新人提督が弥生とケッコンカッコカリしたりするまでの話 作:水代
一身上の都合により、お休みさせていただきます。
食堂入り口に張られた一枚の紙には、そう書かれていた。
弥生も、イムヤも、瑞鳳も、卯月も、夕張も。
全員がその前で立ち尽くし、目をも開いていた。
「ああ、間宮さんなら、今日はいないぞ」
ちょうど朝食へとやってきた自身、と、そこでちょうど扉の前に立ち尽くす彼女たちがいて。
あ、なるほど、と事情を察した自身がそう告げると、全員がぎょっとした目でこちらを見てきた。
そうして全員が一度顔を合わせ、弥生が代表してか一歩前に出る。
「…………食堂……開いてないん、ですか?」
「ああ、間宮がいないからな」
「じゃあ…………今日のご飯、どうすれば?」
「ああ、そのことなら問題ない」
弥生の問いに一つ頷き、食堂の扉を開くと、食堂へと入る。
自身の後に続くように、五人も一緒にやってくる、当然ながら食堂内には誰もいなかった。
「で、どうするんだぴょん?」
痺れを切らしたように卯月がそう尋ねてくるので、一つ頷き。
「今作るから座って待ってろ」
そう言った瞬間。
「「「「「え?」」」」」
五人の声が重なった。
「…………なんだ?」
「提督、料理なんてできるの?」
疑わしげな表情の瑞鳳、だがその他四人も似たような表情をしている…………弥生は無表情だったが。
「当たり前だろ…………ああ、そうか、お前らの常識的には当たり前じゃなかったな」
第二次世界大戦中の軍艦なのだ、その常識は今よりもは一世代昔のものであっても不思議ではない。
「今の時代じゃそんな珍しいもんでも無い……………………まあ、とりあえず見てればいい」
そもそも、過去の海軍だって、料理ぐらいしただろう。そもそもカレーライスの原型は海軍からのものだ。
と言っても、自身は提督であって、別に料理人でもなんでもないので、作れるのは家庭料理の域を出ない程度のものではあるが…………。
十五分ほど後、食堂の机に並べられている皿とそこに盛られた料理の数々を見て五人が、おお、と目を輝かせる。
トーストと半熟の目玉焼き、カリカリベーコンに簡単なサラダにフルーツポンチ、ドリンクに珈琲と紅茶と牛乳、あとはまあ瓶詰めのジャムがいくらか、と洋風な朝食の定番と言えば定番なメニューだ。
「…………美味しそう」
ぽつりと弥生が呟き、卯月が同意するように頷く。
「うーちゃん、お腹空いたぴょん」
早く食べたい、と言った風に空いている席に座り。
「いただきまっす!」
フライング気味に箸を手に取り、料理に口をつけていく。
「美味しいぴょん! 司令官、やっるー!」
そんな卯月の絶賛に、そりゃどうも、と答え自身もまたトーストを齧る。
そんな自身たちの様子を見て、四人もまた各々適当な席へと座り、朝食を口にし始める。
「………………あら、本当に美味しいわ」
トーストの上に一口サイズに取り分けたサラダとベーコン、目玉焼きを載せて齧るイムヤ。ホットサンドのような感覚なのだろうか…………? あれが本当に美味しいのは自分には疑問だが、本人は満足なようだった。
「目玉焼きが半熟だぁ…………うん、美味しい」
目玉焼きを見て、目を輝かせながら箸で器用に黄身を崩さないように食べていく瑞鳳。固焼きより半熟派だったらしい、かく言う自身もである。
「早いと思ったら、このフルーツポンチの具、缶詰ですね…………こう言うのも料理なんですね」
手に持ったスプーンでフルーツポンチを一口ずつ口へと運びながら、興味深そうに呟く夕張。これを料理と言っていいのかは疑問だ、果物の缶詰を開けて器に入れ、上から缶のサイダーを一本分ほど流しただけのものだからだ。と言ってもなかなかに手軽なので、短時間で作る分には便利ではある。
