黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
ウマ娘回8話目。ついにちゃんとしたレース回です。
果たして、ツァーリは自己記録を更新できるのか。
トウカイテイオーとの約束を守れるのか!!
菊の花。といえば重陽の節句だと思う。
だが、決戦の舞台は9月9日ではなく10月の中旬。
あの時、僕と一緒に走ったのは、ワールドプレミアだったりヴェロックスがいた。だが、この世界だとどうやら違うらしい。
コツコツと、京都レース場の通路を歩いていた僕を待っていたのは、3人のウマ娘。
「何でいるの?」
と、僕。ズヴィズダツァーリ。
「宣戦布告ですわ」
と、彼女。サートゥルナーリア。
「負ける宣言じゃなくて?」
と、僕。
「あんた生意気だよね。ほんと」
と、ダノンキングリー。
「僕が一番だからさ。これまでも、これからも変わらないよ」
と、僕。
「あははー。でも、わたし達も負けない」
と、ロジャーバローズ。
お淑やかな少女が決意を示し、気怠げな少女が火を灯す。そして、少し気弱な少女が前を見て、六つの眼が僕の体を貫く。
「僕は
「勝てる勝てないではありませんわ。勝つんですのよ」
スタミナに不安があるサートゥルナーリア。
距離適正に不安があるダノンキングリー。
そして、体の丈夫さとパワーに不安があるロジャーバローズ。
だが、3人は強い気迫で僕を見る。
良いねぇ。ダノンキングリーは距離適正でマイル中心だったからちょっと違うけど、同世代のライバルってのはこうじゃないと。
「なら、僕だけの世代って言われないよう、せいぜい頑張ってね」
僕は勝ち続ける。絶対に。
『さあ、クラシック最終戦である菊花賞。なんといっても中心にいるのはこのウマ娘! これまで無敗! 6戦6勝の二冠を達成しているズヴィズダツァーリ』
1番人気である僕。僕は、案内に従って、1番最初にゲートへと入り、他のウマ娘の状態が整うのを待つ。
『さあ大外枠のウマ娘のこれでゲート入り。強さを見せているズヴィズダツァーリが無敗の三冠ウマ娘になるのか。それとも、世代は彼女だけではないと苦渋を舐め続けている他のウマ娘が最後の冠を被るのか』
最後のウマ娘が入り、今か今かと待っていた僕はゲートが開くのを待つ。
視界から取り入れ条件に対する反応は、確か最速でもコンマ2秒を切ることはないらしい。それ以下に飛び出せば見切り発車。なので、G1・競争に出るトップクラスのほとんどは、0.2秒ぎりぎりのスタートを決める。
もちろん僕は、
「スタート? んなもんで遅れても全員ぶち抜けばいいだろ?」
と、ゴルシに金言をもらっているので気楽だ。別にスタート遅れても……。
『ゲートが開いた!! 優駿が飛び出す!!』
っておーい!! 遅れたじゃねえか!!
『スタートまさかのズヴィズダツァーリが出遅れる。ここまで先行で戦ってきたズヴィズダツァーリ。この展開は大丈夫か? 先頭、ハナ争いはロジャーバローズ! ダービーではズヴィズダツァーリに対してクビ差の惜敗!! 今日は見返したいぞ!
さあ注目の4名の位置関係。先頭はロジャーバローズ。2番手の位置。先頭集団でレースを進めています。
2番人気のサートゥルナーリアは先行集団の固まっているバ群の真ん中あたり、全体の6番手ほどでしょうか。ダノンキングリーは中団。すきを窺いつつ正面スタンド前を通っていきます。
来ました来ました。一番後方ぽつんと一人走っています無敗の二冠ウマ娘、ズヴィズダツァーリ!』
僕がしんがりに入るのは、基本的には最内に入るためのロスを減らしたいから。
横並びすると基本的に走る距離が伸びてしまってスタミナを持っていかれる。だからと言ってガス欠になるようなスタミナはしてないんだけどさ。それでも、無駄は完全に省く。
観客や一緒に走っているウマ娘たちは、今僕が最後尾にいることに驚いているだろう。だが、僕にとってはここが定位置。
歓声が大きいスタンド。チームスピカの面々。一人一人の顔がはっきりわかる。
少しだけ不安そうな顔をしているダイワスカーレット先輩。
歯を食いしばって見つめ続けるウオッカ先輩。
スペシャルウィーク先輩は両手を胸の前で抱えていて、ゴルシは……。なんか法被着てた。
「あは……。心配性じゃん」
同じステイヤーのメジロマックイーン先輩も見た感じ不安そうな表情。でも、ダイワスカーレット先輩ほどじゃないかな? よく一緒に走ってるから、実力は知ってる。って感じ。
「あと、逆に笑顔過ぎ……」
なんであんたが。と口にしたくなったが、今はレース中。よそ見してたら先生に怒られる。
でも、頭の中に焼き付いた、トウカイテイオー先輩の笑顔。自信満々な表情で僕を見つめていて、口元は三日月。まるで絶対がここにあるとでも言いたげな表情。
「いいね。上がるな」
背中に乗っていた先生が、有馬記念の時に呟いた言葉。だが、今の心情を表すにはちょうどいい。
『さあサートゥルナーリアと並走するかと思われていたズヴィズダツァーリ。出遅れの後そのまま最後尾で足を溜めているのか? 先頭はすでに2コーナー手前。もう向こう正面か? っと!? どうした!? どうしたんだズヴィズダツァーリ!?』
「え?」
「なんで!?」
一歩。踏みしめる。
跳ね返ってくる反発力を生かして、一歩ごとにスピードを上げていく。
コーナーの曲がり方は内側ではなく外側。距離は必要になるが、その分角度に余裕ができ、向こう正面に入ったときに一段階ペースアップができる。
