仄暗い深海からのヴィランコレクション 作:ターンアウトエンド
これで序章は終わりです。閑話を二つ入れた後は、第一部になる、のでしょうか?
「ミズキ、怪我はないか?」
「ミズキちゃん!何かされてないわよね!?」
「ねぇちゃん、ごめん、おれぇ!」
まったまった、ったく、考え事もさせてくれねぇなこの家族は。
あん?にやけてるって?
当たり前だろぅが。
おいダイソン、後で
おう。
大丈夫だって。
怪我もしてないし、ただの検査入院だから。
リュー坊も泣くなよ、ってか何で泣いてんだ?
「だって、だって、おれがまもるっていったのにぃ、いったのにぃぃ!」
あー泣くな泣くな。
大丈夫だって。ほら、ねぇちゃん無事だろ?
「うん、だけどぉ」
だけどもかしこもねえよ。
無事だった。それで良いじゃねぇか。幸運だったんだよ。
「うん、ねぇちゃん」
ん?
「おれ、強くなるよ」
おう。おう?
「ねぇちゃん守れるくらい、強くなるよ」
そうか。
「ねぇちゃん、おれ、わかったんだ」
ん?
「いつも、来てほしい時にオールマイトが助けてくれる訳じゃねぇって」
あぁ、そうだな。オールマイトだって手は二本しか無いからな。
「だから、だから、俺が強くなって、ねぇちゃんのピンチに駆け付けられるようになるから」
あぁ。龍鬼なら、絶対そうなれるさ。
あー、決意が宿ったつぶらな瞳が眩しいわ。
男の子から一歩、男への道を歩み出したってか?
可愛い奴だなぁお前は。
リュー坊の頭を抱えて撫で回しながら、横目で母を見ると。
母が看護婦さんに深刻そうに説明を受けていた。
あぁん?なんか勘違いが伝染してるなぁ。
母は自らの身を抱きながら、何かを強く堪えるかのように、聞いていた。
そのそばで父も眉間に6個くらい深めのしわを作っている。
面倒な誤解は追々解けばいいか。
取り敢えず、今は弟を可愛がり倒しとこう。
あの後、父は警察の人と少し話して、弟を連れて帰っていった。
母は残って泊まるようだ。
夜、ベッドでテレビを見ながらバージョンアップした能力を確認していると、肩を寄せあっていた母が諭すように話し掛けてきた。
「ねぇ、ミズキちゃん。本当に大丈夫?」
ほ?何が?
体調は問題無いけど。
流石にぼーッとしていたので変な声が出たが、
真剣な声色の母の語りに、意識を傾けた。
「本当に、何もされなかったの?」
いや、本当に何もされてないよ。
もう、段々と居たたまれなくなってきたから、明日婦人科受けても良いけど…
「ううん、そこまで言うのなら良いんだけど…」
どうしたのさ?
看護婦さんに何て言われたの?
「ミズキちゃんが遭遇したヴィラン、そう言う事例も多かったらしくて、被害に遭った女性が自殺したことも…」
あぁ、被害者が自殺って、そうなんか。
大丈夫。私は大丈夫だから。
「でも、警察の人が言ってた、熱を認識する能力があるから人を見つけるのが得意だって言うからっ」
へぇ、そんな能力有ったんだ、
「ミズキちゃん?」
あぁ、大丈夫。
いや、だとしてもあの状況じゃ見つからないよ。
幾らヒトの熱を探知出来ても、あの時は私の居たバスの方が熱かったんだし。
あの状況で私を見つけられたら、それはもう別の個性だよ。
私は母に諭すように、イメージ聖母で語りかけた。
あまり心配を掛けるのは心苦しいからな。
進んで看護婦さんの誤解を解かない辺り、性格的にクズ寄りの自覚は有る。
お?何か言いたい事あんのか?
おぅ、そうだな、学習したじゃねぇか?浮遊要塞クン
翌日、父の車で帰ることとなった。
看護婦さんは、最後まで、
「辛いと思ったら、何時でも相談に乗るからね?」
と優しい声色で手を握ってきた。
少し引いた私は悪くないと思う。
母もちょっと苦笑いしてたし。
まぁエエか。
車の中で、父と母、そして私の日常の会話が交わされる。
ただ、妙に父の言葉が固いのは何故だろうか。
「なぁミズキ」
んー?なんよ。
「ミズキは本当にその炎を使うヴィランがどこ行ったか、分からないんだよな?」
…引っ掛かる物言いである。
私の勘も、何かあるとは囁いているものの、明確な悪意や私にとって都合が悪くなる感覚ではない。
そーよ。見てないからねぇ。
分からん。
「…そうか」
「どうしたのあなた?」
「ん、いや、それだけあのヴィランは危険だと思ってな」
有名だったの?
