黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
ツァーリのウマ娘容姿は、カフェの目が青色になっただけのイメージ。
今日、僕はトレーナーと契約を結んだ。でも、あまりにも急なことで、15分も経たずに契約が決まった。
始まりは、不審者が僕の足を撫でまわし、嫌悪感から、心の中の母に救いを求めたところから始まる。
「何をしているんですか?」
「いやあ、いいトモだなって。って、蹴ってこないのか?」
そういいつつも、ずっとふくらはぎ辺りを撫でる男。
「蹴られたいのならあなたが今している行動に理解ができなくもないですが、蹴られたいですか? 蹴られたくないなら、すぐさま手を放していただけると、僕的にはうれしいですね」
「ああ、すまんすまん」
「謝って済むのであれば、警察と迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪は存在しないんですよ」
妙な声を出しながら距離を取る男性は、黄色いシャツと、癖ではねた髪をしていた。
「不審者と呼ばれたくなければお名前を」
「ああ、俺は沖野だ。トレーナーだよ」
ほう。彼はトレーナーなのか。さしずめ、この前の選抜レースを見て僕をスカウトしに来たのか。
「君は、噂のマンハッタンカフェであってるか?」
「痴漢の上に名前を間違えるとは……。僕はズヴィズダツァーリ。そのマンハッタンカフェという方は……。確か僕に似ている先輩ですね。同じ黒髪の長髪だったかな?」
「え? マジ!?」
最近こんなことが多々ある。一番面倒だったのは、そのカフェ先輩の友人らしいアグネスタキオン先輩に見つかった時だ。
最初、「カフェが追いかけるお友達は、君のことかい?」とか、まったくもって意味の分からないことを言われた。
「今年中等部に入学したズヴィズダツァーリです。てっきり、選抜レースを見てやってきたのかと」
「ああ。選抜レースか。すまんが見てないな……」
僕の走りを見ていない? となると、ナーリアの走りを見たあとは帰ったりしていたのかな?
「その日は色々あって学園にいなかったからな……。でも、スカーレットとかウオッカが入学した時でもこんなトモはしてなかったし……。1着か?」
「ええ。長距離の部に出た方のスタミナがなかったようで、抜け出した後は流しましたが……」
うんうんと唸る沖野と名乗るトレーナ。
「ちょっと待て。えっと……」
「言い難いならツァーリで構いません」
「ありがとう。選抜レースを見てってツァーリはさっき言ったろ? っつーことは、お前まだトレーナー決まってないの? スカウトは? なかったのか?」
至極全うな質問をしてくる彼。だが僕は、首を横に振る。
「確かにスカウトされましたが、僕の話をまともに聞いてくれる方がいなかったので。断らせていただきました」
「話?」
首をかしげる彼。まあ、中身も言わずにわかる訳がないか。
「沖野トレーナー。あなたは、『前世』というものを信じますか?」
さあ、この人はどうだろうか……。
今までの人は、聞くだけ聞いて、理解を示さなかった。
ウマ娘がいない世界。馬が走り、競争はギャンブルという世界で走った
「何をもってそんな話をしてきてんのかは分からねぇけど。お前はそれを知ってんだろ? なら少なくともお前が言うお前の『前世』は信じるぞ?」
「え?」
「いや、何そんなボケッとしてんだよ。お前が言い始めたんだろ? それとも嘘なのか?」
「い、いや! ほんとのことだよ。……本当のことです……」
無理に繕わなくていいと手を振る沖野は、砕けた口調でいいと言ってくれたので、素で話すとしよう。
「なら、『前世』の話を聞いてください」
僕は、突然の出会いで立ったまま、ターフの横で彼に話す。
「僕の前世には、『ウマ娘』なる存在はいませんでした。いるのは馬。この世界にいないので想像しにくいとは思うけど、そうだな……。大きくした角の無い鹿とでも思ってくれれば。フォルムは似てるので。それが、賭け事として走る世界に僕はいた」
相槌を打つだけで僕の話を遮らない彼。眉間にしわがあるから、いろいろと想像しているのだろう。いいや、そのまま続ける。
「レースする場所も、競馬場という名前でした。馬はウマ娘と違って人ではないので、言葉を交わせません。なので、騎手と呼ばれるプロが背中に乗り、操って勝負する。ぼくは、その馬。正しくは競走馬の一頭。名も同じく、『ズヴィズダツァーリ』」
大魔神の奥さんからもらった、星の皇帝を意味する僕の大切な名前。
「僕はそこで走りました。背中に先生を乗せて、大魔神やおっちゃんに愛情をもらって。無敗の三冠を達成した三頭目になった」
ただ、僕には悔いがある。認められない傷が。僕にはある。
