仄暗い深海からのヴィランコレクション   作:ターンアウトエンド

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見切り発車でGo!


プロローグ

諸兄らは『生まれ変わり』を信じるか?

 

死んだのち、新たな命として生まれ直す考えだが。

仏教か何かの考え方で、たまに前世の記憶を引き継ぐこともあると言う。

 

かつては興味もなかった。と言うか、死ねばそれまでとしか思ってなかった。

大抵の人間はそうであろう。

 

まぁ、生まれ変わって新しい人生を謳歌したいと思うのは誰でもあるかもしれんが。

 

さて、実のところ、私はどうやら生まれ変わったようだ。

しかも前世の記憶をハッキリと保持している。

生まれてから段々と思い出したので、いまは二次成長期手前といったところだが、ようやく自分なりに心の整理がつけたものだ。

 

というのも、最初はテレビで見た映像を夢で見て、それを実際に経験したものと勘違いしているのだろう、と、自分で思い込んでいた。

その方が()()()からな。

 

しかし成長するにしたがって、これなんかおかしいぞ?と思うようになってきた。

えらくハッキリと記憶している上、関連した項目も普通に思い出せるので、子供ながらに達観したものの見方をするようになったと思う。

 

それに、複数有ったのだ。自認を阻害する要因が。

 

『ふぁんたじい』なる世界観を連想してほしい。

いや、私とて、前世では大いにサブカルチャーに浸ったものだ。様々な世界観のふぁんたじいを知り、拙い創造性を膨らましたのも気恥ずかしい思い出だ。

では、自ら過ごす世界が、そのふぁんたじいの中であるならば、逆説的に。あの面白味の薄い平和で創造性に溢れた世界もまた、ふぁんたじいなのだと。

 

回りくどくなったが、シンプルに言うと、親に角が生えてるのだ。

 

角だ。

 

一応、父親だけなのだが、まだ記憶が曖昧な幼少期はその角にぶら下がるのが好きだった。

 

父曰く、個性が『鬼』なのだと。確かに個性的だ。鬼と言われれば納得できる。別にそれだけが父の()()でもあるまいに、と思ったが、今にして思えば私の認識する個性は、父のそれとはずれていたのだと思う。

 

あと、母が水の上を歩ける。

 

水の、上を、歩けるのだ。

 

種も仕掛けもなかった。いや、もしかしたら認識できないだけで種は有るのかもしれんが、少なくても騙してはいないと思う。それが母の『個性』だそうだ。

 

個性的過ぎやろ。

 

最初に市民プールで見たときは、あぁ、そう言うものなんだと水面に一歩踏み出し、見事一瞬で水中に没したのはハッキリと記憶している。

鼻の穴の中にカルキ臭いプールの水が入り込み、鼻水駄々漏れで踞ったのも覚えているし、そんな私を見た弟がギャン泣きしてるのも、キチンと記憶している。

一番覚えているのは、私を水から引きずり出したあとに腹を抱えて爆笑している母の姿であるが。

今でもしっかり覚えている。当時は、一週間母と口を利かなかった。最終的に、母がギャン泣きし、父の仲介で和解したが。

 

とまあ、普段接する家族だけでこれだ。

 

これに加えて、テレビではヒーローがどうのだとか、個性犯罪がどうのだとか何ともアメコミの世界が広がっているではないか。

マントをはためかせたタイツ姿の原色男が、市民に歓喜で送り出される姿などを見るたびに、私はこいつらとは相容れない、と子供ながらに思ったものだ。

 

そして、極めつけがアレだ。

 

テレビの画面一杯に表示された、なんか濃い作画っぽい大男。筋肉だるま。ミスターアメリカン。

 

それを見た瞬間 、

 

『あ、これヒロアカやん』

 

と呟いてしまった。

その時は母が台所にいて、ん?と聞き返してきたが誤魔化した。

 

『僕のヒーローアカデミア』

私が前の人生、前世の日本で刊行されていた人気コミックのタイトルだ。

その例に漏れず、私も同作品を少なからず嗜んでいた。

 

“個性”と言う『異能』が世界人口の八割に発現し、増加する個性犯罪者(ヴィラン)を職業『ヒーロー』が取り締まると言う、アメコミがそのまま現実となったような時代。

そんな時代に、ヒーローに憧れる“無個性”の少年が『特別な力』を受け継ぎ、次代のヒーローの柱を目指す現代的熱血系英雄譚と表現するような、そんな物語。

 

普通に考えれば、漫画の世界に転生したなんて、妄想だけの産物と一笑に付せた話だろうに。

 

あの筋肉ダルマ、一人だけアメコミ男、ヒーローの中のヒーロー。

 

『オールマイト』

 

物語のキーパーソンである彼が、テレビの中で活躍していたのだ。

アニメや映画などではなく、ニュースで、だ。

 

もう、一度現実として認識すれば、後は早かった。

 

個性と表現された超常能力。それを使用した犯罪者ヴィランと取り締まるヒーロー。そして、ミスターアメリカン。

 

夢の中の漫画に現実を投影している、と、思い込みたかった。

 

だって、『僕のヒーローアカデミア』って、意外とハードモードやん。割りとアルティメットに足突っ込んだハードな世界やん?

