黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
明日から投稿時間を1時間遅らせて、20時に致します。
入学から約4か月。僕に課されたことは、とにかく早いペースを刻み続ける事だった。
僕が入部したスピカのウマ娘たちは、速いペースでも対応できる面々がほとんどで、そんな面々がラップを一定に刻みつつ、僕を追いかける。それを僕は逃げ続けるという特訓が主だった。
先輩たちは1ハロンを11秒5から8で走り、僕は11秒5以内で走る。もちろんハイペースを続けるから体力は嫌でもつくし、雨の日でも同じペースで走らされるからパワーもつく。
僕が沖野トレーナーに苦手だと申告した、ハイペースのことを考えてくれているのがありがたかった。
ハイペースだと足を溜めることができない。ギアを上げる先がないから。
その打開策は、ハイペースのまま垂れず、抜け出せばいい。ハイペースの分、他の奴の体力も削られているのだから。というもの。少し脳筋的な考えではあるが。今できることはそれしかないと、僕は同じ特訓を続けていた。
そして迎えたメイクデビュー、僕の相手は、競走馬時代に新馬戦やダービーなんかで戦ったロジャーバローズと同じレースとなった。
少しだけ気弱そうな顔をしていた彼女だが、ゲート前にみんなが集まった時には決意を固めた顔をしていた。
そして、スタート。
僕たちは必死に走り、ロジャーバローズは僕の後ろをずっと着けていたが、一定のスピードでしっかりと走る上に、最後の直線でスピードを上げたことに着いて行けず、だいたい4馬身差くらいの差を開いて勝つことができた。
僕が1着。彼女が2着だ。
普段から全員で試合観戦はするらしいが、デビュー戦だからと、スピカ全員が僕の応援へと訪れ、勝利を祝ってくれた。
「次は東スポジュニアステークスだな」
なんていう沖野トレーナー。どうやら、僕のローテーションは、あのころと変わらないものになりそうだ。
競走馬時代は、新馬戦を勝ち、東スポ2歳s、ホープフルsと来て皐月賞だった。だが、今回はそうじゃない。皐月賞の前に一回どこかレースに出たいと思っている。ウマ娘という人に近い存在になり、馬だった頃ほど体にストレスが溜まらないのもある。
まあ、今はメジロマックイーン先輩の奢りで食べるチーズケーキをパクパクしよう。
「さあ始めようか」
そういった彼女の言葉に、僕と噂のあの人は、二人揃って、言葉を返す。
「何をですか?」
いや、言わんとしていることはわかる。わかるんだが、何分急展開過ぎるのだ。
改めて言うが、僕の容姿はマンハッタンカフェというウマ娘に似ている。らしい。
らしいというのは、僕自身が実際にマンハッタンカフェ先輩に会ったことがない。というのが理由だが、競走馬時代、僕のことを初めて見た人は、よくマンハッタンカフェだと言っていたから、ウマ娘となった今の僕も、彼女に似ているのだろう。
まあ、正しいことを言うと、競走馬時代の僕は、サンデーサイレンスという馬に似ていたらしい。そして、マンハッタンカフェもサンデーサイレンスに似ていたと言うのだから、そりゃあ互いが似ていて可笑しくない。
黒い長髪。結ぶのが下手だからいつも寝癖を整える程度で伸ばしたまま。前髪が少しだけ白いのが僕のチャームポイントだけど、雨の日は跳ねてしまってアホ毛になる。髪の流れ方は左から右。
目は淡い青色。母さんと同じ目だからすごく気に入ってる。髪の色もほとんど一緒だしね。最高。
体は割と身長も高いし、胸もある。仲のいいメンバーの中では一番上だ。よくアレグリアが胸を揉んでくるけど、まあそこは一度置いておこう。
容姿の話だ。
どうやら、僕とマンハッタンカフェ先輩を後ろから見ると、同じようにしか見えないらしい。
そして、そんな僕と彼女を見分けられる数少ない存在が、ゴールドシップ先輩と、今目の前で優雅に紅茶を飲んでいるアグネスタキオン先輩である。
なお、私の前には、湯気が立つ透き通った紅茶と、黒く底が見えないコーヒーが置かれていた。
事の発端は、僕の後姿を見たマンハッタンカフェ先輩が、小さな声で、「お友達」と呟いたことに起因する。
そして、それを後ろから見ていたアグネスタキオン先輩が、僕とカフェ先輩の腕を掴んで彼女の研究室に連れ込んだのだ。
僕とカフェ先輩は互いに顔を見て、どういう状況か不思議になりながら、椅子に座らされた。
「君はどっちを飲むんだい? もちろん! この私が入れた紅茶だろうけどねぇ? そうだろう?」
「いいえ、ツァーリさんはコーヒー派だと私のお友達が言っています……」
そこからは、タキオン先輩が、僕とカフェ先輩をもてなそうと紅茶を出し、コーヒー以外は飲まないと主張したカフェ先輩が、研究室に置かれていたカフェ先輩の豆を使って、コーヒーを淹れていたのだ。
そして論点は、僕がコーヒー派か紅茶派か。ということになっているらしい。