「………………美味しい、です」
ミルクと砂糖をたっぷりと入れた紅茶をゆっくりと口へと流し込み、ほっとした様子で弥生がそう言った。
全員満足そうなので、少しだけ安堵しつつ、食べ終わった食器を手早く積み上げ、シンクへと持っていく。
後ろで賑やかに食べている少女たちに少しだけ苦笑しつつ、食器を洗うと食堂へと戻る。
「各自使った皿は洗っておくようにな」
そう言い残して、食堂を出る。
先日の遠征の件で処理しなければならない書類がいくつかある。さらには、まだ遠征関係の知識が足りないと思わされたので、大本営から取り寄せた資料と、上官殿から拝借した資料で勉強する必要もある。
「…………やれやれ。今夜は徹夜だな」
呟き、またやれやれ、とため息をついた。
「美味しかったわ」
ごちそうさま、と両手を合わせ呟き、イムヤが立ち上がる。
それに続くように、瑞鳳も卯月も夕張をも立ち上がり、弥生だけはまだもきゅもきゅとフルーツポンチを食べていた。表情に変化は無いが、それでも心なしか幸せそうではある。
と…………食べ終わったはずの四人が、正確には卯月以外の三人がテーブルの一角に集まり、ついでに卯月は夕張に首根っこ掴まれて一緒に集められていた。
「ねえみんな、朝食、美味しかったかしら?」
「美味しかったわね」
「美味しかったですね」
「美味しかったぴょん」
瑞鳳の問いに三人が頷く。まあそうだろう、と瑞鳳も頷き、剣呑な目で問う。
「でもね、私は悔しいわ。提督があれだけのものを見せてくれたんだから、ここは一つ、私たちも料理で見返さないと女のプライドに関わると思わない?」
そんな瑞鳳の言葉に卯月が、うへえ、と漏らし、嫌そうな表情をする。
けれど瑞鳳はそんな卯月を見下ろし、淡々と問う。
「嫌そうね、卯月。あなただけ昼食と夕食抜きにする?」
「うーちゃん、頑張るぴょん!」
瞬間、態度を百八十度変える卯月に、瑞鳳がうんうんと頷く。
残りの二人は、満更でも無い様で、少しばかりやる気に満ちた目をしていた。
と、三人がやる気を出したところで、瑞鳳の視線が最後に取っておいたサクランボをさあ食べようと手にしてた弥生のほうへと向いた。
「弥生、ちょっと手伝って欲しいんだけど」
口の中でころころとサクランボを転がしていると、瑞鳳に呼ばれ弥生がそちらを向く。
「何か…………用ですか?」
首を傾げそう尋ねると、瑞鳳がうんうん、と頷く。
「提督、最近忙しそうだけど、今日もかしら?」
「いえ…………仕事自体は、昼には終わると…………思います」
「そう、なら提督に夕食まで食堂に来ないようにって言っておいてもらえる?」
「…………まあ、そのくらいなら、構いませんけど、昼食…………どうするんですか、それ?」
「私が持っていくわ、そのまま執務室で待っててくれればいいから」
「…………はあ、別にいいです…………けど」
ごちそうさまでした、と手を合わせ、弥生が食器を提げて流しへと持っていく。
なんだか厄介ごと押し付けられたような気もするが、秘書官として仕事をしていれば自然と昼ぐらいまではかかるだろうと考えたので、特に問題もないか、と請合った。
「弥生も、昼から何か用事があるの?」
「…………いえ、今のところは…………特に、無いです、けど」
弥生の返事に瑞鳳がにこり、として告げる。
「なら弥生も昼から食堂に集合ね?」
尋ねているようではあったが、表情は笑顔だったが、それでも有無を言わさない威圧に、こくりこくりと弥生は頷いた。
* * *
「…………ふう、これで今日の仕事は終わりだな。弥生、昼飯にするか」