何かに没入する感覚があった。
いつかそれが何か分かるのだが、それに僕は名前をつけた
天球駆ける瑕疵なき黒星
「っつ!?」
僕がスピードを上げたことによって、まず中団グループの面々の視野が狭まる。そして、後ろから抜いていく僕のペースによって自分たちのリズムが崩れ、そのままスタミナを無駄に使う。
「ツァーリさん……」
『さあズヴィズダツァーリが上がってくる、大丈夫なのかズヴィズダツァーリ!! 向正面半分だが一人! また一人抜いて行く! 後ろの方にいた青鹿毛が上がってきている!! 向こう正面真ん中ほどでしょうか? もうダノンキングリーとサートゥルナーリアを交わしている! なんということだズヴィズダツァーリ。ミスターシービーもゴールドシップもこれほどの仕掛けはしていないぞ!! 向こう正面中間すでにズヴィズダツァーリは三番手』
ここで意固地になってスピードを、ペースを上げようとすれば僕の思う壺。こんな自滅的に見える走りだが、しっかりと沖野トレーナーと組み立てた戦い方。
「ツァーリ!?」
3コーナー手前で抜かしたロジャーバローズ。
中団は、僕のペースに乱されてスタミナを失い、先行は、僕が近づいていることで冷静さを無くす。
どうやら、この世界では馬と騎手ではなく、ウマ娘個人が戦う世界である以上、心を揺さぶった方が強い戦略になる。
「行けるか? 57秒台」
あとは、最高の状態の最内を、全速力で、止まることなく飛ばしきるだけ。
スキル発動
『先陣の心得』
レース中盤に大きく差をつけ先頭だとリードを保ちやすい
『内的体験』
最終コーナーで内ラチ側にいると速度が上がる
『さあ4コーナーを回ってきたのはズヴィズダツァーリただ一人!! 他のウマ娘ははるか後方で二番手争いとなっている。ツァーリ! ツァーリが速い!
一人旅状態で4コーナー抜けて行く!! 速い!! 速過ぎる!! このまま持てば、いや、バテたとしてもレコードか!?
一人だけが正面スタンドに戻ってくる! 大歓声を受けても! 皇帝は! なお止まらないッ!!』
スキル発動
『全身全霊』
ラストスパートで速度が上がる
「見とけよ……。これが……。
『強い! 強すぎるぞズヴィズダツァーリ! 前にも後ろにも敵はいない! 4コーナーを抜けたバ群は決して届かない! これが! これが皇帝の名を背負うもの!! 皇帝の名を体現するものの走り!!
星帝天駆けッ! 眼前他に無しッ!!
25バ身以上の差を開き! 世代の皇帝が! 無敗で三冠達成!!』
誰よりも先にゴールした僕。はるか後方。遅れてゴールしたウマ娘の先頭にいたのは、2頭だった。
『2着争い!! 縺れる縺れる!! どっちだ! どっちだ!! 同着か!!』
ドドドドと芝を駆ける音が近づき、他のウマ娘がゴール板を越えて僕の所へとやってくる。
『1着ズヴィズダツァーリの勝ち時計! 勝ち時計は……。事件です!! 2分57秒9という事件!! ウマ娘の歴史、固く閉ざされた3000メートル3分の壁を無理やりこじ開けました!! なんという力! なんという強さ! これが、シンボリルドルフに続く無敗三冠ウマ娘!!』
肩で息を切らすサートゥルナーリアとロジャーバローズは、写真判定の後同着。その後ろに半バ身差で4着が続いた。残念ながらダノンキングリーは距離適性の問題から6着。掲示板に乗ることすら叶わなかった。
「今日はウイニングライブにまで来ていただいてありがとう!!」
菊花賞に勝ったことで、三度目となる『winning the soul』を歌唱していた。
スタンドマイクを持ち、しっかりと強い声で叫ぶように。
正直、走るのがメインのはずなのに、ライブまでする意味が分からないが、ルールには従おう。僕は長いものには巻かれる……。巻かれてるのか? 僕。
「無事! 三冠ウマ娘になることができたので、間奏の間に宣言します!!」
僕がそう言えば、青色のペンライトを握る観客たちは大いに盛り上がり、そのまま僕の名前を呼んでくれる。
「僕は、全ウマ娘の頂点に立つ!! 全てのレースに勝ち続ける!!」
次のレース、有馬記念に出るつもりだったけど、このまま秋古馬……じゃなくて、秋シニア三冠取りに行くのも面白いよな。ンで、来年の春には春シニア三冠。国内蹴散らしたら、海外。競走馬時代の4歳時にできなかったことを、この世界で達成する。
「僕はズヴィズダツァーリ!!」
絶対は、僕だ。
観客席の中段で僕のライブを見ていたトウカイテイオー先輩に指を指し。高らかに宣言する。
彼女は、笑顔のままで何か口を動かしていた。
正直、なんて言ったかは分からないが、たぶん、がんばれとかそんなところだろう。
まあ、やるだけやろう。テイオーは、勝手に僕に夢を見とけ。見せてやる。
あ……。秋天月末だから無理じゃね?
固有スキル
『天球駆ける瑕疵なき黒星』
向正面でスピードを上げ、3コーナーまでに6人以上ウマ娘を抜けた時、3コーナーで少し息を入れ、3コーナーの時点で先頭になった時、更に加速力が上がる。
わーいわーい。ぶっ壊れだー!
あーこのままジャパンカップと有馬で勝ったらコント君が絶望しちゃうよ。
菊花賞勝ちージャパンカップ負けはルドルフとコントで懲りてるって(笑)
あと、このタイミングで金スキル持ってんのは気にしないで。
だってツァーリだもん。
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