黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
今日から書きダメある間一話ずつ行きます。
21/10/20 13:30 ルーキー日間1位
ありがとうございます
同上 総合日間16位
ありがとうございます
栗東トレセンから車に揺られること……。いっぱい。
長時間の輸送の後、僕は皐月賞が開催される中山競馬場に帰ってきた。放牧場だと、一頭変な牝馬が、確かサングリア? 違うな、アレグリアだ。そいつが突っ込んできていろいろあったけど、それよりもレースだ。
ホープフルステークスから大体3ヶ月半。あの頃よりも進化したことを証明できるのは、シンプルに楽しみ。
レース前日に入厩した僕は、いつものお姉さん厩務員に甘えながら移動のストレスを抜いていた。
でも、いくら高速道路で移動できるとはいえ、普通の馬が長時間箱詰めにされるのはしんどいだろうなと思う。中身が人間だった僕だからあまり気にしてないが、馬によっては大問題だろう。
まあ、僕には関係ない。と、お姉さんに出される飼い葉をハムハムし、撫でてもらいながらブラッシング。あーそこきもちぃ〜。と鳴けば、よしよしとさらに甘やかしてくれる。
ここは天国か!? 最高じゃねぇか。
「やあ、今日ものんびりしててよかったよツァーリ。下手に緊張されてたらと思って早めにきたけど、問題なさそうだ」
「打田さん! わざわざ早めに。ありがとうございます」
色々とインタビューやらなんやらで動いていた先生が僕の元に来ると、朝からの様子をお姉さんから聞いたり、自分の手で脚を触ったり確認を取る。
お姉さんと違ってゴツゴツとした手。この手が、僕をきっちり導いてくれるのだと思えば、額を撫でられるのも嬉しいものだ。
「ツァーリ。今日は皐月賞だ。三冠の一戦目。お前に乗りたい奴なんていっぱいいるだろうに、佐崎さんは僕をお前にと預けてくれた。デビューから乗せてもらって、無敗でここだ。放牧の様子を見ても、僕はお前に夢を見てる」
僕の視界に入るよう顔の右側に立つ先生が、顎下を撫でる。
「このレースは、一番早い馬が勝つって言われてる。それはもちろん、純粋な速さ。でも、それを言うとどのレースだってそうだ。そうだろう? ツァーリ」
確かに先生の言う通りだ。このレースに限らず、一番早いやつが先頭に立つ以上、その真理に変わりはない。
僕は一度頭を下げて頷く。
「だからな? この一番早いって言うのは、馬主にも、厩務員にも、調教師にも、そしてファンにももらう愛情をしっかり受け止め、その期待に応えたいって覚悟が決まった速さのことを言ってるんだと思うんだ」
愛情に応える覚悟。それを決めた速さ。
「ツァーリ。お前は速い。そして強い。そこは誰もが認めてる。でも、みんなに貰った放牧っていう愛情をわかってない奴がいる。だから、サートゥルナーリアが1番人気で、お前が3番人気だ。だから、分からせてやろうぜ」
一番愛されてる馬が、お前だって。
「ぶるるっ!!」
「エンジンかかったな。珍しく」
笑うなよ先生。そこまで言われてやらないやつは、男じゃないんだよ。
『さあ、クラシック路線の栄冠。第一の冠であります皐月賞の本馬場入場となります。果たしてどの馬が、一つ目の冠を被ることになるでしょうか。
1枠1番のアドマイヤマーズ。前走の共同通信杯はダノンキングリーに譲りましたが、意気込みは十分』
僕は、お姉さんに引かれながら入場の列に並んで進んでいく。
まだ4戦目だからよく分からないが、見た感じ調子が良さそうなのは12番のサートゥルナーリアかな? あとはベロックス? ヴェロックス? も雰囲気がある。
『2枠4番ダノンキングリー。2歳チャンピオンを破った無敗は力を見せてくれるか。共同通信杯からの流れをモノにしたい』
今日の人気は、1番がサートゥルナーリア。2番がアドマイヤマーズ。3番が僕で4番がダノンキングリー。そして5番目がヴェロックス。そこからのオッズは離れてるとおっちゃんが言ってたから、実力の壁がここにあると考えられてるんだろう。
通路を進んだ僕はターフの上を進み、待機所に向かってゆっくりと歩く。他の子達が僕を抜いて待機所へ行くが、僕は変わらない。エンジンがかかっていたとしても、変わらない。
『さあ6番12枠のサートゥルナーリアはここにいます1番人気。弥生賞で4馬身差。強さを見せつけたこの無敗馬の強さ。注目しましょう』
僕が待機所に着いた頃にはすでに輪乗りが始まっていた。これまでなら参加はしないが、体を解したかった僕は、自らの意思でこの中に入る。
