トレセン学園銀八先生。   作:バナハロ

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一人より四人。

 パァンッ、という空砲が響き渡る。その音が耳に届くのは、もう何発目かも分からない。

 グラウンドで走っているのは頭から耳を生やしたウマ娘達。半年前まで不調だった子や、トレーナーと解約してしまった子、体格からして明らかに不利な子達がアップする様子を、シンボリルドルフは見学しに来ていた。

 注目しているのはダイワスカーレット、エアグルーヴ、ナリタタイシン。坂田銀時の元で彼らが何を学んできたのか興味がある。

 教え子、と呼ぶにはあまりにも舐められている関係の生徒達は今日のために銀時について行った。

 そう、選抜レースの日だ。不思議な事に、シンボリルドルフは彼女達が今日、結果を残せるという確信があった。走っていた時間は他の生徒よりも少ないはずなのに。

 のんびりとグラウンドを眺めていると、ふと目に入ったのは珍しい銀髪頭だった。

 グラウンドの端っこの方で、椅子に座ったままアポロチョコを口に放り込んでいる。その服装はいつものだらしないサンダルと白衣とメガネではなく、黒いブーツに雲の柄の着物を着込み、腰には木刀を挿している。

 

「おや、坂田先生。珍しいな」

「ん……おお、長さんか」

「長さんって呼ぶな」

 

 なんかもう普通にその呼び方が浸透しているのが嫌だ。生徒達に正体がバレていないのが救いだ。

 銀時は相変わらず死んだ魚のような目で声を掛けてくる。

 

「何してんの?」

「今日はエアグルーヴ達がレースに出る日だからね。見ておかないわけにはいかないさ」

「ふーん……」

 

 適当に返事をしながら軽く伸びをする銀時。

 やはり、あまりにも気になったので少し確認だけしてみる。

 

「……その腰のものは何に使うつもりだ?」

「ん、いややっぱ腰になんか挿さってねーと落ち着かなくてよ。ほら、長さんだって定期的に頭にタライ落とさねーと落ち着かねーだろ? それと同じだ」

「いやそんな事はないが!? てかそんな中毒症状聞いたことないから!」

「じゃあなんだ、ボウルとかヤカンか? 食器なら満足かコノヤロー」

「別に何か頭に落とされないと気が済まないって事はない!」

 

 やはり会話する度に腹が立つ男だ。こんな適当な対応をされても不思議と嫌いになれないのは、この男が放つ魅力なのかもしれない。

 その銀時は、逃げるようにその場から離れようと歩き始める。

 

「あー、糖分切れた。チョコレートパフェ食ってくるわ」

「君が落ち着かないのは木刀より糖類不足だろ! ていうか、レースは見ていかないのか?」

「俺が見てたところでレースのこととか分かんねーしな」

 

 それはそうかもしれないが、レースというのは最終的には気力の強さがものを言う。もしかしたら、銀時が見ているだけで三人はいつも以上の力を出せるかもしれない。

 それを伝える前に、銀時は振り返りながら口を開いた。その眼差しは、いつのまにか頭の死んだ魚の目ではなくなっている。

 

「とりあえずあいつらに伝えといてくれや。頑張れよって」

「……?」

 

 それだけ伝えると、銀時は歩いてその場を離れていった。

 何か変だ、と思いつつも、不思議とあの背中をついていこうとは思えない。万事屋のメンバーなら何か分かるだろうか? 

 だが……銀時の今の「頑張れよ」というセリフ。つまりは「レースに集中しろ」と言っているようにも聞こえた。

 

「……」

 

 せめて、レースが終わってからにするべきか。そう決めて、シンボリルドルフは一先ず機会を見て伝言を伝えることにした。

 

 ×××

 

 トレセン学園の屋上は、それなりに眺めが良い。屋上から学校全体が見渡せるんじゃないかと思う程だ。

 その屋上からぼんやりとグラウンドを眺めている緑色の服装の女性がいた。

 

「バカは高い所が好きっつーが、テメーもその口か?」

 

 背中から声をかけられたにしても、その女性はビクッと肩を振るわせることもしない。

 

「……あら、坂田先生。今日は教え子のレースの日なのでは?」

「あいつらがわざわざ顧問に『レース見てて欲しいですー』なんて可愛い事言うタマかよ」

 

 話しながら、銀時はツカツカとゆっくり歩いてその緑の女性に近づく。

 振り向くその女性の顔は、駿川たづな。実に落ち着いた表情で微笑んでいる。

 

