黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕)   作:パンダコパンダ

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 お久しぶりです。
 コロナ等々で死んでからだいぶ日にちが経ちましたが、幸動と言うことなく生きてます。

 この話を最後に当作品を完全に終わろうと思います。

 ※ツァーリトレーナー編はべつで新たに描き始めるつもりです。

 これまでの読んでいただいた皆様に最高の感謝を。


後日談ーウマ娘ー4:卒業。そして、僕の最後のレース

「豊かな春の日差しに彩られ、舞い散る桜が祝福する今日、僕たち卒業生のためにこのような晴れやかな卒業式を挙行していただき、心より感謝申し上げます」

 

 壇上。並んだ多くの卒業生、在校生に向き合った僕は、テンプレの文章しか書いていない白紙を両手に持って答辞を述べる。

 

 右手側には進行役であるたづなさんや、学園の教師陣、卒業生を担当しているトレーナーが。左手側にはURAの関係者だったり、市議会のお偉いさんだったりご臨席いただいている方々。生徒たちの奥には保護者たちが並んでいる。

 

「期待と不安が胸いっぱいに広がっていた入学から気がつけば多くの時が過ぎました。大きな校舎、数ある練習用ターフ。憧れの中央に所属するという重みを知らなかった若輩であった僕たちは、多くの先輩方に支えていただいた恩を忘れることはないでしょう」

 

 初めて競走の意味を知った選抜レース。

 

 自身の伸び代を知ったメイクデビュー。

 

 スタートラインに立ったオープンクラス入り。

 

「夢の舞台での掛け替えのない親友たちとの戦い。その上で勝ち取ったたった一つの冠。積み重ねた努力は、未来への旅において大きな武器になることでしょう。ドリームトロフィーシリーズに進む彼女。トゥインクルシリーズを続ける彼女。大学に進む彼女。ターフの上ではなく、別の方向に進む彼女」

 

 先行策で仕掛けた二冠。菊花賞と古馬……じゃなくてシニア期を見据えた作戦だったあの二レースを思い出す。

 菊花賞で一番後ろについた時はみんなが驚いてたよな。

 無敗で三冠を取って、有馬も勝って年間無敗。オペラオー先輩と初めて会ったのはここだった。同じ年間無敗とは言え、あっちは古馬王道の年間無敗。こっちはクラシックからの有馬までの年間無敗だから、格が違うけどね。

 

 僕が初めての春シニア三冠を達成して、グラス先輩とエル先輩引き連れて海外に出た。凱旋門もしっかり勝って、国内に戻ったのは一年ぶりの宝塚で、得意の長距離であるメルボルンカップから秋シニア三冠。

 思えばG1ばっかり走ってるな僕。調整やらなんやらでG2以下も走らなかった。まあ、そういうスケジュールに自分からしていたんだけど。

 

「ただ、その裏には、夢をこの学園に預けた多くの学友がいます。あの日共に笑った友人が、何も言わずに寮から、学園から去った。その事実は変わりません。怪我だったり、成長の限界を感じターフを去った子達がいます」

 

 僕たちの学年は人数が少ない。それは、ほとんどの子が僕たちに劣等感を感じて辞めてしまったから。その傾向は、G2以上のクラスで戦う子たちが多かった。

 やっとG2を勝っていざステップアップ。そう思えば、短距離とマイルにはグランとダノンが。中距離にはクロノとナーリアとロジャーが。そして長距離に行っても僕がいた。

 わざわざダートに転向する子が多かったのは僕たちに勝てないと思っていた子が多いからだ。

 

「だからこそこの学園を卒業する僕たちは、無数に広がった僕たちの未来を、この学園で学んだ多くのことを胸に切り開いて参ります。そして、先達たちが微笑むことができる学園の卒業生として、若き名も知らぬ優駿たちの憧れとして、この学園を去っていった多くの友たちの誇りとして突き進んで参ります。卒業後も方々にご迷惑をお掛けすると思いますが、どうかご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いします」

 

 後は数少ない台本の通りに言葉を述べ、頭を下げて壇上から降りる。

 その後も恙無く卒業式は続き、よくある在校生の合唱とか聞いたりしながら、僕たちは会場を後にした。

 

「って、やっぱり集まる?」

 

「まあ、わたくしたちですからね」

 

「最後だし。なんか気が向いちゃって」

 

「ツァーリちゃんフラーってこっちに来たからさ!」

 

