伊旦高校入学の日になった。ついに今日から高校生になる。
伊旦高校の制服を着て家を出た。
今日は入学に相応しく桜が満開だ。
道を歩くと染井吉野特有の薄い甘くて優しい匂いがしてくる。
例えるなら、古見さんみたいな繊細で優しく、でも心の何処かに芯を持ったそんな感じだ。
歩いている途中に公園で見つけたハルメキサクラは、力強いバニラとジャスミンの匂いがした。
例えるなら、元気があって感情表現が豊かな人な感じだ。
今日はいつもより桜の匂いが感じられて気分がいい。
【野生君は鼻が良い】
やっぱり高校生になるから緊張しているのかな。色んなことが新鮮に感じて周りを気にしてしまう。春の植物の匂いが好きって事もあるんだけど。
………。
視線を感じる。後ろを振り返ると案の定、古見さんが電信柱からひょっこり顔を出してこっちを見ていた。まだ声をかけるのが難しいらしい。なんだか可愛くて思わずクスッと笑ってしまった。
「古見さん、おはよう」
「!」
俺が挨拶をすると、古見さんが走って来た。でも、いつもは喋っているのに、今日はどこか声を出しにくそう。
「わぁ!綺麗…///」
「美人だ…///」
【古見さんは美人】
…なるほど。古見さん、ビックリするぐらいの美人さんだから、周りの視線が集まって緊張しているのか。どうしよう。
コミュニケーションの取り方を考えていると、閃いた。
「古見さん。手帳とか紙、あと書くもの持ってる?」
「?」
古見さんは俺の言葉に首を傾げるとよく分からないままノートと鉛筆を取り出した。ノートと鉛筆を貸してもらってノートに書いて古見さんに見せた。
こえがだしにくいなら、ここにもじをかいてひつだんしたらどうかな?
「!(フンフン!)」
古見さんが明るくなってノートを受け取って書き始めた。
おはようございます。さっきは挨拶が出来なくてすみませんでした。
「大丈夫だよ。理由はわかってたから」
古見さんが会話が成立して嬉しそうにしてる。あ、顔を見ていることに気がついてノートで恥ずかしそうに顔を隠しちゃった。
すると、
「は、なんなんあのネクラ野郎」
「顔が隠れちまったじゃねーか。ふざけんな」
「てゆーか、何よあの距離感。離れなさいよ」
少し騒がしくなった。古見さんは聴こえていないみたいだけど、何かあったのかな?
【野生君は耳が良い】
少し強い突風が吹いた。伸びた前髪が風で靡いて一緒眩しくなり目を閉じてしまう。風は少ししたら収まった。
「今の風強かったね。少し驚いたよ」
私も驚きました。
「アハハッ。俺と一緒だね」
『///』
あれ?さっき騒がしくなってたのに今は静かになってる。珍しいものでも見て賑わってたのかな。
そうだ。こうしてる場合じゃなかった。
「古見さん。学校に遅れちゃうから早く行こう」
「⁉︎」
古見さんも忘れてたみたい。2人でかけ足になりながら登校した。
「…俺、イケてる方だと思ってたけど」
「美形って、どういう人なのかよく分かった」
「めっちゃイケメン。好み…///」
【野生君と古見さんは美形である】
前髪、切らないんですか?
「ん?そうだなー…そろそろ散髪に行こうかな?」
毎回ランニングで前髪が浮き上がって鬱陶しいし。近々切りに行こう。