「それで、何か私に御用ですか?」

「あ? 決まってんだろ。ジャンプ持ってねーか?」

「今日は土曜日ですよ? 土曜にジャンプが発売される日は既に過ぎ去っています」

「あーそう。惚けちゃうんだ。そっちがその気なら俺ぁどっちでも良いぞ俺は」

 

 話しながら、銀時は腰の木刀を抜き……そして、女性の方に剣先を向けた。

 

「どうけボコす前にパクるか、ボコしてからパクるかの二択だ」

「……」

 

 微笑んでいた駿川たづなはうっすらと目を開く。その瞳に、普段の優しさは込められていない。

 

「……おや、丸腰の女性に木刀で殴りかかるおつもりですか?」

「そもそもテメーが女の子どうかも分かんねーけどな。……てか、誰だテメーは」

「私ですか? 私は駿川……」

「ほざけよ。テメーがいなきゃ、俺はそもそも先生なんてやってねーんだよ」

「……」

 

 銀時が最初にこの世界に来た時、駿川たづなが銀時を先生と呼んだ。それがきっかけであれよあれよと教員ということになってしまったが、当然どの生徒も教員もトレーナーも銀時のことを知らなかった。

 つまり、異世界に転移した時、銀時は最初から先生だったわけではない。おそらくその後も教員として振る舞うことになっていたのは、目の前の女が細工をしたのだろう。

 実際、逆にダイワスカーレット、エアグルーヴ、ナリタタイシンの三人が銀魂の世界に行った時、特に「先生」というような役割は与えられていなかった。

 ならば当然、最初に銀時を教員ということにした駿川たづなは怪しい。

 

「どうせテメー銀魂の世界の天人だろ? 言っとくけど、銀魂の世界に行っちまったあの三人も、そのうち違和感に気付くぞ。ここで誤魔化してもバレんのは時間の問題だ」

「……ふふ、まさかあなたも元の世界から来た人だとは思いませんでしたからね。つい職員室で寝ていたあなたを起こしたのが間違いでしたか」

「いや服装で気付けや。ロロノア並みの観察眼ですか」

 

 全くである。服装のいうかキャラデザから何もかも違うだろうに。色んな異世界人が集まって違和感がないのはグラブルの世界くらいだ。

 

「私は擬態型天人……あらゆる星で生き残るためにありとあらゆる種族に変化する術を持ちます。この通り、他所の世界の身体にもなれるようでね」

「要するにテメー自身の個性を持てねーインキャってことか。他人のネタパクってドヤ顔すんのぁSNSだけにしとけ」

「その時に私は思ったんですよ。異世界のキャラになれるのなら、異世界に行ってしまえば良いのでは? とね」

「だったら連単自殺でもして転生した方が早いんじゃねーのか」

「ちょうど私、ウマ娘大好きなんですよ。それで、ジャンプ型異世界転生機を開発しました」

「何でジャンプ型なんだよ」

 

 冷たいツッコミを入れられても、目の前の相手は反応しない。駿川たづなの姿のまま邪悪な笑みを浮かべる。

 

「だが……まさかそのジャンプ型異世界転生機を手にした人間がいたとは思いませんでした。路地裏で使ったのに、まさか路上に落ちているジャンプを他人が拾うことがあるなんて」

「何にしても、テメーはここまでだ。覚悟しとけ」

 

 その直後だった。銀時が向けている木刀の切先を、目の前の天人は横へ払うと同時に蹴りを繰り出す。

 片腕でガードしつつも予想外の威力に、銀時は屋上から校内に入る扉に突っ込まされた。

 扉はいとも簡単に破壊され、銀時と一緒に階段から転げ落ちる。

 

「言ったでしょう? この身体、今はウマ娘なのです。ウマ娘の肉体は人間の身体より遥かに頑丈で力強い。……そう、あの夜兎族のようにね」

 

 話しながら、ニヤニヤ笑みを浮かべながら歩き、階段の上から銀時を見下ろす。

 

「天人に一度は国を奪われた侍が一匹、私の前に立ち塞がった所で私の敵にはなり得ない。そもそも異世界転生機は私がウマ娘ちゃん達とイチャイチャするために作ったのです。異世界から来た異物であるあなたにはさっさと消えてもらうことにしまへゔっ!?」

 

 最後まで言い切る前に、真下から壊れた扉が飛んできて天人のボディに直撃。屋上の方へ叩き出された。

 とても人間とは思えない威力に踏ん張ることも出来ず転がりながら、その場で大の字に倒れた。

 

「なーにがウマ娘の肉体は人より強ぇーだよ。この程度なら、あいつらのツッコミのが100倍痛かったわ」

 