「私たちはグランに引っ張られてきただけだけど」

 

 この学校におけるすべての行事が終わった僕は、練習用のターフを眺めていた。

 そこに集まったのは僕のライバルたち。内一名は本当に嫌な顔してるけど。

 

「ダノン、結局走るのやめるの?」

 

「トゥインクルは卒業。トレーナーと相談してドリームに行くことにした」

 

 負けたままじゃ終われない。なんていう彼女は、同じ距離を走ることが多いグランのことを睨んでた。まあ、マイル以下はグランの独壇場だったし、目下の敵? 目の上のたんこぶ? 的なやつだ。

 

「じゃあみんなドリームトロフィーかな?」

 

「そうですわね。わたくしは大学に行きながらですし、ロジャーさんは?」

 

「細かいところまでは考えてないけど、ドリームには出るよ? 大学の推薦ももらったし」

 

 クロノもダノンも大学に進学して、そこでトレーニングを続けるらしい。

 

「ねえねえツァーリちゃん。最初で最後にさ、みんなで走らない?」

 

「みんなで?」

 

「うん。みんなの得意距離が違うからさ、難しいかもだけど」

 

 うーん。と顎に手を当てて悩むグラン。おい、可愛いかよ。

 

「なら、みんな得意距離で走ればいい。一番距離が長い人、ツァーリからスタートして、それぞれ宣言した距離から始める。抜かされる少し前ぐらいにスタートすれば良い。ロジャーバローズの2400、私の2200、サートゥルナーリアの2000、ダノンキングリーの1600、グランの1200。どう?」

 

「名案!! いいじゃんいいじゃんクロノちゃん! 完璧じゃん!」

 

 え? そんなことすんの? する気ないんだけど。

 てか、なんか周りガヤガヤして無い? いつのまにか人集まってんの?

 

「ツァーリさんは3000ですか? それとも春天の3200?」

 

「え? これする流れなの?」

 

「へぇ。逃げるんだ星帝様。怖いの? 私たちに負けるの。まあそうだよねー。全員が全員あんたに勝つために走るんだからこれまでで一番負ける可能性高いもんね」

 

「おいおい、生徒会長たちがレースするって」

「卒業レース? 誰と?」

「あの学年のエースたちだよ。ナーリアさんとか、ロジャーさんとか!!」

「マジぃ!? ちょ、絶対見なきゃじゃん!」

 

 あ、逃げれんやつだ。これ。

 

「ちょっとちょっと! ツァーリさん! 祭! してるって」

 

 いやいやしてないから祭。大人しく帰りなさい。キタサンブラック。

 

「ちょっとツァーリさんが挑戦者受け付けてるって聞いたんですけど!!」

 

 それもしてないから落ち着きなさいコントレイル。うるさい。目を輝かせるな。

 

 とりあえず周りに集まった在校生・卒業生たちに一睨みして黙らせる。何か考えるにも騒がしい。落ち着かせろ。

 どうすれば一番丸い? 綺麗にまとめられる? 走るにしても僕たちだけ? 在校生は? 他の卒業生は?

 

「キタサンブラックちゃん! どーもどーもグランアレグリアです!」

 

「は、はい! キタサンブラックです」

 

「これからするのは祭りじゃなくて、私たち卒業生が君たちに見せる最後のレースです! 世界星帝のツァーリちゃん! 祝祭バのナーリアちゃん! グランプリの女王クロノちゃんに、日本総大将のロジャーちゃん! そしてライバルのダノンちゃんと私だけの、最初で最後の全力レース」

 

「グランの言う通りだ。すまないが君たちは見ておいてくれ。すまないが私たちの喧嘩だ。意地でもあいつには勝っておかないといけなくてな」

 

 キタの前に立つグランとクロノ。クロノは僕の方に親指を向けてクイクイっと動かす。他のみんなも、僕の方を見つめる。

 

「じゃあさ、走るから条件」

 

 ① 出走者である6名は勝負服を着用すること。

 ② 距離は各自申請した距離をゴールから逆算しスタートすること。

 ③ 第二走者以降は先にスタートした走者が、第二走者以降のスタート地点約80メートル手前地点到着以降にスタートをすること。

 ④ 第二走者以降は必ず内ラチ側からのスタートとすること。

   ただし、コーナー間からスタートする場合はその限りではない。

 ⑤ レースの記録はトレーナーのみ許可され、外部に映像を漏らさないこと。

 ⑥ 観戦者は全力で応援すること。

 

