トレセン学園銀八先生。   作:バナハロ

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根を詰めるより休む。

 翌日、夏合宿……大雨。室内練習も可能ではあるが、やはり夏に来ただけあって外でトレーニングしたいもの……というのもあり、ウマ娘達のテンションも低かった。

 そんな時期に、夏合宿の引率の一人として同行していたたづなに、複数のトレーナーから相談が持ち掛けられたので、たづなは銀時に相談した。

 

「と、いうわけで、ウマ娘のモチベーション低下が僅かとは言え出ているそうです。今日はまだ平気ですが、明日の天気予報も雨ですし、何とかなりませんか?」

「雨くれーでやる気失せるとか、最近のガキは弛んでんなァ。雨だろうが何だろうが、雑巾みてーに全身ビショビショになる程、走んのが青春だろうが」

「いや、風邪を引くと雨が上がった以降も走れなくなりますので」

「大丈夫だろ、バカは風邪引かねーし。ウマ娘って俺が知る限り大半がバカだし」

「あなた本当にトレセン学園の教員ですか?」

 

 そんなことを言われても、銀時はどこ吹く風でコーヒー牛乳を飲む。

 

「ま、やる気が出るかどうかは置いていて、依頼っつーなら受けるだけ受けますよ。けど、あんま期待はすんなよ」

「ふふ、大丈夫ですよ。坂田先生なら、何とかしてくれると思います」

「はぁ?」

「今日、早速ナリタタイシンさんは練習に精を出されていましたよ。明確な目標のようなものができた様子で」

「ならボーナス出ません?」

「出ません」

 

 ダメだった。まぁ予想通りなので特に言うことはない。

 

「ま、やるだけやりますよ。明日、ウマ娘のモチベーションが上がるようなことすりゃ良いんすね」

「はい。今晩のうちにでも構いませんよ?」

「考えてみますよ」

 

 それだけ話すと、銀時は部屋を出て行った。

 とりあえず、万事屋のメンバーが寝泊まりしている部屋に向かう。仕事の連絡は早い方が良い。

 今頃、他の生徒達の就寝時間をチェックしている所だろう。軽く伸びをしながら適当に歩いていると、廊下を歩いているタイシンが目に入った。

 

「……あっ」

「何してんだ。小学生は夕焼けチャイム前に帰らないといけない時間だろうが」

「開口一番で喧嘩売ってんの⁉︎」

「良いから部屋戻れ」

「良いじゃん。ちょっと、話付き合ってよ」

「俺に?」

「そう」

「……」

 

 まぁ、それくらいは構わない。銀時は仕方なさそうにタイシンに背中を向けた。

 

「立ち話もなんだ。食堂で聞いてやる」

「食堂こっち」

「……わざとだよバカ」

「それは無理あるでしょ。……ついてきて」

 

 との事で、前を歩く小さな背中の後に続いた。

 夜の合宿所は、それはそれは不気味なものだ。それなりに年季が入っていれば当然の事だが、床も壁も天井も全て木製。強い雨風が当たるたびにガタガタと揺れる音がする。

 

「……」

 

 ……不気味だ。別に怖くないけど。

 

「ついたよ」

「あ? 何を? モチ?」

「正月じゃないのになんでそんなのつくの。てか『突く』じゃなくて『着く』だから。……アタシ、電気つけてくるから座ってて」

 

 それだけ言うと、タイシンは壁についている電気のスイッチを押しに行った。六つ並んでいるスイッチを押すと、パッパッパッと電気がつく。明るくなれば不気味ではない。

 クルリとタイシンが振り返ると、真後ろには銀時が立っていた。目の前に身長が30センチほど上の人間が立っていて、思わず腰を抜かしそうになる。

 

「っ⁉︎ っ……あだっ……!」

 

 背中を壁に打ち、思わず声が漏れた。

 

「あ、あああんた縦並びで何してんの⁉︎」

「いや、ボタン押し間違えないかなーと思って」

「全部押すのに間違えるもクソもないでしょうが!」

「ああ? 人が親切でやってやってんのになんだその態度は。反抗期か? 身長以外」

「マジぶっ飛ばすよ⁉︎ ていうか、普通に真後ろで大人の男に佇まれてたら不気味でしょうが!」

「俺よりデカい奴なんざ、ゴリラとマダオとお化けペンギンと犬しかいねーから分かんねーよ」

「ほとんど人間じゃないしどれも人間より小さいし、マダオって何⁉︎」

「良いから、話あんだろ? 何飲みたいよ。牛乳?」

「どんだけバカにしたら気が済むわけ⁉︎」

「うるせーよバカ。んな事ァどうでも良いからさっさと飲み物選べコラ」

「っ……こ、この……!」

 

