to the beginning 作:ヘルメス・トリスメギスタス
「はあ」
晴れた夏の日の昼下がり、俺はため息を吐く。
退屈で退屈で仕方がない。
ああ、自己紹介まだだったな。
名前は橘レイジ。テンプレ転生者である。
ちなみに死因は風呂場で眠っての水死。
あ、そこ笑わない。それでくじ引きで特典をもらったのだが、
出たのは『FGO』。
しかし、転生先は平和な現代日本。
これエクスカリバーとかオーバーキルだよね?
最近は仮面ユーチューバーとして、前世の歌を投稿してる。
評判も上々で再生数も伸びている。
歌ってくれる人いないのかって?
陰キャボッチにそんなのいないよ。
今日は暑いから海に来ている。
キャラに合わない? 放っといてくれ。
陰キャボッチでもたまには外に出たくなるものなのだ。
ただいまちょっとした事件が発生している。
海で女の子が溺れている。
あまり目立ちたくないが仕方ない。
俺は海の上を走り、女の子の所へ向かった。
周りは突然の超常現象に呆然としていた。
俺は女の子を抱きかかえ、砂浜へ引き返す。
砂浜には女の子の友人と保護者らしき人がいた。
「卯月大丈夫!?」
「大丈夫だよ凛ちゃん」
卯月と呼ばれた女の子が笑顔で応じる。
「助けていただきありがとうございます」
保護者と思しき男性がお礼を言う。
「ああ、まあ、気にしないで下さい。それじゃあ俺はこれで」
俺はそそくさとその場を去った。
海上を走るのはやり過ぎたかな。
その後は平和な時間が過ぎた。
頬をなでる海風が気持ちいい。
ウトウトとし始めると、男女が言い争う声が聞こえた。
どうやら強引なナンパらしい。
俺は起き上がると声のする方に向かった。
「お前等その辺にしておけよ」
俺はナンパをしている男達に声を掛ける。
「あ? なんだてめえは?」
「女の子が嫌がってるだろ。これ以上はやめろ」
「うるせえ!」
男の一人が殴りかかって来るがそれを難なく止める。
「バリツ」
俺は拳を男の顔面に喰らわす。
男は吹き飛び砂浜を数回バウンドして止まった。
「まだやるか?」
俺がそう言うともう一人の男はそそくさと逃げ出した。
「あの・・・ありがとうございます」
女性がお礼を言った。
歳は俺に近いか?
一目見て美人とわかる。
この人俺と対極に位置する陽キャだわ。
「ああ、気にしないで下さい。それじゃ俺はこれで」
挨拶もそこそこにそそくさと立ち去る。
今日はこんなことが多いなあと思う。
「それにしても返事どうするかね・・・」
あの後俺は自宅に帰宅し、パソコンのメールを見ている。
それはとある芸能事務所からの作曲依頼。
「曲は問題ないとしてもな・・・実際問題現実の歌がなあ・・・」
今、この世界の歌は昭和の途中で止まってる状態だ。
ここに平成、令和の歌を出したら?
俺はうんうん悩みに悩みぬいた末、結論をだした。
引き受けよう。
この停滞状況を打破しよう。
そうすれば後は誰かが続くはずだ。
俺は早速了承のメールの返事を書く。
メールのあて先は346プロだ。