そう言われ、時間を見れば、まだ昼前。食堂で瑞鳳たちが作業している時間だと気づく。
同じく時間を確認した司令官が、席を立ち自身へ向かって問うと、自身はふるふると首を振る。
「どうかしたか? まだ何か仕事があったか?」
「えっと…………瑞鳳、たちが…………ご飯作って、ます」
なに? と目を丸くする司令官。司令官はあまり感情を表に出さないので、こう言う表情は少し珍しかったりする。まあそれでも自身よりは表情豊かではあるが。
弥生は自身が感情表現が苦手であることを自覚している。そのせいで、他人から見ると怒っているようにも見えることも。だから、意識的に変えようとは思っているのだが、意識的に表情を作ると言うのがなかなかに難しい。
そのせいでこの間、卯月から顔が怖い、と言われてしまい少しだけショックを受けたのは秘密だ。
「それは…………私の分もか?」
そんな司令官の問いにこくり、と頷くと司令官が、そうか、と呟く。
「なら、午後からやろうと思っていたことを先にやってしまうか」
そんなことを言い、机の引き出しから何十枚と重なった紙の束を取り出す。
そんな司令官の行動に、思わず首を傾げる。秘書官として司令官の仕事は把握しているつもりだ。それ故に、先ほど終わらせた仕事で今日は最後だと知っている。第一司令官自身が先ほど、これで今日の仕事は終わり、と言った。
「えっと…………司令官…………それは?」
じゃあ一体その紙の束はなんだろう、そんな疑問を司令官にぶつけてみると、司令官は自身の手元に視線を落とし、ああ、と納得したように頷いて答える。
「大本営と上官殿のところから拝借してきた遠征関連の資料だ。効率の良い遠征と効率の良い遠征艦隊の組み方、どの資源が欲しい時にはどの遠征に行くべきか、などなど…………知るべきことは山のようにあるからな」
見れば資料と称されるそれは積み重なった厚さが軽く十センチを超えるような束であった。
「えっと…………お疲れ様です」
そんな自身の労いに、ああ、とだけ答え資料に目を落とし始める。
黙々と資料に目を通す司令官の邪魔になってはいけない、と椅子の上でじっとしている。
チックタック、と時計の音と、パラリパラリ、と言う紙を捲る音だけが室内を満たし。
「あの…………お茶、入れてきます」
沈黙に耐えれなくなった自身が席を立つのと。
「失礼するわ、提督! お昼持ってきたわよ」
そう告げて、瑞鳳が執務室の扉を開くのが同時だった。
視線をやると、山と段が積まれた重箱を抱えた瑞鳳とその後ろから卯月が入ってくる。
人間よりも遥かに力の強い艦娘だから簡単に提げているが、普通の人間なら重すぎて落としそうな量である。
さしもの司令官もこの状況で資料を読むつもりも無いのか、資料を机へと仕舞う。
「また…………随分と作ってきたな」
七段重ねの重箱を瑞鳳と卯月で一つずつ。計十四段の重箱を机の上に置けば、一人が使うには少々広かった提督の机も非常に狭い。
「これ何人分だよ」
「六人分よ、提督」
全員ここで食う気か、と半眼で呟きながら自身へ向けてちょいちょい、と手招きする。
「弥生、隣の部屋から適当な机と椅子持ってきてくれ」
こくりと頷き、執務室を出る、隣の部屋はまだ誰も使ってない部屋で、倉庫代わりになっているので、そこから机と椅子を五脚ほど見繕う。
「…………ん」
ぐっと力をこめると、椅子を乗せた机が持ち上がる。外見とは裏腹に艦娘の力は人間のそれとは比較にならないほど強い。駆逐艦の弥生ですら大の大人の何倍と言う腕力がある。だからこそ、小学生ほどの小柄な少女が椅子を乗せた机を一人で運ぶと言う、不可思議極まり無い光景も成り立つのだ。
執務室に机を運び込むと、すでにイムヤ以外の全員が執務室にいた。