 カチンときたタイシンは、足でもぶつければ良いと思って電気を消してやった。直後、薄暗い中、ほんのりと見えている銀時の姿が一瞬にして消え、その後にガシャンっ、ガラガラッ、ドッゴーンというなんか派手な音が耳に響く。

 

「え、ち、ちょっと⁉︎」

 

 流石に心配になって電気をつけたときだ。視界に広がっているのは、椅子を軒並み吹っ飛ばして机の下に突っ込んでいる銀時の姿。

 

「な、何してんの? 大丈夫……?」

 

 派手に転んだ割に違和感だらけの現場だが、そうも言っていられない気がして机の下を覗き込む。そこで銀時は……。

 

 ──頭を抱えて地面に額をつけて寝転がっていた。

 

 いや、抱えているのは頭だけでなく耳も。何も聞こえない、何も見えない、だから何もいない、という怯えた子供のようなフォルムで寝転がっていた。

 

「……銀さん?」

「……あ?」

 

 落ち着いて声をかけると、銀時はもそっと身体を起こす。ゴッ、と頭を机にぶつけたので、すごすごと地を這いながら慎重に出てきた。

 

「……何してんの?」

「いや、今机の下にムー大陸の入り口が……」

「……もしかして、お化け苦手なのあんた?」

「は? 何苦手って。苦い手? コーヒーに手でも漬け込んだの?」

「なんで言葉を知らないのに漢字を理解してんの! ……え、まさかほんとに怖いの?」

「だから怖くねえって言ってんだろ。俺が怖ぇのは仲間を失うことだけだ」

「感じの良いセリフで誤魔化さなくて良いから」

「誤魔化してねーよ。ていうか誤魔化すって何? 初めて聞……」

「それもういいから」

 

 すると、タイシンはムッと考えるように顎に手を当てると、思いついたように言った。

 

「あ、今外で白い着物の女が……」

「っ!」

「……」

 

 ドンガラガッシャーン、とまた机の下に飛び込む銀時。

 その背中を眺めながら、無言になるタイシン。そして、ニヤリとほくそ笑んだ。普段、自分達を馬鹿みたいにイジってくる男がこんなにビビり散らしている。こんな痛快な事、滅多にない。

 

「やっぱ怖いんじゃん」

「怖くねーよ。これはあれだよ、避難訓練の練習だよ」

「なら、アタシやっぱ部屋戻るわ。消灯時間過ぎてるし。あんたが散らかした椅子、自分で片付けてね」

「お、おー勝手にしろよ。結局、話は良いんだな? 銀時先生の飲み物奢りも良いんだ?」

「あー良いよ。じゃ、明日からもよろしく」

「うし、片付け終わった。何だ、お前まだ食堂にいたのか。早く部屋戻れ」

「は? や、あんたはまだ……」

 

 と、言いかけながらタイシンが振り返った時だ。アレだけ散らかっていた椅子がもう整頓されていた。

 

「はっ⁉︎ 何、タイムスリップでもしたのアタシ⁉︎」

「え、何が? 俺何かやっちゃいました?」

「なろう系主人公より凄まじいわ! どんだけ一人で部屋戻りたくないわけ⁉︎」

「いや別に一人でも良いけどどうせ同じ方向行くのにわざわざ別々で移動する理由もねぇしとりあえず何かまた出る前にさっさと行くぞコラ」

「出る前にって言った! やっぱ怖いんでしょ⁉︎」

「怖くねえって言ってんだろ。怖いのはその優しさだけだ」

「神田川にダンクしてあげようか⁉︎」

 

 なんてギャーギャーと騒ぎ始めた時だ。コツ、コツ……と、足音が聞こえる。それに伴い、タイシンはビクッと顔を向ける。恐怖が思わず伝染してきた。

 ……が、まぁ何もそんなにビビる事はない。誰か見回り中の生徒が来たのか、それとも引率の先生か……どちらにしても、ビビる事はない。

 ホッとしつつ隣の銀時を見ると、床に倒れていた。指をわざわざ切ったのか、ダイイングメッセージで「ナリタクウコウ」と残して。

 

「誰が殺人犯だああああああ‼︎」

「いだだだだ! 海老になる、海老になるって!」

 

 速攻、跨って座り込み、キャメルクラッチをキメる。

 

