to the beginning 作:ヘルメス・トリスメギスタス
「兄さん。起きてください」
「んっ……おはよう、ありす」
「朝食が出来たので、下に降りてください」
「わかったよ」
そう言われて、ありすと一緒に下に降りる。
父さんとレオンさんが待っていた。
「二人共おはよう」
「レイジがテレビに出てるぞ」
「はい?」
俺はその言葉に間抜けな顔をする。
「芸能コーナーで雷電P素顔公開ってニュースになってたぞ」
「朝からニュースになってますよ兄さん」
「マジかあ……」
「外出る時どうします?」
「幻術使って別人に化けるさ」
「当分はそうするしかないですね」
「ありす達がニュースになってなきゃならないんだけどなあ」
「それは仕方ないでしょう。SNSでも検索ワードで上位になってますし。
兄さん、スマホは見てないんですか?」
「陰キャボッチに誰が連絡取ると思う? 文香から電話があった位だよ。
SNSはありす達の情報を発信する程度だからな」
どうしてこうなった。
俺は天を仰ぎたくなった。
「おはようございます。ちひろさん」
「おはよ……ありすちゃんとあなた誰です?」
「ああ。これじゃわからないですね。幻術解除」
「って橘さん!?」
「ちょっと幻術で変装しました」
「はあ、そんなことも出来るんですね」
「まあ。所で武内さんから依頼があるとか」
「こんなところで立ち話も何ですし、武内プロデューサーの所へ行きましょう」
俺達は武内さんの所へ向かった。
「武内さん、失礼します」
「橘さん。これはどうも」
武内さんが出迎えてくれた。
「あ、橘さん。何か大変なことになってるね」
本田さんが声をかけてきた。
「本当はありす達が話題になってもらわないと困るんだけどね」
「まあ、雷電P素顔公開に新曲だったからね。仕方ないかな」
渋谷さんが冷静に応じる。
「素顔公開位で何でこうなるかな?」
「いや、橘さん。雷電PってSNS界隈じゃ有名なんだよ?」
「斬新な歌詞に今までにない独特なメロディ。若い人の間で人気なんですよ」
島村さんが笑顔で答える。
「橘さん。本題に入ってもよろしいでしょうか?」
「すいません、武内さん。それで依頼とは?」
「ラブライカの曲を作ってほしいのです」
「ラブライカのですか……うーん」
「どうでしょうか?」
「わかりました。お引き受けします」
「ありがとうございます」
頭の中で数曲をピックアップする。
ラブライカならこれかな?
俺がそう思っていると、島村さんが質問してきた。
「質問があるんですけどいいですか?」
「俺の答えられる範囲でなら」
「じゃあ、橘さんの戦闘能力ってどの位なんですか?」
「それは剣、槍、弓、素手? それとも他の事?」
「総合的な戦闘能力です」
「アメリカの人工衛星に監視される程度かな」
「へっ?」
「簡単に言うと俺が走ったりすると、複数の人工衛星が追尾するってこと」
「ちょっとちょっと! 何でそんなことに!?」
本田さんが突っ込んできた。
「えーと簡単に言うと、家にアメリカの特殊部隊が来て、それを返り討ちにして、
その勢いのままホワイトハウスに殴り込みを敢行したから」
「えーとそんなニュースを見たことないけど」
「そりゃホワイトハウスの護衛が素手の相手に全滅して、大統領が脅迫されたなんて恥もいいとこだからね。
その後は俺個人と友好条約を交わしてるから、向こうからは手出ししてこないよ」
「一個人と友好条約……」
「というか橘さんは素手も強いの?」
渋谷さんが疑問を呈する。
「八極拳他実戦向きの東洋武術に、カウンターや投げ技も得意だよ」
「それだけのことしたら一個人と友好条約を結ぶよね。素手の強さなんて金属探知機にも反応しないし」
「まあ、素手なら堂々と入口から入れるからね」
「おはよ~」
気だるそうに双葉さんが部屋に入ってきた。
「おはよう双葉さん」
「ああ。橘さん。ネット上も反響が凄いことになってるよ」
「そんなに?」
「スレッドが次々と流れていくからね。色々と大変になるんじゃない?」
「マジかあ……」
「まあ、頑張れとしか言えないかな杏は」
「気楽に言ってくれるなあ」
「他人事だしね」
「しばらくは作曲に専念しようかな」
「いえ。早速橘さんに歌ってもらいたいとオファーが来てますよ」
「え? ちひろさん。あれ一回だけなんじゃ?」
「何言ってるんですか。誰があれ一回と言いましたか?」
「謀ったな! シ〇ア!」
「誰がシ〇アですか。文香さんの件はそれほど重いんですよ。
キリキリ仕事して下さい!」
「ああもう! わかりました。歌えばいいんでしょう歌えば!」
「分かっていただけて何よりです」
ちひろさんの笑みが悪魔の笑みに見えた。