「ん?あぁ、お前がまだ小さい頃、龍鬼が生まれてすぐの頃かな。全国紙で暫く騒がれてたよ。家族や親戚を含めた、かなりの人数が被害に遭ったらしい」
ヤバイね。
「あぁ、そんな凶悪ヴィランにうちの娘が被害に遭ったなんて聞いたからもう父さん生きた心地しなかったよ」
「私もよ、はぁ」
未だ二人してショックを隠しきれないようだ。
一番の被害者であるはずの私が一番平然としてるんだからなぁ、
儘ならないもんだねぇ
え、お前がいうなって?うるせぇよ
家族で晩御飯の買い出しをして家に戻ると、駐車場で父に声を掛けられた。
「ミズキ、今からちょっとドライブしないか?」
「ちょっとあなた、もうすぐ晩御飯作るんだけど」
「そんなに時間は掛けないさ」
何となく、私の勘がこれは受けた方がいいと囁く。
んー、父の硬さの原因もわかるかなぁ?
おっけー。
母さん晩御飯楽しみにしてる。
「もう、あまり遅いと怒るからね?」
「ん、わかった」
ういういー。
私の家から、車で10分のところに海岸線を走る道路がある。
デートスポットにもなりそうだけど、今の時代人気のないところは危ないからなぁ。
父が海岸線を横目に見ながら車を走らせていると、意を決したのか話し出した。
「父さんな、父さんの一族の中でも、一番個性が合ってるらしいんだ」
ふーん、凄いね。
「父さんの個性分かるだろ?」
もちろん。
『鬼』でしょ?
「そうだ。でな、父さんは他の、似たような個性を持つ連中よりも、かなり鬼に近いんだと、昔父さんの父さんに言われたんだよ」
爺ちゃんに?
爺ちゃんも子煩悩っぽいもんね。孫煩悩だし。
「あー、あれはもう血だなぁ」
成る程、父さんの爺ちゃん、つまり私にとって曾祖父も孫煩悩だったと。
爺ちゃんは田舎の白川郷みたいなとこに住んでるそれっぽい人だ。
それっぽいとは、顔も含めて仙人っぽい。
体格は父より一回りは小さいんだけど、何かよく分からん強者感があるじっさまである。
住んでるとこ違和感無いんだけど、移住したのはそんなに昔じゃないなんちゃって仙人な人だ。
余談だが、笑い方が父と爺ちゃんそっくりなのは、本人たちだけが知らなかったりする。
で爺ちゃんがなんだっけ?
「ん?いや、爺ちゃんは関係なくてな。んー、なぁミズキ、鬼の能力って、知ってるか?」
鬼の能力?
鬼の魔眼的な?
「いや違う。まぁはっきり言えば、鬼はな、嘘が判るんだ」
へーすごいじゃん。
ヤベェ能力。
ん?
「だからな、父さんも嘘が判るんだ」
…マジで?
「マジで」
ふ、ふ~ん、すごいねぇ。
「ミズキ」
う、うん?なにかなぁ父さん。
「あのヴィランは、何処に行ったんだ?」
車がゆっくりと止まる。
路肩は広く、父も運転は慎重にやっていたけど、どうやら本格的に私を問い詰めるつもりらしい。
んー、どうしようか。
この場合二択だなぁ。
しらばっくれるか、話せるとこは話すか。
まぁ、父の雰囲気的に、前者は無理そうだけど。
「前にな、父さんミズキがどれだけ強いか聞いたことあるんだが、覚えているか?」
いや全く。
「だろうなぁ。父さんも何気なく聞いたんだ。ミズキはもしかして父さんより強いんじゃないか、ってな」
な、成る程…
「最初は子供に良くある、根拠の無い自信の類いかと思ったんだけどな。昔っからミズキは頭が良かっただろう?何かしら考えって言うか、理由があるように思えててな」
そ、そうなんですかぁ…
「そのあとも流れでな、力を隠してるんじゃないか?とも聞いたんだ。上手く誤魔化してたみたいだが、この鬼の能力と合わせて考えてみると、ミズキはミズキなりの考えがあって、自分の実力を隠しているんだろうな、と思ったんだ」
うぉぉ、そうですかぁ…
「…なぁミズキ、本当のところ、教えてくれないか?」
んー…
まぁ、そんじゃぁ仕方無いかなぁ。
んー、父さん。
「なんだ?」
全ては言いたくない。それはOK?
「あぁ、言えることだけで構わない」
ん、じゃあさ、取り敢えずこれだけは確定してるよ。
あのヴィランは、二度と、誰も傷つけられないよ。
「…それはどういう意味」
だから、二度と、被害者は生まれない。
それだけだよ。
「…ミズキ、それは」
うん。アレは危ない。もしかしたら成長したリュー坊なら、逮捕できるかもしれないけどね。今はダメだ。
本当に、家族の中で出会ったのが私で良かったよ。
家族の誰かが傷つけられたなら、もう形振り構ってなかっただろうからね。
とりあえず、もう悪さは出来ないよ、彼は。
「そうか」
私が嫌いになった?
「それはない!父さんがミズキを嫌うことなんて、絶対にない!もし、世界がミズキの敵になるとしても、父さんはミズキの味方だ!」
クッサイ台詞だねぇ。
「わかってる!言うなょ…でも父さん本気だぞ?」
それは分かるよ。
私にも父さん程とはいかないけど、似た能力あるし。
ただなぁ、そうなってほしくはないよね。
「まぁ、そりゃそうだ」
だってさ、そうなったら世界を滅ぼさなくちゃいけなくなるじゃん?