 殺意に満ちた声音が、校舎に繋がる扉の奥から聞こえてくる。歩いて来るその銀色の侍が、後頭部をガリガリ掻きながらこちらを見据えてくる。

 

「テメーみてーに他人から何かをパクんなきゃ何にもできねー奴ぁ、何処の世界でも相手にされねーよ。銀魂世界の主人公で十分だ」

「ッ……!」

「あいつらぁ、この世界で必死こいて戦ってんだ。異物がその戦いに茶々入れんな」

 

 天人は少し狼狽えた様子で銀時を睨む。有り得ない。少なくとも今の自分ならフィジカルで勝っているはずだ。

 特に、スピード勝負でなら負けない。今はウマ娘の身体だ。奴が視認できない速さで仕掛ければ良い。

 そう決めた天人は、その場で走り出し、銀時の周囲を囲むように走る。その速度は仮にもウマ娘の身体と言える。走って銀時が追い付くなんて事は不可能だろう。

 そして、銀時の背後を取り、拳を顔面に叩き込もうと思った直後だ。それよりその拳をいなして捌きながら、ボディに木刀がヒットした。

 

「がぺっ……!?」

 

 メキメキっ、と脳裏にまで響く骨を軋ませるような音に吐き気さえ覚えながら、屋上の屋上の柵に叩き付けられた。

 あり得ない。ただの人間が、ウマ娘の速度についてこられるわけがない。

 

「なっ……何を……!?」

「邪聖剣烈舞踏常闇雷神如駆特別極上奇跡的超配管工兄弟弐號役立不弟逆襲監督斬だ」

「……は?」

「借り物の身体を使いこなせるわけねーだろ。こっちがどんだけツンデレどもの走りを見て来たと思ってんだ? んなトロいダッシュ、新八の必殺技で返せるわ」

「っ……!」

 

 木刀を担ぎながら、自分の方を見下してくる侍。そういえば、この男はこの世界に来て色んなウマ娘と関わり、慕われていた。その経験が活きているとでも言うのだろうか? 

 ……心底、忌々しい。自分のために作った機械を勝手に使った挙句、自分よりウマ娘に慕われていたなんて、腹立たしいにも程がある。

 仕方ないので、懐から獲物を出す。スラリと姿を見せたのは、黒丸に光る複数本のクナイ。

 

「このっ……!」

「オイオイ、お前本当にこの世界に溶け込む気あんのか」

 

 そのまま向かって行こうと思った直後だ。屋上の入り口からシュタタタっと走って来る足音が聞こえる。誰だ? と二人揃って目を向けた直後、屋上に飛び込んで来たのは「バクシンバクシンバクシン!」とかアホなこと抜かしそうなアホだった。

 

「屋上からバイオレンスな音がすると聞いてやってきました! 不良生徒を放置しておくわけにはいかない学級委員長です!」

「あ?」

 

 サクラバクシンオーの姿が目に入った直後、ニヤリと天人はほくそ笑む。それと同時に手元のクナイを放った。

 そのクナイが向かう先は銀時ではなく、バクシンオーの方へ向かっていた。

 

「ひっ……!?」

 

 仮にもウマ娘のフィジカルで放たれたクナイの速度は、素人であってもそこそこなものだ。思わずバクシンオーは小さな悲鳴を上げて腰を抜かしそうになる。

 すぐに気付いた銀時はその場から動き、バクシンオーの前に立ち塞がり、木刀を振るう。

 ガンッ、カァンッ、ギンッ、という鈍い音と共にクナイは弾かれ周囲に舞う。ようやく攻撃が止まったと思ったら、いつのまにか天人は屋上から姿を消していた。

 

「さ、坂田先生……?」

「怪我はねーか? バカシンオー」

 

 ヒュッ、と空を切る音を立てて横に振り払った木刀を腰に挿しつつ、サクラバクシンオーの方に振り返る銀時。その額には、ぶっすりとクナイが刺さっていた。

 それを見た直後、バクシンオーは思わず口を大きく開けて大声を上げてしまう。

 

「ぎゃあああああああ!!!! 刺さってるうううううううう!?!?!?」

「えっ、何そのリアクション」

「救急車ァァアアアアアア!!!!」

「ちょっ、やめてくんない。原作再現が恥ずかしくなるから。大して刺さってないから」

 

 言い訳しながら額のクナイを抜くと、鮮血がエメリウム光線のように吹き出した。

 

「ぎゃああああぁぁぁぁ……」

「あ、オイ!」

 

 そのまま失神してしまった。これはマズイか? と思ったのも束の間、屋上に向かってくる足音が聞こえて来る。

 

