黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
シルクヒョードルとエカチェリーナ。
ズヴィズダツァーリの種牡馬としての評価はかなり高かった。
それは、初年度産駒、2年目産駒に化け物が2頭生まれたから。
1頭はシルクヒョードル。
シルクレーシングの至宝であるアーモンドアイとの産駒である牡馬であり、コントレイルに続く親子で無敗三冠を達成した。
もう1頭はエカチェリーナ。クロノジェネシスとの産駒である牝馬であり、メジロラモーヌと同様牝馬旧三冠をトライアル込みで完全勝利した。
そんな2頭について話していく。
◆◇◆◇◆
シルクヒョードルの特徴は、なんといっても中距離特化である。
父ズヴィズダツァーリの特徴は3000メートルを3分以下で走れる長距離特化であるが、彼は母であるアーモンドアイの血が強かった。
新馬戦を2馬身差の快勝で飾ったヒョードルは、そのまま3戦3勝で放牧、父と同じく新年一発目のレースを皐月賞に定め、これを馬なりのまま勝利する。
エフフォーリア以来の無敗皐月賞馬誕生に、世間はすでに三冠馬だとそう評価する。続くダービーを4馬身差。シャフリヤールのダービーレコードをコンマ3更新する2分22秒2で圧勝。神戸新聞杯も1馬身差で勝ち上がり、迎えた菊花賞。
距離不安はない。そう言われていた。ツァーリの血があれば、長距離に対応できると。結果は、ハナ差の1着。喉元にナイフを突き付けたのは、父のライバル、ロジャーバローズの産駒であるシモンバローズ。
菊の舞台で逃げを打ったシモンバローズが最後の最後まで逃げ続け、ゴール板の僅かに2メートル前でヒョードルが交わした形だった。
この日、生まれながらの皇帝は、星を継ぐものではないことが判明した。
だが、中距離では無敵だった。放牧で菊花賞の疲れを完全に抜き迎えた有馬記念。古馬相手に半馬身差での勝利。父同様クラシック期を無敗で終わらしたヒョードル陣営は、春古馬三冠を狙いにいくと発表し年を越えた。
26年。大阪杯ではサートゥルナーリアの産駒であるメイショウメイデイに2馬身差勝ちするものの、続く春の天皇賞はシモンバローズの二着。これにより、無敗は9で止まった。
追い込みで飛んできたヒョードルが僅かに前に出た途端、前で逃げていたシモンバローズが伸びたのだ。完敗と言って良い結果になった。
だが、宝塚記念の勝利を手土産に海外遠征を行う。
フォワ賞を危なげなく勝利し、父子で凱旋門賞制覇を期待されるものの結果は4着。連続連対も12で止めてしまうこととなった。
日本に戻ったヒョードルは憂さ晴らしのようにジャパンカップにて3馬身差。シモンバローズにお礼参りを達成する。有馬記念は出走せずに27年に備えることを発表した。
迎えた27年の大阪杯。昨年のスプリンターズステークスと秋天を連勝していたメイショウメイデイとのマッチレース状態になる。
最終直線を抜け出した2頭は、僅かながらヒョードルが体勢有利のまま勝利。僅か12センチでの決着となり、ヒョードルが2連覇を達成する。これで、母であるアーモンドアイのG1・8勝を超える9勝を記録。国内12勝まであと3勝まで近づく。
世間からバッシングを受けたものの、ヒョードル陣営は春の天皇賞へ出走を登録。無敗三冠馬である父、コントレイルに続く春古馬三冠を再び狙いに行ったものの、結果は2連覇したシモンバローズの4着。国内で初めて連対を逃した。
この結果を受けて皆に言われるようになる。ツァーリ産駒は、「天皇賞に勝てない」と。
復讐とばかりに、2番人気のシモンバローズに再びやり返した宝塚記念。4馬身の圧勝で2連覇を達成すると、そのまま再び凱旋門賞への挑戦。フォワ賞2連覇の成績から2番人気に推されるも、ハナ差での惜敗。
シルクヒョードルの凱旋門賞挑戦は幕を閉じた。
そして、引退レースの有馬記念に話が続くが、その前にもう一頭の話をしよう。
◆◇◆◇◆
エカチェリーナ。生まれながらにしての皇帝・シルクヒョードルの妹であり、母は牝馬最強格であるクロノジェネシス。
生まれながらにして勝利を渇望された兄同様、エカチェリーナも勝利を求められた。
彼女はとても美しかった。メジロラモーヌを彷彿とさせる光沢のある青鹿毛。そしてツァーリ以上の人懐っこさ。優しく、人の言うことに敏感でしっかり意図を理解できる馬。主戦ジョッキーとなる豊丈は、優しすぎるから戦えないのでは? と不安するほどだった。
だが、蓋を開ければ、新馬戦は快勝。同じ父を持つアパパネ産駒、ブチコ産駒の牝馬を物ともせず1600メートルを走り切った。
そのままオープン戦を快勝。続くレースはクビ差2着。負けてしまったが、状態は良いと2歳の最強牝馬を決める阪神ジュベナイルFへ出走させ、見事1着。翌年チューリップ賞を勝った勢いのまま、桜花賞、そしてオークスを制覇。
