黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕)   作:パンダコパンダ

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競走馬ー21:頂点という夢 凱旋門賞 芝2400メートル

 全てのホースマンが目指す夢。

 その一つが、東京優駿。つまりはダービー。

 

 ダービーが大晦日で、翌日が正月だと言うホースマンもいるほど、日本競馬会の中心にあるのが、そのレース。

 

 だが、日本の馬が届かない頂。

 牡馬も牝馬も関係なく、優秀な種牡馬と繁殖牝馬の選定競争であり、ヨーロッパだけでなく、世界中から名馬が集まる2400メートルの舞台。

 

 あの怪鳥、エルコンドルパサーも届かず、

 あの英雄、ディープインパクトも届かず、

 あの祝祭士、ナカヤマフェスタも届かず、

 あの黄金の暴君、オルフェーヴルですら届かなかった。

 

 勝とう。

 大魔神が、いや、佐崎さんがぽつりと呟いた。

 

 オルフェーヴルは俺の持ち馬じゃないし、こんなこと言うのもお門違いだとは思う。

 そう前置きを置いて、ズヴィズダツァーリ()と、打田幸博(先生)と、友康道夫(おっちゃん)と、厩務員(おねーさん)の前で、佐崎浩一(大魔神)は話し始める。

 

「ツァーリは時代の寵児だ。競馬の神様が作り出した、ディープよりももっと奇跡に近い馬だと俺は思ってる。

 そんなディープが届かなかったところに、こいつの父親がいた。オルフェーヴルは、2年連続2着。三冠馬で、有馬記念であんなすごい勝ち方したオルフェーヴルも、2着を味わってる。

 でも、俺たちはもっと2着に泣いてきた。ヴィルシーナは、ジェンティルドンナに何度負けても喰らい付いて、エリザベス女王杯に打田さんと勝つことができた。ツァーリは、牝馬三冠を取れなかったヴィルシーナの無念を晴らすようにクラシックを取った。そのまま無敗で有馬も勝って、オペラオー以来の年間無敗も取った」

 

 ゴクリ。と、大魔神が生唾を飲んだ音を、僕の耳が捉えた。

 

「これまでの成績で、ツァーリは母親を超えた。でも、まだ凱旋門賞2着の暴君を超えてない。たとえ無敗三冠でも、年間無敗でも、長距離ローテ覇者でも、春古馬三冠でも、父親をまだ超えてない。だから、超えるぞ。俺たちのチビが、ズヴィズダツァーリ(星の皇帝)が、世界のどこを見ても一番強くて、カッコいいやつだって証明しよう」

 

 いいね。父を超える。上がってくる。

 フォワ賞走って、やっぱり2400の距離は短いけど、それでもダービーとジャパンカップみたいな2400とは違う。

 足元の違い。坂の角度。

 

「発表だと重馬場。芝の違いはありますが、ツァーリのパワーは大阪杯で重馬場でも問題ないと証明してる。あとはツァーリの強さを信じて」

 

「ええ。大外ぶん回して来てください。ツァーリは、その戦い方が一番強い」

 

 うんうん。おっちゃんと先生はよく分かってるね。

 じゃあいっちょ気張ろう。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『さあ、10月の第一日曜日。フランス、パリロンシャン競馬場に、凱旋門賞がやって来ました! 今日の一戦! 各国の最強格が集まる凱旋門賞に挑む日本馬三頭。

 

 まずはキズナ産駒ディープボンド。前走のフォワ賞では2着、阪神大賞典で勝ち、春の天皇賞では3着とスタミナ自慢!

 続いて日本を代表する牝馬。2020年の宝塚記念を制しているクロノジェネシス。血統的にも欧州に通用する血を持っていますから、好走を期待!

 そして最後に、日本が誇る最強馬。16戦15勝、星の皇帝ズヴィズダツァーリ。父オルフェーヴルの忘れ物を息子であるこの馬が掴み取るのか!

 さあ、本日の出馬表をご覧ください!』

 

 日本馬の馬番とゲート番号は、僕が5番の4枠。ディープボンドが2番の5枠。クロノジェネシスが7番の14枠。

 

 枠入り前、何を言うでもなく集まった僕たち三頭。ディープボンドはフォワ賞で僕に負けていて、僕に対してすごく敵視をしている。クロノもクロノで宝塚記念のお返しをすると言っていた。

 もちろん僕が勝つんだけどね。

 

「重馬場はどう?」

 

 どう? って聞かれても……。まあ、思ってたより?

