「野生 仁」
「大丈夫?疲れてない?」
「コクコク!」
古見さんと友達になって、あれから毎朝の日課に、古見さんが参加する事になった。いつも1人でやっていたから新鮮で、凄く楽しい。1人の時よりも時間の進み具合が速く感じた。
古見さんは一見物静かな外見をしているが、意外にも運動が得意で、普通の人よりも速くランニングをする事が出来た。
それでも俺との体力差の事情で古見さんに合わせてランニングをしている。どうしたの古見さん。え、なに?ランニングが遅くなって不満かって?大丈夫。古見さんと走れて嬉しいんだ。
「ふぅ。スゥー……」
公園に着いた。古見さんが休んでいる間に、ストレッチをしてから軽く身体を動かす事にした。
今日はカポエイラをする事にした。カポエイラとは、「アフリカで生まれた格闘技がブラジルへ渡り発生した」「ブラジルの踊りサンバから派生した格闘技」とも呼ばれており、源流が未だ不明なままなことでも有名な格闘技だ。一般ではブラジル説が濃厚とされている。
1番の特徴は、他の格闘技とは違い常に止まる事がないこと。ボクシングなどでも防御の際は脚を止めるが、サンバに酷似した格闘技の構えに当たるジンガという基本的なステップを行う事によって、動きながら防御を行う。
ジンガはカポエイラにとって呼吸そのもの。カポエイラの技は全てこのジンガから派生される。
アウーセンマォン*1からのアルマーダー*2、ケイシャーダ*3の後アウー*4を挟んでシャーパ*5をしてからのマルテーロゥ*6、パラフーゾ*7にマカコ*8といった動きを進めていく。
やりながら思った。思えば、友達と呼べる存在は古見さんが初めてな気がする。小学校は何故かみんなから避けられて、中学では一歩離れた所から観察される様に見られていた。同級生とも、あまり話をした事がない気がする。
ま、高校で頑張れば良いか。
そんなことを考えながら最後にアルマーダコンマルテーロゥ*9をやって終了。
「!!」
パチパチパチパチッ。
目がまん丸になってる古見さんから拍手を送られた。
【野生君は運動が得意】
運動が終わると午前7時になっていた。切りのいい時間なので2人揃って帰る事にした。
古見さんの家は俺の家からあまり離れていないので一緒に走った後は家まで送ることにしている。最初は申し訳なさそうに送らなくていいと手を振っていたが、女の人を1人で帰らせる訳には行かないので押し切った。
「古見さんも伊旦高校に入学するんだね」
「はい…。野生君と…同じ高校で…嬉しい…です」
「同じクラスになれたら嬉しいなぁ」
古見さんは恥ずかしがり屋で、人の前に立つと緊張してしまって声が出ないみたい。「野生さん」じゃなくて「仁」って呼んでいいよと言った時も古見さんの身体が震えてた。まだ難しい様なので「野生君」と呼ばれている。
古見さんの家に着いた。二階建ての一軒家で綺麗なお家だった。
「じゃあ。俺、帰るね」
「は、はい…!今日も…ありがとうございます…!」
「いいよ。またね」
古見さんのお家の前で別れた。帰る時に後ろを振り返ると、古見さんがまだお家に入らずに手を振って見送ってくれていた。俺も手を振って家路に着いた。
自分の家のマンションに着いた。部屋に入ってシャワーを浴びる。
家族からの声がないのは俺が孤児だから。一応保護者である人はいるけど、1年の殆どを海外にいるので、この部屋の家賃を出してもらって一人暮らしをしている。
シャワーが終わって洗濯物を干し、朝ご飯を食べてから部屋の掃除をした。一通りのことが終わったので暇になる。高校の制服を着てみる事にした。
着てみた。
………。
なんか中学の制服と作りがあまり変わっていないのに、こう、込み上げるものがある。
一方、古見さんは野生くんと同じく高校の制服を着てソワソワしていた。
古見さんsideがなかった…