「騒がしいな……何の音だ?」

「えっ、これ……」

 

 屋上に現れたのは、エアグルーヴとシンボリルドルフ。その視界には、頭から血を流している銀時と、失神しているサクラバクシンオーが映されている。

 

「おぉう、もう……」

 

 思わず顔を手で覆ってしまった。これはいつもの流れだ。どうせこの後に袋叩きに合う。とりあえずあの偽物野郎ブッ飛ばす、と心に決めた。

 それと同時にエアグルーヴからの攻撃に備えて受け身の順番している時だった。

 

「はぁ……貴様はいつもいつも面倒ごとを持って来て……次は流血沙汰か」

「あ?」

「とりあえず、保健室に連れて行かないとね」

 

 殴られない……? と、眉間に皺を寄せる。

 同じことを思ったのか、ルドルフがエアグルーヴに目を向ける。

 

「しかし、優しいね。エアグルーヴ。てっきり袋叩きにでもするものかと思ったよ」

「別に優しくありません。サクラバクシンオーの外傷は見られませんし、出血しているのは銀時の方と冷静に判断したまでです」

「ふふっ、そっか」

「その代わり、何をやらかしたのかは殴ってでも吐かせます」

「テメェ、仮にも怪我人だぞコラ。てかお前レースはどうしたの?」

「私は午前中で終わった。新たにトレーナー候補が3人ほど集まり、また今度決めることになったよ」

「おお、おめっとさん」

「いや、血を流したまま普通に言うな。とりあえず保健室だ」

 

 そんなわけで、保健室に向かった。

 

 ×××

 

 頭から血を流すのも銀時にとってはもう慣れたものではあるのだが、どうもこの世界の人間はそうでもないらしい。

 わざわざご丁寧に消毒からの包帯まで巻いてくれてしまった。こういう気遣いは銀魂女子には無理な芸当である。

 

「なんつーか……ツンデレだけどそういうことはしてくれんのなお前ら」

「殺すぞ若白髪。ていうか、手当てくらい銀魂世界の人達もしてくれるだろう」

「手当ての後にダークマター食わされそうになって薙刀でブッ刺されそうになって最終的に竹槍入りの落とし穴に落とされた事はあったな」

「……えっ、誰がそんなことするんだ?」

「ゴリラに育てられた女。メガネかけ機の姉」

「よくわからんがそんなことを言うからそんなことをされるんだろう」

「うるせーよ」

 

 バクシンオーは隣のベッドで瞳を閉じている。しかし、と改めて銀魂の世界とウマ娘の世界の差というものを実感してしまう。

 まぁそもそも、自分もあの天人もこの世界の人間ではない異物だ。世界が違えば感性が違うのも当然である。

 すると、保健室の扉が開かれた。入って来たのは、ルドルフが連れて来たダイワスカーレットとナリタタイシン。

 

「銀さん生きてるー? まぁ生きてるか」

「チョコ食べすぎて額から血を出したとかそんなんでしょどうせ」

「テメェら……てか、だからレースはどうしたの」

「終わったわよ」

「まぁ……一応、トレーナー? になりそうな人はいたけど」

 

 どうやら、各々結果が出たらしい。それならば、万事屋ももう店じまいかもしれない。

 だが、どうやらそこは本題ではないらしい。それよりも、と言わんばかりに合計四人のウマ娘達は椅子を用意して座っている銀時を囲む。

 

「あの……なんで取り囲むの? ABCD包囲陣?」

「何があったのか聞こうと思って」

「あんたなんかこういうの話すの誤魔化しそうだなって」

「実際、この子達がレースの日に事が起きたみたいだからね」

「……」

 

 バレてる。シンプルなバイオレンスに巻き込むのはどうかと思ってレース中を狙って帰ろうとしたのがバレてる。

 まぁ、こうなった以上は仕方ない。もう誤魔化しは効かないし、素直に白状することにした。

 さっきまであったことを洗いざらい話すと、四人とも「いよいよか」と言わんばかりに表情を曇らせる。

 

「なるほど……たづなさんが偽物だったか……」

「じゃあ、本物のたづなさんは?」

「あ? たづなって奴はこの世界に本当にいんのか?」

「いる。けど言われてみれば最近のたづなさん変だったよね」

「そう? 多分、この二次創作の作者そこまで考えてないわよ」

「だな。そんな計画的に物語を綴れる奴なら、19話と20話の間に三年も掛かるまい」

「お前らその辺にしとけ」

 

