鬼滅の刃 とある鬼狩りの苦労譚   作:田中様

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育手

「あぎゃ!」

 

「何回言ったらわかるんだ!腹に力がこもってない!もっと全力でやれこの野郎!」

 

 最悪だ。腹を殴られて女の子らしくない声をあげる。そしてすぐに罵詈雑言の嵐。女だからって構わず殴りつける。なんでこんなことになったんだろうーー

 

 

「え?すぐには入れませんよ?」

 

 義輝から何を当たり前のことを言ってんだ、とか言いたげな顔で告げられた。

 

「あ、えっとその、まず最初に育手と呼ばれる技の指南をしていらっしゃる人達からいろいろと教えてもらうんです。そして最後に最終選別という試験を突破できたら晴れて鬼殺隊員です」

 

聞くだけだと意外とさっくりいけそうだが、まあ楽ではないのだろう。とりあえず最初にすべきことは分かった。

 

「まず育手?の方を紹介できますか?」

 

「あ、はい。お、俺の知っている方ですと」

 

 それで紹介されたのがーー

 

 

「こんなところで吐くんじゃねぇ!ほら!さっさと起き上がって続けるぞ!そもそも技ってのはなあ!」

 

 乱暴者のじいさん、響山源之助だった。義輝の紹介で山奥まで行くことになった。正直うちの住んでた所より深い山だった。

 

 最初の三ヶ月は死ぬ程、ていうか本当に死にかけるまで走らされた。その時は「基礎的な運動能力は高い。生まれつきいいんだな」とか言われて少し有頂天になっていた。型と呼吸の鍛錬に入るとそれはそれは地獄だった。

 

 悔しいことに教え方は普通に上手いのか、呼吸による動きはすぐにできるようになった。最悪なのは型だ。そう、私は剣術の才能が無かった。五ヶ月ほど経って幾分かマシになったのだが、やはり響山さんの理想とはかけ離れてたようで、何度も怒られ、いろんなところをぶん殴られた。

 

 一応義輝の剣術を教えた人と聞いている。引退時は1番高い階級ではなかったらしいが、多くの鬼を倒してきた。柱の次に階級が高い『甲』だったらしい。それに炎の呼吸を教える数少ない育手なので教えをもらいたがる人も多いはずなのだが・・・なんとなく分かった。

 

「今日は素振りだ。太刀筋の矯正をする。十万回振れ」

 

「じゅう・・・!?」

 

「いいからやれってんだよ!」

 

 またゴチンと殴られた。最近いつもこんな様子だ。いつまでも型をうまくやれないから呆れられてしまったのだろう。

 

 最近手のひらの豆が増えてきた。最近体つきががっしりしてきた。髪も体も汚れが酷い。私は鬼を倒すため女らしさを捨てた。全て私のような思いをする人たちを助けたい一心でだ。

 

 だからーー

 

「待ってください!もう一度だけ私に型を教えてください!」

 

「あぁ?」

 

「お願いです!どうか・・」

 

「違ぇよ」

 

「へ?」

 

 呆れたような溜息をつかれ、思わず変な声を出してしまう。

 

「お前よぉ、俺に呆れられたとか思っているよな?違うんだよ。そもそもの太刀筋がなってねぇから素振りって言ったんだ。お前のへろへろの太刀筋じゃ鬼の首どころかそこらの竹だって切れんよ。だから俺はまず基本の素振りをしろって言ってるんだよ!このバカタレ!」

 

さっきより強く殴られた。痛い。

 

「は、はい・・すみません・・」

 

 きっと今の自分の顔は恥ずかしくて真っ赤になっているだろう。だけど、今は呆れられてないという安心感でいっぱいだった。

 

 それから数ヶ月かけてやっと及第点をもらった。それでも結局炎の呼吸は伍の型までしか習得できなかった。

 

「それでは、行ってまいります。響山さん」

 

「フン・・・まぁ、その、なんだ・・・死ぬんじゃねぇぞ」

 

 真っ赤な着物を着て刀を腰に刺す。響山さんはそっぽを向いているが、顔も赤くなっているのか耳まで着物より赤く染めていた。

 

「絶対に死ぬなよ」

 

「はい。死ぬつもりはありません」

 

 響山さんとの最後かもしれない別れを惜しみながら目的である藤襲山へ歩を進める。死ぬつもりは全く無いが。

 

 しばらく歩き続けると、花の匂いがしてきた。山の階段を上がっていくと大量の藤の花が咲いていた。藤の花の咲く時期とはいえこんなに多く咲いているのは初めて見たかもしれない。少し上っているうちに終わりが見えてきた。

 

 上には刀を持った隊士候補が多くいた。二十、いや二十五はいるだろう。顔に傷をつけている者も多い。

 

(この中で女の剣士は・・・私だけか)

 

 強そうな人ばかりで少し萎縮してしまう。そんなことを考えていると着物を着た女の子たちが話しを始めた。

 

 いろいろと話しているが端的に言うと鬼のいる所で七日間生き抜けということらしい。

 

 帯をきっちりと締め、刀が緩んでないか確認。準備をしっかりとする。そして最後に必要なのは・・・覚悟だ。響山さんからの受け売りだが。

 

「ーーでは行ってらっしゃいませ」

 

 そして最終選別は始まった。

 覚悟を決めたのはいいもののーー

 

「ふぅ、ふぅ」

 

 極度の緊張と不安で息が乱れる。落ち着け、響山さんから教えてもらった事を忘れるな。さっきからずっとこの山からは死の気配を感じる。藤襲山。いやな感じだ。

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

 叫び声が聞こえる。どこかで襲われているんだ。こんなことを七日間も、気が狂ってしまいそうだ。なんて考えてるとまた息が乱れてくる。だめだ。こんな負の感情の繰り返しでは自然と疲れてくる。まだ一日も乗り越えられていない。

 

「ひゃはは!人間だ!それも女!」

 

「ッ!?」

 

 急に目の前に鬼が現れる。心臓が痛いほど跳ね上がるが、すぐに整える。

 

「ひひ!しかもなかなかデケェな。その分栄養も豊富だろう!さぁ!俺の糧となれぇぇ!」

 

「うひゃぁ!キモい!」

 

 鬼が私に一直線で向かってくる。

大丈夫よ雫!修行の日々を、技を思い出せ!敵は真っ直ぐ来る!なら!

 

炎の呼吸 弐の型ーー

 

「昇り炎天!」

 

 刀を抜刀し、首を狙う。燃え盛る炎のような激しい呼吸音を立てて鬼の首を切り裂く。

 

「ぐげら!?」

 

 鬼はガマガエルのような声を出して倒れた。首が落ち、灰になってしまった。義輝さんが鬼を倒した時と同じだ・・・。

 やれる。これなら私でも鬼と渡り合える。

 

 膝をついて咳を混む。やはり炎の呼吸は一撃の力が強いが、すぐに疲れてしまう。響山さんは何度使って見せたときはあまり息を乱してなかった。やはり圧倒的な経験の差なのだろうか。この最終選別で生き残ったら聞いてみよう。

 

 しばらくして太陽が上ってきた。張り詰めた緊張の糸が切れ、ばたんと倒れこむ。よかった・・・一日目を乗り切った。途中、地響きのような足音を感じた時は死んだかと思ったがやっと一日生き残れた。

 

 だが一日、たった一日だ。まだ六日もあるんだ。それをどうやって生き延びるか。それを昼間の間に考えるんだ。

 

(疲れた・・少しだけ・・・眠いわ・・・)

 

 私はそのまま瞼を閉じ、深い眠りについた。




ストーリーの進むペースが早すぎてすんません。
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