黄金の暴君×永遠の二番手=星の皇帝(僕) 作:パンダコパンダ
最後だけサートゥルナーリア目線です。
「今日の選抜レースですが、皆さんには5つある種類の内、1つに出走していただきます。1200メートルの短距離。1600のマイル。2000中距離。そして、2500メートルの長距離」
黒板に書かれた白色の文字。それを見て、クラスのみんなは、自分がどのレースに出走するかを考える。
「種目毎に出走者数の偏りはあると思いますが、それでも大丈夫なように2箇所のターフを使いますので、訓練で怪我してない限り出走制限はありません。よく考えて出走するようにしてください」
そう言って担任が出ると、もちろん騒がしくなるわけで、みんなは配られた出走希望票を持って友人と顔を突き合わせる。
「皆様はどういたしますの? おそらくほとんどの方が中距離だと思いますが」
なにも言わず、僕とナーリアとダノンの3人の元に来るクロノジェネシスとグランアレグリア。グランは机を挟んで立ち、ダノンの方を向いている僕の横顔を口を開けながら見つめてるが、クロノジェネシスはちゃんとしている。
「私は中距離」
「私も」
「ということは、私とダノンさんとジェネシスさんで中距離ですのね。ツァーリさんは?」
「マイルだよね!! 私マイルだからツァーリちゃんもだよね!」
「いいや、長距離ですね」
アニメか漫画でしか聞いたことないような、ガビーン。なんて言葉を口に発したグランアレグリア。正直、入学からの1ヶ月間アタックされ続けられ、競走馬時代の突撃を思い出してしまう。
そういえばこいつ、僕が出走すると思って大阪杯に出走してたらしい。僕出てなかったんだよねー。色々あって。
「ハッ!? 長距離走ってフラフラになったツァーリちゃんを介抱してあげれば、私の印象良くなるのでは!? 勝ったら誉め殺しで負ければ慰める……。これでツァーリちゃんは私のお嫁さんに、じゅるり」
「グラン……。よだれ」
「ごめんごめんジェネちゃん! ってかそれより、タオルとドリンクを用意しないと、保健室行ってくるから!!」
嵐のように去っていくグランアレグリア。この1ヶ月で見慣れた光景だが、若干危機感を覚え始めている僕がいる。
「なんか怖いよね? あの子」
「悪い子じゃない」
うん。それは分かってるよクロノジェネシス。てか、前も言ったけど大人しくしてれば可愛い子だと思うんだけどなあ。あの子。
「それじゃあ僕はここで待ってるね。行ってらっしゃい」
「ええ。わたくしの力を見せてあげます」
「いや。一番は私だよナーリア」
バチバチと視線を交わすナーリアとジェネシス。そんな二人を後ろから追いかけるダノンは、何も言わずに静かな状態。
え? ちょっと待って? 僕、暴走娘と二人きりなの?
