黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
ナーリア 秋天、大阪杯
ロジャー JC、春天
クロノ 有マ、宝塚
グラン マイル以下いっぱい
ダノン 安田
なお、みんなナーリアたち3人はツァーリがいないから勝てたとか言われる始末。ただ、ツァーリが化け物すぎるだけで草。
緊張の雰囲気があるジャパンカップ。
まあそれもそうか。相手は世界の星帝。海外で5勝。国内で7勝の化け物。
あのナーリアの得意な距離である2000メートルで、ハナ差とはいえ追い込みで差し切った怪物。
本当に勝てる? なんて気持ちが生まれるが、首を横に振る。
会見で言った。負けないじゃなくて、勝つんだと。二度目のダービー。成長した僕が、全力の彼女を蹴り飛ばすんだ。
「調子はどうですか? ロジャー」
「調子は良いですよ。しっかりと」
G1制覇まで後一歩。なんていう集団になっていたチームカノープス。その一員が私、ロジャーバローズだ。
ナイスネイチャ先輩は有マ記念3年連続3着って言う凄い能力を秘めてる人で、マチカネタンホイザ先輩は良い素質を持っているものの怪我や腹痛など不運が多い人。ただ、ライスシャワーさんやあのミホノブルボンさんに続く菊花賞3着の実績もある。イクノディクタス先輩はかなりの丈夫で、何十戦とレースに出てるが、全く怪我の素振りを見せない。
「ロジャー! ターボ作戦考えた!」
ツインターボ先輩は、私が憧れた人。どんな時もあきらめない彼女。
勝ち鞍はオールカマーと七夕の2レースで、どれだけの人を勇気付けたかわからない。もちろん私も、そんな彼女の姿に感動したタチなのだが。
「なんですか? ターボ先輩」
「えっとね、スタートするでしょ? で、飛び出して、そのまま一着でゴールするの」
「ターボ先輩? それは作戦じゃないですよ? 私は逃げじゃなくて先行です。逃げのペースに隠れてしっかりと走り、抜け出して、勝つんです」
「そうですね。ターボさんの作戦も良いですが、無理にこれまでと変えない方が良いですね。目下の敵はズヴィズダツァーリ。2400はロジャーさんの距離ですが、彼女にとっても庭です。最後方から飛んでくる彼女の強さ。それに対処するには、前でペースを守って脚を溜め、最後の坂に備えること」
うん。トレーナーの言う通りだと思う。
「ダービーの時の1バ身差。あなたと彼女の距離は逆転してると僕は信じてます。やってやりましょう」
「はい!」
「ロジャー! いつものやる?」
ターボ先輩の提案に即答で返事し、背中を向ける。
「頑張ってこい!」
バシン! っと背中を叩かれ、チームカノープス全員の気持ちをもらう。
よし、行こう。私は、東京の地下バ道を進んで行った。
『東京の秋空の下に、世界各国から優駿が揃いました。東京レース場2400メートル、ジャパンカップです。
日本のウマ娘の注目は2人。一人は、フランスの最強達を押し除けジャパンカップを制した、今代の日本総大将。海賊王ことロジャーバローズ。2400は自分の庭だと、自信たっぷりの表情。トレーナーからのコメントも、これまでのベストに持っていけたと言うことで、2連覇に期待がかかります』
ターフに立ち、スタンドに向かって手を振れば、大きな歓声が沸き上がる。
私の姿を見に来てくれた多くの人に感謝と、期待に応える為に決意をし、頬を両手で叩く。
「うし!」
後は出航するだけ。ゲートの方向へと向かう。
『対するは、世界の星帝。国内G1最多タイの7冠バにして、国外合わせて12冠に輝く絶対の体現者・ズヴィズダツァーリ。本領発揮の2700以上ではありませんが、それでもチャンピオンディスタンスは自分のものだとこちらも気合十分。レース前コメントでは、「勝ちます」と、自信満々な言葉を頂きました』
やってきた青と白の彼女。その彼女の気迫は今まで見たことないくらいで、テレビで見ていた秋天のと同じか、それ以上だった。こんなプレッシャーを受けながら、ナーリアは戦ったのか。
「これが、星帝……」
「ああ、ロジャー。悪いけど、
ゲートの前までやってきた彼女が、青い瞳に火を灯して僕に言う。
足元の感じはすごい。体に合わせて作られてるはずの勝負服。脹脛と太ももの部分が張り上がっていて、重量も増えてるんじゃないだろうか。
「負ける為にここにいるバ鹿はいないよ? 星帝さん」
ツァーリは、それもそうだね。とだけ答え、そのまま動かなくなった。
いつものやつ。他の子達は、柔軟だったり気持ちを落ち着かせたりする中の不動。皆、慣れてはいるものの気にしてしまうそれ。多分これも、彼女の作戦の一つなんだろう。
「順番にゲート入り! お願いします!」
係員の指示で私たちは動き出し、私は3枠5番に、問題の彼女は一番端の16番に入る。
『海外の名ウマ娘が歴史の強さを見せるのか。それとも去年の覇者が今年もジャパンカップを守るのか。はたまた、絶対が、秋シニア三冠と生涯無敗に王手をかけるのか』
大歓声を受けた白。その音を聞いて力がこもる。
うん。行こう。
『ゲートが開きました!』
私はゲートに合わせて、これまでで1番のスタートを切れた。
すぐさま1コーナーに合わせて内側へと寄る。今日は逃げが2人。先行が6人。差しも6。残りが追い込み。
ちらりと横側を見てみれば、ツァーリもキッチリスタートを決めていたが、スルスルと後ろに降りていく。もうその姿を見るとすれば、最終直線だけ。
私の位置は、それほど速いわけではない2人の逃げの後ろ、少しかかり気味な先行集団先頭から1バ身離れた4番手。そのまま1コーナーをロスなく曲がる。
『もうすぐ2コーナーというあたりで、位置争いは落ち着いております。先頭4番、7番は逃げていますが、先行集団先頭の海外ウマ娘2番までは3バ身。それほど早いペースではありません!』
向正面に入れば、やれることは少ない。
できる限り無理をせず戦う。下り坂で脚を休め、前とは距離ができるが登りに備える。坂に対応すれば、このコースは大丈夫。
坂路の練習でネイチャ先輩に追いかけ回されたんだ。大丈夫。
『先頭はもう第3コーナーを回っている! 一番後ろ、しんがりのズヴィズダツァーリはどうか』
「 ッ!?」
なんだ? これは……。
菊花賞の時に感じた異様な圧力。気になる。この気持ち悪い背後に安心を覚えたくて振り向きたくなる。いや、だめだ。ツァーリの走りだ。これは。彼女は、走るだけで周りを落とす。
なぜかはわからないが、中盤までの間、彼女の走りは私たちを焦らせ、かからせる。だから、しっかり前を見て走らないと。
帆を畳め。ツァーリという暴風に、
「取り舵いっぱい!」
体を全力で傾け、転けないギリギリのスピードでコーナーを曲がっていく。
一歩、また一歩、と駆けて行く度に、僕の周りに波ができる。
正直スタミナはやばい。最後の直線で尽きるかもしれない。けど、そんなハラハラ乗り越えないと、あいつには勝てない!
