黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕)   作:パンダコパンダ

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短いです。


競走馬ー15:激闘! 有馬記念スペシャル! 話題の馬に密着!!

『さあ、本日は有馬記念スペシャルと題しまして、特別にこちら! 滋賀県栗東市にあります。栗東トレーニングセンターにやってきました!!』

 

 カメラの前でポーズを取る女性。じゃじゃーんと両手を広げたのは、栗東トレセンのターフの真前。

 と言っても、もちろんこんな場所で大声を出したら馬が驚くため、実際の声量は小さく、ちゃんと考えてやってくれている。

 

『ただいまの時刻は朝の5時です! こんな朝早くからということで驚いていますが、早速、トレーニングセンター内を回っていこうと思います!』

 

 リポーターの女性と番組スタッフは、トレーニングセンターの広報に案内され、まず連れて行かれたのは厩舎。

 ほとんどの馬が今年の競走を終えている中、数少ないトップ戦線の馬は、まだ戦いに向けて調整をしている状態。厩務員も騎手も馬房の掃除や手入れなどを行なっており、馬の鳴き声と、人の声が交わっている。

 

 見慣れないカメラに興味津々なのか、多くの馬たちが馬房から顔を出して、あいつら何? っていう顔をするが、リポーター達の目的はただ一頭。

 

『こちらです』

『おお、一番奥にいらっしゃるんですね』

 

 というわけで僕の目の前に来たリポーターさんとカメラ。今日は前から言われていた、有馬記念の特番で僕の密着取材がある日だった。

 

『はじめまして。リポーターの稲村です』

『はじめまして。僕はここの厩務員を務めてます、村田です』

『てっきり、競馬場でよく映る女性の方だと……』

『今日彼女ちょっと来れない用事で。すみません。ネットじゃ美人厩務員とか話になってるのに、僕なんかが出てきて』

 

 あはは、お姉さん今日いないもんねー。なんて、馬房からひょこっと顔を出しながら話を聞いていた僕。そんな僕に、リポーターさんが挨拶してくれたので、ペコリと頭を下げておく。

 

 それじゃあ撮影行きますね。と番組スタッフさんが声を出したので、僕もシャキッとする。

『見てください! 馬! 馬! 馬! 多くの馬が生活する厩舎に見学させていただいてます。さて、せっかくなので、お一人厩務員の方にお話を聞かせていただきます。すみません! お話よろしいでしょうか!』

 

 僕の馬房の藁を整えていた厩務員(村田のにーちゃん)に話しかけたリポーター。今は何をしていたのか。だったり、どのような流れで仕事が行われているのか。だったりと質問をする。

 

『あの、私、ズヴィズダツァーリを探してるんですけど……』

 

『あはは。そうですか、ズヴィズダツァーリなら、この子です』

 

 リポーターさんの質問に答えたにーちゃんは、彼が整えていた馬房の主である僕に手に平を向ける。

 

「ひひーん! ブルッブルルッ……」

 

 しっかりと、はーい! 僕がツァーリでーす! と元気よく返事すれば、お姉さんは驚いた顔を見せる。

 

『おっきい体ですね』

『はい。食べることと寝ることが大好きな馬なので、こちら側が気を付けていないと、すぐに丸くなってしまうので』

 おいおいおい。それはねーんじゃねぇーの? にーちゃん。僕だって体のこと気にしながら食べてるって。ただ、食べとかないとパワーが出ないから食べるんだよ。

 

『それではここからは、ズヴィズダツァーリに関するさまざまな記録を振り返ってみましょう。VTRにまとめましたので、そちらをご覧ください』

 

 一仕事を終えたリポーターは、にーちゃんに許可をもらって僕の体を撫で始める。ほほう、此奴なかなか良い触り方をしよる。うむ。苦しゅうない。

 

『ツァーリはかなり人なっこい子で、生産牧場にいた時から人に近寄ってくる子だったと聞いてます。ついでに言うと、女性好きなので、お姉さんみたいな人に懐くんですよね』

『女性が好きなんですね。けど、思っていた以上におとなしくて驚いてます』

『昔は頭擦り付ける勢いだったんですけどね。最近は紳士的ですよ』

 

 なんて言って笑ってる。

 そうだもん。僕は紳士だからね。

 

『それじゃあここからズヴィズダツァーリを担当してる調教師とジョッキーが今日の調教内容を確認したり打ち合わせをして、ジョッキーが到着します。一旦厩舎から移動して、打ち合わせ終わりのジョッキーと合流する形になりますので』

 

 えー? これで撮影終わり?

