トレセン学園銀八先生。   作:バナハロ

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運の悪さは一括払いで手元に届くように連鎖する。

 ある日、なんとなーく銀時は、誰かにつけられている気がしていた。ていうか、つけられている自覚が間違いなくあった。

 だが、まぁ攘夷戦争はそんなこと日常茶飯事。もしかしたら、学園内にいるアホな誰かしらが、自分の噂を聞きつけてつけているのかもしれない。

 何れにしても、悪さされたらなんとかするが、されないのならいつも通り過ごす事にした。

 今日はなんとなーく気分が乗らないので万事屋をサボり。のんびりと歩いて、学園の外から出た。万事屋のツッコミ1号とツッコミ2号に見つかったら怒られるからだ。

 

「……というか、ツッコミとボケの比率あってなくねーか? 普通、ツッコミ1でボケ2だろ……」

 

 正直、2人がかりのツッコミはキツい。あいつらのツッコミ、割と暴力的だし。神楽やお妙でさえ、あんなにゴリゴリに暴力は……いや、振るってくる。

 

「つまり、何処の世界のツッコミも、女がやるとああなるって事だな、うん」

 

 そんな呑気な事を呟きながら、とりあえず前にもらったハチミー無料パスが使えるカフェに来た。

 いや、本当にこのパス使える。少し糖分切れたけど財布持ってなかった時とか、こいつがあれば余裕で摂取出来る。

 早速、こいつを使おうと思い、カフェに到着した時だった。

 

「おいおい……なんでこんな並んでんだよ。昼近くのラーメン屋ですかコノヤロー」

 

 そう呟いた通り、カフェの前はやたらと人が並んでいた。

 どうしたものか悩んだが、まぁ少し待つくらい良いて思い、並んだ時だ。唐突に強風が銀時を襲った。

 

「うおっ……!」

 

 そして、手元からフリーパスが飛んで行ってしまった。

 

「あっ、ちょっ……待っ!」

 

 なんの因果か、さらにそのフリーパスを飛んでいたカラスが咥えてしまう。まずいと思った銀時は腰に手をかざすが、木刀は今、持ち歩いていない。

 そのため、すぐに足に切り替えた。

 

「うつむーくー、そのせーなーかにっ!」

 

 適当に歌いながら、足を振り上げてサンダルを思いっきり飛ばした。射出された安物のサンダルは見事な打ち上げ軌道によってカラスの胴体を見事にヒット。

 衝撃で、カラスの口からフリーパスが落ちた。

 

「おお〜……」

「すごいコントロール……」

 

 列を並んでいた目撃者から地味に称賛の声が届く。

 風が止まり、ヒラリヒラリと落ちてくるパスをキャッチした銀時は、空を飛んで逃げ出すカラスを見上げながら、なんかちょっと気持ち良くなったのか、決め台詞を吐き捨てる。

 

「けっ、この俺から甘味を奪おうなんざ、一億と二千年早ぇーんだよ」

 

 そう吐き捨て、サンダルも拾いに行こうとした時だった。サンダルが見当たらない……と、思ったら、近くのトラックにエンジンがかかる。顔を向けると、荷台にサンダルを乗せたまま走り出してしまった。

 

「あっ、待てコラ……! ……チッ、原付乗ってくるんだったぜ」

 

 流石に走って……それも片足、サンダル無しで車に追いつくのは無理だ。仕方ないので、糖分の前に靴を確保する事にした。

 

 ×××

 

「あうう……あれも、ライスの所為……で、でも、ライスも……あの人と、お話しないと……!」

 

 ×××

 

 百均でサンダルを購入した後、銀時は今度こそ甘味。だが、もうあのカフェに戻るのは面倒だったので、近くの所に入った。

 オープンテラス付きで、とりあえずパフェを購入し、せっかくなので外で食べることにした。冬でも夏でもないこの季節は、むしろ店外の方が良いものだ。

 

「よーっし、じゃあ早速……うおっ、美味っ」

 

 先端から口に運んだ直後、芳醇な生クリームの柔らかい甘味と食感が口内に広がる。

 

「すげーな……こりゃフリーパスのとこより全然、美味ぇ。江戸にもこんな美味ぇパフェねーぞ」

 

 感激しつつ、二口目をもらおうとした時だ。唐突に自分の机に、男の背中が飛び込んできた。

 

