仄暗い深海からのヴィランコレクション 作:ターンアウトエンド
箸休めに、どうぞ!
あの人も出るよ!
【洋上:巡視船わたみ作戦室】
「…これが回答だと?…現在の状況は?」
常備灯のみの明かりの中で、男は自身の副官に確認を促す。
男の海洋人生で、経験したことのない事案。
それは、対処を間違えば、多くの人の安全を脅かすかもしれない。
男の勘が、そのように囁く。
「15分毎に、三名のソナー員に確認をとらせました。GPSリンクも正常、誤差は基準内です」
無情にも告げられる事実。
それでも優秀な部下を疎むこともなく。
ただただ事態の素早い把握に務められたことを感心した。
「現在までの経緯を再確認する」
男が視線を巡らすと、副官と、戦術士官数名が慎重に頷いた。
「本日12:11時に、本局へと通報があった。内容は不審な爆発音」
男は資料に目を落とし、尚も続ける。
「通報は付近で漁をして居た横浜市登録の一般男性。通報を受けた保安庁の早期警戒機が13:15時点で付近を捜索し、異変を察知。該当の島の所在が確認できないと現場に最も近い我々に本局経由で要請が入る、この時点で14:21時。…改めてみると、かなり優秀だな」
「ですね。それだけ事態を重く見たのかと」
一呼吸入れ、自分達の調べた、不可思議な現状の把握に取りかかった。
「巡視船わたみが当該海域へ到着したのが16:18時、現場の海洋データをソナーヘリ、わたみの艦首海底ソナーで取得、随時本局へとデータ送信を行い、本局からの回答が現18:55時に受信」
男は、手に持った資料を、皆で囲んでいた海図台の上に放った。
態度にわずかばかりの苛立ちが混ざるのは、自覚していない焦りから来たものだった。
「外周2.61km、海抜は2メートル、当該名『魚民島』が水深8メートルまで消失した、と。中心部はクレーター状になっており、最深部では25メートルを超える…、なぁ、何を使えばこんなデカイ島を吹っ飛ばせるんだ?核か!?」
「艦長…」
「あぁ、すまん。分かってる。だがな、俺たちの知らない
「「分かります」」
艦長と呼ばれた男のやもすればヒステリックとも捉えられかねない悪態に、全員うなずきながら答えた。
海の男は、同じ船に乗れば思考も似てくる様だ。
「本局の分析官は、こんな事が出来る兵器は存在しないと抜かしやがった。まぁ、もっともだが、一番の可能性を省いて送ってきたのは許せん」
「“個性”ですか?」
「こんな非現実な結果を出せるのはそれくらいだろう」
「だがどんな個性だ?爆発音がしたというなら爆破系統の登録者を当たる必要が」
「いや、登録してる個性持ちでこれが出来るのか?キャパオーバーではないか」
「可能性の一つとして、海洋生物が個性を発現したと言うのも考えられ無くはない、だとしたら事だぞ」
「それはどうやって探せと言うんだ!」
「そんなことより、現実的に考えれば船で来たと考える方が」
「通報があってすぐ哨戒挺が出ている。船で出ていれば引っ掛かっている筈だ」
「無いから問題なんだろうが!」
「・・・静粛にっ!」
艦長の威厳か、よく通る声はその場で討議に没頭する者達の意識を、一瞬で纏めた。
「…結局、ここで議論しても始まらん!あと一時間もすれば、応援の『いくまる』と哨戒機の『ノーブルバード』がここに来るんだ。変化した海底図の素案を作っておけばデータ取りも早く済む。やるぞ!」
「「はっ!」」
「各員は持ち場に戻り、安全を確保しつつデータの収得に努めろ。いいか!安全の確保が最優先だ!もし不審な兆しを探知したら、直ぐ様戦闘状況へと移行する。各員は心して掛かれよ、では解散!」
作戦室から各々持ち場へ戻っていくわたみ士官達。
部屋を出る際に一人一人敬礼をする様が、これより死地へと赴く戦士の顔にも思える。
最後に艦長は、もう一度報告書のある台に視線を向けた。
「絶対見つけてやる…」
そう言うと艦長は、各員に指示を出すために求められる持ち場へと向かうのだった。
【都内某所】
「どう思われます?」
「個性だろうねぇ、でも…」
