to the beginning 作:ヘルメス・トリスメギスタス
「なあ、ありす。この格好変じゃないかな?」
「大丈夫ですよ。充分カッコイイです。文香さんとのデート楽しんで下さい」
「毎回悪いな。服装に自信なくてさ」
「文香さんなら気にしなさそうですけどね」
「それじゃ行ってくるよ」
「ええ。いってらっしゃい」
ありすに見送られ俺は待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせ場所にはすでに文香が待っていた。
「文香遅れてごめん」
「いえ、私も今来た所なので」
「それじゃ行こうか」
「はい」
文香の手を握り歩き出す。
最初の目的地は古書店だ。
「これと……後これも……」
文香が本を選んでいる。
文香が買う本は量が多いが、俺の蔵に放り込んでいるので問題ない。
後はお金が足りるかだ。
俺が出すと言っているが、文香は自分のお金で買う。
文香曰く、自分の趣味に俺のお金を使うのは申し訳ないそうだ。
俺はその辺は気にしてないんだが。
「レイジさん。買い物は終わりました」
「ん。それじゃ次の目的地に行こうか?」
「はい」
心なしか様子が変な文香を不審に思いつつ、俺達は次の目的地に向かった。
「色んなお魚がいますね」
文香が水槽を見て呟く。
俺達はあの後水族館に来ていた。
水槽には様々な魚達がいて、俺達を迎えた。
「…………」
文香の表情は晴れない。
「あの、文香。水族館は気に入らなかった?」
「いえ……そういうわけではないです」
文香はそう言いつつも心はここにあらずといった感じだ。
何とも微妙な空気の中、俺達は水族館を回った。
水族館の後、俺達はカフェで休憩することにした。
「…………」
「…………」
気まずい。
文香はおしゃべりではないが、今日は普段以上に寡黙だ。
「レイジさん」
「何かな文香?」
「ありすちゃんからレイジさんのこと聞きました。
動画も見せてもらって…………」
「うん。それで?」
「戦わないで下さい」
「…………」
「あんな命を賭けた戦い……意味がないじゃないですか。
だから戦うのを止めて下さい」
「俺だって戦いたくはない」
「だったら……!?」
「でもね。相手がそういう考えじゃないのさ。
だから、戦わざるを得ないのさ」
「……私、怖いんです。レイジさんがいなくなることが」
目に涙を溜めて俺を見る文香。
「だから戦わずに逃げて下さい。逃げるのは恥じゃないです」
「逃げれる時は逃げる。でも周囲に被害が及ぶようだったら戦わざるを得ない」
「スカサハが城ヶ崎さん達を狙ったように?」
「ああ。その通りだよ」
「戦わないとは言ってくれないんですね」
「文香に嘘はつきたくないからね」
「……わかりました。でも、必ず生き残ると約束して下さい」
「約束するよ。俺も死にたくないしね」
コーヒーを飲みつつ考える。
果たして俺は生き残れるのか?
再度スカサハが来た時、俺は対処出来るのか?
「…………」
「レイジさん?」
「何かな文香」
「いえ…今とても怖い顔をしてたもので」
っと顔に出てたか。
「何でもないよ。さっ、デートの続きをしよう」
俺は誤魔化して答えた。
「本はここに置いておけばいいかな?」
「はい。後で整理しますから」
あの後俺達は文香の家にやってきた。
蔵に放り込んだ文香の買った本を部屋に置くためだ。
「…………」
「レイジさん?」
俺は黙って文香を抱き寄せた。
文香は一瞬驚いたものの、受け入れてくれた。
「レイジさんどうしたんですか?」
「怖い」
「えっ?」
「本音を言えば戦うのが怖いんだ。
でも、相手を出来るのは俺だけなんだ」
「レイジさん…」
「今だけ文香のぬくもりを感じさせてくれ。
そうしたら生きて戻れる気がする」
「わかりました。気の済むまで抱いてください」
「ありがとう」
それからしばらく俺は文香を抱き続けた。