「さて、お弁当広げましょ♪」
機嫌が良さそうに瑞鳳がそう言って、重箱を運び込んだ机へと並べていく。
卯月も夕張もすでに席についているのに、一人いないことに疑問を持つ。
「あの…………イムヤ、さんは?」
空いていた司令官の隣の席に座り、そんなことを尋ねると、夕張が椅子を傾けながら答える。
「まだ何かやってたわね…………けど、もうすぐ来ると思うわよ?」
「なんだ…………まだ何か作ってるのか?」
そんな自身たちの会話に、司令官が疑問を挟んでくる。そしてそんな司令官の疑問に、夕張が頷く。
「イムヤが夕飯作ってるから、期待してくださいね、提督」
と、その時。
「お待たせ、仕込みだけ終わらせてきたわ」
執務室の扉を開き、私服姿のイムヤが入ってくる。潜水艦は潜水するために水着を着ていることが多いが、鎮守府内でもまさかそのままなわけも無く、基本的には帰投すれば着替えているため、私服のイムヤと言うのはそれほど珍しくも無い…………のだが。
「エプロン…………」
思わず呟く、いつものグレーのブレザーに赤のミニスカートの上から白いエプロンを付けていた、エプロンにはヒヨコのアップリケが刺繍されている。
「何でエプロンなんて持ってるんだ、イムヤ」
自身と同じ疑問を抱いた司令官がそう尋ねると、イムヤが首を傾げる。
「料理するのに、エプロンしてないと、服が汚れちゃうじゃない」
何を当たり前のことを、と言った風のイムヤに、けれどそうではない、と言いたい自身と司令官だったが、けれど諦めたように息を吐く。と言うか諦めた。
「まあいい…………これで全員揃ったな、なら食べるか」
イムヤが着席したのを見て、司令官がそう言うと、全員がいただきます、と口にして箸を手に取る。
机の上に広げられた重箱には、多種多様なおかずが入っており、どれにしようかと一瞬迷ったが、すぐに目の前にあった卵焼きに目を惹かれ、箸をつける。
口に運ぶと、ふわふわでとろとろな感触が口の中で踊り、濃い卵の味と薄い出汁の味が絶妙に混ざり合い、とても美味しい。
隣で司令官も同じく卵焼きに手をつけ、ほう、と唸っていた。
そんな自身たちの様子に気づいた瑞鳳がにこりと笑う。
「提督、弥生、私の作った卵焼きどう?」
「美味しい…………です」
「うむ…………美味いな」
そう答えると、笑みが一層深くなる。
幸せそうだな…………って、そう思った。
だから、だろうか。
少しだけ、そう、ほんの少しだけ。
気紛れに、そんなことを思ってしまったのは。
弥生が作った料理を、司令官に美味しいって言ってもらえたら。
そんな想像をしてしまったのは。
「え? 料理のやり方?」
目を丸くして、鸚鵡返しに呟く瑞鳳に、こくりと頷く。
鎮守府の午後。昼食を終えて全員が執務室から退散する、司令官の作業の邪魔をしないようにだ。
秘書艦である弥生もその例外では無かった、すでに今日一日の仕事は終わっている。今行われているのは、司令官の個人的な研鑽だ、弥生が手伝うことも無く、かと言ってただ黙って執務室にいるのも気が散るだろうから執務室を出て、そう言えば午後からは食堂に行くのだった、と今朝の話を思い出してやってくると作業中のイムヤの姿。
どうやら瑞鳳とイムヤで担当を分けたらしく、瑞鳳は昼食担当でイムヤは夕食担当。つまり瑞鳳の仕事はもう終わったらしい。
そして、だからこそまだ忙しそうなイムヤではなく、食堂の机にかけて暇そうに足をぶらぶらとさせている瑞鳳に声をかけたのだ。
料理のやり方、教えてください…………と。
どうして自分はこんなことを言っているのか、自分でもやや混乱する自身を置き去りに、瑞鳳が良いわ、と承諾する。
