼されてたが……これって出来たらッて話だろ? 一応別の依頼もあるしな。わざわざこんな面倒くさい手を使わなくていい。ああいうガキは成長したら恐ろしく化けるぞ。今のうちに────」

「今のうちに、なんだって?」

「ひっ、ケニ────アガッ」




「あーあー。ったくよぉ、噂を聞いて探してみりゃあこれだ。手間かけさせるじゃねえよ。ドチビめ」


地下街編を多めに書いてもいいでしょうか?

  • いいぞ、いっぱい書いてくれー!
  • 調査兵団からが本番だろ早くしろよ
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