「調子こいてんじゃねーぞこのクソガキがァッ‼︎」

「ってーな、テメェこそ腐れ切った脳みその癖にしゃしゃってんじゃねーぞコラァッ⁉︎」

 

 そう怒鳴り合う二人は、明らかにヤンキーだ。背中に竜の刺繍が入ったジャンパーを羽織っていたり、やたらと裾の長い黒の学ランを着込んでいる。

 

「テメェみてーなのがうちの族にいられんのァ困るな……先輩を敬えねえカスは、さっさと失せろボケが」

「一個上だけで調子こいてんのはてめーだろうが。かかって来いよ。うちの組は年功序列より実力主義なこと教えてやるよボケが」

 

 そう言いながら、投げ飛ばされた学ランの方が立ち上がり、ジャンパーの方へ歩いて行った時だった。

 

「オイ」

 

 声が掛けられ、振り返った直後、その男の腹に安物のサンダルが突き刺さる勢いで繰り出される。

 

「グボァッ⁉︎」

「あ?」

「テメーらよォ、イキリ散らしてヤンチャすんのも結構だが、場所くれー選んだ方が良いんじゃねえのか?」

「ああ⁉︎ んだテメェは!」

「カンケーねーだろ! すっこんでろコラァッ‼︎」

 

 それを聞きながら、銀時はククッ……と笑いを溢す。

 

「ベンショーしろ」

「あ?」

「何言ってやがんだ?」

「仮にも今は教師だ。俺の一週間ぶりのパフェ、弁償しろって言ってんだよ。これで手ェ打ってやる」

「ふざけてんのか? するわけねーだろ!」

「ぶっ飛ばされねーうちに失せろ! モジャモジャ野郎が!」

 

 限界だった。銀時は気がつけば二人の目の前に移動し、胸ぐらを掴んでいる。そして、片腕で人間一人分を軽々持ち上げられた時点で、二人の脳裏に嫌な予感は出来ていた。

 

「じゃあテメェらの命で償いやがれクソガキどもがアアアアアアアア‼︎」

「「ああああああああああああ‼︎」」

 

 思いっきり投げ飛ばされ、店から文字通り叩き出してやった。

 

 ×××

 

「あ、あわわっ……ま、またライスの所為……? でも、あの人やっぱりすごい……! な、なんとか……お願いしないと……!」

 

 ×××

 

「ったく……なんなんだよ今日は」

 

 そうボヤく銀時は結局、糖分摂取をコンビニのア○ロチョコで済ませた。さて、いよいよパチンコである。

 欠伸をしながらジャラジャラと銀色の玉を打ち込みつつ、ボンヤリと映像を眺める。こっちの世界のパチンコは元の世界より進んでいるようで、いろんなバリエーションが出ていた。

 銀時が選んだのは、機動戦士ガンダム。別に興味あるわけではないが、何となく自分の家に、ランバラルとクランプにそっくりな泥棒が来たことを思い出したからだ。

 

「分からない読者の方は『アニメ銀魂、第171訓』をチェケラ!」

 

 余計なことを言いながら、銀時はジャラジャラと打ち込み続ける……そんな時だった。早くもエフェクトが入る。

 

「……あ?」

 

 ナンバーが揃えば球を打ち込む方向が変わる。

 

「あ、あの……」

「来るか……もう来んのか……?」

「あ、あの〜……坂田先生……」

「嘘だろ? ちょっ、こんなに早く右打ちなんて、長いことパチンコやって来たけど初めて……!」

「あ、あのー!」

『ピキィィィン! 僕は、あの人に勝ちたい……! 右打ちだ!』

「うっおおおお! きたきたきた、マジできたぞこれお前!」

 

 その直後だった。太ももの中で携帯電話が震える。

 

「あ? なんだ、こんな時に……!」

「あ、あのう……坂田先生……?」

「お、ちょっとこのままこれ抑えといて」

「えっ、えっ?」

「早く。電話だから」

「わ、分かりました……!」

「じゃないだろおおおおおおおお‼︎」

 

 直後、見事な廻し蹴りが銀時の身体を大きくふっ飛ばした。上腕二頭筋から真横に向かって綺麗に振り抜かれ、銀時はそのまま転がってずっこける。

 

