黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
ツァーリの産駒名募集します!
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=271608&uid=371990
the HERO 募集の活動報告
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=271189&uid=371990
追記
ツァーリの真・領域の名前を変更しました。(長くて語呂が悪かったので)
改変前 極夜の向こうを見せる黒き太陽
改変後 明けの明星
有馬記念。それは僕が初めて負けたレース。
中山競馬場の外回り3コーナー目からスタートして、内回りを一周する独特なコースの2500メートル競走。
出走するのは、ファンの期待を受けた人気投票で上位のものだけ。
得票数第一位はもちろんこの僕。
パドックへ向かった僕は、相変わらずあくびを片手で隠しながら手を振る。
「最後だぞー!」
「あくびすんな、」
「最後くらい真面目にやれー!」
ファンのみんながそんなことを言うもんだから、今日くらいはいいか。なんて思って、一度下を向く。どんなポーズを取ろうか? 7冠を見せる感じ? 威圧たっぷり? 僕は自己主張が強いタイプじゃないから、テイオー先輩みたいにすぐに何か思いつく訳じゃないけど……。
心のゴルシが叫んだ。お前、魔王だろ。と。
今日は寒いからと、母から送られた青のコートを羽織っていたがちょうどいい。服装が白だから、魔王感はないかもしれないけど、良いよね?
僕は体斜めに向けると、右手で羽織っていたコートを脱ぎ、肩にかける。もちろん、自信たっぷりな表情で。
「勝てよツァーリ!」
「お前が絶対だ!!」
大きな歓声が僕に降り注ぐ。いいね。あがるよ。
「みんなには悪いけど、僕が勝つよ」
見ててね。スピカ。先生。みんな。
小さく呟いた言葉は、誰の耳にも入らない。歓声でかき消され、存在がなくなる。
瞳に青色の火を灯し、パドックを後にすれば、舞台の裏には、見慣れた三人。じゃなく、四人。
なんでいるの?と、僕があえて聞く。
宣戦布告だよ。と前年覇者のクロノが言う。
負ける宣言じゃなくて? と続けて僕。
あんた生意気。と憎まれ口を言うダノン。
僕が一番だ。と彼女の目を見て言う。
届かなくても良いなんて思ったことは一度もない。とロジャー。
それに僕は、同期の意地? と返せば、ナーリアが言う。
「友との思い出に、最初で最後の敗北を味わわせてあげますわ」
「いいね。そうでなくちゃ。前世からそう。僕のことを追いかけてきてくれたのは君たちだけだ。あの有馬も、ジャパンカップも、屈辱はこの有マで返させてもらう」
「時代を作るのは私。クロノジェネシスだから」
「絶対あんたにダート舐めさせてやる」
「ツァーリの絶対っていう宝は私がもらうよ」
「決してわたくしたちが届かないなんてことはありませんわ。誰よりも勝利を渇望するあなたに、わたくしたちの願いが届くかどうか。良い戦いをいたしましょう」
「いいよ。全力でやろうか」
『何かが起こる年末の中山に、夢が集まりました。皆様はどんな夢を抱くでしょうか? 私の夢は、絶対です。
ここ、有マ記念にて、最後の戦いが始まります。
無敗の三冠ウマ娘に叫んだあの日を、私たちは覚えています。
春シニア三冠を打ち立てたあの日の熱狂を、覚えています。
海外五連勝で、世界に勝ったあの日を、まだ覚えています。
ですが、その裏側で頑張ってきた他のウマ娘たちを、知っています。
中距離において右に出る者がいなくなったサートゥルナーリア。
中長距離で一番の輝きを見せたロジャーバローズ。
グランプリ2連覇で最強へ一気に躍り出たクロノジェネシス。
短距離女王を差し切った努力の天才ダノンキングリー。
それぞれが、それぞれの勝ち鞍を持っています。絶対王者に対して、これまで積み重ねてきた誇りを、意地をぶつけます』
「ツァーリ」
「ん? なに?」
ゲートの前、珍しく屈伸運動とか、体を伸ばしていた僕の前に来たロジャーが右拳を出す。最後だから。なんて言う彼女の拳に僕も合わせると、それを見ていたナーリヤも拳を出してきた。
「さ、最後ですので……」
恥ずかしがるならしないでよ……。とは流石に言わなかった。僕は2人ともに拳を合わせると、係員の指示に従ってゲートへと入る。
あの時と同じ、2枠2番。残念ながらこの世界でも大外枠の運命はなかった。一番最後に入るのとかかっこいいと思うんだけどなぁー。やっぱりだめかぁ。
『さあ、各ウマ娘がゲートに入りました。素質が光る3番人気はロジャーバローズ。昨年の有マ記念、今年の宝塚記念では勝ちウマ娘のクロノジェネシスに半バ身差で惜敗。今日の勝ちに向けて準備は整っています。あとは全力を出し切るだけですね。
続く2番人気。この評価は少し不服でしょうか。昨年有マ記念を制しましたクロノジェネシス。グランプリレースではかなりの強さを見せる彼女ですが、調子は良さそうに見えます。ですが、相手が相手ですからね。連覇に向けて、好走を期待しましょう。
そしてやはり! このレースの主役はこのウマ娘でしょう。1番人気、ズヴィズダツァーリ。凱旋門賞を含む海外G1を五連勝した実績と共に秋シニア三冠、生涯無敗に王手をかけてやってきました。狙うは史上初のクラシック・春秋三冠合わせての九冠です。
さあ、中山2500メートル。今ゲートが開きました!!