「⑤の条件ってなんですの?」

 

「僕たちは今日から先達だよ? それも全員G1バ。なら、トレーナーには後輩たちのために研究してもらわないとね。キタ。コント。二人とも他の人たちに声かけできる? 多分トレーナーたちは食いつくから」

 

 良い返事で校舎に消えていった二人を見送ると、僕はささっと携帯を取り出す。

 

「あ、おねーさん? あ、ごめんなさい。とりあえず噂通りだから、色々お願いして良い? え、ごめんなさい。いや、ありがとう。その、はい。ごめんなさい。それじゃあよろしく」

 

「すごく謝っていましたが、どなたとの……」

 

「……。いつも迷惑かけてるおねーさん。とりあえず、準備とかウォームアップとかあるから、一時間後に集合で」

 

 5人が戸惑いながらも頷いたのを確認して、Bコースねー。と軽い口調で告げた。

 

「僕に挑んでくる相手を、無下にはできないだろう」

 

 仕方ない。やるからには全力だ。日本での最長は3600。僕の領域で皆を沈めてやる。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

『晴れ渡る空の下、6名の名バがターフに集まりました』

 

 いつのまにか実況と解説までできてることに驚いたが、それはそれで良いか。

 

「それにしても……」

 

 僕が立っている場所はバックストレッチの入り口。真横には1200を走るグランがいる。2400のスタート地点になる3コーナーのところにはロジャーが。第4コーナーのポケットにはナーリア。コーナー間にクロノが一人ぽつんと立っている。そして、ホームストレッチの先、1コーナー辺りにはダノン。

 

「これ、流れ乗ってる中長距離が強いのか、坂路一回のマイル以下が強いか……」

 

 とりあえず、やるだけやろう。

 

「準備はいいですか?」

 

「いつでも良いですよ。おねーさん」

 

 3000のスタート位置にいる僕に対して、スターターを務めるおねーさんが確認を取る。もちろん準備万端だから問題ない。各自のスタートの目印になる80メートルラインにも在校生たちが立って準備が整った。

 

『エクストラレース。トレセン学園卒業レース、出走です。

 

 ゴール地点から1200メートル地点からスタートする快速女王グランアレグリア。電撃の6ハロンは、中長距離を走る他のウマ娘たちを差すことができるのか!

 

 続いて1600メートル地点にいるのはダノンキングリー。安田記念を制した足は、同期たちも注目しています。不屈の精神でどうか走り勝って欲しい!

 

 第4コーナーのポケットにて準備するのは祝祭バサートゥルナーリアこの人です。皐月賞、秋の天皇賞と辛酸を舐め続けてきたこのウマ娘は、今日こそ祝祭を受けることができるのか!

 

 堂々とした出立で3〜4コーナー間に立つのはクロノジェネシス。グランプリ連覇の実績。そして、気高き紅葉の女王として勝ちに行きます!

 

 注目のロジャーバローズはチャンピオンディスタンスから宝を狙います。サートゥルナーリアと同じく唯一星帝のハナ差まで近づいたウマ娘ですから、狙うは王冠。曇りない黄金を求めて出港です。

 

 さあ、最後に登場するのは、全てのウマ娘の終着点。絶対の星帝ズヴィズダツァーリです。あの菊花賞と同じ3000メートルから走ります。無尽蔵なスタミナ、どんな足場でも対応できる走りで、有マ記念同様世代の証明を果たせるか!!』

 

 おねーさんがバッ! と旗を振り下ろしそれに合わせて飛び出す。

 

 このレースの肝はスタートからの600メートル。ロジャーのところまでのペースが全ての基準となるからこそ、しっかりと足を動かす。大体12秒程で一つ目のハロンを抜けたことで、そのままペース目標を12秒以下に設定。

 

 ロジャーがスタートした。ペースは僕より少しだけ前。スタートをしっかりと切れるこのルール上、出遅れることはほとんどない。しっかりと助走タイミングを合わせたロジャーが、チラチラと僕の方を確認した。

 

 直ぐにクロノがスタートする。クロノは唯一のコーナー間からスタートする。だから、できる限り直線でのスタートになるよう外ラチに近いところにいる。

 きゅっと内側に入ってきたクロノは、僕とロジャーの間に位置をとった。

 

