俺と古見さんが今年入学する伊旦高校についた。登校して来た人達が集まってきてるから人が多い。
「………(プルプル)」
震えながら歩く古見さんと俺に視線が集まっていた。
なんとか靴箱に辿り着いて靴を履き替えてから、一年一組の教室に入った。俺と古見さんよりも先に来た人達で席が埋まっていたが、丁度2つ席が空いていたのでそこに座った。
ここでも古見さんは人気を博していた。
「アイツが消えたら次は俺が隣の席…」
「へー。野生って言うのね。うふふふふ…」
…!何故か周りの人達から殺意を感じた。
みんなからロックオンされた野生君の高校生活は、入学早々波乱なことが予想された。
「自己紹介」
先生が教室に入って来て出席簿を持って言った。
「あっああああ上理ですっ。ううううよよっよよよよよよ、よろしくおねねねねねねね…」
「あはは。上理さんあがりすぎー」
教室内に笑い声が溢れた。殺意を向けられたが、基本的に温かいクラスのようで安心した。
「次」
古見さんの番が来た。古見さんが立ち上がって自己紹介をしようとした。
「………」
声が出せなかった。周りの人は古見さんの自己紹介を今か今かと待っている。
意を決した古見さんが、前に出て黒板に名前を書いた。チョークを持った拍子に髪が靡いた。
「ハゥ!」
先生から変な声が漏れた。
古見さんは相変わらずの丁寧で綺麗な字形で自分の名前を書き終えた。
『ワァァァァァァァ!!』
「(え?)」
名前を書いただけで盛り上がる意味がわからなかった。
古見さんは、席に座ると安心したように深呼吸をした。
「古見さん、自己紹介できてよかったね」
「コクコクッ」
「次。次ー」
「あ、はい」
気付くと自己紹介が回って俺の番になっていた。立ち上がって周りを見る。どこか厳しい視線を感じた。
「えっと、野生仁です。好きなことは体を動かすことと、」
「見た目と違うくね?」
「でも体格は良いよな。雰囲気暗いけど」
「どんなことするんですかー?(どうせ大したことないんでしょ)」
「ん?ボクシングとムエタイと、他にもMMAとかあるけど、あ、今はカポエイラもやってるよ」
『バリバリの肉体派じゃねーか⁉︎』
「後は…あ!好きな食べ物は、蜂蜜と果物とお肉とお魚のシャケです。よろしくお願いします」
『⁉︎』
少し周りがザワザワしたけど、なんとか自己紹介できた。
よかったー。
パチパチパチパチッ。
自己紹介、すごく良かったです。
「ありがとう古見さん」
『ハ・チ・ミ・ツ?お・に・く?お・さ・か・な・の・シャ・ケ?』
『………カワイイじゃねーか』
野生君はクラスのみんなから、少しだけ許された。
「良いかー?明日の持ち物、忘れる奴はメモとれよー」
カキカキ…。
古見さんがノートにメモを取る音がする。俺も忘れないようにノートを出す。
コトッ。
古見さんの机から消しゴムが落ちて来た。拾って古見さんの机に置こうとしたその時。
ビュン!
「おっと(ガシッ)」
何かが後ろから飛んで来て、咄嗟に捕まえた。手には何故かコンパスがあった。あ、強く握り過ぎてコンパスが壊れてる。
【野生君は反射神経に優れてる】
後ろを見ると丁度俺が握っているコンパスを見つめている人がいた。多分この人のだ。
「飛んで来たから取ったんだけど、壊しちゃった。本当にごめんなさい。同じものを買って弁償するから値段聞いてもいいかな?」
「い、いや、別に…。安いから、だ、大丈夫だ」
「え、でも…」
「大丈夫だから!メモを取ってたのだろう!早く書いてしまえ!」
「うん…。ありがとう。じゃあこれ返すね」
弁償したかったんだけどなぁ…。悪いことしちゃった。
忍野裳乃side
神々しい古見様の消しゴムを不埒に触れた野生の指を狙ってコンパスを放ったら、普通にコンパスを捕らえられた。それどころか、コンパスに指の痕が凹みとして残っている。
【野生君は力が強い】
野生仁。貴様、一体何者なのだ⁉︎
古見硝子side
チャイムが鳴って授業が終わりました。
「次は体育館な」
そう言って先生が教室を出て行かれました。
ドドドドドドド…!
『古見さーん!!』
「⁉︎」
クラスのみんなが突然私の席に走って来ました。みんなに囲まれてどうして良いかわかりません。
野生君、助け…。
「クワァァ…。クゥ…クゥ…」
眠たいのか大きな欠伸をして、机に伏せてしまいました。
あの、野生君。次は体育館に移動なので寝ていたら遅れてしまいます。後、今は寝ないでください。どうか、どうか!助けてください!野生君!
野生仁 「罪名」古見さんの隣の席に座る。
古見さんの消しゴムに触れる。
「古見さん、これ落ちたよ」
「!」
ありがとうございます。野生くん