全ウマ娘綺麗にゲートから出ました。中でも好スタートを決めたのは9番ロジャーバローズ。するすると内側に寄っていきます。外回り第3コーナーから始まる有マ記念。もうすぐ一度目のホームストレッチです。
大歓声が各ウマ娘の一年の戦いを称賛します』
いつも通り。そう言って良いかはわからないが、僕の目からは見慣れた展開になった。
今日は逃げ馬不在。なので、ロジャーともう一人のウマ娘が残りの13人を引っ張る展開。
先行集団の前の方にクロノジェネシスがいて、先行と中団の間にサートゥルナーリア。人数が多い中団に隠れて息を潜めているのがダノンキングリー。僕は一番後ろで前の展開を見つつ、しっかりと一歩ずつ加速している。
1周目のゴール板を抜けた時点で、先頭は3番のウマ娘。ロジャーは2番手につけた状態。先頭が1コーナーの山に入ったところで、若干ペースが下がり、僕のペースだけが相対的に上がる。
『さあ、ズヴィズダツァーリがじわじわと外を回って上がってくる。最後方の星が煌めいた!
バ群は2コーナーを回って向正面。先頭は3番から今9番のロジャーバローズに変わりました。3番手の7番クロノジェネシスとは2バ身差。続いて1番、15番、13番、12番、6番、4番と続いて向正面真ん中。2番ズヴィズダツァーリはもう10番手。内側にいる8番サートゥルナーリアをかわします』
第3コーナーまでもう少し。
一人、また一人とかわしていく僕は、徐々にペースが上がって行く。
バ群が固まってる分外を走らないといけないが、全然問題ない。むしろ僕にとってはそっちの方がいい。
さて、この展開どうするか。
前とはそれほど遠くない。前の奴らの内側に若干の隙間もあるからそこも通れる。でも、外側に膨らんで抜くことも問題ない。先生ならどう指示出す?
「やっぱ外だよね……」
クロノが若干外側によってスタミナを奪いにくるが、関係なく大外から回って3コーナーに入る。
「っ!? 仕掛けてきた」
「わたくしがあなたが行くのをただ見ているだけとお思いですか!!」
3コーナー。いくら割とスローペースで足をためてきていたとは言え、ナーリアが3〜4コーナー中間で上がってくるとは思わなかった。だが、仕掛けてきたのはナーリアだけじゃない。
ダノンも最内をスルスルと上りながら加速し、クロノも僕の半バ身差くらいで外側につけてる。そして、先頭のままのロジャーが少しだけ抜け出して第4コーナーに入っていく。
『先頭はロジャーバローズ! その後ろにいた3番が飲み込まれて行きます。2番手は現在ズヴィズダツァーリ! クロノジェネシス、サートゥルナーリア、ダノンキングリーと続いて2番手集団!』
前で、声が聞こえた。海賊王が海に出る。
領域
外でも、聞こえた。時の創造者が針を定める。
領域
内からも聞こえる。不屈の天才が化けた。
領域 ドン・ネバ・ギバ 発動
真後ろから迫る声。大衆の祝祭バが祀られる。
領域
4人が、僕を置いていく。どんどんと前にいく。僕の前に?
この僕の前に、他がいる?
「……ざけんな……」
口から溢れた言葉は、目の前の光景を認められない僕の弱さだった。
そんな時、ふとスタンドに目が行く。テイオー先輩と、キタの間。そこにいた男の子と女の子を見て目を見開く。
真っ黒な髪に真っ白な流星。目の色は太陽のような色で、右耳に真っ赤な耳飾り。そしてその横には、水色の服を着た、癖毛の男の子。
その二人は、スピカの面々と一緒に大きな声で叫ぶ。
二人の後ろに、ゴルシがいることで、本能的に理解した。
「僕が……。いや、俺が勝つんだよ!!」
領域 天球駆ける瑕疵なき黒星 発動
発動できませんでした
絶対に勝つ。心の底から、今勝利を渇望している。もうなんでも良い。僕は、僕のために勝つ。
世界が黒に染まっている。一歩一歩が凍えた世界の中で、見えない暗闇の中は寒くて、どうしようも無い孤独感に苛まれる。
どこをどう歩いても、光は無い。
領域を発動します
いや、違う。違う!
