黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
ツァーリの走り方ちょろっと書いてます。こんなイメージで3分切ったんやでぇーってなもんです。
あと、活動報告あげてます。詳細はリンクで。ご応募待ってます!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=271189&uid=371990
春初戦。競走馬時代は、春の天皇賞を狙う加減で出なかった大阪杯から始動した僕は、重馬場の足元のおかげで全体のペースがゆっくりになり、そのまま何とか差すことができた。
天皇賞・春に関して言うことはない。E区分に敵はいない。
そして、この世界でクロノジェネシスと初対決になった宝塚記念。ダービーの前くらいから、事あるごとに教室で怪我するなと言い含めていたロジャーバローズが怪我をせず、もちろんサートゥルナーリアも出走していた。
『さあ、先頭引っ張っていくのはロジャーバローズ! 第4コーナーを抜けて先頭に入っていく! 内からするすると上がってきたサートゥルナーリアはクロノジェネシスと横並びか!!
阪神の直線は長い! 大外飛んでくるズヴィズダツァーリが5番手! 4番手! 3番手! 残り200! 速い! 速い! 速い!先頭ロジャーバローズを抜いて! ズヴィズダツァーリ1着! 無傷の11連勝!!』
4コーナーで飛び出したロジャーを追いかける展開。最内で前を伺っていたナーリアと中団外目にいたクロノが続く展開。外側から行った僕は、ギアが少しでも速く入るよう外側に膨らんで距離を稼ぎ、大きいスライドで一気に駆け上がった。
1着は僕。続く2着はギリギリまで粘ったクロノジェネシス。ロジャーは最後バテたもののナーリアを抑え切って3着と言う結果。
だったのだが……。
沖野トレーナーが、おハナさん事リギルのトレーナーに話を通したことで日程が決まり、明後日日本を出立する。そんな日。
トレーナーからは体休めとけ。とだけ言われてオフ扱いなので、学園のターフが一望できるベンチからみんなの練習を眺めていた。
Aターフはリギルの練習時間。サートゥルナーリアが秋初戦の天皇賞に向けて調整している。Bターフはカノープスの面々。ロジャーバローズがジャパンカップに向けて練習しているのをツインターボ先輩に邪魔されてる。あ、イクノディクタス先輩に技食らって退場だ。
「ねぇ」
「え? ああ、キングリー。どうしたの?」
突然声をかけられて振り向くと、そこにいたのは学友の一人。マイルから中距離を走る彼女。
「キング先輩もトレーナーも今日いないから、並走手伝ってよ」
「いや、今日オフだから」
「なんですの? お二人して」
「ナーリア。ツァーリが暇らしいから並走相手になってもらう」
「まだ何も言って……」
「なになに? ツァーリと並走? 混ざって良い?」
「ロジャーまで!?」
「私も。あなたに勝ちたいから。良い?」
「ツァーリちゃんと一緒に走る!! 良いよね?」
クロノとグランまで混ざってしまい、僕は抵抗することを諦めた。勝手にしろ。ってなもんよ。
「僕オフだから、一緒に練習するにしても走るのはなし。そもそも僕は食っちゃ寝てが大好きなの。だから今日は走らないよ?」
「なら私たちの練習見てよ。あなたを倒さないと、私たちの世代が弱いって思われる」
「てかそもそも、あんたの走りなんなの? 先行なの? 追い込みなの?」
相変わらず機嫌が悪そうなダノンキングリーは、ため息を吐きながら僕に尋ねてきたので、ノータイムで追い込みだと答える。
「僕の走り方はさ、自分で言うのもなんだけどチグハグなんだ。先生……、昔僕にレースの仕方を教えてくれた人と試行錯誤して、自分に合った戦い方をしてるけどね」
「はいはーい! ツァーリちゃんって、足ためてドゴーン! って感じじゃなくて、ジワジワ上がってる気がするのは?」
「ああ、単純にギアが入らないんだよ。短いと」
そーいえば、足の回転数上げてあの時の秋天とか勝ったけど、もうちょい早めに気付いてたら有馬でナーリアに負けることなかったのでは? ではでは?