それは、面倒そうだ
「みずき?」
ん?
「あ、いや、あ、そうだ、ミズキはそれだけの個性でさ、ヒーローになろうとは思わなかったのか?」
えー、今さらそれ?
「ミズキの、戦いが嫌いと言うのは本当みたいなんだが、戦いが苦手、と言うのは、嘘だろう?」
あー、そうだねぇ。
戦うことで自分の情報が知られるのは、嫌だからねぇ。
「それは、父さんが前に言った、公安委員会のことが有ったからか?」
いやいや、まぁ、確かに公安委員会も信用出来ないけどね。
元々、歪な組織なのは分かっていたし。
「歪?確かにあまり表に出てこないから、どう言った組織なのか今一分からんではあるよなぁ」
公安委員会もなに考えているか分からないけど、その仕組みが気にくわないかな。
「仕組み?」
うん。
だってさ、今の仕組みって、ヒーローになれなかったらヴィランになる様に成ってるんだよね。
「…どう言うことだ?ヴィランになる?」
うん。
もう、個性が人の人格に影響を与えるのは、個性に接してる人たちの間じゃ常識じゃん?
「そうだな。父さん達鬼の系譜も、曲がったことが嫌いだったり、イタズラが好きだったり、振り回されてるヤツもいる」
そう。
水系統が穏やかだったり、爆破系統が怒りっぽかったり。
個性は、どうしても人のあり方に作用してくる。
「あぁ、だから周りのフォローが大切なんだな」
してくれれば、ね。
理解のある親や大人ばかりじゃないでしょ。特にこんなご時世さ。
そんな中で、攻撃傾向のある個性だったり、モラルに対して真っ向からぶつかる個性だったり。
そんな人だっているわけじゃん?
「まぁ、そうだな」
そう言う人が、ヒーローになれれば良いけど、成れなかったら?
自分の個性に突き動かされる衝動を抱えたまま、個性を抑圧して過ごすしかないでしょ?
社会が受け止めてくれるんなら問題ないけど、そうじゃないでしょ。
「いや、それは、カウンセリング施設だってあるし」
カウンセリングは対症療法でしかないよ。
それにさ、今の社会じゃ、ヒーロー賛美でしょ?
ヒーローには悪役が要る。
カウンセリングが必要な人って、社会の外れ者ってことじゃん?
色眼鏡で見る下地が出来てるじゃん。
だから皆、ヴィランっぽいって人を、ヴィランと見る。
そう、今の社会の構造が、ヴィランを生むんだよね。
“ヒーローが居る限り”
知ってる?それってさ、世間一般で、
『マッチポンプ』って言うんだってさ。
だから私は、ヒーローにならない。
ただね、この社会を変革するつもりもないし、現状を訴える気もないよ。
私としては特に不満はないからね。
「…ミズキは頭がいいんだなぁ」
そこぉ!?
まぁ良いけどさ。
理由なら他にもあるよ?
何で公安委員会がそんなの放置してるのー?だとか。
政府の高々一部署であるはずの公安委員会がそんな権限持ってるのー?だとか。
今のヒーロー制度って見方に寄っちゃ州軍、もしくは民兵じゃん、てのもあるし。
地方の独自裁量権が強すぎて危なくないの?とか。
今のこの国の在り方を考えるなら、安全保障はグダグダだよ。
ベネズエラ化するまであと少しじゃん。切っ掛けがあれば、一瞬だろうね。
「べ、ベネズエラ?どこだっけ…」
話が飛んだけど、
私がヒーローにならないのはね、こんな情勢で、他人を救ってる暇は無いだろうなーって考えているのさ。
私は私の周りを守るために、ヒーローにはならないの。
それが、私の決意。
「そっか、ミズキはしっかりしてるなぁ」
家の男衆が夢見がちだからね。
代わりに女衆がしっかりするようになるんだよ。
「その通りだな」
だからほら、そろそろ怒られるよ。
「ん?なにがだ?」
晩御飯
「あっ」
冷めてないと良いなぁ
父さん、ありがとね?
「それほどでもない(キリッ」
キャラクター紹介memo
イクサミズキ
戦 水鬼
性格
・利己的かつ排他傾向有り
・共感生は高く、内面を悟らせないタイプ、友達は多いが親友は居ない系。
・精神耐性の高さは個性が関係しているが、彼女の個性にそういった機能は無い。
属性
・中庸
混沌かと思われがちだが、中庸。だが中庸なので、救うことにも、殺す事にも忌避感がない。
個性、能力
・個性:不明
詳しくは今後。
・能力:古武術。本編にそんなに関係してこないテイストみたいなもの。ただ、今後増える仲間が強いのは半分位これの所為。
スタイル
・身長は現在で160前後。結構でかい。スラッとしているため、目立つ。体重は調査員が死亡したらしい。
髪は黒髪のロング。さすがに足まではないが、背中の中程の髪をポニーテールでまとめている。たまにシニョン。
・D。何がとは言わない。
目はやや赤いが、たまに光ってる気がする。