『3番人気ながら大注目のこの馬。7枠14番ズヴィズダツァーリ。常識はずれの中100日越え。ホープフルステークスで圧巻の勝利を飾ったこの馬は、底知れぬ可能性で常識を破れるでしょうか? G1競争2連勝を目指します』
時間となり、大音量のブラスバンドと、それに合わせた歓声が中山競馬場を包む。
「時間だよ。楽しもう」
1枠1番から順番にゲートへと入って行く。僕が入るのは16番目。最後から3番目になる。つまりは、ゲートが開くまで短いということ。
内枠で待たされるよりも断然良い。
サートゥルナーリアが枠入りし、僕もすんなり入る。最後の大外枠ナイママがゲートイン。
そして、一番速い馬を決める皐月賞が始まる。
ガコンと扉が開いたのと先生が鞭を打ったのはほぼ同タイミングだった。
それを合図に、僕はホープフルステークス以上のスタートを決める。
『さあ先頭を飛び出したのは5番ランスオブプラーナ。1番のアドマイヤマーズだがそれ以上に14番ズヴィズダツァーリのスタートが良い! ですが追い込み馬、鞍上打田は、下げない!? 戦法を変えてきたのかただ今4番手辺りです』
今日のために用意した作戦。それは先行。
本来最後方から戦う僕だが、放牧中に来た先生に言われた作戦は反対だった。
【ツァーリ。お前の力を見せてやろう。1コーナーあたりまで、僕はお前を縛らない。最初に鞭を打つ以外は、お前の意思で前に出ろ】
先生が用意した、皐月賞を取るための秘策。それがこの先行勝負。
手綱を長めに持ち、腰を浮かしてスピードが出やすいように合わせてくれているため、とてもとても走りやすくてありがたい。
『さあ5番のランスオブプラーナが先頭です1コーナー手前。続いて15番クリノガウディー。4番ダノンキングリーとヴェロックスは横並び。外半身後ろに控えるのは14番ズヴィズダツァーリです。
アドマイヤマーズ、クラージュゲリエ、サートゥルナーリア後は3番ファンタジストの団子状態までが先頭集団です』
1コーナーの途中。最初に前に出た分の体力を補うため、後ろとの差が縮んでも良いからと少しだけスピードを落とす。その間に後ろにいた気配が離れ、新たな気配がついた気がする。
差し馬たちが近づいて来た? まあ先生に動きがないから大丈夫だろ。
ってわお、左側の桜綺麗。
「よそ見しちゃダメだよツァーリ」
ごめんなさい先生。
『2コーナーを抜けて向正面。先頭集団から1馬身半離れて11番と8番が並走状態。10番と2番の4頭で中段残り5頭は後方ですが最後尾のメイショウテンゲンは少し離れているか』
先行集団で走るのは初めてだけど、視界に入る馬が少ないっていうのは違和感。前に行きたい欲は少しくらい解消されている気がしなくもないが、前の奴らを抜く気持ちよさは半減すると思う。
あと、先頭集団の外側にいるけど、邪魔してる感じがあるのがちょっと嫌。と位置どりに不満。
『前半1000メートルを通過してタイムは平均的です。人気上位4頭は前の方に固まってます。1番アドマイヤマーズが先行集団先頭。まさかここにいる3番人気ズヴィズダツァーリは集団真ん中。集団最後尾に1番人気のサートゥルナーリア。直線で抜け出せるか。無敗で来た3頭目ダノンキングリーもそのすぐ横。
散ってゆく桜を後方に置いて3コーナー回っていきます。
3コーナーから4コーナーにかけて出て来たのは7番ヴェロックス。外からだ。サートゥルナーリアも出てくる!
さあ中山の直線だ! 春の冠を被るのは坂を最初に越えた馬だ!
先行集団上がってくる! ランスオブプラーナはバテたか、アドマイヤマーズが上がってくるがサートゥルナーリアも一気に来る! ズヴィズダツァーリはどうだ! どうだ』
位置取りは外側。ちょうど良いからと第4コーナーを速度を上げながら抜けると、隣に上がって来たヴェロックスと横並ぶ。
先行で貯めた脚。一番後ろから走った時よりかは少ないものの、残り200メートルほどの坂をぶち抜くに問題はないと僕は思う。隣の馬に入る鞭。バシンバシンッ! と近くのいろんな馬から聞こえる。
僕の肩にも、走るリズムに合わせて2回鞭が入り、手綱が緩む。
「行け!」
下げた頭を持ち上げた時、目の前に他の馬はいなかった。
『ぐんぐん伸びる! ぐんぐん伸びて行くぞズヴィズダツァーリ!! 抜け出したサートゥルナーリアに影を踏ませない!! 差が広がるぞその差は2馬身! 追いつけない! 追いつけないぞサートゥルナーリア』
先生が体を落として手綱を軽く引き、僕はスピードを出すのをやめ、坂を登り切る。
右の目にゴール板が見え、あとは流すだけ。ここからはウイニングランだ。
『1着のタイム、1分57秒9! アルアインのレコードまでコンマ1に迫る激走!!
