to the beginning 作:ヘルメス・トリスメギスタス
「飲み会ですか?」
「はい。橘さんいかがですか?」
ちひろさんが笑顔で尋ねてくる。
「うーん……」
「?。何か問題でもありましたか?」
「ちなみにメンバーは誰ですか?」
「私に武内さん、それにアイドルが数名です」
俺は顔をしかめる。
「俺が女性が苦手なのは知ってますよね?」
「ええ。だからこそです」
ちひろさんは力を込めて語る。
「苦手克服も兼ねてです。今後も女性と関わる職業なんですから尚更です」
「……わかりました。ただ、お酒をあまり飲ませ過ぎないで下さい。
俺は一定量を越えると性格が変わるので」
「それじゃあ出席ですね」
「場所は俺に任せてもらえますか? いい場所を知ってるんで」
「じゃあ橘さんお願いします」
数時間後俺や武内さん達は居酒屋に来ていた。
「オーナー。ようこそお越しくださいました」
「オーナー?」
武内さんが尋ねる。
「ここは俺が出資しているお店なんです。
個室もあって秘密の会合とかに便利なんですよ」
「そうなんですか」
「今日は個室の予約を取ってありますので、そちらの方へ」
店員に案内されて個室へ通される。
「俺は日本酒を頼みますけど、武内さんはどうします?」
「ビールをお願いします」
「私も武内さんと同じ物で」
ちひろさんもビールと。
「鷺沢さんは未成年だからソフトドリンクだね」
「はい。ウーロン茶でお願いします」
他のアイドル達もめいめいに注文していく。
「それじゃあ乾杯!」
川島さんの音頭と共に皆飲み始める。
皆が盛り上がる中、俺は静かに日本酒を飲み始めた。
極力関わり合いにならないように気配遮断を高めてと。
あっ。サバの味噌煮美味しい。
「橘さん。飲んでますか?」
「ちひろさん。ええ。飲んでますよ」
「ほらもっとみんなと話しましょう」
うう。また難題を。
「そうそう。橘さんは野球だとどこが好き? 私はキャッツ!」
姫川さんがビール片手に話してきた。
「俺は野球を見ないですね。ルールは知ってますけど」
「そうなの? じゃあキャッツを応援しよう!」
姫川さんは笑いながら応じた。
酔いが回っているせいか明るいな。
他のメンツは談笑しながら飲んでるな。
静かに飲んでるのは高垣さんと鷺沢さんか。
あっ。高垣さんが武内さんにしなだれかかった。
ちひろさんは対抗するように、反対側から腕を回した。
武内さん。困っているのはわかるけど、俺に助けを求めないで下さい。
……俺もそろそろ飲むのを止めるか。
これ以上はまずいな。
俺がそう思っていると、川島さんが声を掛けてきた。
「橘君。飲んでる?」
「飲んでますよ。もうそろそろ飲むのはやめようと思いまして」
「ちょっと! まだまだこれからよ! 注いであげるわ」
俺のコップに日本酒を注いでくる。
「川島さん、俺は一定量越えると性格が変わるので……」
「何? 私のお酒が飲めないっていうの?」
川島さんがギロリと睨む。
うう。やっぱりこういうことに。
まだ大丈夫のはずだ。
俺はそう思い直しお酒を飲んだ。
「いい飲みっぷりね。男の子はそうでなくっちゃ♪」
そう言って川島さんはまたお酒を注いだ。
もう一杯飲んだ時、俺の意識は消失した。
「…………」
「あの…橘さん?」
急に黙り込んだレイジに心配になる文香。
レイジは黙って日本酒をコップに注いで口に含む。
そして、文香にいきなりキスをした。
レイジの思わぬ行動にフリーズする文香。
そんな文香にお構いなく、お酒を口移しするレイジ。
レイジは文香の唇を充分に堪能した後、唇を離した。
「た……橘さん……」
「レイジだ」
「え?」
「レイジって呼べ。俺も文香と呼ぶ」
「レ……レイジさん」
「それでいい文香」
「ちょっと! 何やってるんですか!?」
ちひろが止めに入る。
「黙れ」
レイジのその一言で強烈な圧が全員に襲ってきた。
皆が動けなくなる中、レイジは文香を抱き上げる。
「文香は俺がいただく。会計は済ませて置いてある。じゃあな」
そう言ってレイジ達は店から出て行った。
「……ん」
知らない天井だな……。
ここどこだ? 現状を確認しようか。
まずベッドで何故か裸で寝ているな。
そして横から寝息がするな。俺は横を見て凍り付いた。
そこには鷺沢さんがいた。しかも全裸で。
そしてシーツには白と赤が混じった後が……。
よし、落ち着け俺。昨日なにがあった。
最後の記憶は川島さんに薦められるままお酒を飲んだ記憶だ。
恐らくここで性格が変わったんだ。
そしてここは恐らくホテルで俺が鷺沢さんを連れ込んだんだな。
それで致してしまったと……。
「………………」
やってしまったあーーーーーーーーー!!
どう考えても俺が無理矢理やったとしか考えられない。
どうする? 宝具やスキルを使う? いや、身体は癒えても心の傷は消せない。
その時、鷺沢さんが起きた。
「あ、…レイジさん」
「すいませんでしたーーーーーーーー!!」
俺は全力の土下座を敢行した。
本来なら熱々の鉄板の上で土下座敢行しても足りない位だ。
鷺沢さんは全力で土下座した俺を見てオロオロしていた。