 こういうことを平気で言うようになったのも銀時と関わったからな気がする。

 まぁ何にしても、こうなった以上は致し方ない。正面から正々堂々と釘を刺すだけだ。

 

「オメーらは関わんな。元はと言えば銀魂世界の何でもありな感じが招いた事だし、トレーナーも見つかってこれからだろ? 悪ぃが、俺はあいつをぶっ飛ばすし、そんな事になれば暴力沙汰でオメーらの今後にも影響出るかもしんねーだろ。後は、俺が……」

「ダメ」

「あ?」

 

 そう言いかけた銀時のセリフを、ダイワスカーレットが遮る。

 

「今まで、散々困ってたウマ娘を助けて来たじゃない」

「今は、銀時が困っているんだろう?」

「なら、今度はあんたが助けられる番でしょ」

「……ったく、バカどもが……」

 

 仕方なさそうに銀時は声を漏らす。そこまでして言ってくれるなら、頼らないわけにはいかない。

 

「言っとくけど、俺はあいつを見つけたら容赦なくボコボコにするからな。それで警察呼ばれても責任取らねーぞ」

「分かってるわよ」

「無論だ」

「大丈夫」

 

 との事で、万事屋銀ちゃん(トレセン学園出張店)最後の仕事が幕を開けた。

 

 ×××

 

「はい、そんなわけで、偽たづなさん討伐会議を始めまーす」

 

 そんなわけで、黒板を前に会議が始まった。チョークを握った銀時が、ゴンゴンっと音を立てて文字を書き記す。

 

「何か案があったら、モリモリ発言してくださーい」

 

 座っているのはダイワスカーレット、エアグルーヴ、ナリタタイシンの三人。まず手を挙げたのはスカーレットだった。

 

「はい!」

「はい、スカーレットくん」

「とりあえず、戦うのは銀さんね!」

「分かってんだよ、んな事ぁ」

「はい!」

「はい、エアグルーヴくん」

「武器は木刀と原チャリが良いと思います!」

「それしかねーからな」

「はい!」

「はい、ナリタタイシンくん」

「私達することなくない?」

「お前らが手伝うっつったんだろ。てか、大喜利大会じゃねーから。お前ら少しは真面目にモノを言えや」

 

 絶対に銀時に言われたくないツッコミを入れられて、ようやく3人とも考え始める。

 まず口を開いたのはエアグルーヴだ。

 

「まぁ……普通に考えたら役割分担だな。たづなさんを探す役割と、偽たづなをしばく役割」

「そうよ。てかたづなさん大丈夫なの? 無事だと良いけど……」

「ていうか、そもそも偽物は誰かに変身する能力を持ってるんでしょ? どうやって見つけんの?」

 

 ダイワスカーレットとナリタタイシンがそう言う。その辺は確かに考える必要がある。

 

「偽物はおそらく、俺を殺そうとしてるはずだ。何せ、俺ぁ奴にとって一番、邪魔な存在だからな。近いうちに俺を狙いに来る」

「じゃあ、銀時が囮ということだな。その間に、たづなさんを探すことになるが……」

「問題は探すっつっても、何処を探しゃ良いかってとこだな」

 

 何せ、トレセン学園でさえバカみたいに広い。それを覆う街はさらに広いに決まっている。

 

「それなら問題ない。会長に頼めば人数を増やす事はできるだろう」

「私もハヤヒデとかチケットとかに声かけてみる」

「あ、あたしも! ウオッカとかみんなに協力してもらえるか聞いてみる!」

「まぁ、そこは人海戦術に頼るしかねーんだろうな」

 

 そこはまぁそれで良いとして、他にもう一つ問題がある。

 

「後は、奴が逃げた時の話だな。ウマ娘の身体になって走られたら、原チャリでも追いつけねーぞ」

「あたし達なら追いつけはするかもしんないけど、戦うとか無理よ」

「私はグラスワンダーに薙刀を習っているが……」

「そいつで実際に人を斬れるか?」

「いや……流石に」

「奴が逃げた時、か……」

 

 どうするか、と考え込んでいる時だった。ナリタタイシンが口を開く。

 

「シンプルに、こういう手はどう?」

「? 何か考えがあるのか?」

「うん」

 

 そのとんでもない策を聞くと、ダイワスカーレットとエアグルーヴは爆笑し、銀時は半眼になった。

 マジで言ってんのかこいつ、と言わんばかりだ。だが、確かに効果的かもしれない。

 

「……えっ、それ本気?」

「いっ、良いんじゃないか? くくっ……」

「ね、ね……あたしそれやりたいかもだし……!」

 

 そんなわけで、作戦が決定した。

 

 

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