「と言っても厨房はイムヤが使ってるからね…………私たちが使えるのは」
ふっと視線を向けた先、視線を追って同じくその方向を見ればあるのは一台のオーブン。
「そうね…………お昼も終わったし、おやつ代わりにクッキーでも作りましょうか、それでいい?」
そう問われ、よく考えれば夕飯はすでにイムヤが作っているのだと思い出し、頷く。
「それじゃあ作りましょうか」
「お願い……します……」
ぺこり、と一礼し、厨房へと向かう瑞鳳の背を追う。
上手にできればいいな、なんてこと考えながら。
* * *
トサッ、と資料を机の上に放り投げ、肩を軽く回し凝りを解す。
右手で目頭を押さえ、軽く揉んでやる。
時間を見る、午後三時過ぎ。すでに資料を読み始めて三時間近くが経過している。
「くぁぁぁ…………少しばかり散歩でもしてくるか」
背を伸ばし、軽く欠伸をかみ殺す。ずっと椅子に座っていたので少しばかり体を動かしたい気分だった。仕官学校時代ならひたすらランニングでもしていれば良かったのだが、この鎮守符の場合、ランニングコースに行くまでにそれなりに距離があり、そこまで行くだけで軽い準備運動になってしまう。本格的に運動するならともかく、息抜きする程度なら散歩くらいしかやることが無かった。
執務室の扉を開ける、長い廊下のさて、どこへ向かおうと考えて、数秒逡巡し、やがて外へ向けて歩き出す。
波止場に行って風に当たってこよう。海の目の前だけあって、あそこは風が気持ち良かった。
と、外への道を歩いている途中。
「司令……官……」
道中で弥生と出会う。そう言えば、いつの間にか全員いなくなっていたが、気を使わせたのだろうか。
よう、と挨拶すると、ぺこり、と挨拶が返される。
「何してるんだ?」
ライトパープルのエプロンを着て、三角巾をつけた弥生の姿はなかなかに愛らしく、また、微笑ましかった。
「えっと、その…………司令官を、探して、て」
自身を? 一体なんの用か、と思い言葉を促すが、えっと、その、とどうにも言葉を濁した様子に、はてどういうことか、と考える。
弥生を見る、しどろもどろで、無表情ながらにどこか困惑した様子が見て取れる。
「弥生」
「え……は……はい」
「今時間あるか?」
思考を断ち切るような唐突な自身の問いに、弥生がこくりと頷く。
ならば良い、とその頭をぽんぽん、と軽く叩く。
「散歩するから一緒に行くぞ」
「……………………はい」
数秒目を
そのまま鎮守府を出て、港まで歩く。港の端を歩いていき、波止場にたどり着いて立ち止まる。
「…………ん、風、強い」
びゅうびゅうと吹く風に髪を押さえながら、弥生が目を細める。
深く深呼吸する。眠気も大分取れたし、気分転換の意味はすでに成している。
もう戻ってもいいのだが、その前に弥生が何をそんなにどもっていたのか気になり尋ねる。
「で、どうしたんだ? さっきから歯切れの悪い」
見渡す限り、自身と弥生以外には見当たらない。わざわざ弥生を連れてきたのは、ここなら人気が無いからだ。
例え思わず口ごもるような、言いにくいことでも、今聞いてるのは自身だけである。
けれど、相変わらず弥生の口は開かず、代わりにそっと両手が差し出された。
「……………………袋?」
その手に乗せられているのは、巾着袋。
受け取れ、と言うことだと判断し、巾着袋を手に持ってみる。中に何か入っている重さがあり、はて、何だろうか、と首を傾げる。
「開けて良いのか?」
そんな自身の問いに、こくこく、と弥生が頷くので、遠慮なく巾着袋を開く…………と、そこに入っていたのは、クッキーだった。
数度目を
「その…………
じーっと見つめてくる弥生の視線が自身の手元に誘われている。