「たかが電話で未成年に何をさせてるんだ貴様は‼︎ ホント少しは教員としての自覚を持たんか‼︎」

「て、テメェ……なんで、こんな所に……」

「ライスシャワー! 貴様も何故、こんな所にいる⁉︎ 誘われたとしても、未成年がパチンコ屋に入るなど言語道断だろう‼︎」

「ひぃっ……! ご、ごめんなひゃぃ……!」

「謝るならその手を離せ!」

「まあ、そ、そっか……」

「ダメだって、離すな! 久々に演出来たんだから!」

「貴様は黙っていろ!」

 

 結局、購入した玉も当たり演出も何もかもを台無しにして、銀時とライスシャワーはパチンコ屋から出て行った。

 

 ×××

 

「あーあ……あそこで上手いことやってりゃお前……明日はもっかいパフェ行けたのによ……」

「まだ言うか貴様」

 

 場所は学内のカフェ。3人はのんびりとお茶をしながら、エアグルーヴは銀時に目を向ける。

 

「で、どういうつもりだった?」

「あーあ……あのままやってりゃお前……今頃、またあの激うまパフェ食いにいけたってのに……」

「おい、話聞け」

「せめて当たってねー時に来てくれりゃ、もう少しダメージ低かったのに……」

「何、しれっと私の所為にしようとしている⁉︎ 理事長に報告しても良いんだぞ⁉︎」

「あ? 何が?」

「未成年をパチンコ屋に連れ込んだ理由だ! まさか法律を知らんわけじゃあるまいな⁉︎」

「連れ込んだ? バカ言ってんじゃねーよ。こいつが勝手について来たんだよ。……つーか、こいつ誰だよ?」

「そんな言い訳が通ると思うか?」

「あ、あのっ……待って、エアグルーヴさん!」

 

 そこでようやく萎縮していたライスシャワーが口を挟む。

 

「ほ、本当にねっ、ライスがずっとついて行ってたの……! 坂田先生にねっ、お願いしたいことと……謝りたい事があって……」

「ああ? そんな事で職員室の前からずっとついて来てたのか?」

「えっ……そ、そんな早くから気付いてたのっ?」

「てことは貴様! やっぱりパチンコの件は確信犯だろう⁉︎」

「なわけあるか。……つーか、パチンコ屋の中まで入ってくるなんて誰が思うよ」

「ううっ……ご、ごめんなさい……」

 

 肩を落としてしょぼんとするライスに、銀時は容赦なく続ける。

 

「ごめんなさい、じゃねーよお前。あれ店員に見つかってたらマジ停学じゃ済まねーぞ」

「うっ……」

「お前にポケモンマスターがついてんのかどうか知らねーが……」

「おい、もうトレーナーもつかなくなってるぞ」

「そいつにまで迷惑がかかってたことはわかんだろ?」

「ううっ……」

「どんなに深刻な相談したかったのかは知らねーが、一時のテンションに身をまかす奴ァ、身を滅ぼす……」

「うううっ……」

「銀時!」

「なんだよ」

「……言い過ぎだ」

 

 エアグルーヴが言いながら、ライスの方をしゃくる。

 

「うっ……ううっ、ぐすっ……ごめんなさい……だめな、ライスで……ぐしゅっ、ごめんなさい……」

「……」

「……」

 

 泣いちゃった。

 まさか泣くとは思ってなかった銀時は、黙り込んだまま目を逸らしてしまう。

 

「……まぁ、ライス。なんだ? 今回、貴様がパチンコ屋にまで入ったのは貴様の落ち度のようだ。そこを反省すれば銀時も大目に見ると言っている。……なぁ?」

「……はい」

 

 ギロリと銀時を睨みつけて返事をさせる。涙目のライスは、二人を見上げておずおずと尋ねた。

 

「……ほんとう?」

「ほんとほんと。ホントだから誰にも言うなよマジで。パチンコ屋の事とか特に」

「わ、分かりました……!」

 

 とりあえずほっと胸を撫で下ろしつつ、ようやく本題。

 

「で、だ。ライス。このバカになんの用があった?」

「あ、うん! ……実はね、ライス……ダメな子なの」

「知ってる」

「え」

「へぶっ!」「黙ってろ」

 

 割と鼻血が出る威力の裏拳が減り込んだが、ライスは続けた。

 