 ペースはそれほど早いわけじゃない。皆初めてやる形だから、慎重になっている。それは、4人目のナーリアも一緒。

 ポケットから出てきた彼女はクロノの外に着く。

 

「さすが皆。ペース合わせるの上手だね」

 

「あははー。まあ、ゆっくり目だしね。ツァーリもまだ来ないし」

 

「それはそう」

 

 皆軽口が言い合えるくらいには余裕を持って走っている。

 ホームストレッチまで来て、ラチ沿いに並ぶ生徒たちトレーナーたちの横を通り抜ける。それぞれが世話になった誰かの応援をするウマ娘たち。僕たちの走りを一つでも研究しようとするトレーナー。そんな横を抜ければ、ダノンが僕の前に陣取った。

 

『さあ、ホームストレッチを抜けた各バです。

 先頭は以前変わらずロジャーバローズ。2400メートル地点から全体を引っ張ります。そこに続くのは最内クロノジェネシス。僅か後方に位置取るサートゥルナーリアは抜け出しのタイミングを虎視眈々と狙っています。

 さあ第五走者のダノンキングリーは1バ身後方。スパートにかけるでしょう。そして最後尾にズヴィズダツァーリが待ち構える状態で残り1200メートルとなり、グランアレグリアスタートです。ロジャーバローズの背後にピッタリつけました!

 

 さぁ! 向正面でペースがどんどんと上がっていく! 全体的にゆったりとしたペースが一変しました! 徐々にスピードが上がります!!』

 

 グランが隊列に入ったことでロジャーが引き離しに出た。少しずつ上がるペースだが、ここでロジャーを野放しにしてはどうやっても届かないことを僕たちは知っている。

 だからこそ、僕たちもジリジリと詰め寄る。

 

『さあ最後方のズヴィズダツァーリ。約4バ身あったダノンキングリーとの距離が埋まっていきます! 普段同様このままズヴィズダツァーリが全員纏めて撫で切ることになるのか!?』

 

 バカ言うなよ実況。そんじょそこらのやつじゃないんだぞ。全員が強敵。壁だ。そんな奴を撫で切る? 無茶言うな。全員得意距離だぞ? 勝つ気しかないけどさ。

 

「やっばい! すっごく楽しいよ! 皆!!」

 

「そうだねっ!!」

 

「ああ」

 

「ええ。友との勝負。最高ですわ」

 

「悪くないね」

 

「ああ。この気持ち……、まさしく愛だ!!」

 

 横に並んだダノンが、一瞬僕のことを汚物を見るような目をした気がするが無視だ無視。僕には効かん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、悲しいから前出ようかな。

 

『各バ3コーナーのを抜けて4コーナーです! 最終直線は約400メートル! これは瞬発力勝負になるか!!』

 

 真っ先に動いたのは僕だった。最終コーナーに入る時、前には横並びになったグランとクロノとナーリア。

 前が詰まっている状態であればパワーとスピードが一気に上昇し、前のスタミナを奪う領域が発動する。

 

   領域  明けの明星 発動

 

 大外に膨らみつつ、一気に加速を上げて前を掴みにいく瞬間、ロジャーが出た。彼女の領域、「ROMANCE DAWN《黄金への出航》」だ。

 最終直線で先頭にいる時、一気に引き離しに行く彼女の力。それを押さえつけるように、クロノの領域である「 Time is mine(理の中針)」が発動する。一気に足が鈍くなるような、彼女だけが悠然と進むような錯覚が広がるが、それを振り解くように抜け出したのはグラン。そしてダノン。

 ダノンの領域である「ドン・ネバ・ギバ」は直線で中盤にいる時にパワーを上げるシンプルな物。だからこそハマれば強く、グランを差した安田記念のような強さにつながる。だが、彼女のライバルグランも負けていない。いつもの朗らかな表情は消え去り、真剣そのものの顔で腕を振る。

 

「勝つんだ!!」

「勝つ!」

「私が勝つんだよ!!」

「っざけんな! 勝つのは私っ!!」

 

 前にいる4人との距離が近づく。あれ? ナーリアは?

