黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
多分、どんな書き方しても多少不満というか消化不良はあると思うけど、
できる限り少なくしたくて悩んでる。
あと、今話展開が急だけど許して。ウマ娘の話巻いてかないと。
上半期の最後である宝塚記念の後僕は海外へと渡り、チームリギルのグラスワンダー先輩とエルコンドルパサー先輩と共にイギリスとフランスへ喧嘩を売りに行った。
結局この世界でも飛行機は嫌いだった。
音がうるさいし、ファーストクラスでも縛られてる感があるし、揺れて寝れないし、酔うし。本当に最悪。その上楽しみにしていたフィッシュアンドチップスにデスソースをかけられたし。睡眠も邪魔されたし……。
けど、僕英語できないからなぁ。エルコンドルパサー先輩に、良い勝負を。ってどう言うの? って聞いたらめちゃくちゃいい笑顔で教えてくれたしね。まあ、お陰でイギリスもフランスもいい戦いができた。楽しいレースだったよ。本当。
「んで? なになに? スプリンターズステークスはグランが勝ったのか。マイルチャンピオンシップも。キングリーはハナ差二着。頑張ったな。秋天はナーリアでジャパンはナーリア・ロジャー・クロノが三つ巴って見方なのか……」
空港のロビーで携帯をいじる僕。
見ているのはレースの結果と分析的なことを記事にしているニュースサイト。そこに載っていた僕がいないレースでの話。
「ナーリアは距離不安があるデース! ジャパンカップの距離を走れなくはありませんが、ロジャーバローズの方が一枚上手だと思うデス!」
「あ、エル先輩もそう思う?」
トレセンまでは学園が車を出してくれると言うことなので待っていれば、両手にタコスを持ったエル先輩が後ろから話しかけてきた。
「距離適正的なこと言うと、ロジャーとクロノなんだよねー。ナーリアは厳しいかな?」
「エル。ツァーリちゃん。学園からの車が来ましたよ」
学園と連絡を取り合ってくれていたグラス先輩が僕達を呼んだ。どうやら、職員の一人がクルマを回してくれるそうだ。
「けどこれでやっと日本食が食べれる。おにぎり、天ぷら、寿司、ラーメン」
「あれだけ食べて太らないのがすごいデース! あんまり練習とか動いてるイメージないから、不思議デース」
「あー。多分燃費が悪いんですよ。僕。それに、食べる回数は多くても一回の量が少ないから、総量で言えばそんなにだと思うよ? スペシャルウィーク先輩の方が食べてる」
エル先輩もグラス先輩も笑っていた。どうやら心当たりがある様だ。
とりあえず私はグラス先輩の後ろを付いていき、学園が出してくれた車に乗り込む。僕の帰国を嗅ぎつけてきたマスコミには一切目線を合わせなかったのはまあ……。うん。
そして、戻ってきた学園。久しぶりのトレセン学園。
「お帰りなさいですわ。ツァーリさん」
三女神像の前で僕を待っていたのは、可憐な少女。サートゥルナーリア一人だけ。
「他の子達は?」
「特訓ですわ。誰かさんが海外のウマ娘たちを焚き付けたせいで、私たちジャパンカップ組が狙われるんですのよ?」
ナーリアは? と聞けば、彼女はどうやらオフらしい。後でエル先輩とグラス先輩にも挨拶するとのこと。
「海外はどうでしたの?」
「うーん。コース的にはあっちの方が走りやすいよ? 坂とかいっぱいだし。ただ、やっぱり芝は日本のが良いよね。反発感が良いから」
特にアスコット競馬場……。じゃなくて、レース場は良かった。開幕下り坂でスピード上げれるし、底からはずっと上りだし。コーナーが急なこと以外は最高。
「それで? 何か用があって僕を迎えにきたんじゃないの?」
そうです。と、私より茶が強い長髪が揺れる。
「エル先輩が仰ってましたの。凱旋門賞に勝った日の夜、ベッドに寝ていたあなたは、『先生』と呼ぶ方に謝っていたと……」
うげ。めっちゃ心当たりある。飛行機でテンション下がった上に、やっと寝れた時に先生の夢を見て、無理やりエル先輩に起こされてタコス口に入れられて……。
多分、何回かあったんだろうな。遠征中に。
「その先生というのが、日本を離れるときに仰っていた方と同じであると思うのですが」
「人の秘密に踏み込むには、相当の覚悟がいると思うよ?」
これはまだ、誰にも言っていなかった話だから。ほとんど同じ境遇だと想像できる、ゴルシにだって言えなかったこと。
「それでも知りたい?」
「ええ。あなたのことならなんでも。わたくしは、ライバルである以前に、あなたと共に歩む存在になりたいですから」
「はは。とっくの前から親友だけどね」
少なくとも皐月賞で戦った時から。僕にとってサートゥルナーリアという存在は大きな存在だよ。ったく。
「僕からは言いたくない。君から聞いて? 僕から話すと、色々とややこしく話してしまいそうだしね」
「なら、先生とは誰ですか?」
真っ直ぐ見つめて来るナーリア。その目は、全てを聞き出そうとしている目で、そこに躊躇いはない様に見えた。
「僕に走り方を教えてくれた人。打田幸博。この世界には居ない、僕を最強に導いてくれた人の一人。降ろされるかも知れないのに、お父さんと大喧嘩してまで僕に夢を持たせてくれた人」
