黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕)   作:パンダコパンダ

5 / 58
 本日一話目


競走馬ー3:気づけば年の瀬そして新年

 僕は案外やるらしい。

 

 新馬戦に勝った僕は、1ヶ月と半月(?)ほどまた調教を受け、東京競馬場で行われる東京スポーツ杯2歳ステークスに出走した。

 新馬戦より短い1800メートルの勝負。途中大きく一回登るものの、一発目に坂を降って、最後に長い間登っていくコース。カーブも3箇所しかないので違和感しかなかったが、他の馬が最後の上り坂でバテてしまったのを尻目にぶち抜いて一着を取った。

 

 そして3戦目。今日のレースの足掛かりが前の試合だったらしく、3戦目にしてG1競走。調教師のおっちゃん改め、友康道夫さん曰く、これはかなりいいのだとか。

 無敗で進めていること。アップダウンに対応できるスタミナと脚を鍛えられていること。デビューが2000メートルだったため経験があること。そして何より、皐月賞と同じコースで走れること。

 それらを踏まえた上で、大魔神がホープフルステークス出走を決めたんだとか。まあ僕的には、頭空っぽにして走ることができれば文句はない。

 

「調子良さそうだな」

 

「いい脚してる」

 

 パドックを観覧している人たちが、僕たちの体を見て好き勝手に感嘆を漏らしていた。トモの感じや汗のかき方。歩き方とジロジロ見られているのはまだ慣れない。人数が少なければ問題ないんだけどね。

 けど別に焦る気持ちもない。馬によってはイレ込む? なんか暴れてる奴もいるし、やばすぎるやつはだいたい歯茎になんかチェーンつけられてる。今日はいないがこの前はいた。

 

「相変わらずツァーリは大人しいね」

 

 厩務員のお姉さんに言われる通り、僕は今日もおとなしく歩いている。ちなみに、打田さんが騎乗しても大人しいままなので、新馬戦の時は慌てられた。ゲートに入る直前になって、よしやろう。って気合を入れるから、他の馬に比べればめんどくさいだろうな。

 

「ツァーリ。今日もよろしく」

 

 とかなんとか言ってたら来た打田さん。

 ヒョイっと背中に乗った彼が僕の首を撫でる。彼も彼で大人しいな。なんて言うが、そう言われて入れ込むほど慌てん坊でも暴れん坊でもない。と言うか、正直レースの実感がないんだよな。だってまだ走れるわけじゃないし。

 逆に返し馬になると走りたい気持ちが大きくなるから良く抑えられてるけど。というわけで、今日もしっかり嗜められながら準備運動を行う。

 

 脚は動く。問題ない。

 息もしやすい。大丈夫だ。

 そして走りたい気持ち。十二分。

 

「もう少しで枠入りだから、やる気出してくれよ」

 今日の枠は4枠5番。青と水色の勝負服を見に纏った彼の言葉で、そろそろだなと重い腰をあげる。頭をブルルと振った僕は、ゲートへ進む。

 

『さあ、8枠13番の大外枠コスモカレンドゥラが入りました』

 

 ゲートが開く。

 

『さあスタートです。

 

 好スタート好ダッシュを決めたのは一番人気のズヴィズダツァーリ。ですが打田騎手、ゆっくりと下げます。代わりに出てきたのは8番アドマイヤジャスタ。1番最内のニシノデイジーとともに上がってきた13番コスモカレンドゥラも上がって先頭争い。先頭集団を形成します。

 

 続いていきます。12番タニノドラマ。内につけた2番ブレイキングドーンと4番ヒルノダカールが並走し第1コーナーに入ります。6番・9番と続きスタートダッシュを見せた5番ズヴィズダツァーリは10番手まで下がって脚を溜め、7番ミッキーブラックの後ろ。

 

 眩しい日差しを受けながら、13番コスモカレンドゥラ出ます。1馬身半の差を受けて8番アドマイヤジャスタ。全く差がなく馬群を形成先行集団。

 

 レースは進んでいく。コスモカレンドゥラは少し落ちてきているか? アドマイヤジャスタとの差がなくなってくるが依然順位変動なし。

 

 向こう正面半分過ぎた。後ろから3番手の5番ズヴィズダツァーリは前へ出られるか。11番バンドギャルド、殿3番キングリスティアカーブで上がってくるぞ! 第3コーナー入ってくる。外側、先行集団に追いつく7番のミッキーブラック上がってきたぞ? 後方集団がいい位置につけている。

 第4コーナー抜けて直線に入る! 直線は短い上に急坂だぞ! 先行馬逃げ切れるか! 先頭に立った8番アドマイヤジャスタいい調子だ。外からニシノデイジーも来るがさらに大外やって来た!』

 

 バシンッ! と鞭が入る。

 これまで打田さんは、僕に鞭を振って来なかった。新馬戦だと緩んだのを勝手に進み、前走は声をかけてくれた。ここだっ! って。まあそれも、声と同時に手綱が緩んだから一気に出たんだけどね。

 けど、今日は違う。右の肩あたりに軽く入る。

 

 ああ、勝ちたいのか。この人は。

 

 なら応えよう。緩んだ手綱は、僕が引っ張る。

 

『来たぞ来たぞ1番人気のズヴィズダツァーリ! 坂をものともしないぞズヴィズダツァーリ!

