仄暗い深海からのヴィランコレクション   作:ターンアウトエンド

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今はまだスムーズ。書き貯めはしてないので更新頻度:気分次第となります。


第一話

子供と言えど、中学生にもなれば恋愛や将来の方向性など、周りに目を向けるように為る。

それを成長と云う。

 

「ねぇねぇ、ミズキはどうするの?」

 

我が家に一番近い中学に入って早1ヶ月。

子供の成長とは早いもので。今まで駆けっこやらサッカーなどで男女問わず遊んでいたものが、拙いながらも男と女の装いを形成し出している。

 

「ねえってば」

 

この身で言えば、二次成長期は凄まじいの一言だろう。

可愛らしい少女(自賛)だったものが、たった数年で色香を放つ美女手前に成るのだから。

女の子の成長は早いと云うが、私はその中でもなお早い部類らしかった。

前世、女の子のコミュニティでは異端は排除されると云うから、少し警戒したものだ。悪質ないじめなどは中学から始まるという。故にもしかすれば、友人など出来ないのではないかと。

だがどうやら、突き抜けた異端はその限りではないようだ。

 

「無視しないでよぉ」

 

してないしてない。

進路だろう?未だ特に決めてないんだよ。

 

「えー、ヒーローとかならないの?」

 

ヒーロー?

興味ないなぁ。

 

目の前で可愛らしく顔を歪めているのは、クラスメイトの女の子だ。名前はなんだったかなぁ。

髪が鮮やかな緑色と言う如何にもアニメの住人と言わんばかりの配色をしてるんだが、顔立ちとのバランスが取れていて違和感はない。元気印の娘だなぁ。

 

実はこうやって話し掛けられるのは珍しくない。

寧ろ、話題が出来ればすぐにでも寄ってきて女の子の環が出来る。私の周りで。

 

なんか妙に敬われているというか、目上のように置かれているというか。

矛盾する例えだが、同級生の先輩みたいな立ち位置になっている。なぜだ。

 

(いくさ)さんは成りたいものがあるのですか?」

 

ん?あぁ、ミズキで良いよ、戦だと可愛くないだろう?

 

「あ、ありがとうございます、ミズキさん」

 

今度は近くの席に座っていた子が話に入ってくる。

黒髪ロングの将来が楽しみになるような娘だ。と言うか、この世界顔面偏差値高いな。

 

ん。で、なりたいものだっけ?今はないかなぁ。

開発とかはしてみたいけど。

 

「ヒーローのサポートアイテムとかでしょうか?」

 

「あ、開発も面白そう!」

 

それに限らないかなぁ。

ヒーロー関係は充実してるけど、それ以外って結構手が入ってない分野とかもあるし。

隙間産業的な?

 

「凄いです、私、そこまでリサーチはしてませんでした…」

 

「へー、でも私はヒーローに成りたいかなぁ」

 

良いんじゃないか?

私は戦うのが苦手なだけで、ヒーロー自体はすごいと思うよ。

 

「私も、もう少し調べてみたいと思います」

 

「ミズキありがと!雄英目指してみようかなぁ」

 

おう、応援するよ。

私も弟がヒーローに憧れているから、色々と調べてみるよ。

 

戦うのが苦手なのは嘘ではない。

正確に言えば、ヒーローとしては戦うのが、だが。

故にヒーローはすごいと思う。あれほど制限して、自ら不利な条件下で戦うなど、私には出来ない。

 

「あら?」

 

黒髪ロングの娘が、地面に落ちていた何かを拾い上げる。

…おい、それは、

 

ごめん、私が()()落としたみたいだ。

 

 

「ミズキさんのでしたの?あれ、これ意外と重いですね」

 

 

まぁ金属製だし。

拾ってくれてありがとう。

 

「なにこれ、ピンポン玉?」

 

「これで卓球をしたら危ないと思うのですが」

 

いやぁ、それは…

アレだよ、防犯ブザー。ほら、こうやって、

 

黒髪ロングの娘から、卓球ボールサイズのそれを受けとると、一ヶ所だけ存在する開口部を押し込んだ。

 

ほら、鳴れよ。オラあくしろよ

 

び、びー、びぃー、びー

 

「…弱々しいですのね」

 

「防犯ブザーとしては使えなくない?」

 

まぁ自作の試作品だし。

投げて使うのも考えてたけど、要検討かなぁ。

 

「まぁ、ミズキさんが作られたんですか?凄いです」

 

