もしも歳が離れていたら   作:夕暮れの家

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第6話

らいはに五月と会わせる約束をしてしまった。

最初は何をどう考えたのか五月のことを俺の彼女だと勘違いして根掘り葉掘り聞いてくるだけだったのだが、誤解を解いて事情を説明していき、自分と年の近い女の子だと分かると途端に

 

「会いたい!」

 

と言い出してしまった。そこからはもう大変だ。どうしても会いたいと言って聞かないらいは相手にどうにか宥め謝り物でつろうとしてそもそもつるものがないことに気づいたりして、──結局涙目+上目遣いで「お兄ちゃん…、ダメ?」と言われて折れた。

 

自分がらいはのあのお願いを断れたことがあっただろうかと考え、分かりきっている答えに苦笑した。当然、無い。あんまり昔になると覚えていないがまず無いだろう。

 

そもそも何かをねだる、ということが少ないのだ。その少ないお願いすら叶えられずに、どうして兄などと言えるだろうか。

 

──今回のお願いはさすがに勘弁してほしい類いの物ではあったが。

 

 

そんな思いが顔に出ていたのだろうか、考え事をしていた俺に横から声がかかった。

 

「どうしたんですか上杉君、なんでそんな苦虫を噛み潰したような顔をしてるんですか?」

 

「いや…、俺そんな酷い顔してたか?」

 

「いえ、そこまでではないですが…、なんというか、こう、少し嫌なことを思い出した~、みたいな顔をしていたので。」

 

酷い顔なんてしてないですよ、ところころ笑いながら言うのは五月だ。

悩んでることに一応お前も関係してるんだけどな、と言ってみたくなったがそれは止めておいた方がいいだろう。

 

そんなことを言ったら興味をもった五月がそれについて聞いてきて煩くなるだろうし、そうなったら俺は最終的には折れて話してしまうだろうから。

 

ここにいるのが自分と五月の二人だけならば、それでらいはと五月を会わせる約束を取り付けられるかもしれないしそれでも良いのかもしれないが、今はダメだろう。

 

「いや~、フータロー君、酷い顔じゃないけど変な顔はしてたよ!」

 

その原因となるのがこいつだ。名前は確か…、一花だったか?ショートカットの髪に、友達が多くいるであろうと容易に想像できる明るい性格。そして五月と全く同じの顔。先程急に押し掛けてきたときは、五月の姉だと名乗っていた。

 

姉だと言うのに小学校の制服を着ているということは、五月と同い年であるということだ。顔が全く同じだから、双子なのだろうか。

 

…いや、それにしてもだ。

 

「失礼だな、変な顔とはなんだ。」

 

「え~、だって変な顔だったよ?」

 

しょうがないじゃん、そう言って笑う顔は五月と全く同じで──、いや、少し違うか?

まぁ殆ど同じだ。

 

これで髪型が同じだったら絶対に見分けられないだろうな、なんて思いながら五月の方を見ると、一瞬首を傾げた後、わたわたと手を振りながら、大丈夫ですよ、上杉君の顔は変じゃないです!と言ってきた。

 

違う、そうじゃないんだよなぁ。

 

 

 

 

 

一花の居る前で五月にらいはと会ってくれと頼む、つまり、この勉強会以外で会う約束をしようとするのは無理だろう、先程会ったばかりだが、こいつの前でそんなことをしようものならかなり面倒なことになるのが目に見えている。

 

年上に対して遠慮も何もなくからかうなんて普通にやるだろ、こいつ。

 

…はぁ、そういうわけで未だに話を切り出せてすらいない。今日中に五月と約束してくるってらいはに言っちまったのになぁ。

 

どうすれば良いのか全く見当もつかず、ああでもないこうでもないと考えていると、横から延びてきた手が、服の裾をくいと引いた。

 

「あの、どこか具合でも悪いのですか?

貴方が勉強中にぼうっとするなんて…。」

 

「あぁいや、別にそういう訳じゃないんだが…。」

 

そこまで言ってふと思う。というのも、別に直接言わないでも良いのでは?ということだ。

 

「(その…、な、頼みたいことがあるんだが

 此処じゃなんだから後で連絡する。)」

 

「え?は、はい!」

 

少し声をおとしてそういうと、何やら驚いていたようだが、元気よく返事をしてくれた。

っておい、そんなに大きな声で返事したら…

 

「え?なになにどうしたの?」

 

「いや、何でもないぞ。」

 

「そ、そうです!ななな何でもないですよ!」

 

「ふ~ん?怪しいなぁ~。」

 

「おい、そんな騒いでたら──」

 

「図書室ではお静かにお願いします。」

 

「「「すみません」」」

 

 

 

 

「ずっと思ってたんだがお前は勉強しないのか?」

 

「ん~、私はいいよ。どうせ馬鹿だからできないし。」

 

「…本当に顔以外は似てないんだな。」

 

「それはどういう意味かな~?」

 

「いてっ!痛いから突っつくな!」

 

 

 

放課後勉強会に一花(勉強するとは言ってない)が加わったことにより風太郎ロリコン疑惑が加速したとかしないとか。

 

 

 

 

 

 

 

話してみての印象は変な人だ、それとなく聞いてみても五月ちゃんに勉強を教えるのに何か見返りを求めている訳ではないらしい。

 

それに、何度も何度も五月ちゃんがわかるまで、嫌な顔一つせずに教えている。

…変な人だなぁ。普通そんなに何度も同じことを聞かれたら口には出さなくてもあきれた顔くらいはするんじゃないかな?

 

私がからかっても返しはそっけないようでちゃんと聞いてくれている。

…年下の私にからかわれても、不快になったりしないのだろうか。

 

不思議だ、どうしてこの人は五月ちゃんに対してはあんなに優しそうに笑うのだろう。

不思議だ、どうして私もあんな風に誉めて欲しいだなんて思うのだろう。

 

どうしようか、また次ここに来て私も勉強道具を持っていたらこの人はどういう顔をするのだろうか。

 

…いや、私には五月ちゃんみたいな真面目さがない。やる気がない奴が隣でダラダラやってたってただの迷惑だろう。

 

それにそもそも五月ちゃんみたいに教えてくれるとも限らない。五月ちゃんよりも更に勉強が出来ない私を教えたらいくらこの人でも馬鹿すぎて呆れた顔をするだろう。

 

…それは、なんかやだな。

 

でも私が何かからかうようなことを言えばそのときはこっちを見て話してくれるから。

 

また、来ようかな。

 

今度は何を言おうかな、そうだ、「五月ちゃんのことが好きなの?」なんてどうだろう。

 

そう言ったらなんて言うのかなぁ。

 

ふふ、楽しみだな。

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