追い込み馬による先行作戦。見事決めてみせた打田幸博!! 3馬身半のリードを築き上げズヴィズダツァーリ皐月賞制覇! ディープインパクト以来の無敗皐月賞馬誕生だぁあ!!』
湧き上がる歓声を受けつつ、先生がよくやったと褒めてくれる。
『鞍上打田、大きなガッツポーズです。母ヴィルシーナとは叶えられなかったクラシック戦線での勝利!』
完全にスピードを殺した僕は、計測所に向かう馬たちに混ざりターフを歩く。記者たちに写真を撮られつつ、一番後ろを歩いていると、厩務員が僕の手綱を受け取りに来た。
「お疲れ様ツァーリ。やっぱツァーリは凄いよ!」
よしよしと額を撫でられご満悦な僕。あ、そうだ、走りだけじゃなくて、態度でも覚悟を見せよう。
「うわっ!? ちょっとツァーリ!?」
「どうした」
ターフ場に一度伏せた僕は、頭も下げる。
顔を上げ、お辞儀を済ますと、そのままヒョイっと立ち上がる。突然の行動に先生もお姉さんも観客も驚いているが、僕は何かありました? と計測所へ脚を運んだ。
「今のお辞儀か?」
「ぶるっ!」
立ち上がった僕の勢いを乗りこなし、しっかりと鞍上にいる先生の言葉に僕は答える。
すると、先生は僕の背中の上で何かをしたのか、観客席が再び湧き上がった。
「ダービーも菊花も無敗で取ろう」
先生が鞍上で一本指を上げたこと。それを知るのは、口取り式の後のインタビューのことだった。
| 着 | 枠 | 馬名 | タイム | 人気 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 7 | 14 | ズヴィズダツァーリ | 1:57:9 | 3 |
| 2 | 6 | 12 | サートゥルナーリア | 1:58:5 | 1 |
| 3 | 6 | 7 | ヴェロックス | 1:58:5 | 5 |
| 4 | 2 | 2 | ダノンキングリー | 1:58:5 | 4 |
| 5 | 1 | 1 | アドマイヤマーズ | 1:59:1 | 2 |
レース後のインタビューとなります。まずは皐月賞1着。おめでとうございます。
「ありがとうございます」
7年前のゴールドシップ以来の皐月賞制覇となりましたが、今の気持ちはいかがでしょうか。
「そうですね。ホープフルステークスの時点でいい状態でしたから、チャンスは十分あると思ってましたので勝ち切れてホッとしています」
ホープフルステークス後、異例の放牧で中100日を越え。この皐月賞に直行した訳ですが、陣営はどのような判断だったのでしょうか。
「はい。ホープフルステークスでズヴィズダツァーリの能力の高さを把握することができていたので、主にメンタル面と、ハイペースの戦い方を身に付けさせる方向を考えてのことでした」
結果として本日のズヴィズダツァーリ号はどうでしたか?
「レース勘が鈍ってないかが心配ではありましたが、珍しくパドックの時には気合十分だったので、成功と言って良いと思います」
成功の要因。ゲートが開いてからのスタートダッシュとその後の先行策。狙ってましたか?
「狙ってましたね。前に行きたがる癖をどうにかしようと考えた時、デビュー直後から調教師の友康さんとスタートで前につける方法を検討していました。外側を通りましたが位置的に内側に好きにさせなかったので、初めてにしては上出来だと思います」
レース後、ズヴィズダツァーリ号は一度伏せましたがあれはなんだったと思いますか?
「彼なりの感謝だと思います。多分お辞儀ですね。時々僕の言うことに返事してる感じもありますし賢い子ですから」
お辞儀の後、鞍上で立てた一本指。無敗の三冠を狙っていきますか?
「もちろんです。あの子にはその素質と資格がある以上狙いに行きます」
力強い宣言。ありがとうございます。それでは最後に、今後についてお願いします。
「ズヴィズダツァーリはまだまだです。これからもっと仕上がって来ますし、もっと未来がある馬です。これからも応援お願いします」
出走成績 4戦4勝 獲得賞金総額2億2000万
18/09/22/土 新馬戦 2000メートル
1番人気 1着 2:01:8 700万
18/11/17日 東スポ2歳s 1800メート
1番人気 1着 1:45:2 3,300万
18/12/28/金 ホープフルs 2000メートル
1番人気 1着 2:01:2 7,000万
2着 アドマイヤジャスタ 2:01:6 2馬身差
19/04/14/日 皐月賞 2000メートル
3番人気 1着 1:57:9 11,000万
2着 サートゥルナーリア 1:58:5 3½馬身差
次走 19/05/26/日 東京優駿(日本ダービー) 2400メートル
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