人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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閑話㉙「ガトル親父の雑記」⑧(親父、納得の武器を作るの巻)

 11月9日

 

 昨日、アラン様始めコリント領に残っていた全軍が、ファーン侯爵領救援に向かった。

 俺やハロルド達と『トレーラー組』の作り上げた、戦闘車両や戦闘バイクそして人員運搬用のトレーラーの初陣だ、アラン様達の戦いにきっと役に立ってくれるだろう。

 そう願いながら、元のオリハルコンでの武器や武具の制作に今日から打ち込み始めた。

 

 11月20日

 

 思い付く限りの武器と武具の試作品を作り上げ、その能力試験をしている最中にセリーナ殿が来訪された。

 ブリテン侯爵領に入り、領兵の訓練と周辺地域の治安の安定を図る為に、賊の征伐や魔物の駆除を行っていたそうだが、その任務をある程度終えたので報告と補給に、一旦少人数でのコリント領への帰還となったそうだ。

 

 「お初にお目に掛かるガトル殿、私は暫定第2軍団団長のセリーナです。

 アラン辺境伯様の紹介でこちらに来ました、以後お見知り置き下さい」

 

 と、なんとも女性にしては堅苦しい物言いで、自己紹介されたから、

 

 「こちらこそ、宜しくお願いします」

 

 と、堅苦しく返事するしかなかったぜ。

 

 「実は、これを見て欲しい。

 新しい武器の資料だ」

 

 と言われて、紙の束を渡された。

 何枚か捲ってみて確認すると、そこには俺が作った試作品の中には無い、武器としての思想が根本的に違う代物が資料となっていやがった。

 

 「・・・こ、この武器は?」

 

 と震える手付きで、資料に釘付けになりながら尋ねると、

 セリーナ殿が、

 

 「此れ等は、アラン辺境伯様の故郷に存在した武器です。

 ガトル殿には此れ等の武器の再現、そして凌駕する武器の制作をお願いしたいのです!」

 

 と、お願いして来た。

 

 「願ってもねえ!

 是非、作らせてくれ!!

 必ずこの武器達を凌駕する武器を、この手で作って見せるぜ!!!」

 

 と、思わず地の喋り方で答えちまった。

 そんな俺の半ば失礼な物言いを、気にした様子も無く、

 

 「実に素晴らしい!

 見事な心意気で、頼もしい限りだ!

 そんなガトル殿には、私が望む武器の作成を切に願う!!」

 

 とセリーナ殿は、自身のカバンから紙束を新たに取り出し、俺に渡してくれた。

 

 「・・・これは?!」

 

 と食い入る様に紙束を見ていると、

 

 「・・・『冷艶鋸』!

 武器の種類は青龍偃月刀と云い、私の尊敬する昔の武将の愛用した武器です。

 そしてそれを更に魔法強化する事で切れ味を増し、魔法発動媒体としての能力を加えたのが、その資料になります。

 絶対に完成させて下さい!」

 

 と今までより熱意の籠もったお願いをされた。

 紙束を見ていると、なるほどこの資料は最初に見せられた資料よりも、より詳細で細かい指定が入っている。

 これならば俺としても作りやすいし、完成させてみせれば俺の技術も格段に上がるに違いねえ!

 

 「やってみせますぜ!」

 

 と承諾したら、セリーナ殿は満足そうに頷き、

 

 「頼む!」

 

 と言われて、キビキビとした動きで出ていかれた。

 なんとも男らしい女性だなと感心しちまった。

 

 11月29日

 

 何度もの失敗を繰り返しながら、セリーナ殿の武器『冷艶鋸改』が出来上がった。

 ほぼセリーナ殿の資料通りに仕上げたが、俺のアイデアでアダマンタイト製に石突を変更し、刃部分だけでは無く石突部分でも魔法発動を出来る様にしておいたぜ。

 自分でも、満足のいく出来上がりににやけていると、ドップの奴が、

 

 「これは、本当に凄い武器ですな!

 正直地上戦で、この武器と相対する敵は可哀想に思いますよ」

 

 と評したので俺も同感だと応じてたら、何故か違和感を感じやがった。

 何に違和感を感じたのか、判らなくて気分がモヤモヤしてたら、ハロルド達がやって来て戦闘バイクに乗る機動軍用にあつらえた、標準装備の武器を取り付けるアタッチメントと、セリーナ殿用の特注アタッチメントの取り付けと具合の確認をしている。

 その様子を見てたら、漸く違和感の原因に気付いちまった!

 そうだよ!

 セリーナ殿の武器は大きすぎて、通常のアタッチメントでは装着出来ない訳だから、特注アタッチメントにしたんだが、機動軍は戦闘バイクに乗ったまま武器を振り回す為に、簡単に外せるアタッチメントで取り回し易い様にしたのに、セリーナ殿の武器は戦闘バイクに乗ったまま使うには非常に向いていない!

 あの『冷艶鋸改』は、安定した足場で振り回す事でその威力を発揮するから、しっかりと両足が安定しなければ振り回す事が出来ない。

 つまり通常タイプの戦闘バイクでは、セリーナ殿の実力を活かせない!

 その危惧をドップとハロルド達に教え、解決策を相談したいと提案したら、ドップが、

 

 「そんな程度の問題なら、簡単に解決できますよ!」

 

 と気楽な様子で笑いながら返事しやがったから、

 

 「・・・どんな解決策何でえ?」

 

 と聞いたら、

 

 「俺の作っているトラクターに採用している、『三輪駆動』ですよ!

 これを戦闘バイクの高速機動用に設計し直し、後輪部分を足場に出来る様にすれば、問題解決です!」

 

 と答えてくれた。

 なるほどそれならば、安定した足場は確保出来る、後は高速機動用に設計出来るかどうかだが、ハロルドに聞いてみたら、

 

 「出来ますよ。

 というか既に、何台か試作した事がありますから、試作品を発展させて仕上げれば良いだけです!」

 

 とあっさりと請け負ってくれた。

 なんとかなりそうだと判って、漸くホッとした。

 

 12月8日

 

 セリーナ殿の専用武器『冷艶鋸改』と『三輪戦闘バイク』を完成させて、セリーナ殿に引き渡せた。

 セリーナ殿は、練兵場で『三輪戦闘バイク』を最高速で乗り回してそのまま『冷艶鋸改』を振り回して、標的を斬りまくった挙げ句に、各種の魔法を標的に向けて解き放った。

 その凄まじい戦闘力に、周りで訓練している兵士達が呆然としている中、セリーナ殿は、

 

 「気に入った!

 これならば、次の戦場では思いっきり働けそうだ!

 ガトル殿、ハロルド殿、本当に感謝する!」

 

 と『三輪戦闘バイク』に乗りながら、感謝された。

 俺とハロルドは確かに頑張って作り上げたが、正直な処ここまで凄え物を作ったつもりは無かった。

 この分だと、セリーナ殿だけで万の敵に勝っちまいそうだぜ。

 ハロルドと思わず顔を見合わせ、セリーナ殿の敵になる相手は地獄を見る事になるだろうと戦慄し合った。

 

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