時空を操るもの   作:旭姫

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九校戦編 第二十話

 

新人戦一日目を終えて、第三高校の使用する会議室では重苦しい空気が流れていた

 

「まさか、優勝候補とされていた十七夜さんが負けてしまうとは。やはり腐っても一高ということか!」

 

「男子は大したことないが、女子の上位独占は予想外すぎる」

 

「確かに一高の上位独占は予想外だった。でも、優勝した北山選手以外は飛び抜けて強い選手達ではなかった」

 

「どういうことだ、一条。」

 

三高幹部陣の視線が発言者、一条将輝の方を向く

 

「そのまんまの意味だ。彼女達の実力はうちの女子と変わらない。」

 

「では、何が違かったと言うんだ!」

 

「技術…エンジニアだ。」

 

「将輝は気付いた?北山選手が使っていたCAD」

 

「ああ。あれは汎用型だった。」

 

「馬鹿な!?照準補正付きの汎用型CADなど存在しないはずだ!」

 

「それが実は出ていたんだよ。()()()に。」

 

「一年前だと!?」

 

「それじゃあ最新技術じゃないか!」

 

「僕も改めて調べてみるまで知らなかったんだけど、去年ドイツのデュッセルドルフで照準補正付きの汎用型CADの研究が行われていたんだ。だけど、当時の研究では汎用型CADに強引に特化型の機能を付けた為に失敗に終わってしまった。」

 

「つまり、一高には昨年失敗したその研究を成功させるほどの凄腕のエンジニアがいる。」

 

「何だと…!?」

 

「一高にそんな隠し玉が!?」

 

「真の敵は一高ではなく一高の凄腕エンジニアか。」

 

「そうだな。目算だが、彼が調整している試合は気を付けたほうがいい。具体的には2,3世代分のハンデを背負っていると考えるべきだ。」

 

将輝の言葉とともに締められた会議を終え、幹部陣が部屋を出ていく

 

「司馬達也…何処かで聞いたような…」

 

その時の吉祥寺真紅郎の呟きは誰にも聞かれることはなかった

 

―――――――――――――――――――――――――

 

九校戦が始まって5日目、新人戦は2日目の今日はクラウド・ボールの全試合、アイス・ピラーズ・ブレイクの予選が行われる

 

達也もクラウド・ボールに出る愛梨の試合が気になっているが、一応仕事なのでアイス・ピラーズ・ブレイクの準備をしていた

 

「おはよう、皆。昨日はよく眠れたか?」

 

「おはよう!司馬君!眠れたよ!」

 

バッチリとでも言う態度を見せたエイミイだったが、達也による調整作業によりその態度が一変した

 

「エイミイ、昨日あんまり眠れてないだろ。」

 

「ふぇぇ!?わ、わかります?…親よりも厳しいかも…」

 

「フィードバック強めに設定しておくから。試合が終わったら〈カプセル〉で休息を取ることだ。」

 

「ええ〜。私〈カプセル〉嫌いなのよね〜。あの超音波?って言うやつ。アレの感覚が好きじゃないのよね…」

 

「その気持ちはわかるが…」

 

「司馬くんも仲間じゃん!」

 

「でも駄目だ。深雪、〈カプセル〉の申請を頼む」

 

「かしこまりました。」

 

「私、ここで負けたら…皆の玩具にされちゃうよ〜」

 

エイミイの突然のカミングアウトに達也が戸惑いつつもなんとか言葉を返した

 

「お前達は普段何をやっているんだ…」

 

「い、いや、わ、私達は何もやましいことなどしていません!」

 

「なるほど、深雪のところは平気なのね!」

 

「ちょっと、エイミイ!?どういうことよ!」

 

返した結果、深雪が何故かダメージを受けた

 

「じゃあ、明智英美。行ってまいります!」

 

「頑張ってこい!」

 

「はい!」

 

エイミイの服が普段の部活で使用している乗馬服で軍服に似てるのもあって達也との掛け声も様になっていた

 

今日の予選は、大雑把に言うと一回勝てば翌日の本選への出場権を得ることができる

 

そして一高女子の出番で言えば、エイミイが今日の最初の試合、午前中の最後の方に雫、そして午後の中間あたりに深雪が出場することになっている

 

達也の気になっている愛梨の試合は準決勝と決勝は時間が被っていないので見ることができる

 

決勝は愛梨と七草香澄の試合である事はほぼ確定しているようなものなので、一高には悪いが達也は七草が嫌いなので、愛梨がどういう戦い方で、七草香澄に対してどういう勝ち方をするのかが今から気になっていた

 

エイミイの試合は達也の予想通り、エイミイが勝利し、翌日の本選への出場権を得た

 

―――――――――――――――――――――――――

 

エイミイの試合から1,2時間、今度は雫の番になった

 

達也の待つ控室に入ってきた雫は振り袖を着ていた

 

アイス・ピラーズ・ブレイクは服装が決まっていなくて、自由なので、エイミイのように普段部活等で着る服を着る人や私服の人、今回の雫のように普段は着ないような服を着る人もいる

 

「その振り袖似合ってるぞ。」

 

「ありがとう。」

 

「だが、試合中邪魔じゃないか?」

 

「大丈夫。試合の時は襷を使うから」

 

内心でじゃあ振り袖じゃなくていいんじゃないかと思ったが、口には出さずに、本題に入った

 

「さて、まぁ雫の実力なら問題ないだろうが、本番は何が起こるかわからない。」

 

「達也さんは心配しすぎ。」

 

「それもそうだな。じゃあCADの確認をしてくれ。」

 

「ん、いい感じ。やっぱり雇われない?」

 

「断る。」

 

「…ケチ。」

 

「そろそろだな。」

 

「頑張る。」

 

櫓に立った雫は試合開始と同時に腕のCADを操作する

 

すると、相手の氷柱の下に大きな魔法陣が浮かび上がり、そこから地震のように振動が起こってすべての氷柱を破壊した

 

「あれは『共振破壊』の応用ですか?」

 

「そうだ。スピード・シューティングでもそうだが、彼女は母親である鳴瀬紅緒の才能を強く受け継いでいる。だから、振動系統は彼女の持ち味となっているんだ。それに、北山家は家長の北山潮さんが魔法師ではないのだが、魔法師への理解も強く、雫は幼い頃から魔法の英才教育を受けていたわけだ。」

 

「なるほど。それであの実力なら納得ですね。」

 

「そうだな。強い魔法師ほどいい先生に恵まれる傾向があるのかもしれないな。俺だってそうだったし。」

 

「達也さんの魔法の先生は大叔父様でしたよね?」

 

「ああ。父さんがスポンサーの立場を利用してなった形だったが、とても優しく指導してくださったよ。」

 

「私はまぁ、環境が環境でしたので。」

 

「まぁ四葉の次期当主になるほどの実力だ。誇っていいだろうな。」

 

「これからもよろしくお願いいたしますね。」

 

「ああ。じゃあ深雪の出番はまだ先だから、お昼でも食べに行こうか。」

 

「ええ、是非。」

 

 





九校戦編では泉美の出番があんまりないかもしれないですが、それでも深雪と愛梨で我慢していただけると嬉しいです


次回は達也と将輝が初めて出会うシーンです

果たして達也と真紅郎はお互いに会ったときの記憶を思い出すのか。

私にもわかりませんが、次回をお楽しみに。

では、また次回
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