「いつもいつも、ライスは自分も周りも不幸にしちゃうの……。なんでかわからないけど……今日も、坂田先生に迷惑……たくさんかけちゃって……」

「こいつへの迷惑は気にしなくて良い。大体、自業自得だ」

 

 エアグルーヴの憎まれ口を無視して、銀時は今日の出来事を思い返す。確かに、なんか入ろうとしたカフェが混んでると思ったら、手元からパスが飛んで行ったり、それをカラスに咥えられたり、それを撃退したらサンダルを持っていかれて余計な出費が出たり、せっかく美味いパフェを見つけたと思ったらちゃぶ台クラッシュをもらい、最後にはパチンコ当たった直後のエアグルーヴである。

 

「う、ううん……多分、ライスが先生を巻き込んじゃったからだと思うの……だからね、まずは『巻き込んでしまってごめんなさい』と……」

「不幸をなんとかして欲しいの二つか? 依頼は」

「は、はい……!」

「まず俺から言う事ァ、一つだ」

「? 何?」

「宝くじに興味ねえか?」

「何に使うつもりだ貴様⁉︎」

 

 当然、反応したのはエアグルーヴ。それに対し、銀時は真顔で続けた。

 

「だってつまり……こいつの近くにいりゃ、不幸を呼び込めるんだろ? なら、こいつにこの街の宝くじ売り場を一箇所だけ残して掛け持ちでバイトさせて、その残った場所で買えば当たるかもしんねーだろうが」

「当たり前みたく言うな! 貴様本物の人でなしか⁉︎」

「ら、ライスにできることなら……!」

「ダーメーだ! ライス、お前も別に何でもかんでも頷くな! そもそも、私から見れば不幸だと言う話さえ眉唾……!」

 

 その直後だった。

 

「ゴルシちゃん〜……ワンダフルー!」

 

 飛んできたラーメンの空のお椀が、エアグルーヴの頭にスポッとハマった。

 

「ひゃっ……!」

「……」

「……」

 

 ライスは肩をビクッと震わせ、銀時は当たられないようにエアグルーヴから目を逸らし、当人は微動だにしない。

 確かに、不幸に近いものはありそうだ。普通に生きていれば、ラーメンの丼が頭にハマるような経験はしないはずだから。

 

「……私は一時、抜ける。銀時、あとは任せた」

「3/4殺しくらいで許してやれよ」

「保証しかねる」

 

 二人のウマ娘の追いかけっこが店外まで続いたが、興味のない銀時はそのままライスの方へ顔を向ける。

 が、当のライスはショボンと肩を落としてしまっていた。

 

「今のもテメーの所為だと思ってんなら、そりゃ不幸も重なるってもんだ。テメーで勝手にそう認識してんだから」

「……え?」

「言っとくぞ。俺ァ、今日俺の身に降り掛かった事をテメーの所為だと思った事ァ一回もねえからな」

 

 言いながらカフェオレを飲む銀時。……だが、ライスは俯いたままポツリポツリと呟くように言った。

 

「で、でも……また、ライスが近くにいたから、エアグルーヴさんをひどい目に……」

「なら、考えてみろ。俺達三人がこのカフェを選んでなかったらってことを」

「……え?」

「そしたら、今のどんぶりはエアグルーヴではなく別の奴に当たってた。その周囲に、お前はいねーだろうが。その不幸までお前の責任だって思うつもりか?」

「……そ、それは……」

「あんま、自惚れてんじゃねーぞ。人生ってのは長ェモンだ。その中でハイドロポンプがやたらと多く外れる日もあれば、きあいだまが無駄に当たる日もある。そこに、お前が近くにいるだのいねーだのは関係ねーからな」

 

 そう言いながら、銀時はポケットの中のベ○ーチョコを手元に垂らし、口に放る。

 

「で、でも……今日の坂田先生は、明らかに……」

「安心しろ。俺ァ、テメーの不幸を他人の所為にする程、落ちぶれちゃいねーよ。近くにテメーがいた所で、俺ァ『こういう日もある』って思うだけだ」

 

 それに、と、銀時は続けて言う。

 

「お前がもし呼び込んだ不幸だとしても、それは悪ィ事だけじゃねーよ」

「……え?」

「例えば、カラスにパスを持っていかれそうになった件。ありゃ、見方を変えればアレのお陰で他の人から賞賛された事になる」

 