「ていうか邪魔すんな!」

「何してたのかわかんないし!」

「死んだフリ!」

「百歩譲って幽霊だとして、本職に通用するわけないでしょうが!」

「せ、背骨が取れる! だるま落としみたいに!」

 

 なんてやっている中、冷静に声を投げ掛けられる。

 

「貴様ら……何をしている」

「? ……あ、な、なんだ……銀さんとタイシン先輩か……」

「あ、エアグルーヴとスカーレット?」

「ぐほっ」

 

 顔を上げて手を離すと銀時の顔は床に激突したが、無視してエアグルーヴとその背中で隠れながらホッと胸を撫で下ろしていたスカーレットを視界に入れつつ、銀時の上から退いた。

 

「ちょっとこの人に話があっただけ。でも、もう今日はいい」

「? そうか」

「消灯時間、過ぎてるけどあんたらは?」

「私達は生徒の見回りです。一応、万事屋の手伝いということで来ているので、そういう仕事もしないといけないので」

「は? アタシ、何も聞いてないんだけど」

「お前は臨時だろう。もうその悩みも解消されたし、流れ的に退部すると思ったが?」

 

 エアグルーヴに言われたタイシンは「あー……」と声を漏らしながら、ふと目を逸らす。

 そして、頬を赤らめてポリポリとかきながら続けて言った。

 

「その……一応、あんたらのおかげでアタシのやる事とか見つかったし……だから、あんたらが良ければ……合宿の間くらい、万事屋の手伝いさせて欲しいんだけど……」

 

 言われて、エアグルーヴとスカーレットは顔を見合わせる。そんなの、答えは決まっている。

 

「「もちろん」」

「……どーも」

「ていうか、顧問の意見は聞かねえのかお前ら……」

 

 そう呟きつつ、銀時は立ち上がって腰をトントンと叩く。

 

「まぁ良いわ。それよりちょうど良かった。明日、仕事頼まれたから、お前らちょっと意見聞かせろ」

「仕事?」

「とりあえず、何飲みてーよ」

「私は紅茶」

「私もー」

「コーヒー」

「無理しなくて良いぞ、タイシン」

「や、別に無理なんてしてないし」

「牛乳だろ?」

「ブッ飛ばす!」

「待て待て、落ち着け。怒れば向こうのペースだ」

 

 なんて話しながら、全員分の飲み物を用意し、改めて話を再開した。

 

「で、依頼って?」

「せっかく合宿きたのに雨の日が続いてウマ娘のモチベーションが低下するかもしんねーから、何か手を打って欲しいってよ」

「それはトレーナーの仕事だろうに……」

「ま、体育館は割と範囲が限られてるし、練習できる生徒とできない生徒も出て来るからって事だろ。そんなわけで、案を募る」

 

 これまたどこから取り出したのか、ホワイトボードが用意されていた。

 

「意見のある人はどしどし、だしてください」

「はい!」

「はい、スカーレットくん」

 

 元気よく手を挙げたのは、何でも一番スカーレット。

 

「みんなでトレーニングできないなら、みんなでトレーニングするイベントを作れば良いと思う!」

「なるほど……それはアリだな」

 

 うなずいたのはエアグルーヴ。時間を区切ってその短い間だけ練習するよりも良いかもしれない。外が雨ならば、練習がない間は勉強か休憩しかすることがなくなってしまうから。

 そのあとにタイシンが聞いた。

 

「例えば?」

「いつもやらない事が良いだろう」

「玉入れだな」

「足止まってんでしょうがそれは!」

「じゃあ棒高跳び」

「それをどうレースに活かせと⁉︎」

「分かったよ。じゃあ、跳び箱なら文句ねーだろ」

「文句しかないけど⁉︎」

 

 何の勝算があってそれを言っているのか、小一時間ほど問い詰めたい所だ。

 

「とにかく、やるならもっと練習になるものにしろ」

「手押し車競争とか?」

「懐かしいなオイ! 腕力を鍛えるものだけどな⁉︎」

「あれ大体のやつ間違えるけど、足首より太もも持った方が速ぇーんだよな」

「どうでも良いわ!」

 

 エアグルーヴのツッコミが炸裂する中、銀時はコーヒー牛乳を口に含む。

 

「てか、走れば何でも良いんなら、もういっそバスケとかフットサルにしちまえば? 一応、その手の設備あんだろ」

「あるにはあるが……」

「体育の授業じゃないんだから、そんなの誰も喜ばないわよ」

 

 言いながら、耳をヒョコヒョコと動かし、尻尾を振るうスカーレットを指さす。

 