薄暗がりの中、独特の威圧感を纏った男が口の中で言葉を回す。
その部下らしき人物は、自らの主の独り言のような呟きに耳を欹てた。
…確かに、もしこの結果が真実ならば、欲しい個性だ。
実際に此れだけの事を成せるならば、ね。
「ブラフだと?」
思ってもみなかった主の意見に、考えを巡らせる男。
今は確かに何かあれば怪しむべきかもしれない。しかし
疑問を頭の中で廻しながら、主の言葉を待つ。
「さぁて、どうかな。うん、こう言ったことに向いた
主の言葉に記憶を掘り起こす。探すタイプの“個性”は数あれど、現状で使えそうなのは一人しか思い当たらなかった。
しかし、あれは…
「…お言葉ですが、流石に海は難しいかと。彼の“個性”は物の記憶を見るものでしたから」
「じゃあ」
と、ここで部屋の隅に置かれたクラシカルな電話が、二人の会話を遮った。
主に視線を向けると、此方に視線をくれないままに指を軽く回す。
出ろ、の合図だ。
「失礼します」
軽く会釈をして、電話へと向かった。
取った瞬間から、電話先の部下の声が室内に響く。
声量を考えない通話相手に顔をしかめつつ、男は内容の理解に努めた。
徐々に現状が把握される。
その電話は、彼らにとって良くない知らせだった。
男は自らの主に、今把握したことを伝えなければならない。
少し体が強張る。何故なら、自身の主は穏やかな口調に隠れているが、男とは価値観が異なるのだ。
今まで重用されてきた自負はある。
でも明日どうなるかなんて、分からないのだから。
意を決して、慎重にかつシンプルに。言葉を選んだ。
「…九州の工場が、摘発されたそうです」
「ふむ」
主の気配が重く、冷たいモノへと変わる。
それが殺気だと気付いたのは、主が口を開けようとしたときだった。
「確か、蔵持くんだったね?」
「彼も、逮捕されたと…」
主の手に力が入るのがわかった。握った肘掛けが悲鳴を上げている。
男は生きた心地がしないまま、己をこの状況に追い込んだ元凶の名を紡いだ。
「立ち入りの、主導は、その、オールマイトであったと…」
遂に主の力に耐えきれなくなったのか。肘掛けが音を立てて潰れていく。
固い、年代物のオークウッドが、まるで豆腐のように潰れる様に、なぜか自らが重なった。
そのまま怒りに任せるかと思いきや、手の力を抜いた主は、満面の笑みで虚空を見つめている。
今は、全身に鳥肌が立つのを、黙って堪え忍ぶ以外の方法は無い。男のその直感は、きっと正しい。
「ククク、やるじゃないかぁ、オールマイトォ!」
妙にテンションの上がっている主の気分を損ねないように、男は気配を出来るだけ消す。
あぁ、自分の将来のためにも手土産が要る。
男は、次点の千葉方面でやらかした炎熱系能力者を探すことを、静かに心に決めた。
キャラクター紹介memo②
イクサゼンキ
戦 善鬼
性格
・良い意味でも、悪い意味でも大雑把。
・日本渾沌期を経験しているので、悪意を知らないわけではない。
・その為、家族や親族、仕事仲間と言った小さいコミュニティを大事にする傾向がある。
・排他的ではないが、優先順位は確りしているタイプ
・取り敢えず家族至上主義
属性
・善性(非干渉・保守)
個性・能力
・個性:鬼
・能力:主に身体強化系。筋力、肉体強度、知覚、情報処理能力全てに及ぶ、謂わばオールマイトの下位互換。
肉体のバランス感覚は持って生まれたセンスであり、一般的に見ればチートの類い。さすが父。
スタイル
・身長196cm
・体重131kg(体脂肪率8%)
・何がとは言わないが、多分E(long)
情報
・実はあるヒーローに、サイドキックに誘われたことがある。世話になった事もあるので少し悩んだが、断った。
その為、そのヒーローのサイドキックにむっちゃ嫌われてる。
・結構モテる。
・角は二つ。そこそこ長いので、Tシャツが着れない。
親戚の家に行くと、たまに梁に引っ掛かる。で、梁が削れて怒られる。
・断っているが、公務員の伝で警察のヴィラン対策課からの勧誘が来ることもある。
・笑顔が眩しい。