 別に賞賛されたかったわけでもないが、一例として挙げておいた。

 

「で、そのままサンダルを持っていかれたわけだが、それがなかったらあのカフェに美味いパフェがあるなんて知る事もなかった」

「っ……!」

「要するに、一つの不幸が一つの幸運を呼ぶことだって、十二分にあるんじゃねーの?」

 

 要するに、不幸かどうかを決めるのは自分の考え方次第というわけだ。こっちの世界にきたのだって、普通に考えれば不幸だが、家賃と給料から逃れられると思えば悪くない。

 こっちで万事屋を始めたのだって、依頼内容を記した記録をとるとか、そういうのは戻った時に活かすことも出来るかもしれない。

 

「何より、テメーがあんま自分をぐだぐだとダメだってぬかすと、応援してくれる奴に失礼ってモンじゃねーの?」

「え……?」

「ライス!」

 

 声を掛けられ、ビクッと肩を震わせる。振り返ると、トレーナーさんが立っていた。

 

「お、お兄さま⁉︎」

「え、兄妹なの?」

「ここにいたのか……! 今日、夕方から勉強するって言ってなかったか?」

「あっ……あれ、もうそんな時間っ……⁉︎」

「似てねーな。もしかして、エースとルフィとサボ的な兄妹?」

「とにかく無事で良かったよ……。何かあったのかと思って心配したよ?」

「ご、ごめんなさい……!」

「未成年に飲酒はダメだろ。まぁライスシャワーって名前的に日本酒飲ませたくなる気持ちはわかるけどよ」

「あんたは黙ってろ! てかなんであんたがここにいんの⁉︎」

 

 ワンピースネタを引きずっている銀時を黙らせて、ライスは自身のトレーナーに言う。

 

「ち、違うの! お兄様。ライスの方から、坂田先生に相談してて……! この前も、お兄様……ライスの近くにいたから、車に水溜りの水かけられたり、鳥のフン、肩に落とされたりしてたから……」

「ライス……何度も言っただろ? 俺は、ライスのトレーナーになれただけで幸せだって。そんな不幸、屁でもないって」

「……!」

「だから、こんな得体の知れない男に相談なんてしなくて良い」

「目の前で言うなっつーのだから」

 

 この前のプールの件があったからか、かなり警戒されている。銀時はイラッとしつつもどう思われようと勝手なので無視する事にした。

 

「え、得体もしれなくなんかないよ……!」

「? ライス?」

 

 握り拳を作ってそう言うライスの言葉に、トレーナーは耳を傾ける。

 

「ら、ライスね……決めたんだ。もうライスの身の回りで起こること、不幸だって思わないようにするから……!」

「ライス……」

 

 感動するように目を潤わせるトレーナー。まさか、そんな風に前向きに考えてくれる時が来るとは思わなかった。それら全ては、自分がカバーするつもりでいたから。

 

「……あなた、ライスに何言ったんですか……?」

「大したこと言ってねーよ。強いて言うなら、ハイドロポンプよりきあいだまの方が当たりやすい事もあるって話」

「その話の何処にポジティブ要素が⁉︎ あと個人的にはストーンエッジも当たりにくいよね!」

 

 ツッコミなのか同意なのか分からないことを言われる。

 

「……まぁ、とりあえず感謝します。ライスに何かヒントを与えてくれたのなら」

「感謝されるような事ァ言ってねーよ」

「じゃあ、またね! 坂田先生!」

「おー。頑張れよ」

 

 適当に挨拶だけして別れた。正直、当たり前のことしか言っていないのだが、まぁ解決したのなら何よりだ。

 そう思って、席を立った時だ。ガッと肩を掴まれる。振り向くと、そこに立っていたのはダイワスカーレット。

 

「……ダスカ?」

「な、ん、で……こんな所で油売ってるのかしらァ……?」

「……あ、そういえば今日はサボりの予定だったんだっけ……」

「サボりの予定ってなんだああああああ‼︎」

「ちょっ、待て待て! 一応、俺結局仕事してたんだけど……ああああ⁉︎」

 

 やっぱり、ツイてない日はツイていない、そう思いつつ、とりあえずダイワスカーレット渾身のアッパーカットを躱し、逃げ出した。

 

 

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