「いやあ、流石のメイクデビューだったよツァーリ君。私が気にかけている後輩なだけある。スタートから先頭集団で戦い、そのままの抜け出して一着。素晴らしかった。そんな君だ。私のようなレースをする君だ。もちろん嗜むのは紅茶だろう?」
「いいえ。あのレースは本領を発揮していないように見えました……。無理に走っているような……。お友達も、本当なら足を溜めてから解き放つスタイル。私と似たようなスタイルだと……。だから、彼女は私と同じようにコーヒーを飲むはずです」
え? これはどうしろと? どっちを飲んでも地獄が待っていそうな気がするんですけど……。
さあ! さあ!! と二人の圧を受ける僕。
「……。それじゃあ喉が渇いてから飲みます。本題は、僕がコーヒー派か紅茶派かの話じゃないんでしょう? 何か用事があって僕たちをここに連れて来たはずだ。やっと、マンハッタンカフェ先輩に会えたっていうのに」
「おお、まだ会っていなかったのか。そうかそうか」
僕の初対面発言をとてもうれしそうにするタキオン先輩。正直、怪しい。
「よし、それじゃあ本題に移ろう。私はね、カフェの言う彼女にしか見えない「お友達」が、君なんじゃないか? と考えていた。だが答えは違った。何より君自身から否定され、カフェからも違うと否定されてしまったわけだ」
「はい……。ちゃんと友達は、います……」
似ているのかい? とタキオン先輩に聞かれたカフェ先輩は、コクリと頷いた。
「ただ、「お友達」は振り向いてくれないので、顔は分かりませんが、後ろ姿は……。はい、そっくりです」
綺麗な黄色の瞳が僕の目を覗き込んでくる。
何かを伺うような怖がっているのような目。
「僕は、カフェ先輩の言う「お友達」ではありませんし、その存在が見えてるわけじゃ無いです。何がいるかとかも分かりませんが、もし会えるなら、その「お友達」と会ってみたいですね」
ブワッと、僕の周りを風が包んだような気がした。優しいのではなく、どちらかというと、威圧されるような感覚。もしかして、いる?
「ねぇ、カフェ先輩の「お友達」さん。いるんでしょ?」
ね? 先輩? とカフェ先輩に聞いてみれば、彼女はまたコクリと頷く。
「先輩は、「お友達」と話したことがあるんですか?」
「い、いや……。だから、後ろ姿を追いかけてる……」
「なら、名前も知らないのか……。喋らない。サイレンス? 追いかけるならレースだから、日曜日? ってなるとサンデー。うん。カフェ先輩が名付けてないから嫌かもしれないけど、ずっと「お友達」って言うのも面倒だし、サンデーサイレンスって呼んでもいいですか?」
「サンデー、サイレンス……」
マグカップを両手に抱え、ボソボソと繰り返すカフェ先輩。それを僕とタキオン先輩は見つめ続けていた。
この世界には存在しないのかわからないが、まったくもって名前を聞かない存在。一応競走馬時代は、父・オルフェーヴルの、父父・ステイゴールドの、その父に当たる。母の方は、母父ディープのその父なので、両方の曾祖父? に当たる馬。
「僕は前世なんていう非科学的なことを信じてるからね。カフェ先輩のお友達も存在するって知ってるよ? それに、僕とも似た容姿してるなら、違う世界だとみんな家族だったり血縁者だったりするかもね」
なーんて言ってみれば、カフェ先輩は目を見開いて、見るからに驚いていた。
まあ、僕は前世のことを話していろんなトレーナーをたらい回しにされたし、彼女も彼女で、お友達のことや超常現象が起きてたらい回しされたとタキオン先輩が言っていた。
似たもの同士だ。うん。
あ、サンデーサイレンスって略したら3歳じゃん。
「サンデーサイレンス君か……。略したら3さうわぁ!?」
おんなじことを思っている上に口にしたタキオン先輩が、椅子から転げ落ちた。危なかった。僕もああなってしまうところだった。
「それで? 僕とカフェ先輩とサンデーサイレンスくんは違う存在なわけですけど、どうします? タキオン先輩。本題は終わったということで、帰っていいですか?」
飲み物も、飲み切りましたし。
と、しれっと飲み干した紅茶とコーヒーのカップを見せた僕は立ち上がる。
「ああそうそう。マンハッタンカフェ先輩と会ったら言おうと思ってたことがあったんですよ」
「な、なん、ですか……」
「マンハッタンカフェ先輩。僕とお友達になってくれませんか?」
「は、はい……」
よし、これでやりたかったことはできた。
もともと会えたら友達になってほしいと言うつもりだったからオッケー。お友達ことサンデーサイレンスの名前も付けれた。
あと何かあったかな? うん。無いな。大丈夫。
「あ、次のレース……。頑張って、ください」
「あはは。はい。頑張るよ。カフェ」
あー。呼び捨てにしちゃったけど、まぁーいいやー。
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