to the beginning 作:ヘルメス・トリスメギスタス
しばらく俺は謹慎処分となった。
やはりそうかと俺は受け入れた。
クビにならないだけ御の字である。
そして、今日から謹慎明けの初日である。
「おはよ…へぶっ!?」
いきなり晴が顔面に飛び蹴りをかましてきた。
「いつつ……晴いきなり何を……」
「正座」
「えっ?」
「いいから正座」
「は、はいっ!」
晴からの圧力に俺は素直に正座した。
「プロデューサー、馬鹿か? アイドルに手を出すなんて」
「その件は本当に申し訳ない」
「兄さんも反省してるので勘弁してあげて下さい」
「ちっ、仕方ねえな」
晴は渋々という感じで納得した。
「お帰りなさいプロデューサーさん」
「千枝も迷惑かけた。すまない」
一通り謝った後、皆を見て喋る。
「皆にお知らせがある」
「お知らせ? 今度はなんだよ?」
「いい知らせだよ。皆のソロデビューが決まった」
皆からおおーとの反応が返ってきた。
「兄さん。曲はどんなのなんですか?」
「これから音源を聞かせるよ」
今回準備した楽曲はこれ
・二者穿一 橘ありす
・参全世界 結城晴
・明鏡肆水 佐々木千枝
早速音楽を流す。
ありす達の反応もいい感じだ。
「兄さん。タイトルに数字がついてますけど、他にもあるんですか?」
「他には一刀繚乱と伍越同舟があるよ」
「千枝聞いてみたいですけど大丈夫ですか?」
「それじゃあ伍越同舟を歌うよ」
俺はギターを持って歌い始めた。
「~~♪」
やっぱり歌うのは楽しいな。
「兄さんやっぱり歌うのうまいですね」
「それな。悔しいけど俺等よりうまい」
「プロデューサーは表に出て歌う気はないんですか?」
「……実は今回やらかしたせいで歌うことになってる」
今回の一件は常務まで報告が上がり、俺が文香の分まで稼ぐことになった。
「へえ。いいんじゃねえの?」
「良くない。仮面外せと言われてるんだぞ」
「ああ。兄さん嫌がってましたもんね」
「不細工な顔を世間にさらされるんだぞ? 嫌だろそんなの」
「「「えっ!?」」」
「その反応は何?」
「いえ、兄さん充分カッコイイ部類に入りますよ」
「俺から見てもカッコイイぜ」
「千枝も二人と同じ意見です」
「はは。慰めてくれてありがとう」
俺はため息をもらす。
何で陰キャボッチが人前で歌わなきゃいけないのだ。
完全に罰ゲームじゃないか。
「なあ、ありす。プロデューサーって自己評価低くないか?」
「兄さんは自分を低く見てますからね。もっと自信を持っていいとは思います」
「プロデューサーさんもこの機に変わってほしいですね」
小声で喋る三人に俺は気付かなかった。
ライブ当日。
会場には多くのお客さんが詰めかけていた。
「多いなお客さん」
「ふふ。それは雷電P素顔公開もありますから」
ちひろさんが笑顔で応じる。
「ちひろさん楽しんでますね」
「まあ、罰ゲームも兼ねてますからね。まあ、楽しんで下さい」
「簡単に言ってくれますね」
「ふふ。そろそろ開場の時間ですよ。準備してください」
「わかりましたよ」
ええい。こうなりゃやけだ。
「本日はお越しいただきありがとうございます。雷電Pです」
言うと同時に仮面を外す。
仮面を外すと会場がざわつく。
「今日のライブをお楽しみ下さい。歌うのは新曲、伍越同舟です」
そして俺は歌いだした。
「~~♪」
緊張しながらも歌い終わった。
その瞬間、会場が拍手に包まれた。
お礼を述べた後、次のありすに声をかける。
「場は何とか温めたよ。後は任せた」
「はい。行ってきます!」
そう言ってありすはステージに飛び出してゆく。
さてと、後は見守るだけか。
結果としてありす達のソロデビューは成功に終わった。
終わった後、雷電Pアンコールの声で歌わなきゃいけなかったのは、計算外だったけど。
「お疲れ様でした橘プロデューサー」
「ええ。ちひろさん。何とか成功しました」
「その割には顔色が冴えませんが?」
「不細工な顔をみんなに見せたんですよ? 気分いいわけないじゃないですか」
「あの、それ本気で言ってます?」
「俺は至って真面目ですけど?」
「橘プロデューサーは充分カッコイイですよ。自信持って下さい」
「そうですかねえ」
「そうです!」
「兄さん。そろそろ帰りましょう」
「そうだね。帰ろう」
今日はもう精神的に疲れた。