進撃世界に人類最強として生まれたけどエレンがうるさい   作:ちゃっぱ

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第五話、風呂

 

 

 

 

 俺を罠にかけようとしていたあの商人のお偉いさんたちに何かあったのか、地下街のどっかで襲われ無残な死体で見つかったらしい。

 復讐する相手が消えたことに舌打ちを零す。

 

 しかし、いくら憎くともつい最近まで俺と会話していた人が亡くなるというのはなんだか寂しいものがある。

 

 この世界は本当に厳しい。残酷で人がいつ死んでもおかしくない。

 地下街だからその状況がより酷いだけであって、まだ巨人が攻めてきていない地上の世界はマシかもしれないが……。

 

 

(……ん?)

 

 

 考え事をしつつ水場の掃除をしていた俺に誰かが接近する。

 視線だけそちらへ向ければ頭に向かって手を伸ばすエレンがいた。

 

 何を考えているのか。静かに影を落とすエレンに触られても変に鳥肌が立つわけじゃないのでそのまま放置することにした。

 そうしたら彼がバチリと指に火花を散らして火傷を負ったような傷が出来たので────たぶん俺の記憶を消そうとしたんだと思う。

 

 最近はよく同じことを繰り返していた。

 俺が了承しないと無理だと伝えてきたのはエレンのくせに、勝手に何度も俺の記憶消去を行っては失敗しているのだ。

 

 そういう諦めない頑固なところは流石だと思う。俺も見習うべきか。

 これから先……というか、現段階でエレンと対立気味の俺にとって未来で死ぬ予定の人を生き残らせるためには、これぐらいの執念は必要かもしれないな。

 

 そう思いつつも、俺は掃除を続けていた。家の外。庭として使っている場所には井戸が設置してある。それを知るのは俺とケニーぐらいだろう。これもケニーが去る前に作っていたものだ。いつの間にか自室に近い場所に水汲み場を作ったのにはビビった。地下街でわざわざそういう面倒な工事するか?

 結構金かけてるくせにそういうの顔にも出さねえのほんとふざけるなって怒鳴ってやりたい。お前は絶対に生かす。絶対だからな。

 

 

(……あー。ケニーの事を考えてると苛立つし、止めよう)

 

 

 思考を切り替え、目的のために動く。

 エレンはそんな俺の行動をじっと見ていた。無表情で髪も降ろしているせいか幽霊のように見える。

 彼を横目に少しだけスペースが開いているところに大きめの石を並べ、地面に軽く穴を開けて設置場所を決める。

 

 次は別の場所で作業開始だ。庭が汚れるのも嫌だしな。

 綺麗にしておいた木材を持ってきて作っていく。人類最強のスペックと言えど結構大変な作業なので一日で出来るとは思わない。雑に終わらせても嫌だし、ゆっくり作業して丁寧にやろう。

 

 本格的に作業を開始した俺に我慢が出来なくなったのか、エレンが近づいてきた。

 

 

「リヴァイさん、何してるんですか」

 

「見て分からねえかエレン。風呂を作ってるんだ」

 

「また変なものを……」

 

 

 呆れたような目で見つめてくるエレンに俺は鼻で笑う。

 

 お前、風呂の良さを分かってないな?

 あの熱い湯に肩まで浸かっていく感覚が良いんだろうが。清潔になれるし身体も温まって気持ちいいんだぞ。

 それに頑張れば果物ぐらいは手に入りそうだし、中身は食べて皮だけ消毒し湯に入れてその香りを味わう。食べるだけじゃなく二度楽しめるというものだ。

 

 ヒノキ風な木材の風呂だからちゃんと掃除はこまめにしなきゃだが、それぐらいなら俺でも出来るしな。むしろ得意分野だ。

 というか何でエレンは変なものと言ったのだろうか。未来から来ている彼はこの風呂については何も知らないのか?