「生涯成績は20戦18勝。僕は、あの世界で2回負けた。一回目は慢心で。二回目は真正面から戦って負けた。それが僕は悔しくて、認められなくて。みんなに貰った愛情を、2回も裏切ってしまった。僕は、それが許せない。菊花賞をレコードで勝ったことよりも、眼前にあいつらがいた2回が残ってる」
よくわからない話だろうに、ちゃんと聞いていた沖野は口を開く。
おまえは、何がしたいんだ? って。
「僕が求めるのは、生涯無敗。2度と負けない強さと、大きすぎる愛情に応えることができる心が欲しい。あの皐月賞の時にした覚悟は、まだ手放してない」
「おお。良いじゃねえか。何の因果か知らねえけど、お前さんは競争の生活が終わったのにまだ走りたいと思ってる。気持ちは何だって良いが、走りたいなら走れよ」
「貴方についていけば、僕はあの2頭に。いや二人に勝てますか?」
偉大なる観衆の祭神と、夢追いし不屈の海賊王。その二人に。
「菊花賞。京都競馬場の芝3000メートル。2分58秒9。それが僕の全力。今は練習で出せてるのが3分1秒5。コースも違うし自分でしてるタイム計測なので参考だけど」
「ちょっと待て!? お前の前世はそれが普通なのか!? 菊花賞で2分58!? うっそだろ!?」
「ほんとのことだよ。ただ、僕の後3分を切った馬は僕の子供以外いないよ。少なくとも、僕が死んだあの瞬間まで」
「あー。そこまでの記録が頭にある以上、記録更新できるか? 俺の手で? ただスピカにはマックイーンがいるから長距離の練習ができる。ゴルシも菊花取ってるし……」
あれ? 今ゴルシって言ったような。
ゴルシって、ゴールドシップのことでしょ? 先生が皐月と菊花を取ったっていう、母さんの同期だった気まぐれ屋。
「っておーい! 何してんだよトレーナー!!」
突然聞こえた声。それはとてもきれいな声。
葦毛の髪を後ろになびかせながら走ってきた女性からの声だった。高い身長にすらっと伸びた手足。そんなウマ娘。
「おお! ゴルシ!! 良いとこに来てくれた!! 聞きてえことがあんだけどよ!!」
「おいおいどうしたんだよいきなり肩掴んで。あ、安心してくれ、肩パッドかiPadなら、ゴルシちゃんはバンテリン派だぜ?」
何言ってんのコイツ。
「そんなことどうでもいい!! ゴルシ、今のお前が菊花賞を全力で走ったらタイムはどれぐらいだ!?」
「えー? ゴルシちゃんの本気とかゴルシちゃんでも知らねえよ。てかトレーナーなら大体知ってんだろ? 多分3分1秒5とかじゃねえの?」
「 っだよな……」
いきなりどうした? なんて言っていたゴールドシップが、僕の顔を見る。
「カフェ? じゃねぇな。おまえどっかであったことある?」
あれ? よく考えれば、母さんと同期のはずなのに、なんでこの馬……じゃなくてウマ娘はトレセン学園にいるんだ?
「ア、あれだ。シーナに似てんだ。てか初めてあった気がしねー。なんて名前なんだ? 特別にゴルシちゃんが覚えてあげるぞよ♪」
「あ、ズヴィズダツァーリです」
「なるほど。星帝ね……。すっげえかっけえ名前だな。よし! んじゃあ今日からツァーリはスピカの一員だ!! 私がビシバシ鍛えてやるからな!!」
ん? ちょっと待って? 急展開過ぎじゃない? 沖野トレーナーに会ったのも初めてなのにそのままトレーナー契約するの?
「目指せ、火星の彼方!! 目指す明日はスピカの部室だぁ!! ゴルシちゃん! ゴルシンゴルシーンッ!!」
ぴゅーっと効果音が付きそうなほどの勢いで飛び出したゴールドシップ。
たしかにあの感じなら、先生も苦労しただろうな。うん。たしかに先生が言った通り、僕は優等生だね。
「あーっと。どうします?」
「えーっと、ツァーリが良いなら受け持つけど、ほんとに良いのか?」
「いや、僕の話を信じてくれたの、沖野トレーナーだけなので……。よろしくお願いします」
という流れで、沖野トレーナーが僕の担当になり、そのままチームスピカの一員になることになった。
「あ、ゴルシに先生のことと母さんのこと聞くの忘れてた」
まあいっか。
衝撃の事実!! ツァーリは生涯無敗ではない!?
2014年の有馬記念って最高ですよね。
ジェンティルドンナとゴールドシップがいて、
ウインバリアシオンとジャスタウェイ。フェノーメノ。
そして何よりヴィルシーナがいる。
いまだにハナ差で負けた秋華賞を見るたびに悔しくなる……。
黄金一族でどの馬が好き?
-
香港ヴァースに泣いたステイゴールド
-
日本に残ったドリームジャーニー
-
芦毛の千両役者ゴールドシップ
-
批判を実力で黙らせたオルフェーヴル
-
障害の王オジュウチョウサン
-
春天二連覇の怪物フェノーメノ
-
濃縮された気性難ナカヤマフェスタ