「反抗期のガキの反応を見て分かるように、結構ウケるんじゃね?」

「だ、誰が反抗期⁉︎ ていうか、別に楽しみとかじゃないし!」

「ふむ……確かにな」

「アリかも」

「先輩方も反論して下さいよ!」

 

 スカーレットの悲痛な叫びもどこ吹く風、エアグルーヴはそのまま続けた。

 

「スポーツ……瞬発力と判断力、スタミナをつけられるし、悪くないかもしれん」

「どんなスポーツにするかだな」

「アタシはバスケ嫌なんだけど」

「大丈夫、流石に俺も生徒をボールにするような真似はしねーから」

「そんなに小さくないから! あんたホント後でぶっ飛ばすから!」

 

 それを聞き流しながら、銀時は「とりあえず」というようにペンで今までの案をまとめる。

 といっても、スポーツと書いただけだが。

 

「とりあえず、室内で出来そうなスポーツを羅列するから、後は多数決だな」

「分かった」

 

 言いながら、銀時は箇条書きで記していった。

 

 ・相撲

 ・スキー

 ・ボウリング

 ・ビリヤード

 ・カバディ

 ・Eスポーツ

 

「「「せめて走らせろおおおおおおおお‼︎」」」

 

 三人で机をひっくり返し、バカを書いてあるホワイトボードごと銀時を殴り飛ばした。

 

 ×××

 

 翌朝、ライスシャワーは一番乗りを目指して体育館に向かっていた。昨日も雨で砂浜が使えないこともあって屋内練習になってしまい、体育館に行ったのだが、ほとんどの生徒が同じことを考えていて、あまり伸び伸びとした練習はできなかった。

 だから、今日は一番にきてたくさん練習する……! そう強く思って中に入った時だ。

 

「……え?」

 

 中は、それはもう引くほど丁寧なバスケのコートが出来ていた。それも、二つも。

 

「あ、あれ……? ライス、場所間違えちゃったかな……」

 

 おどおどするライスシャワーの視界に映ったのは、コートの反面。そこで、誠凛高校のユニフォームと、海常高校のユニフォームに身を包んだ四人の影だった。

 

「エア松先輩、俺にボール下さいっす!」

「黄瀬なのにスカーレット、きっちり決めて来い!」

 

 エア松先輩のパスを受け取ったスカーレットは、そのボールを手にする。そしてゴールに運ぼうとした直後、自身のマークについているのは黒シンだった。

 

「黒子っちが俺のマーク⁉︎」

 

 直後、情緒もクソもなくタイシンはスカーレットからビシッとあっさりボールを奪うと、それを振りかぶって銀時の顔面に投げつけた。

 

「なんでアタシが黒子だァァアアアアアア‼︎」

「あぶねっ」

 

 今回はかわした銀時は、タイシンを眺めて怪訝な顔で聞いた。

 

「なんだよ……主人公譲ってやったのに何が気に入らねえってんだよ」

「身長差の配役だよ!」

「それくらい良いだろ。エアグルーヴなんざ、副会長なのに主将だぞ」

「それ昇進してるじゃん!」

「銀時、私は会長を追い出して会長になるつもりはないぞ」

「知らねーよ」

「私は黄瀬くんで良いわよ。結構好きだし」

「もっと知らないから」

 

 なんてワイワイ盛り上がるバカ達を眺めながら、ライスは心底困ったようにどうしたら良いのか足踏みをしてしまう。

 そんな時だった。

 

「ライスさん、如何されましたか?」

 

 後方から声をかけられる。振り返ると、そこにいたのはミホノブルボン。

 

「あ、ぶ、ブルボンさん……! あのね、ライス……練習しようと思ってきたんだけど……」

「……けど?」

「なんか……バスケットしてて……」

 

 ライスがチラリと視線を向けた先をブルボンも覗き込む。

 

「よーし、じゃあそろそろスラダンで行くぞ!」

「読んでないわよ」

「私もあまり詳しくないな」

「……(知ってるけど黙っていよう)」

 

 なるほど、とブルボンは顎に手を当てる。そういう事なら、とりあえず退いてもらうしかないだろう。

 ライスの前に出て、声を掛けた。

 

「すみません。よろしいでしょうか?」

「あ、きたぞおい」

「もうか? 早いな」

「私、行ってきますね!」

 

 スカーレットがなんか出迎えにきた。何事? と二人して思う間も無く、手を握られて連行される。

 

「突然ですけど、今日の練習はバスケになりました」

「えっ」

「優勝チームは、にんじんパフェ奢りだそうです」

「えっ」

 