「自分で作ったんだ!凄いじゃん!」

 

まだまだだよ。

あ、ほら、先生来たよ。

 

「あ、お話ありがとうございます、ミズキさん。ではまた」

 

「ミズキもリカちゃんもまたねー」

 

「はい、早苗さんもまた」

 

黒髪ロングの娘がリカちゃんで、元気な緑髪の娘が早苗ちゃんね。ぼくおぼえた。

 

 

 

で、オメェだオメェ。何やってんだオラ。

 

私はそのピンポン玉を睨み付ける。

本来は此処に無い筈のそれ。この世界でも、知ってるやつは居ないであろう、存在。

 

なに?あるじの学校見てみたかった?

だったら影の中からで十分だろうが。なんでワザワザ出てきてんだよ。

 

あるじに友達がいたのが嬉しくて?

余計なお世話だコラ。ったく、勝手に動くなよ。お前らみたいなの、この世界に無いんだからさぁ。

 

それは知る人が見れば、すぐわかるだろう。

サイズは違えど、機能はなんの遜色もない。

 

浮遊要塞

 

今はピンポン玉サイズの金属球だが、本来のサイズは直径1メートル程になる。

中学に入る少し前の、()()との邂逅。それから続く、私の新たな能力。

 

まぁ、そんなに畏まった出会いでは無かったんだけどね。

 

 

 

 

 

 

ある休日の、穏やかな朝。

私は習い事などはやってないから、休日の朝は昼近くまで眠ることにしている。父も母もそこは緩く、朝ごはんを抜いてでも二度寝を楽しませてもらっている。

大抵は10時頃に起きて遅い朝ごはんを食べるのが、休日の私のルーティンとも言える。

 

そんな、穏やかな筈の朝。

 

ベッドから足を下ろした先に、違和感を感じて視線をやると。

 

 

真っ黒の、何かがいた。

 

 

 

地面から顔だけ出していた『それ』は、わたしが気付くとヨッコイショとばかりに這い出してきた。

 

うぉっ、と小さく驚くが、それが危ないものではないと感覚でわかる。

寧ろ身近に感じるそれを、よく観察する。

 

と言うか、ぱっと見ただけで直ぐ何かわかった。

 

これ艤装じゃん。

 

 

…いや、小さ過ぎねぇか?

 

 

どう見ても、30センチ位しかない。

私の足のサイズが20センチちょいだから、少し大きいくらいだ。

質感は金属っぽくは無く、どちらかと言えば桃の表面みたいに、しっとりとした光沢を返している。

 

頭は、二つ。

 

いやね、名前からしてそうだろうとは思っていたけど、艤装を見れば確信に変わる。

 

成る程、私は戦艦水鬼で、お前はその艤装なのか。そうかー

 

『戦艦水鬼』

 

これもまた、前世のサブカルチャーから来た知識のひとつ。

 

前世では、携帯電話のアプリで行うゲームが流行っていた。

その内のひとつに、『艦隊これくしょん』と言う、世界大戦時の戦闘艦を美少女にして楽しむゲームがあったのだ。

そして、作中の敵キャラクターのボス格に、この『戦艦水鬼』が居た。

それはもう、数多くの美少女をボコボコのけちょんけちょんにして来たボスで、人によってはトラウマに為っている提督も居るらしい。

あ、提督というのはゲームプレイヤーのことを指す。

 

つまり、私はゲームの敵キャラクターに生まれ変わったわけだ。

まぁ、まんまゲームのキャラという訳じゃ無いみたいだし、そもそも戦艦水鬼は人間じゃ無いし。

 

と、軽く考えていた時代も有りました。

 

名前と身体能力だけ似てて、方向性がそんな感じのなんちゃって深海棲艦(敵の種族)だろうと、そう、気楽に構えていたのに。

 

私がチベットスナギツネを彷彿とさせる視線で()()を見つめる。

…艤装がなんかもじもじしとるな。

 

『艤装』

それは艦隊これくしょんのキャラクターが装備する、船の一部を模した兵装のことだ。

これは敵の種族である深海棲艦も変わらない。

 

そして目の前の()()は『戦艦水鬼』の艤装で、

つまり、私の側に、艤装があるということは。

 

そう言うことである。

 

 

見れば全体的にデフォルメされているらしく、肩の主砲もスッゴい小さくなっているし、ムキムキだった体つきも皮下脂肪が乗ってるかのように丸っこい。

 

悔しいが、ちょっと可愛い。

 

しかし、よくわからんイキモノだ。ナマモノか。

艦娘的に言えば妖精と艤装が合わさったモノなのかもしれんな。

妖精は主人公側のサポートキャラクターになる。

 

…そも深海棲艦に関してのロジスティクスは明らかにされていなかった。

その辺りはどうなるんだろうか?

