to the beginning 作:ヘルメス・トリスメギスタス
今日も今日とてルーキートレーナーさん監修の元、基礎レッスンを行っていた。
その時勢いよくレッスン室の扉が開けられた。
「頼もー!」
入って来たのは確か脇山さんか。
何の用だろう?
「橘レイジ殿! 珠美に一手指南をお願いします!」
「ちょっと待って脇山さん。何で俺に?」
「それは橘殿が剣道世界大会優勝者だからです」
「兄さん、本当ですか?」
ありすが聞いてくる。
「あー、まあ一応・・・」
「ちなみに流派は何ですか?」
「柳生新陰流、巌流、二天一流、天然理心流・・・」
「ちょっと待て! いくつ流派を修めてるんだよ!?」
晴が驚く。
「まあ、色々と。それじゃあ一手指南しようか」
「それじゃあ竹刀を・・・」
「俺は無手でいいよ。それじゃあ来なよ」
俺は無手で構える。
「珠美を甘く見すぎですぞ。行きます!」
脇山さんは正眼から大上段に振りかぶり打ち込んで来た。
俺は無刀取りで竹刀を掴む。
さらに脇山さんの勢いを利用して竹刀を奪う。
「ほい。俺の勝ち」
皆が呆然とした顔をした。
「凄え・・・」
「カッコイイ・・・」
「兄さん、凄いです・・・」
「参りました」
脇山さんが呟く。
「いい太刀筋だったよ。これからも精進するように」
俺は脇山さんにフォローを入れておく。
「なあ、今のどうやったら出来んだ?」
「そうだなあ。剣の練習もそうだが、座禅も必須だな」
「座禅?」
「ああ。柳生新陰流に座禅は必須だからな。
最終目標の水月に到達するには避けて通れない道だ」
「いやあ、珠美もまだまだですな」
「俺もまだまだだよ。剣の道は奥が深い」
「また一手指南してもらってもいいですか?」
「俺はいつでも構わないよ」
脇山さんはお礼を言って帰っていった。
「みんなこの後宣材写真撮るぞ」
「兄さんがメイクとかするんですか?」
「出来なくはないが腕が並みだからな。プロがやるよ」
それを聞いてありすがくすりと笑う。
「? どうかしたか?」
「いえ、兄さんも出来ないことがあるんだなって」
「そりゃあ人間だからね。出来ないこともあるさ」
「衣装はどんなのだ? まさかフリフリじゃねえだろうな?」
「各自のイメージに合わせてあるからね。晴の衣装は元気なイメージだよ」
「そっか。それを聞いて安心したぜ」
「でも今後の仕事では着ることもあるだろうから、覚悟はしておくように」
「うへえ、まじかあ・・・」
晴はげんなりした表情を浮かべた。
撮影スタジオに入ると、まだその前の人の撮影が終わっていないようだ。
「橘さんすいません。ちょっと撮影が上手くいかなくて」
カメラマンさんが謝りに来た。
「お気になさらず。予定通りにいかないこともよくあることです」
「すいません橘さん。私、鷺沢文香のプロデューサーの葛城です」
若い女性が俺に謝罪する。
「いえいえ、お気になさらず」
「文香の笑顔がぎこちなくて・・・なかなか上手く笑えないみたいで」
「緊張しているんですね・・・うーん」
鷺沢さんがアイドルをするというのは聞いていたが、ここでつまずくか・・・。
「ちょっとリラックスさせましょうか。鷺沢さんちょっとこっちへ」
「あ、橘さん」
「両手を前に出して」
「? はい」
鷺沢さんの両手に俺の両手を重ねる。
そして俺は魔力を鷺沢さんとの間で循環させる。
すると徐々に鷺沢さんの緊張がほどけていく。
「リラックス出来たかな?」
「・・・はい。今のは一体?」
「秘密。さっ、撮影を続けて」
「はい。ありがとうございます」
鷺沢さんは撮影に戻っていった。
鷺沢さんの撮影が終わり、ありす達の番となった。
撮影は順調に行われてゆく。
撮影後、写真を見せてもらった。
流石はプロ。ありす達の魅力を引き立てていた。
「これを生かすも殺すも俺次第か」
仕事を取れるようにしないとな。