 

『最内の隙間からナーリアだっ!!』

 

 実況の声を聞いて横を見れば、鹿毛の髪がたなびいていた。

 

「わたくしが勝ちますわ!!」

 

 ナーリアがいつか言っていた。進むべきが見えた。と。

 それを考えるに、彼女の領域である「Il festival non è ancora finito《終わることのない祝祭》」は、きっと位置取りとパワーに関する差し向きの領域。本能のまま勝つための最適解を導き出し、今このレースで、最内という選択を取った。

 

「勝つのは、俺だ!!」

 

 力一杯踏み込んだ反発で、ぐんぐんと速度が上がる。

 残り2バ身。残り1バ身半。1バ身。

 

『残り200!!

 

 ロジャーバローズとの差がなくなる! なくなる!

 後続が追いついたが、ロジャー粘る!! 粘っている!!』

 

 僕のスピードは既にマックス。これまでのレースならぶっちぎって勝っていた状況。だが、今日の僕は完全に差しきれない。僕が弱くなったのか?

 

 いや、みんなが僕のために強くなってくれたのか。

 

『横一列! 6人が横に並んだまま、並んだままゴールっ!!

 

 大接戦のゴールだ!! 私の目には、全員同着のように見えました!!』

 

 6人全員息を切らしながら速度を落とす。そして、僕は、ゴール板の位置で写真を撮っていたおねーさんを見た。手にはカメラ。彼女の横には、接戦と書かれた扇子を持つ理事長。

 

「完全な横並びじゃなかった?」

 

 息も絶え絶えのロジャーに、みんなが頷いて返事する。

 どっと疲れた僕は、パタリと地面に倒れ、青空を見上げた。

 

「いや、違うよ……」

 

 5人が、え? と驚きの声を上げるのと、「決着!」と理事長が声を上げたのは同時だった。

 

「着順! これからこのレースの着順について発表する。たづなの撮った写真をもとに判定しているため、レース場のものほど正確では無いが、模擬戦であるため問題はないだろう」

 

 1着 ロジャーバローズ

 

「いっ、ちゃく?」

 

 同着 サートゥルナーリア

 

「え? わたくしも1着ですの!?」

 

 同着 クロノジェネシス

 

「これは……」

 

 同着 ダノンキングリー

 

「私も? いや、横並びだったとは思うけど……」

 

 同着 グランアレグリア

 

「私も!? やったー! みんな1着だね!!」

 

 だめだ。涙が出てくる。空が滲んできた。

 

「2着 ズヴィズダツァーリ ハナ差」

 

 だよなー。やっぱり。そうなるよなぁ……。

 

「ツァーリちゃん?」

 

 言葉を失うとはこのことだろう。ターフの中も外も、理事長の言葉を信じられないのか、不思議と静寂が包んでいた。

 

「っおい理事長! なんであいつが2着なんだよ!! 横並びだったでしょ!!」

 

「そうだ。ダノンの言う通り。ツァーリと並ぶことはあっても、私たちが勝つことは  

 

   いや、負けだよ。僕の」

 

「ツァーリさんは最後の末脚が伸び切ってなかったですね。それでも有マ記念以上のスピード、パワーだったと思いますが、それ以上に皆さんの走りが素晴らしかったと思います」

 

「どうしたの? 皆。勝ったんだから喜びなよ」

 

「でも、ツァーリさん……。泣いてますわ……」

 

 しょうがないじゃん。ずっとライバルだと思ってた子たちが、必死になって自分を磨いて、全力を出した僕に勝ったんだよ? 僕は負けたんだよ? 踏み込んだ足が君たちのことを捕まえられなかったんだよ?

 

「だってさ……。悔しいじゃん」

 

 そうだ。悔しい。この世界に来て初めて味わう感覚。

 全身全霊で挑んで、全てを倒した僕が、初めて受けた本能による感情。

 

「でもさ、嬉しいんだ。僕はやっぱり一人じゃなかったって思えたから。みんなのこと好きだよ。だからさ、今度はトレーナーとしてリベンジするよ」

 

 シルクヒョードル。エカチェリーナ。他にもいっぱいいる。

 ステイブラックとブラックジャーニーの兄弟にジーズナヤヴァダーとダイワローザ。キスアンドクライたち団子三兄弟。そして、僕とグランの結晶。

 

「競走馬としてはこれで終わりだけど、これはこれで良かったよ。本当に」

 

 糞。でも勝ちたかったな。

 負けた。完全に負けた。

 

「あー。悔しい。本っ当に悔しい! あー! もー!」

 

 絶対に借りは返す。絶対にね。




 PS、ポタジェ……。お前誰やねん笑
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