 

 あっという間に前に出た! ニシノデイジー内から出てくるがズヴィズダツァーリが差を広げる! そのままゴールだズヴィズダツァーリ! その差は2馬身!!

 

 勝ちましたズヴィズダツァーリ1着! 続いて2着は8番のアドマイヤジャスタ。1番ニシノデイジーは3着です』

 

 いつも通り、スピードを落としつつターフを走る。脚を止め他の馬たちに合わせ馬場から離れる。

「次も勝とう。ツァーリ。この場所で」

 

 大魔神が言っていた。このレースに出たのは、皐月賞と同じコースで走るから。激しいアップダウンに合わせてレースをできるかの確認をすることを一番に。なんてことを、調教師のおっちゃんと打田さんの3人で話していた。

 大魔神たちは何度も皐月賞と口にしてた。それだけ重要なレースなんだろう。人だった頃は、競馬に触れてこなかったためよく知らないが、それでも打田さんが意気込んでる。大魔神も、おっちゃんもベテランなんてわざわざ付ける打田さんが。

 

 12月28日(土)中山競馬場11レース。

 G1 ホープフルステークス 13頭 芝2000メートル。

 1着 タイム 2:01:2 1人気(1.7倍)

 

 2歳の暮れ。同世代の一番として年を過ごした僕はそのまま無敗として最優秀2歳牡馬に選出され、年明けは栗東トレセンから近いノーザンファームしがらきにて、成長を促すための放牧に。トライアルには出ないこととなった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 というわけでノーザンファームしがらきに居ます。現場のズヴィズダツァーリです。年が明けて一月の中頃。雪も積もってたりします。ちょっと寒い時もあるけど、人時代は雪が積もらない地域にいた気がするので嬉しい。

 

「チビ。元気か」

 

 相も変わらず顔を出してくれる大魔神。多分今日が初日だったのもあって来てくれたんだろうが、素直に嬉しい。

 そんな大魔神から驚きの言葉を受けた。

 

「好きなだけ食べて好きなだけ寝て良いぞ」

「ぶるっ!」

「おお! ゆっくりしろ! 3月手前くらいまでだけど」

 

 思わず「マジ!?」と声に出してしまったが、まずは1〜2週間は体を休めることをメインに据えるとのことだ。

 そのあとはおっちゃんが放牧? の計画を大魔神に話していたが、まずはストレスや疲労を完全に抜き切り、そこから筋肉が衰えない程度の運動で体の状態をキープし、クラシック三冠に向けての調整を始めるらしい。

「パワーは内田さんも言う通りありますから、とにかくスタミナですね。菊花賞は3000。10月なので自然に着いていくでしょうけどあって困りませんし」

 最終的には495キロくらいに絞って行くとの事。

 

「ぶるるっ……」

 

 おいおい、ダイエットすんのかよ……。なんて僕の声は受け流される。

 

 けどまあ良いや。とりあえずは好き勝手しよう。

 せっかく広い場所に来させてもらったんだ。いつもみたく馬房でじっとするんじゃなく、ちょっとは動こう。せっかく広い場所にいるんだから。

 

「じゃあまた今度なチビ。成長したお前を見にくるから」

 

 そう言って大魔神は去って行く。僕は頭を下げて挨拶して彼を見送った。




 出走成績 3戦3勝(G1:1勝) 獲得賞金総額1億1000万

 18/09/22/土 新馬戦 2000メートル
   1番人気 1着 2:01:8 700万

 18/11/17日 東スポ2歳s 1800メート
   1番人気 1着 1:45:2 3,300万

 18/12/28/金 ホープフルs 2000メートル
   1番人気 1着 2:01:2 7,000万
     2着 アドマイヤジャスタ 2:01:6 2馬身差


 次走 19/04/14/日 皐月賞 2000メートル

黄金一族でどの馬が好き?

  • 香港ヴァースに泣いたステイゴールド
  • 日本に残ったドリームジャーニー
  • 芦毛の千両役者ゴールドシップ
  • 批判を実力で黙らせたオルフェーヴル
  • 障害の王オジュウチョウサン
  • 春天二連覇の怪物フェノーメノ
  • 濃縮された気性難ナカヤマフェスタ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。