だが、秋華賞へ出走せず、エリザベス女王杯へと行くことを発表すると風向きが変わる。
メジロラモーヌの時代は、牝馬路線が明確に整えられていなかったからこそのエリザベス女王杯だが、今は秋華賞がある。それなのになぜ? そんな空気が広がった。さらに、調教師が同期に敵はいない。と発言したことが周りに火を着けた。
メジロラモーヌ以来の牝馬旧三冠挑戦。府中牝馬Sを制したことで一気に有力馬へと躍り上がったエカチェリーナは、1番人気を獲得、オッズは1.4倍。だが、桜花賞・オークスの上位入賞馬、古馬の最強格がエリザベス女王杯へ集まった。2番人気は、ヴィルシーナとロードカナロアから生まれた、昨年オークス馬。今年に入っては高松宮記念を制しているスヴィエトが待ち構える。
しかし、結果はエカチェリーナがハナ差の接戦を制して勝利。見事、旧牝馬三冠を達成することとなった。
27年、陣営はエカチェリーナの短距離適性を確認する意味も込めて、高松宮記念に出走。しかし結果は4着。続くヴィクトリアマイルは勝利するも、秋の天皇賞は5着。ズヴィズダツァーリの産駒は、春の天皇賞だけではなく、秋の天皇賞も勝てない。その意見が一気に強くなった。
そして迎える、最初で最後の兄妹喧嘩。
年末の中山競馬場のスタンドは満員だった。人気投票の一位、そして、一番人気もシルクヒョードルのものだった。対抗馬である解放王・シモンバローズが二番人気。エカチェリーナは距離の不安から三番人気となる。
そして、ゲートが開いた。
飛び出したのはシモンバローズ。普段同様飛び出したシモンバローズが先頭で残りの15頭を引っ張っていく。
エカチェリーナは中団先頭で最内を走り、シルクヒョードルは最後尾で前を伺う展開。高い山を登り、向正面に入ってきて馬群が縮まっていく。第3コーナーを回ったところでシルクヒョードルが動き始める。馬群の外側を通り上がってきたシルクヒョードル。4コーナーで馬群から抜けたエカチェリーナ。スタートから一番を守り続けていたシモンバローズの三頭。
シモンバローズをシルクヒョードルとエカチェリーナが抜き去る。そして、2頭だけが中山の急坂を登る。
『エカチェリーナだ! エカチェリーナが最強の兄から逃げる! ヒョードルが追う! 皇帝が崩れる! ラストランで! 生まれながらの皇帝が!
魔性の青鹿毛が! エカチェリーナが! シルクヒョードルを王位から追放した!! これが妹からの、最初で最後のプレゼント!!』
皇帝の終わりを女大帝が決めた。専門外の距離を勝ち切ったエカチェリーナは国内最強馬として君臨することになる。が宝塚は6着。おまえ、フロックか?
そして翌年。エカチェリーナはヴィクトリアマイルとエリザベス女王杯を勝利して引退することとなった。
◆◇◆◇◆
「親父。どうやって春天勝ったの?」
「え? 春天なんか普通に走ってたら勝てるよ」
「いや、シモンバローズが強すぎてさぁ」
シモン? バローズ? ってことはあれか、ロジャーの子供か。すげぇじゃん。春天2連覇かよ。あと有馬も勝ったんだっけ?
「パパ、気にしなくていいよ? ヒョードル弱いもん。私に有馬で負けるくらいだし。私に勝った後、凱旋門賞頑張ったから良いんだ。とか言ってたし」
「そりゃやばいな。僕はそういう言い方しなかったぞ?」
面白いからエカチェリーナに乗ろう。悪ノリも楽しいし。
「あ、そうそうステイブラックは?」
「まだ走ってる。絶対国内で勝つ! って言ってたよ?」
ステイブラック。僕の子供の中でも一番気性が荒く、よく川添さんが被害を受けてる子。
クラシック期は良いところがなく、勝ち鞍もエカチェリーナが有馬記念をヒョードルから奪い去った年に取ったメルボルンカップを取るまでは阿寒湖特別だけの子で、国内のG1には全く縁がなかった。
「いつまで走るんだろうな。あいつ」
「諦めないっていうのは、私的にいいけどね。どっかの誰かさんみたいに言い訳しないし」
二頭の言葉がどんどん強くなってきたので、僕はさっさと離れる。
今年はステイブラックの全弟であるブラックジャーニーがクラシックに入る年。ホープフルステークスは勝ってるから、いい勝負が出来るんじゃないかな?
「親父! どっちが悪い!?」
「パパ! ヒョードルが悪いよね!!」
「えぇ……知らん」
シルクヒョードル 生まれながらの皇帝
母アーモンドアイ
20戦15勝 G1:10勝
24 ホープフルs
25 クラシック三冠 有馬
26 大阪杯 宝塚 JC
27 大阪杯 宝塚
エカチェリーナ 青鹿毛の女大帝
母 クロノジェネシス
17戦12勝 G1:8勝
25 阪神JF
26 桜花賞 オークス エリ女
27 ヴィクトリア 有馬
28 ヴィクトリア エリ女