to the beginning 作:ヘルメス・トリスメギスタス
俺は大学で講義を受けていた。
その途中で俺の携帯にメールが入る。
陰キャボッチの俺にメールを送るのは、
仕事関係か数少ない友人だ。
今回は友人の方だった。
空いてる時間はありますかとのことだったので、
空いてる時間といつもの場所でと送信する。
すぐに了解の返事が来た。
それを確認して、退屈な講義に意識を向けた。
講義を終え、友人の待つベンチへと向かう。
友人はすでにベンチで待っていた。
「お待たせ鷺沢さん」
「橘さん・・・いえ、私もついさっき着いたので」
鷺沢さんとは古本屋で知り合った仲だ。
話してみると同じ大学だとわかり、友人となった。
前髪で目元が隠れているけど、よく見れば美人とわかる。
普段はお互いベンチに座り本を読んでるのだが・・・。
「それで相談って何かな? 恋愛関係は無理だけど」
「いえ。そうではなく・・・私、アイドルのスカウトを受けたんです」
「へえ・・・」
俺は意外とは思わなかった。
鷺沢さんは見る人が見ればわかる。
「それで事務所の名前は?」
「346プロです」
「まじかあ・・・」
俺は奇妙な偶然に天を仰ぐ。
「346プロを知っているんですか?」
「知ってるも何も俺がプロデューサーとして働き始めたとこ」
「そうなんですか・・・」
「それでやるのアイドル?」
「それが悩んでいて・・・」
「まあ、鷺沢さんの人生だし、どちらを選ぶかは後悔無いように決断しなよ」
「・・・そうですね。少し考えてみます」
「それじゃあ俺はこれで」
「ありがとうございました」
鷺沢さんに礼を言われて、俺はその場を後にした。
「ありす、お待たせ」
俺はありすが通っている小学校にやってきた。
「兄さん、それじゃあ事務所に行きましょうか」
俺達は事務所へ向かって歩き出した。
俺達が歩いているとサッカーボールが転がって来た。
「すいませーん!」
声のする方向を見ると公園があり、ありすと同じ位の女の子が手を振っている。
その時『直感』が反応したので『鑑定眼』も使う。
ふむ・・・。
俺はボールを拾い上げ女の子に近づく。
「こんにちは。俺は橘レイジ。こういう者だ」
俺は名刺を渡す。
「346プロのプロデューサー? そんなのが何の用だよ?」
女の子は怪訝な顔をする。
「アイドルをやらないか?」
「はあ?」
「リフティングで勝負して俺が勝ったらアイドルをするというのはどうだ?」
「そっちが負けたら?」
「俺が持っている財宝のどれか一つをあげるというのはどうだ?」
「おもしれえ、負けねえぞ!」
「37・・・38・・・わっ!?」
女の子は38回で終わった。
「次はそっちの番な!」
「それじゃ始めますかね」
俺はリフティングを始める。
「48・・・49・・・50!」
俺は切りのいい所でリフティングを止めた。
俺が勝てたのはぶっちゃけ『千里眼』のおかげである。
『千里眼』で先読みをしてリフティングしたのだ。
「ぐわあああ! 負けたあ!」
「というわけでこれからよろしく」
「ああもうわかったよ!」
「兄さん時間がギリギリです」
ありすが時計を見て呟く。
「もうそんな時間か・・・アレで行くか」
俺は蔵から『疾風怒濤の不死戦車』を出す。
黄金の波紋から出て来た『疾風怒濤の不死戦車』にありす達は眼を丸くする。
「二人共乗ってくれ。飛ばすぞ」
俺は二人を乗せると、『疾風怒濤の不死戦車』を加速させる。
「飛んでる! 兄さん、空を飛んでます!」
「これはそういう乗り物だからな!」
俺達はあっという間に事務所に到着した。
『疾風怒濤の不死戦車』を蔵に収納する。
「兄さん。あなたは一体何者何ですか?」
ありすの言葉に俺は笑顔で応じる。
「ただの人だよ俺は」
そう言って事務所に入る。
事務所にはちひろさんがいた。
「おはようございます橘プロデューサー。それとそっちの子は?」
「新しいアイドルの子です。そういえば名前は?」
「俺は結城晴。なあ、この人何者?」
「えっ。新米プロデューサーですけど?」
「そうじゃなくて、プロデューサー空飛ぶ乗り物持ってるんだけど」
「へ?」
「まあ、そんなことはいいじゃないですか。ちひろさんは俺に用でも?」
「そうでした。担当してもらいたい子がいるんです。千枝ちゃんご挨拶を」
ちひろさんがそう言うと、ありす達と同じ位の女の子が出て来た。
「佐々木千枝です。よろしくお願いします」
「俺は橘レイジ。よろしく」
「なあ。質問に答えてねえんだけど」
「ああ、それは・・・」
「それは?」
「秘密。もっと親密になったら教えるよ」
その後、ありす達の質問をのらりくらりかわしつつ、話を交わした。