黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
次回有馬です。
「もー。やばい! 訳分からん!! ナーリア! これ何!?」
「もう少し静かにしてください。隣にいるんですから、そんなに大きな声を上げなくても教えますわよ」
どれどれ? と右側から顔を覗かせるナーリア。問題をさらっと読み、答えになるヒントをくれると、自分の勉強の方に戻る。
僕は、渡されたヒントを使って唸りながら答えを書くと、すぐさまナーリアが答え合わせを行う。と言っても、合ってたら何も言わず、間違えていたらやり直しと言われるだけなんだけどね。
「ツァーリちゃん、なんで急に勉強するようになったのー?」
「アホの子じゃダメな目標ができたからだよ? グラン」
左隣にいたグランのおでこに、ぴーんっと一発入れてやる。両手でおでこを抑える彼女は可愛いが、一旦置いておこう。乳突くな。おい。
「目標って?」
「トレーナー。ナーリアと、スカーレット先輩のおかげでだいぶ良くなったし、キタの成長もいいからね。あっちの勉強もだいぶいい感じ」
「ふーん。私が教えてあげようか? ツァーリちゃんにつきっきりであんなことからこんなことまで……。じゅるり」
「貞操の危機を感じるから遠慮します」
「グラン? 補習組なのに何教えるの?」
「そりゃあ」
グランは、横にいたクロノに現実を突きつけられるが、うん。わかるよ? 保健体育だろ? お前の中身おっさんだろ。まじで。
けど女の子ってスキンシップ多いとか聞くからなぁ。抱きついたりチューしたり。あれ? 僕グランにしかそれされてなくね? あれあれ? ナーリアは生徒会室でよく会うけど、そういうの全くないし……。
「騙されてる?」
「大丈夫ツァーリちゃん! 騙されてるって……。まさか、トレーナーさんに!?」
「んな訳ないでしょ! まあ、なんていうか、性自認ってわかる? 僕って、気持ち的には男の子なんだよねー。だから、まあなんていうの? 女の子同士で集まると、グランみたいにチューされたりおっぱい触られたりとかすると思い込んでたけど、実際してくるのグランだけだなぁって」
「そそそ、そんなハレっ! 破廉恥なこと!!」
「ツァーリ。グランの頭がおかしいだけだから。ほら見て?」
「ツァーリちゃんが男の子? なら禁断の恋的な? でも女の子同士だと結婚できないし……。あ、アメリカに行けば同性結婚ができる。よし、マイル戦で賞金荒稼ぎして、高卒同時に結婚。これだ!」
うん。これだじゃないね。てか、グランは僕のこと性的対象として見てるの? そのうちマジで襲われんじゃないの僕? 怖っ。
あと、ナーリアさんはやっぱお嬢様だね。顔真っ赤だし。
「でも、自分が育てた子で、僕の記録抜いてもらうのって面白そうじゃない? 原石だろうが、ただの石ころだろうが、磨けば光る訳でしょ? 宝石のようにキラキラしてるか、鈍色に怪しく光るかは別として」
その光るお手伝いをしたい訳だよねー。なんて言えば、単純なナーリアは感動して、すごい表情をしている。
「記録はいつか破られるもので、僕の凱旋門賞や、海外5勝だっていつかは破られる。でも、それは遠い未来の話じゃなくて、憧れたもの、夢を抱いたウマ娘に訪れるべきだと思う。トレーナーとして、120パーセントの愛情を注いだ先に、何がなんでもこの愛情を返すんだ。って思わせたいし、達成させたい」
まあ、生涯無敗さえ成せれば、僕の先生たちに向ける感謝と、チームスピカに対する恩返しもできる。それに……。
「それに、生涯無敗は並ぶことはできても超えることはできないでしょ? だから良いんだ」
「ツァーリ。ダノンが聞いてたらまた生意気って言われるよ?」
「良いの良いの。ダノンの生意気発言は照れ隠しだからね。でも、ダノンほど努力家もそうそういないよ。自分が劣っているのを自覚しても、腐らずに上だけ見続けられるやつってどんだけいる? って話」
最初は上だけを見られる。でも、それがデビューしてからしばらくして下を見るようになる。
まだ自分は一勝クラスだけど、あいつらは未勝利クラスだ。
まだ自分は二勝クラスだけど、あいつらは一勝クラスだ。
まだ自分は重賞未勝利だけど、G1のあいつらとは違うから。
私よりも弱いやつがいるから。
「生きてる限り、安堵を求めてしまうと想うんだ。僕は。でも、ダノンは安堵じゃなくて危機感を持ち続けた。それが、安田記念だよ。まあ、僕は、僕が一番だから他のやつら全員下にみてるけど、それでも油断じゃなくて警戒してるからね」
「その言葉が油断では?」
「まさか。そんな訳ないよナーリア」
油断してたら秋天で君を差せてないし、ジャパンカップでロジャーに差し返されてるよ。実際、あの時の有馬記念やジャパンカップを考えると、油断があればああなる。ロジャーは油断してなくて負けたんだから。
死神は、身構えてる時には来ない。なんていうけど、そもそもこの世に神なんていない。神が実在するのであれば、走らせるために生産された
でも、人間だけが神を持つというなら、ウマ娘となった今の僕たちに神はいるだろうか。いないのであれば生み出すだけ。今を超える力、「可能性」という名の内なる神を抱くだけ。その可能性を手放すからこそ死神がやってくるんだ。
つまりは全部、自分次第。
「だからこそ、やれることをやろうよ? ってこと。トレーナーになるために、学業の面は恥ずかしくてもナーリアを頼るし、グルーヴ先輩に泣きつくし、タキオン先輩の怪しい薬も飲む」
「うーん。ツァーリちゃん、タキオン先輩の薬はやめとこう? トレーナーさん光ってるもん」
「あー。でも、なんだかんだ言いながらちゃんと勉強教えてくれるし、ウマ娘に関してもヒトに関しても体のことも詳しいからね。たまに記憶飛ぶけど、タキオン先輩もカフェ先輩も次の日会ったら顔赤くするくらいで特に何もないし……」
何をしてたかは気になるが、聞いたら黒歴史になるから聞かないけどね。
「まあ、あなたはあなたですから、とやかくは言いませんわ。ただ、私たちも簡単にやられるようなタマじゃありませんからね」
「いいや、有マ記念は私が勝つ。ナーリアもロジャーもあなたも倒して、クロノジェネシスがグランプリに輝く」
「残念だったねクロノ。去年は僕が出てなかったんだよ? 僕が差してぶっちぎる。10バ身先の僕の背中でも見とくんだね」
「絶対勝つ」
「あ、ツァーリちゃん、そこの問題代入するの間違えてるよ」
「え?」
「あら、本当ですわね……」
そんなバカな!? と問題を解き直してみればその通りで、隣のグランは得意げな顔をしていた。うん。
「いたっ!? もう何するのさツァーリちゃん!」
なんかむしゃくしゃしたので一発グランにデコピン入れてやった。反省も後悔もしてないが、デコを抑えるグランは可愛かった。