光が無いなら、僕がなればいい。
苦しさと寒さに包まれてしまった黒を焼き尽くす、優しい太陽という星に、僕がなれば良い。だってズヴィズダツァーリは、星の皇帝なんだから。
明けの明星 発動
上げた視線は、周りをどんどんと照らしていく。
「動け、動け動け動け」
乱れる呼吸の中で息を吸い、叫ぶ。
「動けーーっ!!」
赤と白の勝負服。ダノンを抜いた。
緑と白の勝負服。ナーリアを抜いた。
赤と黒の勝負服。クロノを抜いた。
そして、白と緑の勝負服を着た、ロジャーを抜く。
『ツァーリ! ツァーリが一気に伸びてくる! 何という足だ! 鬼脚! 鬼の末脚が爆発する!!』
出しきれ。行け。
『星帝が全てを飲み込んだ! 誰だ! ウマ娘に絶対がないと言った者は! 目に焼き付けろ!! これが! このウマ娘こそが!
絶対だーーっ!!
ズヴィズダツァーリ1着!! ズヴィズダツァーリ1着!! ズヴィズダツァーリ1着』
「べふっ……」
頭から突っ込んだターフ。正直顔が削げたと思う。
「ぐふぁっ!? 重っ」
背中の上に突如来た重み。なんか泣いてんすけど?
「負けましたわっ、最後の最後まで」
「何であそこから伸びんだよー」
「くそっ! くそっ……」
「なんで届かない……」
なんとか仰向けになった僕の目には、不細工な顔をした4人。
「バーカバーカ! 散々頑張って努力してもずっと僕に追いつけなかったバーカ!」
全力で煽った僕の言葉に、みんなの目がキツくなる。
「みんな。勝ちたいって思わせてくれてありがと」
僕の笑顔は、多分心の底から出た笑顔だったと思う。
「今日の勝利、何が要因でしたか?」
「負けることに原因はあっても、勝ちに要因はありません。全部を準備した上で叩き潰されることがあることを僕は知ってます」
「え? 潰される? あなたが?」
「もちろんそりゃありますよ。でも、強いていうなら、ナーリアやロジャー。彼女らにも、その他諸々にも、負ける姿を見せたくなかっただけです。ファンの為とか、全部関係なく、初めて自分のために勝ちたいと思えたので」
「ツァーリさん!」
「ちょっと! 通してください」
「ちょ! おいコラ待てよお前ら」
突然やってきた三つの喧騒。それは、僕の目の前で止まった。
ホームストレッチにいた、小さなウマ娘と、男の子。ついでにゴルシ。
「あっ、あの!」
「お嬢さん。お名前はなんですか?」
僕は、赤い耳飾りと太陽のような目を見て、誰か気づいていたが、名前を教えてもらう。
「は、はい! 私の名前はグロリアスフェリペです! いつか、いつか絶対にツァーリさんみたいなウマ娘になります!!」
『グロリアスフェリペ! グロリアスフェリペが変則三冠を掲げる! 降着に泣いた皐月賞をバネに、ダービーを! 宝塚記念を! そして、この菊花賞を走り抜ける! 眼前に他はない! 何もない! 父が起こした奇跡を! 遅れてやってきた後継者が! 再びこの菊花賞で見せつける!』
僕は知ってる。菊花賞を走り抜け、僕の記録を塗り替えた姿を。
『やはりこの馬が星帝を継ぐ! あの日の光景が甦る! 4コーナーから上がってきたグロリアスフェリペがフォルスストレートを駆け抜ける! 2連覇! 2連覇だ! 太陽王の栄光が! 今! 沈まぬものとして刻まれた!!』
僕は知ってる。世界へ開かれた凱旋門の頂に二度もたった姿を。
僕と、グランアレグリアの唯一の子供。受胎が確認できなかったり、流産だったり、デビュー前に亡くなったりしてしまった子供たちの中で、唯一引退まで走った僕たちの愛息子。
「あ、あの! 僕、ヒロユキって言います! 僕がトレーナーとしてリアを貴女みたいな絶対にさせます!」
うん。やっぱり先生だった。僕たちの子を最後の最後まで面倒を見てもらったあなたが、フェリペを見てくれるなら、これほど心強いことはない。
僕は二人の首元に手を当てた。
「うん。いつか君たちが僕の前に来てくれることを待ってるよ」
「ツァーリさん……。泣いて……」
「おいおいツァーリ、なんでお前が泣いてんだよー」
「だって、だってぇー!!」
ゴルシが僕の頭を乱暴に撫でる。
「ちゃんとお前のこと見てたろ? 先生は」
「ゔん゛!!」
僕は、二人のことを強く抱きしめた。きっと僕の嗚咽は、カメラのシャッター音で消えてると思いたい。
一旦これでおしまいかな?
多分明日は更新できないし、
流れ的にちょうど良いから完結と言うことで連載から変えます。
けど、ちゃんと後日談とか色々更新します。
23時に間に合わなくてごめんね!!