 話の流れについていけない、とブルボンでさえ珍しく何も言えなくなっていると、後から遅れてウマ娘達やトレーナー達が続々と入ってくる。

 それに対し、いつの間にか体育館のステージに上がっていた銀時は覇気のない声で改めて告げた。

 

「はーい、全員集合ー。今から、バスケットボール大会を始めまーす。優勝チームとMVP選手には、駿川たづなさんからにんじんパフェの景品がございまーす(無許可)」

 

 直後、ウマ娘達が「うおおおおおお‼︎」と男子のような怒号をあげる。特に、メジロナントカとか、スペシャルナンタラとか、小○旬とか。

 

「にんじんが食いたいかああああ!」

「「「「「うおおおおおおおお‼︎」」」」」

「雨の中でも馬鹿みたいに走りたいかああああ!」

「「「「「うおおおおおおおお‼︎」」」」」

「なら、まずは9〜11人くらいでチームを組め!」

 

 とのことで一斉に動き始めるウマ娘達。その様子を高いとこから眺めている銀時の横に、エアグルーヴとスカーレット、ナリタタイシンが並ぶ。

 

「おーおー……思ったより盛り上がったな」

「どうでも良いが、たづなさんに許可は取ったのか?」

「いや?」

「あんたいつか殺されるわよ」

「大丈夫大丈夫。ワンチャン死んで元の世界に帰れるかもだし」

「は? あんた異世界転生でもしてきたわけ?」

 

 なんて話していると、トレーナーの一人が駆け寄ってきた。

 

「ちょっと、何やってんすか勝手に!」

「異世界転生ねぇ……お前ら、仮に侍の国とかに飛ばされたらどうするよ?」

「なんで侍……というか、普通に江戸時代と言えば良いだろう」

「私は、新撰組に入ってみたいわ! 一番隊のひと、すっごく強いんでしょ?」

「バカ、あいつはやめとけ。……一週間で立派な雌豚に調教されてる姿が見えるわ」

「は? 何その知り合いみたいな言い方」

「あ、そっか。あいつら歴史上の偉人を改変された存在だから、お前ら知らんのか」

「何言ってんの?」

「何でもねーよ。とりあえず、土方歳三。試験の時にこいつの異名を書く時は『マヨラー』って書いときゃ丸もらえる」

「「「どんだけ適当な事言ってんの⁉︎」」」

「おい! 聞いてんのか⁉︎」

 

 雑談に夢中の四人に怒鳴り声が聞こえ、顔を向ける。トレーナーがこちらを向いていた。

 

「おい、誰か呼んでんぞ」

「私ではないだろう。トレーナー界隈では割と嫌われているらしいし」

「私でもないと思うわよ。覚えないしあんな人」

「アタシも違う」

「全員だよ!」

 

 呼ばれて、四人揃って小首を傾げながら顔を向けた。

 

「突然、こんなことされると困るんだよ! こっちだって色々考えてメニューとか……!」

「メニューと言えばさぁ、ポケセン学園の食堂もメニューとか増えねーの? 期間限定メニュー的なヤツ」

「トレセンな」

「増えたりするわよ。あんたそういうのチェックしてないの?」

「秋に出るカフェのスイートポテト、あれ本気で美味しいよね」

「一々、話の腰を折らないと気が済まないわけ⁉︎」

 

 怒られたので顔を向ける。

 

「しかし、そう言われてもなぁ。もう言っちゃったし」

「ああ、この盛り上がりを無下にはちょっと扱えんな」

「ね。これ邪魔したら逆に嫌われるよね」

「アタシもそう思う」

 

 言われて、トレーナーは狼狽えたように冷や汗をかきながら、ウマ娘達を見る。確かに、なんかやたらと盛り上がってしまっている。そんなにバスケが好きなのだろうか? 

 ……が、やがて楽しそうにしてるし良いか、と思ったのだろう。一日くらい。

 

「……はぁ、分かりましたよ……」

「ちょうど良いわ。アブれたウマ娘連れて来い」

「え、何で俺が」

「は? お前ぼっちは参加させねーつもりかよ」

「酷いな。大人のくせに」

「ね、最低」

「まったくだわ」

「ほら、うちの生徒もそう言ってんぞ」

「な、なんか3人とも俺が思ってた子達と違う……」

 

 刺すような3人の視線……もはや、何も言えない。

 

「……わ、分かったよ……」

 

 生徒達の群れに引き返すトレーナーの男。それを眺めながら、銀時達はとりあえず待機した。

 

 

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