 あ、調教中とかも外から撮影するの? んじゃ良いや。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「これまで乗ってきた馬とは、やっぱり違うんですか」

 

「そうですね。別物ですね」

 

 ツァーリが密着取材を受ける数日前、僕は、福長君と一緒にテレビ番組の収録をしていた。

 

 スポーツ全般を盛り上げるような番組で、福長君はよく出ている。

 

「実際にどういうところが違うんですか?」

 

「うーん。なんて言って説明するか悩むんですけど、本当に賢いんですよ。ツァーリは。中身が人なんじゃないかな? なんて思うくらい」

 

 ペースアップを仕掛けるタイミングを常に伺っているように見えるし、コース取りは僕が指示を出すまでなく行う。

 

「賢すぎて、他の馬より余裕があるんですよね。いろんなところを見てます。ただ、その分好奇心というか、意欲もかなり高くて、我慢させるのが難しい」

 

 元アスリートの司会者や、野球好きの芸人も、僕の言葉に驚いた声を上げる。

 

「それじゃあ完璧な騎乗だったのはやっぱり菊花賞?」

 

「いや、あれはツァーリが暴れて、僕が抑えきれなかったので、違いますね。去年の有馬も、ルートがないって考えてた時にツァーリが自分で道を選んだし」

 

 どれだろう。ベストレースは。しっかりと戦って勝ったという意味なら、多分ダービーか? 縦長の展開の中足を溜め続けて、しっかりとツァーリらしい戦いができた。

 仕掛けるタイミングも僕とツァーリ、同じタイミングを考えていたから、人馬一体だったのはあのレースだろう。

 僕が日本ダービーの名前を挙げたことで、あの時のレース映像が流され、僕自身で解説する。

 

「途中ここら辺ですね。サートゥルナーリアがこっちによってきて、ツァーリの意識が外れたりとかもしたんですけど」

 

「そういうのって、馬が走る気なくすってよく言いますよね」

 

「普通はそうなんですけど、ツァーリは普通じゃないので」

 

 普通じゃない。その言葉にスタジオにいた人が声を上げる。

 

「そんな普通じゃないズヴィズダツァーリの有馬記念。去年はついに負けるかな? って思ってたら隙間から飛び出して1着。今回は?」

 

「今回も、これまでと変わりません。強いズヴィズダツァーリの強い競馬。全力で取りに行きます」

 

「福長さん。こんなこと言ってますよ」

 

「いやぁ、けど、去年のあれ真横で見てたら、どうしようもないっすよ。僕も彼の少し前で走ってましたけど、おんなじタイミングで仕掛けてるのに倍早いですからね」

 

 今年の相手は? と聞かれ、パッと頭に出てきたのは、宝塚で勝ったクロノジェネシス。アーモンドアイがジャパンカップで引退して、現状最強牝馬は彼女だろう。

 あとは、春天で競い合ったフィエールマン。秋の天皇賞でも2着と良い成績を残してきている。

 

「あとは、やっぱりサートゥルナーリア。いつも振り向けばいますから、騎手としては要注意ですよね。金鯱勝って、宝塚じゃ伸びなかったですけど、末脚はやっぱり怖いですし」

 

「一番怖い足の馬乗ってる人が何言ってんすか」

 

 福長君のツッコミを貰いスタジオがまた笑いに包まれる。

 テレビ慣れをしているのか、福長君のおかげで変な空気にもならず、無事に収録を終えることができた。

 

 週末は目の前。勝ちます! と番組内では言ったが、調教タイムを聞くにクロノとサートゥルの調子がかなり良いらしい。

「うし!」

 誰もいないトイレの中、僕は両頬を叩いて、レースへの気合を入れた。

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