私のカロリーを燃料にするのか?

 

そも個性がナマモノを生むって有りなのか?

いや、漫画でも主要キャラにいたな。常闇、だったか?あれは影か。深層心理がどうこうとかだったか?

()()とは別モンのようにも思えるが。

 

これ、飼うのか?

 

母の許可下りるかな?よくわからんイキモノだし。

捨ててこいって言われたらどうしようか。

 

ん?

 

 

今度は両手を祈る様に合わせて、プルプル震え始めた。

 

その上、私の頭に何かが流れ込んでくる。

これは感情…?

それだけじゃない、意思や気持ちといったモノもだ。

 

 

お前か?

 

視線をそれに移すと、首を縦に何度も振る。

 

なに、捨てないで?

いや、捨てる気はないが、母に何と説明したものかと思っただけだ。

 

ん?隠れられるから?何処にだ。

影、お前影に入れるのか?

 

 

それは頷くと、私の足元に近づいた。

そしてそれの影が私の影に伸びていき、くっついた。

特に感触もないが、ひとりでに影が動くのは気味悪いな。

それは私を一瞥すると、ゆっくり地面に沈んでいく。

いや、これは影の中に沈んでいるのか。

 

最後に、ちゃぽん、と効果音が着きそうな感じで、それは影の中はと消えていった。

 

ただ、私の影の中に()()というのは解る。

五感以外の何かが、感覚として理解できている。

 

未だこの体と、この個性の能力を把握できていないな。

 

影の中から、()()が意思を飛ばして来た。

 

 

何々、出てきてもいいかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

駄目だ。私は今から飯を食うのだ。

 

 

そう言葉を送ると、向こうでシュン、と落ち込んだのが雰囲気でわかった。

その姿を想像して、少し笑ってしまったのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

その日は家族全員外出している様だった。

父と母は仕事で、弟は友達のとこかな?

 

用意されていたサンドイッチを頬張り、テレビを見て時間を過ごしていると、ふとなにかに呼ばれたような気がした。

 

ん?あぁ、お前か。何だって?話したい?

そういえばそうだったな。

 

私の艤装である()()と、後で話そうと約束したのだった。

 

で、なんだ?

 

ふむ、私の役に立ちたい?

どうやって?何が出来るんだ?

 

大きくなれる、と。

どのくらい?

20フィート?メートル法で言えメートル法で。

 

6メートルか。でかいな。

私が良いと言うとき以外、でかくなるの禁止な。

 

なんでーじゃねぇ、目立つじゃねぇか。駄目だ。

つか、小さいままだと不都合あるのか?

 

無い、なら良いじゃねぇか。小さいままで。

まぁ、たまには大きくしてやるさ。場所を選んでな。

確認しないと怖いしな。

 

良かったよ。お前を大きくするために育てなきゃいけないのかと思ってたから。

 

ってか、そのエネルギーどっから来てんの?

 

海?海ってあの海?お前海からエネルギー貰ってんの?無限じゃんそれ。ヤバイな。

 

主砲も撃てるよ?あ、そう。でも私は進んで戦闘する気ねえから。

 

何でって?

 

 

個人特定されたら面倒臭ぇからだよ。

 

こと組織に属するのならば悪くない、と思う。

だがな、ヒーロー、ヴィラン共に基本は個人か、多くても小隊以下の人数でしか動いとらん。

 

単位が小さ過ぎる活動はな、幾らでも対処できるんだよ。

私がいくら肉体的に優れていようが、お前を使って強力な攻撃力を持とうが、個人ならいつかは攻略される。

 

方法を問わなければ、な。

非人道的な手段ならば、私にも弱点は出来るのさ。

 

ヒーローであれヴィランであれ、対応するなら個人が特定されない方法を確立してからになるな。

 

ん、何、遠隔でも動けると。ほぅ、詳しく聞こうか。

 

 

あと何?

 

 

 

 

…浮遊要塞?

 

 

 

え、作れんの、お前?

 

 

 

 

 

 

 

 




つづく、かも?
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