愛梨との待ち合わせ、そして七草への釘刺しを終えた達也は一応の仕事であるエンジニアの作業をしていた
「司馬君はまだ出番あとだし、もう戻っても大丈夫だと思うよ。」
「五十里先輩は、どうするのですか?」
「僕は明日から早速仕事だからね。残って作業をするつもりだよ。」
「そうでしたか。では、お言葉に甘えて、失礼します」
一高エンジニアの技術車を出ると、自室に戻ろうと歩き始める
やがて、宿泊地のエントランスに近づくと、突如達也の異能が異常を察知した
すぐに達也は『時空神の眼』を起動すると辺りを見渡した
すると、拳銃を持った男達3人が明確な害意を持って向かってきている
さらに、もう1人これに気付いたのか迎撃しようとする者がいた
その手には呪符が握られていた
(あれは幹比古!?…それでは間に合わない!?)
達也は右手を突き出すと、拳銃の時間を巻き戻した
部品に分解される、そこに三本の雷が侵入者を射抜いた
幹比古がそれを見つけたのは偶然だった
父から「本来自分が立つべき場所を見てこい」と言われたのもあってエリカの誘いを受けた幹比古は夜に1人で精霊魔法の練習をしていた
その時、放っていた精霊が害意を検知した
「拳銃!?侵入者か!!」
幹比古は持っていた呪符を起動した
すると、賊が幹比古に気付いて拳銃を向ける、その時彼らの持っていた拳銃がバラバラになった
それに驚きつつも起動した魔法『雷童子』を放ち、賊を気絶させた
自身をアシストしたのは誰だったのか?
それを考えていると、突如気配を感じた
「誰だ!?」
「俺だ、幹比古。」
「た、達也!?」
暗闇から現れたのは達也だった
達也はすぐに賊の首に手を当て脈を測った
「死んではいない。的確に気絶させるとは、いい腕だ。」
「いや、達也がいなかったら死んでいたのは僕の方さ」
「はぁ…幹比古。お前は馬鹿か?」
「え?」
「お前は1人で対処するのが正しいと思っているだろうが、そんなものは理想論でしかない。現実を見ろ、俺がアシストをしてお前が賊を気絶させた。それが唯一の事実じゃないか。そんな卑下することはない」
「わからないよ、君には。色々と恵まれている君には…」
「俺が恵まれている…ね。まぁお前からしたらそうか。俺のことなんて何も知らないんだからな。だが、何も知らない人間にそう言われるとこれがどうして、吐き気がする。」
「!?」
「幹比古。俺はな、中学生の時に両親を亡くしているんだ。だから俺は自分が恵まれているなんて思ったことはない。」
達也の突然の剣幕に驚き、幹比古は固まっていた
「唯一の家族だった。今でこそ泉美という妹はいるが、それでも義理の兄妹。血の繋がりはないんだ。だから俺は今も心の中では唯一の家族である両親の死を乗り越えられてないのかもしれない。」
「そう…なんだ。」
「ところで、お前のさっきの贅沢な悩みは魔法の発動速度か?」
「!?…エリカか?」
「いや。俺はな、一度見ただけで魔法式の構造を理解することができる。それで見た限り、お前の術式には
「なっ!?君は、吉田家が長い時間と労力をかけて作り上げた魔法を
「そうだな、その答えは後日空いてる時間を使って説明しようか。だから今はコレを対処しよう。警備員を呼んできてくれ」
「わかった。」
幹比古がその場から去ると同時に達也は視線を茂みの方へと向けた
「なかなかに容赦がなく、それでいて深いアドバイスだったな、大尉。」
「風間少佐。覗き見ですか?」
達也の視線の先から出てきたのは達也の上官であり、所属する部隊の隊長でもある風間だった
「まさか。ただこの辺の警備をしていてね。見つけたのは偶々だ。」
「そういうことにしておきましょう。ところで、この賊についてですが。」
「そのもの達はこっちで引き受けよう。ご苦労だった。」
「はっ!」
「とりあえず、また後日会おう。部屋の場所も知っているだろうから、いつでも来てくれて構わない。」
「そうですか、わかりました。後日、泉美を連れて伺おうと思います」
「うむ。気を付けろよ、
「わかってますよ、
会話は階級から友人・兄弟弟子の関係へと変わっていった
達也がその場から去るのと、警備員がたどり着くのはほぼ同じだった。
翌日、達也の元には捕まえた賊が〈無頭龍〉東日本支部の末端メンバーであったことが知らされた
前回までで結構書いたので、今回は比較的短めです
達也の過去(一部)が幹比古に話されたり、風間と会ったりと内容的には濃いめだと思っています
そんなわけで次回からやっと競技スタートです