波が、私の足跡に合わせて起きる。
大きな波が、進むべき道を惑わす。
でも、航海の方法は知ってる。
夕焼けの空に、星が見えた。
私の右側。視界の端ギリギリに黒い髪が見えた。これが星なら、僕は迷わず舵を取れる。
「勝負ダァ!! ツァーリッ!!」
「まだだ! まだ終わらんよ!! ロジャーッ!!」
『第4コーナーから直線! ロジャーバローズが内側からスルスルっと上がってきたが、ズヴィズダツァーリが外側から急襲!! 先頭4番はここで2人に呑まれる! これは! 2人だけのマッチレース! 二度目のダービー!!』
全力で坂を登る。強すぎるパワーで芝が捲れ上がる感触があるが、そんなことどうでも良い。とにかく前。とにかく前だ。真横にいる黒に恐れ、逃げ出したくなる気持ちも、勝てるか不安になる気持ちも、何もかも、前だ。
「行けーっ!! ロジャー!!」
ほら、青色の髪が揺れてる。大きく口を開いて、両手を口に当てて叫んでる。
「互いにいい先輩を持ったね」
ターボ先輩の横には、並んだトウカイテイオーさんが、ツァーリに向けて大声で叫んでる。
「うん」
「でも、僕が勝つ!」
私が一つ瞬きをした瞬間、下を向いていたはずのツァーリが、少しだけ前にいた。
「2200は、越えたぞ」
『坂を上り切ってロジャーが体勢有利! いや、差し返す! 差し返す! 差し返して僅かにツァーリが前!!』
たった一ハロン。たった200メートル。それを絶望に変えられるのは何人いるだろうか。私は今、それを味わった。
ズヴィズダツァーリが最高速度へ至る為に必要な距離。それは2200メートル。それまでは、驚異的な末脚で誤魔化しているが、本来は超長距離特化の足。
背中が遠ざかる。
また負け? ふざけんな、私は、何を見てきた!
「カノープスは諦めないんだよ!! 弱気な私が自信を持てたみたいに、皆あの人にターボを貰ったんだ!!」
人一倍努力を尊び、誇り、讃える。
人一倍喜びに共感し、感情豊かに自分を魅せる。
あの汚れのない大海の青を、夜空に輝く龍の骨の優しい恩恵を。
「 ッ!!」
『ロジャーが再び伸びる! どうだ! どうだ! 並んだ! 並んだ! 並んだままゴールっ!! どうでしょうか! 私の目には両者の優劣はつけられないほどの大接戦、掲示板の表記は写真判定です』
ゴール板を抜けた私たちはペースを落とし、ゆっくりと止まる。
私たちは掲示板の二文字を見詰めていた。
「ねぇ、ロジャー」
「何?」
「忘れられないものに想いを馳せるのも悪くないけど、ちゃんと見つめてくれる相手への恩返しも、覚悟だよね」
「ん? うん。カノープスのために走ったよ」
どういう意味かはわからないけど、ツァーリがイギリスに行った後ナーリアが言っていたことを思い出した。私たちとは違う私たちを見てる。という言葉を。
「ツァーリは勝ちたいって思ってるのと同じくらい負けたい気持ちあるんじゃない?」
「あー。あるかもね。でも、それならロジャーかナーリアが良い。今日みたいな、ギリギリの戦いの上で負けるなら、案外楽しいかも」
写真の文字が、ハナ差に変わる。掲示板の上には16。下は5番。
秋の天皇賞から2レース続けて、ワールドレコードで決着。タイムは2分20秒4。
「有馬で」
「え。それナーリアにも言ったんでしょ? 聞いたよ?」
出された拳に、私も拳で返す。
彼女が両手で8を作る姿に背中を向け、ターフを去る。頬に落ちた雨に気づかないフリをして。
まあこの後通路でカノープスのみんなに抱きしめられて泣き喚いちゃうんだけどね。
まだまだ募集してるのでぜひ!
ツァーリの産駒名募集します!
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the HERO 募集の活動報告
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