「適正距離ってあるでしょ? それって、基本的には上がり3ハロンの全力疾走をした時、その体力を残せる距離だと思うんだよね。僕的に」
「それはあれですの? スタミナを使い切れる距離とかそういう意味ですの?」
お! ナーリアの捉え方完璧! その言い方次から使おう。
ちょうど、足元が砂なので、軽く絵を描く。
「ナーリアの場合は適正距離のマックスは2200。つまり、全力疾走をしてスタミナを使い切るには1600以下じゃないと成り立たない。クロノの場合はもう少し長いかな? 2200から2600くらいだと思うから」
「言いたいことはわかるけど、菊花賞3分以下っていうのは説明できないでしょ。あんた息も上がってなかったじゃん」
「ただ、その全力疾走って、はいどーぞ。っていきなり出せないでしょ? って僕は思う」
僕が言いたいのは、トップスピードに持っていける速度の話。加速スピードと最高速度は違うという話。
「ウマ娘的な感覚で言えばよくわからないと思うけど、人間は速さに憧れを持ってる。船の速度、新幹線。そしてF1」
F1。フランス語の規格という意味のフォーミュラ。その1。つまりは、世界最高クラスという意味(で捉えることができる)スポーツカーの最高地点。
それは、空気の流れを考え、直線では地面に押し付ける力を弱めることを考え速度を出し、コーナーでは地面に押し付ける力を強めることでギリギリの速さを求める。もっと細かいことを言えば色々あるが、ナーリアにはマルゼンスキー先輩がいる。多分セナプロとか好きだろうからそこら辺好きにしてくれ。
この世界で初めて見たが、僕はベッテルとライコネンが好きだ。
「スロットルを上げてエンジンの回転数を上げれば、僕たちのスピードはもちろん上がる。ただ、スロットルを踏み込んでから最高速に至るまでの速度が遅い。スライドが多い、体力をうまく使えない。色々あると思うけど」
僕の最高速度は同期の中で加速力最強のナーリアよりも速いが、規格外ほど大きな開きの差はない。4ハロン44秒1のバケモンだからな。こいつ。
そして、今のでわかったと思うが、ナーリアは最高速へ至る速さが余りにも速い。
「なら、最初っからギア上げていけばいいんじゃないの?」
「たしかにクロノの言う通りだ。だからやってる」
「え?」
「だからやってるんだよ。いつも」
そう。いつもやってる。皐月賞の中山2000も、ダービーの東京2400も、菊花賞の京都3000も。
「菊花賞の記録って考えれば簡単なもんでさ、みんなが出さないタイミングに、僕が速度を出してるだけなんだよ。暴論だけどね」
走り続けることそのものが僕を加速させる。だが、他のウマ娘に比べて加速率が低い。低い加速率を補うために常に加速をし続ける。ゴルシと同じだな。だが、その加速がある程度のものになるのが菊花賞で言えば1〜2コーナー間。1400〜1600くらい。
そこからもどんどん加速していくが、その頃はまだみんな抑えて走る。速いものなら3コーナーあたりで動き始めるが、普通はまだ動かない。
「もちろん加速し続ける僕は、3コーナーあたりで先頭に立つ。みんなが速度を上げる4コーナー直前でも、その後の直線でも。そして、2400ほどまで走ってやっと僕の最高速度の手前くらいになる」
「でも加速は止まらない」
「そう。あくまでも手前だからね」
だからロンシャンの形状はありがたい。前半は坂でスローペースだし、下り坂は長いから速度を少しでも上げられる。京都もそう。下りが短いから微妙だけど、春の天皇賞で走った阪神よりも100倍良い。
まあ、これ全部競走馬だった時の話だけどね。
「じゃあ、基本の練習は……」
「1秒でも早く最高速到達スピードを上げること。普通の練習は僕はあんまりしてないから、みんなの練習見るなんて。あ、でも僕から言えるのは、ストレッチだけは本気でやりなよ? 怪我して走れなくなったとか言ったら、殺すから」
少し威圧を込めて言ってやろう。殺す。と。
「同じ距離を走ることが少ないとは言え、ここにいる面々は僕がライバルだと思ってる皆だ。僕が負けるとすれば、君たちだ」
そういえば、彼女たちは生唾を飲み込む。
目の敵というか、目標というか。彼女たちからすれば、自分たちの存在など僕の視界にも入ってないと思っていただろう。特に、キングリーのようなタイプは。
「僕が海外に行ってる間、強い先輩は残るだろうし、新しい後輩が突き上げてくる。けど、君たちはそれを全部振り払うんだ。アレグリアはヴィクトリアマイル。キングリーは安田記念。クロノは有馬記念。ナーリアは秋天。ロジャーはジャパンカップ」
僕がいないから主役不在じゃない。決して君たちは脇役なんじゃない。
「僕が出てたら、もしかしたらズヴィズダツァーリが負けてたんじゃないか? ってレースが見られることを、イギリスとフランスから見守ってるよ」
よし、これで練習見るとか無くなっただろ。めっちゃいい雰囲気出し。うん。
「そうですわねツァーリさん!」
いや、なんで僕の手掴んでんの?
「そこまで言われたらやるっきゃないよね」
いや、ロジャーは背中押さんで?
「だよねー。さあさあ行こうツァーリちゃん!」
「早く行かないとターフのいい場所取られるからね」
アレグリアとクロノは両側に立たないで?
「星の皇帝にダート舐めさせてやんよ」
うん。キングリーが一番怖い。
「あーもう! お前ら全員ターフ外周五周してこい! スタミナ不安は距離走れ! マイル組はダッシュとスローの交互練! 僕は座って見とくだけだからな! 絶対だからな!!」
「はーい! ツァーリちゃんトレーナー!」
絶対お前ら許さない。
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