 

 

「兵長になった俺は兵団に風呂を広めなかったのか?」

 

「未来の情報を話すわけにはいかないって何度も言ってるでしょう」

 

 

 ツンとそっぽを向いたエレンに俺は肩をすくめる。

 ……そういえばエレンっていつ風呂とか入ってるんだろうか。食事中とか仕事をしているときは気が付いたらいなくなっていることがあるし、幽霊みたいに神出鬼没なんだよな。

 

 彼が何かを食べている姿を見たことがない。

 実体がないせいか、それとも彼にとってここが過去になるからか。

 

 

「リヴァイさん」

 

「あぁ?」

 

「リヴァイさんの家に風呂ならあるでしょう? それ使わないんですか?」

 

「馬鹿言え。あれは風呂とは言わねえ。シャワーもどきなだけだ。しかも庭にある井戸で水を汲みに行かなきゃならねえし、湯も出ねえし水も濁ってやがるし、滝行より酷え代物だろ。それよりは風呂の方が良い」

 

「意味わからないこと言わないでくださいよ。それにこんな地下街で水場が完備されてるだけでも豪華ってもんでしょ」

 

「意味わかってるくせに変な目で俺を見るな。……まあ確かにシャワーもどきがあるだけマシかもしれない。地下街だと家も持てねえ路上暮らしな奴が多いからな」

 

 

 だから病気になって死んでいくのだろう。

 ああ全く、ケニーが俺のために用意してくれた全てにここまで感謝しなきゃならないとは思わなかった。なんであいつ素直じゃないんだ。風呂とかも……まあちょっとシャワー室というかシャワーもどきなのは嫌だが、我儘なんて言ってられない。

 

 この世界じゃ仕方がないことだ。

 外で水を汲みにいくのも、お湯を作るために木材が必要なのも。

 

 細かい部分で忘れちまった漫画の知識でもケニーの台詞だけは覚えているぞ。

 人の親になれねえなんかじゃねえよ。こんなにいろいろやっておいて、親になれないわけないだろうが。

 

 そう考えていてふとエレンの方を見た。

 見なきゃよかった。

 

 

「……エレン。その目止めろ」

 

「はぁ」

 

 

 俺の思考でも読んでいるのだろうか。エレンの能力がどこまで出来るのか分からないので何とも言えない。

 

 しかしこれだけは分かる。

 ────こいつ、俺がケニーについていろいろ考えてるって察してるだろ。

 

 生暖かい目で俺を見てくるの止めろクソが。

 浮浪者みたいなやばい雰囲気出してるくせに。

 

 

 

「……エレンよ」

 

「はい?」

 

「喜べ、風呂が出来たらお前にも入らせてやる」

 

「いや俺実体じゃないんで無理です」

 

「何言ってるんだ俺が触れるんだから半分は実体みたいなもんだろうが」

 

「無茶なこと言わないでくれません? ああ、でも……」

 

 

 いつものように呆れた目で俺を見てきたエレンが、ちょっとだけ思いついたかのように考え込む。

 急に何だろうかと警戒していると、エレンが俺の頭を触ってきた。

 

 本当に突然だったから躱すことすら出来なかった。

 殺意とか攻撃的な感情はなかったから反射で避けられなかっただけだけど……。

 

 何かをするわけでもない、ただじっと俺の頭をボールのように掴んでいるエレンに眉を顰めた。

 

 

「……エレン?」

 

「風呂に入らせたいならリヴァイさんの余分な記憶をくれませんか? それならいいですよ」

 

「いいわけねえだろうがふざけんなクソが!」

 

 

 手を叩いて彼から離れると、エレンは予想していたというような顔で溜息を吐いたのだった。

 溜息を吐きたいのはこっちの方だぞ。油断も隙もないなまったく。

 

 

 

 

地下街編を多めに書いてもいいでしょうか?

  • いいぞ、いっぱい書いてくれー!
  • 調査兵団からが本番だろ早くしろよ
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