今は未だ起きて無いけど、これから凶悪犯罪が連発してヤバイやつらが脱獄する未来なんよ?

 

とまぁ、割りと現実逃避のために自己認識が遅れたのは、自分の心の中だけの秘密である。

 

ちなみに、この世界がヒロアカのそれだと認識した後、今がどの年代か調べた。

もしかしたら今この瞬間にも原作が進んでいるかも知れないし、もしかしたら主人公と同年代で巻き込まれる可能性も少なからず有るかもしれない。

いや、こんな漫画の中に入り込むような生まれ変わりを果たしたのだ、因果として関わる可能性は強いと考えた、が。

 

どうも、あの主人公がヒーローに憧れる切っ掛けとなった映像、あのミスターアメリカンの『私が来たっ!』動画が、どこを探しても見つからんのだ。

と言うか、ミスターアメリカンが超元気。多分怪我してない。

結果として、恐らく私は主人公の年代よりも上で、私の弟の世代が原作時期なのかもしれないと考えた。

 

多分、合っていると思う。

感覚的にそう思う。それは私の『個性』にも関わって来るものだ。

 

私の個性は父のような体質的なものと言うよりも、発動型に近いものに落ち着いた。

つまり、鬼になろうと思えばなれるのだ。で、その時水の上も歩ける。

個性判断に立ち会った医者が言うには、混ざった結果どちらも引き継ぎ、そのどちらも中途半端に発現してしまったとのことだった。

 

私がそうなるように誘導したのだけどね?

 

下手に強力な個性だと認識されるのも問題だ。個人情報の扱いなんて、グーグルにリンクしてる個人ブログ並みにプライバシーのプの字もない世界だ。いらん厄介を呼ぶ可能性もある。

 

故に、力の強化も、水上歩行の発動時間も、父と母の下位互換に納めたのだ。我ながら良い仕事である。

だが実際の能力は中々の『個性』だ。

発現が確認されて早々に能力の把握に勤めたが、未だ限界が見えない。

鬼らしい筋力というか、パワーだけでもぶっ飛んでいる。車は持てた。トラックや、ダンプもいける。コンクリは砂みたいになるし、鉄もやろうと思えば粘土に成る。まるで数万馬力を人の姿に落とし込んだようだ(白目)

水上歩行は、プラスで滑ることも出来るようになった。人が走る程度のスピードが限界だが、鍛えれば伸びるという確信もある。

そして追加の能力で、勘が良い。

スクラッチ宝くじで、あ、これ当たりかも、と分かるくらいに勘が良い。母がケーキを買ってくるタイミングが分かるし、父がお菓子を隠している場所も分かる。弟が皿を割ったのをいの一番に気付いたのもそうだ。

それはレーダーのように、周りの状況を把握することの延長でもあるようだ。

未だこれ等の能力の限界は見えない。だが把握しないと怖い。隠された能力でもありそうだ。

 

 

 

自己把握も含め、そういった必要に迫られた努力をすることで、現実逃避をしていたのは否めない(二度目)

 

いや、考えても見ていただきたい。

 

水の上に立てる、鬼なのだ。

 

しかも角が生えている。片方だけ。

 

そして、極めつけが、()()()()()()

将来はロングドレスが似合いそうである。

 

 

まぁ、前世男で、女の子に生まれ変わった身としては、性自認など特に気にしてもいないのでもう良いのだけど。

 

名前がね、私『みずき』って言うの。

『水』に『鬼』って書いて、水鬼(みずき)

 

名字が『(いくさ)

 

 

うん、そうだね。(ふね)が無いね。

 

 

 

 

世界観違く無い!???

 

どっちかって言うとヴィラン寄りじゃん!?

 

それに艤装無いじゃん!

 

 

 

 

 

 

そんな感じで、薄々そうじゃないかな、と思ってた部分を個性診断でハッキリ自覚したわけで。

余談だが、個性診断の方法だが、医者の個性である嘘がわかるという能力を応用して、子供から体験や感覚を聞き出し、医者がそれに基づいて判断を下す形式らしかった。

なので過小申告は難しくはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、なぜ今そんな回顧をしていたのかというと。

 

 

 

休日の朝、何気なく見た私の足元、影から顔を出している、黒い『ナマモノ』と言えるような物体を認識したからで。

 

 

 

 

 

おまえ、ちっちゃ過ぎない?

 

 




頑張って連載出来るように、祈ります(爆)
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