「3人のこと応援してますね!」
いや、絶対嘘だ。僕だけでなく、3人とも振り返ったので心の中では同じことを思っているのだろう。目が怪しんでいる。
3人はそれぞれ違うタイミングでの出走。
第1コースの2レース目にサートゥルナーリア。続く3レース目にダノンキングリー。第2コースの4レース目にクロノジェネシスが出走する。
ちなみに、隣のサングリア(笑)は既にマイルを走っており、全体トップの記録を残している。
「まあ、3人ともバラバラだから見れるかな?」
「いや、ジェネちゃんの出走とツァーリちゃんの長距離1レース目が被ってるので見れないですよ?」
あら、ことごとくクロノジェネシスとはタイミングが合わないな……。まあいいか。
「お、しれっとゲート入りしてる」
視線の奥。見慣れた長髪がゲートから飛び出した。
2000メートルの競走。競走馬時代の彼と同じように先行集団に入った彼女は、その中の一番後ろで様子を窺っている。タイムは平均的。そういえば馬時代の彼女は、特別早いペースでどうこうって感じじゃなかった。
「うん。らしい」
「何がですか? ツァーリちゃん」
「え? いや、綺麗なレースをしてるなと思って。特別前にいるわけじゃないけど、第3コーナーくらいから位置を調整して直線で抜く。末脚も良いなって」
「なるほどねツァーリちゃん」
一周してきたウマ娘の先頭は、やはり彼女。しっかりと足を動かして抜け出した後は、軽く流すようにしてゴール板を通過する。
「長距離レースに出走予定の方は集まってください!!」
運営の方の声かけを聞いて、僕はアレグリアと別れる。
やっと走れる。母のおかげでターフを走ったことはあるが、競走として他のウマ娘と走るのは久しぶりだ。
「気合入れていこう」
「それで? あいつはどんな感じだ」
「気になるの?」
自分たちのレースが終わり集まった面々。残念ながらクロノジェネシスは被っていていないが、ナーリア、ダノン、アレグリアの3人が顔を突き合わせる。
「トモの感じとかすごいですわよ? ただ、そもそも体力が持つのか? と言うのが。2500メートルなわけですし」
「けど、気になるよな。実力」
黒い長髪。右に流れた白色の前髪。目は青色で、口調はすごくおとなしい。
クラスで行う訓練だと、時々暴れたかのように飛び出すものの、周りに合わせているのか特にすごい記録は残していない。ただ問題はその飛び出した時。
「坂路訓練。わたくしとクロノジェネシスさんが同タイムで、彼女は3番手。ただ、角度が変わるラスト1ハロン。彼女が最速なんです」
「え? そうなの?」
わたくしの1ハロンが11秒2だったのに、彼女は10秒9。前半の部分からトップスピードであれば、あの人が最速だった。
「選抜レース長距離、1レース目出走です」
2のゼッケンを胸元につけた彼女は、黒色の2枠に入る。なぜだろう。どこか嬉しそうな顔をしている彼女の後に6人、ゲートに入ると、すぐさまゲートが開いた。
「2枠なのに一番後ろから行くんだ」
「がんばれー! ツァーリちゃん!!」
すんなり最後尾についた状態で1コーナー目を通った彼女は、長い髪を揺らしながら走る。
向こう正面に入っても対して変わらず、そのままだ。
「追い込みですわね。4コーナーまでにある程度出ないと、どうしようもありませんわよ?」
「来た。早くない?」
「がんばれー! ツァーリちゃん!!」
コーナーを曲がりながらぐんぐんと上がってくる2番。邪魔されないように後方集団の外側を通りつつ四つ目のコーナーを曲がり切ると、彼女の前に他のウマ娘は居なかった。
「マジ?」
「凄まじいですわね」
長距離で大外を走る。スタミナが必要だし、他の内側を走るに比べてパワーがいる走路。それをいとも簡単に抜け出した。
「流しましたわね」
「流したね」
「ツァーリちゃんすごい!!」
サートゥルナーリアは考える。この学年でクラシック路線を戦った時、最大の敵は誰だと。
迷わず言えるのは、ダノンキングリー。足元の強さはあるし、先行から差しの間で戦える存在。たった一回のレースでどうこうと言えないけど、周りにいた他のウマ娘と比べれば頭が飛び出ているように思える。
グランアレグリアはティアラ路線と言っていたし、クロノジェネシスもティアラ狙いだなんて言っていた。
「あのまま行っていたら何秒だったと思います?」
「29秒とかじゃ無い? スタミナが持つのかは別として、4コーナー目抜けた時のスピードを保てれば。の話だけど」
2500のレコードは何秒だ? 2400なら、お姉さまの2分20秒6。あれより短い距離で戦って、わたくしがダービーに出る時に出せるのは、一体何秒だ? お姉さまと同じ秒数は出せない。
「三冠戦。障壁はダノンさんとあの人ですわね……」
「悔しいけど認める。正直、彼女はステイヤーだろうし菊の花は取りづらいと思うよ。私は2400持つかわかんないレベルだし」
ここにいる多くのウマ娘の視線の先。唯一の青鹿毛を、わたくしは障壁だと見定めた。
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