ふむと呟き、巾着袋から一枚、クッキーを摘み、口に運ぶ。
もぐもぐ、と口の中でゆっくりと咀嚼し、しっかりと味わう。
ごくり、と飲み込み、けれど無言な自身に弥生が恐る恐ると言った
「あの…………司令……官……どう、でした?」
「ん…………そうだな。まずところどころ焦げてるな」
「あ……う……」
虚飾の一切無い、問答ずばりな言葉に、弥生が呻く。
「あと、形が不揃いだ、型抜き使っても素人じゃ上手くできないからな、ああいうのは」
「……………………」
「それと型抜きする前に生地冷やしてないだろ、やっとかないと生地が柔らかすぎて、型抜きも並べるのも上手くいかないぞ」
「…………………………」
「それと砂糖入れすぎだ、甘過ぎるのもそうだが、砂糖が多いと、それだけ焦げやすくなる。チョコレートクッキーかと思ったぞ、最初」
「……………………もう、いいです」
がくり、と肩を落とした弥生に、けれど構わず自身は続ける。
「ま、次に期待ってとこだな」
そんな自身の言葉に、え? と弥生が顔を上げる。
「注意すべきところは多々あるけれど…………まあ、それでも作ってくれたのは嬉しかった、ありがとうな」
くしゃくしゃと、弥生の頭を撫でた。
「まあ、それでも作ってくれたのは嬉しかった、ありがとうな」
言葉と共に、頭の上に手が置かれ、三角巾越しに頭を撫でられる。
艦娘より遥かに力に劣るはずの人の手。そもそもそこに力などこめられていないのだからあり得ないのだが。
けれど、その手の温もりが、何故だかとても力強いものに感じられて。
動けなかった。どうしてか…………否、多分理由は分かっている。
だって。
「それじゃ、帰るか…………」
そう言って頭の上から手が退けられることを。
とても、寂しく感じていた。
嫌ではなかった、つまりそれが答えなのだろう。
「あ、あの…………司令……官……」
自身の咄嗟の呼びかけに、司令官が振り返る。
どうした? そんな司令官の問いに、また口篭り…………けれど、頭の上に載せられたその手の温もりを思い出して。
「あ、あの…………もう少しだけ、あと少しだけ…………頭、撫でて欲しい……です……」
そんな自身の精一杯に、司令官が目を大きく見開き…………。
「………………くく、お安い御用だよ」
クッキーありがとうな、そんな司令官の言葉と共に、また頭の上に手が載せられる。
「…………………………いつも、ありがとうな」
そして、そんな司令官の言葉に。
「……………………………………こちらこそ、いつも……ありがとう……」
気づけば、暖かい気持ちが溢れ。
自然と、笑顔になれた。
戦果
弥生→こげたクッキー
イムヤ→カレーライス(夕飯)
瑞鳳→お弁当(昼食)、クッキー
卯月→お弁当(味見、つまみ食い専門)
夕張→カレーライス(手伝い)
提督→朝食(手抜)
間宮さん→メンテナンス
昨日ふと気づいた。
この小説に推薦文が書かれている、と。
だが見てみれば、参考にならないの数が多い。
つまりそれは作者に対する挑戦と受け取った。
ど れ だ け 弥 生 を 可 愛 く 書けるか、と言う挑戦とな。
というわけで、今回は料理しながら弥生といちゃつく話。
頭なでなでしたい。
エプロンと三角巾は女の子に着て欲しい衣装の一つ。
個人的に弥生はあんまり料理は得意じゃないと思う、というかあまりやったことないと思う。
まだイベント踏んでないから、弥生のデレはまだ先になるけど、この先もっと弥生はデレることだけは約束する。
そして、まだ1-2終わってないこの小説。書いてて思ったが、まだ九日目だったんだな(
というわけで、次から話ちょっと飛ばします。