 抉れたりはするけど、大阪杯の時と似た感じかな? って印象。

 

 現地の人たちに案内されて僕たち15頭の馬がゲートに収まった。

 

『さあ100回目の凱旋門賞。記念すべきこの大会に、日の丸は掲げられるのか! 凱旋門賞、スタートです!』

 

 ゲートが開き、一斉に各馬が飛び出す。

 僕は迷わず後続につき、ハナ争いから一番遠いところで走っていく。

 なんか一頭見知った顔のやつが端っこで一人旅してるが、まあ良いだろう。

 

 右側の内ラチのすぐ近くに車が大量に止められてて若干引くが、先生の「ツァーリ?」と言う一言で前を向いた。

 なんだろう、先生は僕に対する視線センサーでも付いてんの? 皐月賞からたびたび言われるけど、超能力?

 

 まあいいや。

 平坦な道を突き進んでいくと、どんどんと坂に差し掛かり、長く高い丘のようになっている3コーナーに向かう。

 いつのまにかクロノジェネシスは馬群の前の方に。ボンドは僕より少し前。

 

 あとは下り坂。跳ね返ってくれない足場に苛立ちが募るが、下り坂を利用して足の回転数を上げる。そんなことで無くなってしまうほど柔なスタミナはして無い。

 

 ん? なんか、ここ走りやすいぞ?

 

 グイグイと無理やり動いて馬群から少しだけ離れた場所。

 少しだけ。ほんの少しだけ、阪神の重馬場に似ている足元が続いてる。

 

 ここしか無い。そう思ったのと、先生が鞭を入れたのはほとんど同時だったと思う。でもなんて言うか、今日も今日とて、僕はタブーを犯した。

 パリロンシャン競馬場にある偽りの直線。下り坂を我慢させられた馬が最終直線と勘違いしてしまいバテるフォルスストレートに向かって、僕は迷わずギアを上げた。

 

『馬群固まって来ました。後方にいたズヴィズダツァーリが外から上がって来ている。フォルスストレートと入って来まして先頭は変わらず。二番手にクロノジェネシスが好走している。どんどんどんどん前にくる5番ズヴィズダツァーリ! 大外に膨らんだ状態でオープンストレッチ! 最終直線!』

 

 内ラチが途中でもっと内側に行くから、見えてる世界よりもさらに広く感じる最終直線。各馬が横に一気に広がるから、全然進路の邪魔が起きない。

 日本と違って真横に他馬がいないからどんな感じか分からないが、とりあえず一つ。

 

「行ける!」

 

 横に広い視界のおかげで、内側にいる他馬がどんな状態か分かるが、そいつらよりも僕の方がパワーがある。スピードがある。そして何より、2着の悔しさを知ってる!

 

『さあズヴィズダツァーリが先頭! 先頭にいる! 打田鞭を叩いて内側に入れるが、後ろが伸びてくる! だが強い! 一頭完全に抜け出してる! 差が広がる! 広がっていく!

 

 ロンシャンよ! フランスよ! 世界よ!

 

 これが星帝! これが日本の最強!

 

 残り200! 星帝が天を駆ける! 眼前に他はない! 他はない!

 

 日本の夢を背負ったズヴィズダツァーリ! 父が! オルフェーヴルが残した忘れ物を!』

 

 やったな。先生。世界で一番強い馬だよ。僕は。

 

『しっかりと掴み取ったーーっ!! 黄金旅程は、黄金から漆黒へと託されました!!』

 

『1969年のスピードシンボリから約半世紀! ついに日本馬が、世界に名前を刻んだ!! ズヴィズダツァーリ! 大差での圧勝劇! この馬に、世界の壁などなかった!! 2着はーー』

 

「やった! やったぞツァーリ! 勝ったんだ!」

 

 ポンポンと首筋を叩く力がいつもより強い気がするが、世界で一番強い馬を決める勝負に勝ったんだ、今日くらいは許してやろう。

 さあ、フランスの人たちにお辞儀をして、日本に帰ろう。これで来年来るとか無くなったろ。飛行機は帰りの一回で十分だ。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

【凱旋門賞】悲願達成 ズヴィズダツァーリ 史上初凱旋門賞日本馬に

 10月3日、フランスのパリロンシャン競馬場で行われた第100回凱旋門賞を、ズヴィズダツァーリ号(鞍上:打田幸博)が制した。これにより、日本競走馬で史上初の凱旋門賞馬となり、また、欧州以外の調教馬が同レースを制するのも初の快挙である。