僕には何も言わなかったが、あの厩舎での後、先生は大魔神に頭を下げたらしい。全ておっちゃんからの情報だから、どこまで本当かはわからないが、無事であることを大前提としていた大魔神に対して、喧嘩を売る様なローテーションを先生は提案した。
凱旋門賞から4週おきに秋天とジャパンカップに出るローテーション。そもそも、秋古馬三冠のローテーションだって負担が大きいからと回避する陣営が多いのにという話。
どう言った内容をしていたかはわからない。ただ、「お前の夢にうちの子を巻き込むな」と大魔神が言ったとおっちゃんは言ってたし、先生も先生で、「最強の馬に最強の夢を見なくて何がホースマンですか!」と大魔神に言ったらしい。
最終的には、僕に少しでも怪我や疲労感が少しでもあればすぐに出走取り消しすると決定され、僕は引退レースの有馬記念まで走り切った。
外野はクソローテのせいだとかなんだとか好き勝手言うけど、僕にとって全力で戦いに行っての負け。先生も大魔神もおっちゃんもみんなバッシングを受けていたが、引退した時のインタビューで言っていた通り、悔いはなかったろう。全力出して負けるほど悔しいことはないが、慢心で負けるほど許せないことはないから。
僕は左の首筋に手を添えた。
「なら、なぜ謝るのですか? 休み時間にあなたが寝ている時によく謝ってますが」
「ナーリアは、大切な人っている?」
僕は、ナーリアの質問に答えではなく、質問で返す。
僕を産んでくれた
「僕はね、何人も大切な人がいるけど、本当に会いたい人には会えない。だってこの世界にいないから」
嘘を言って僕を怒らせる大魔神はいない。
女の人が僕を見にきてやる気を出すことに呆れるおっちゃんはいない。
僕の走りを見て、勝ったらお疲れと首を叩いてくれる先生はいない。
「この世界に生まれ落ちて、日にちが経てば経つほど、勝てば勝つほど、あの人達は遠くなっていくんだ。信じられる? 褒めて欲しい人に褒められないどころか、その人の顔も、声も、手のひらの感触も忘れかけてるんだ」
正直、みんなの顔は輪郭と服装くらいしか覚えていない。思い出せない。
みんなと一緒に走りたいのに、僕の記憶は、みんなを消そうとする。もう、みんなが必要ない。なんて言ってる様で嫌になる。
「僕の夢は無敗。それは先生たちへの恩返し。まあ、言ってる人には言ってるからね。ナーリアたちも聞いたことあるかも知れないけど」
「相談できる相手はいないのですか?」
「いるよ? でも、言えないんだ。この感情も、思いも、僕だけのものだから」
「わたくしや、わたくし達に出来ることはありますの?」
「あるよ。怪我せず、全力で僕を叩き潰しに来ること。たとえ僕がみんなの事を忘れてしまって、存在がいた事しか覚えていなくても、強い君達を倒せば僕はみんなに愛情を返せる。この世界にいる意味がある」
君たちが僕に教えてくれたんだ。この世代の名前が、この時代の名前が
「僕が抱えてる問題を説明するのは本当に難しいよ。僕にある言葉にできない情報が、君たちにはないんだから。ただ、僕が問題を抱えている事を気づいてくれたのはありがとう。ジャパンカップは厳しいだろうけど、頑張って。ジャパンカップの海賊王。いや、今代の
「ええ。重々承知ですわよ」
適正距離であるチャンピオンディスタンスに於いて、あの存在はレベルが違う。クラシックでロジャーに経験が少なかったから勝てたダービーとは違い、古馬じゃ頭一つ飛び抜けてたと思う。
ナーリアが秋の天皇賞にいたら、色々変わってたのかな?
「まあ、チグハグな話でわけがわからないと思うけど、僕が言えるのはひとつだけ」
僕は僕のために走る。それ以上でもそれ以下でもない。
『さあズヴィズダツァーリは外を回る。ズヴィズダツァーリは5番手から4番手、3番手、前との差は6バ身程でしょうか。ズヴィズダツァーリが一気に2番手まで上がって来る! 残り300メートル!
しかし前とは5バ身ほどある! 残り200メートル! ズヴィズダツァーリがんばれ! ズヴィズダツァーリが来る! 前とはまだ3バ身ある! ズヴィズダツァーリ勝ち切れ!
ズヴィズダツァーリ! ズヴィズダツァーリ! ズヴィズダツァーリぃ! 勝ち切ったズヴィズダツァーリ! これで今年も6戦6勝の年間無敗達成!! このウマ娘の旅路は終わらない!!』
「あれ? クロノちゃんまたツァーリちゃんの香港ヴァーズ見てるの?」
「うん。ツァーリは坂を得意としてるけど、シャンティンレース場はほとんど平坦だから、走り方を研究すれば日本のレース場でも活かせると思う。私が一番になるには、一番強い人から研究してかないと、ジャパンカップじゃ、ロジャーにもナーリアにも、届かなかったから」
有マ記念がある中山は大きな山がある。それの攻略法も既に考えてある。あとは走るだけ。だから、来年の6月。来る最強との戦いのために、私は準備する。
「あんまりやりすぎてもダメだからね? 有マ記念近いんだから」
「わかってるグラン。ありがと」
「私はツァーリちゃんと同じ距離で戦うことなんてほとんどないけど、やっぱり目標だよね」
「うん。誰よりも先に、私が勝つ」
布団を被ったグランを他所に、私はもう一度香港ヴァーズでのツァーリの走りを確認し始めた。
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