 レースを最後方、シンガリで進めたズヴィズダツァーリは、じっくりと第3コーナーに向けて周囲の状況を把握し、10メートルの高低差がある坂を登り切ると、下り坂を利用して一気に加速。不安視されていた距離の適正の問題など感じさせず、最終直線で抜け出すと、後続のトルカータータッソに10馬身の大差をつけ勝利した。

 走破タイムは2分36秒02。同レースでの最大着差記録も更新している。

 

 同馬の馬主である佐崎氏によると、怪我兆候や疲労感の確認はするが、全く問題がない場合秋の天皇賞(東京・芝2000)を予定していると言う。出走が叶えば、4頭目の無敗三冠馬コントレイル。今年の無敗皐月賞馬であるエフフォーリア。短距離の女王であるグランアレグリアと戦うことになる。

 秋の天皇賞に向け打田騎手は、「重馬場の遅いペースと高い山に助けられたロンシャンとは違う。かなり厳しい戦いになる。」とコメント。友康調教師も、「いくら大阪杯で勝っているとはいえ、この馬に2000は短すぎる。凱旋門賞直後であることを除いても、秋古馬三冠を目指す上で1番の障害になると思う。」と答えている。

 

 菊花賞の3分切り。史上初の春古馬三冠。そして史上初の凱旋門賞馬。日本最強から世界最強へと至ったズヴィズダツァーリ。疲労や怪我などが心配ではあるが、その強さの証明をぜひ期待したい。

 

 

 

 

「あ、そうそう。ロジャーバローズだけど、毎日王冠勝ったぞ。秋天、来るらしい」

 

「屈腱炎からの復活。G2なら敵なしじゃないですか? 日経新春は3着だけど、日経賞と毎日王冠。友康さんから見てどうですか?」

 

「いい脚してる。秋天はコントレイルとかの方が強いけど、2400の適正ど真ん中だからな。ジャパンカップ。ツァーリがいなけりゃ。なんてよく言われてるけど、実際ツァーリがいなけりゃサートゥルナーリアは皐月賞馬。ロジャーバローズはダービー馬。打田さんも同じ考えでしょう」

 

「まあ、コントレイルもツァーリがいなかったら何冠取ってんだ。って話ですしね」

 

「そうだな。とりあえず、俺たちは安全に秋天を走らせることだけ考えよう」

 

「はい」




出走成績 17戦16勝
獲得賞金総額22億6500万+298万ユーロ

18/09/22/土 新馬戦 2000メートル 
 1番人気 1着 2:01:8 700万
18/11/17日 東スポ2歳s 1800メート
 1番人気 1着 1:45:2 3,300万
18/12/28/金 ホープフルs 2000メートル
 1番人気 1着 2:01:2 7,000万

19/04/14/日 皐月賞 2000メートル
 3番人気 1着 1:57:9 11,000万
19/05/26/日 東京優駿(日本ダービー) 2400メートル
 1番人気 1着 2:22:5 20,000万
19/09/22/日 神戸新聞杯(G2) 2400メートル
 1番人気 1着 2:24:5 5,300万
19/10/20/日 菊花賞 3000メートル
 1番人気 1着 2:58:9(WR) 12,000万
   クラシック三冠 10000万
19/12/22/日 有馬記念 2500メートル
 1番人気 1着 2:30:1 30000万

20/03/22/日 阪神大賞典(G2) 3000メートル
 1番人気 1着 3:00:1 6700万
20/05/03/日 天皇賞(春) 3200メートル
 1番人気 1着 3:16:4 15000万
  裂蹄
20/11/29/日 ジャパンカップ 2400メートル
 1番人気 1着 2:22:9 30000万
20/12/22/日 有馬記念 2500メートル
 1番人気 2着 2:29:9 12000万 ハナ差
   1着 サートゥルナーリア 2:29:9

21/04/04/日 大阪杯 芝2000メートル
 1番人気 1着 2:00:2 13500万
21/05/02/日 天皇賞(春) 3200メートル
 1番人気 1着 3:12:5 15000万
21/06/27/日 宝塚記念 2200メートル
 1番人気 1着 2:10:7 15000万
      春古馬三冠 20000万
21/09/21/日 フォワ賞(G2) 芝2400メートル
 1番人気 1着 2:31:6 13万ユーロ
   2着 ディープポンド 2:31:8 1馬身差
21/10/03/日 凱旋門賞 2400メートル
 1番人気 1着 2:36:02 285万ユーロ
   2着 トルカータータッソ 2:37:62 大差

次走 21/10/31/日 天皇賞(秋) 2000メートル
有力馬 コントレイル エフフォーリア グランアレグリア

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