人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
1月25日
先日の驚きの対面の後『モーガン』殿は、とても400歳を越えているとは思えぬ程精力的に動いている。
『魔法大国マージナル』の大使館が用意した滞在用のホテルには、一緒に来た弟子達を滞在させて、自らは『アスガルド城』の客室に留まり、連日アラン様とセリーナ殿かシャロン殿のどちらかを連れて、帝都コリントの様々な施設、工場、デパート、軍事演習、フードコートやレストラン等を大変興味深そうに見学されていた。
そして見学を済ませても、城に帰るとグローリア殿やケットシー128世、そして滞在されているヒルダ嬢の護衛に来ているフェンリル殿と会話を楽しまれている。
本日は我等空軍の見学なのだが、驚いた事にその姿が一変していた!
先ず最初に会った時には歩行が困難という事で、使い魔のグリフォンに乗られていたのに、今では普通に歩かれているし、深いシワが刻まれていた顔は、シワが殆ど目立たない若々しいご婦人といった様子に変貌していた。
迎えに出向いた自分とミーシャは、あまりの変貌に言葉が出なくて呆然としていると、
「嗚呼、貴方達は最初に来訪した時に出会ってたわね。
あの日の夜に『アラン皇帝』が勧めてくれた『ナノム玉3』を服用させて頂いて、イーリス様からの教育をARで毎日受けているから、『身体循環魔法』の奥義とも呼べる魔法で、老化細胞からの脱却を試してみたの。
あんまり若返ると厄介だから、この辺で留めるつもりだから、今の姿がこれからの私になるわね」
と信じ難い話しをされている。
伝説の魔法使いとは、此処まで常識外れなのかと戦慄しながら、空軍の演習を見学して頂いた。
「・・・流石ね!
グローリアちゃんと此のワイバーンちゃん達の行軍スピード、魔法火力、オリハルコン製の装甲による防御力、このセリース大陸西方では最強といって良いわね!」
との評価を頂いた。
その言葉の中にある『大陸西方では』、との部分に気付き質問してみた。
「『モーガン』様にお聞きしたい。
もしかすると、大陸西方以外の地では我等の空軍以上の戦力が存在するのですか?」
との問いに、
「・・・そうね、明確な比較は出来ないから難しいけど、空軍だけで云っても、アラム聖国の『聖獣騎士団』の《光翼隊》、スラブ連邦の『機械魔獣軍団』の《魔空旅団》、崑崙皇国の『天龍八部衆』の《八大龍王》、といった連中は貴方方と同等か凌駕しているわね・・・
何故かというと、グローリアちゃんはまだ20歳の幼竜でしかないけど、他は此処100年間其々の国で最前線で働いていて、其々の空軍にはドラゴンが少なくとも1頭居るわ。
スラブ連邦と崑崙皇国のドラゴンは詳しく知らないけど、アラム聖国のドラゴンは公には秘密にされているけど、攻撃されている街を魔道具越しで見た事もあるから知っているわ」
と恐らくはアラム聖国の秘事を教えてくれた。
「そのドラゴンの名は、『破滅竜ジャバウォック』。
貴方達が、何とか倒した『双頭の暴虐竜ザッハーク』よりも恐らくは強いドラゴンよ。
理由としては、ザッハークは見た所老竜(エルダー・ドラゴン)でしか無いけど、ジャバウォックは明確に古竜(エンシェント・ドラゴン)に該当するわ。
如何に貴方達の相棒達がオリハルコンの装甲を纏おうと、ザッハークによってグローリアちゃんの装甲は、ボコボコにされてたわ。
どう見てもグローリアちゃんの装甲より、防御力が下がる貴方達の相棒の装甲では、保って1、2回の攻撃でオリハルコンの装甲は砕けてしまうでしょう」
と納得出来る理由まで教えてくれた。
つまり、あの『双頭の暴虐竜ザッハーク』より明らかに強いドラゴンが、アラム聖国には居て、そんな存在を我等は仮想敵としなければならないのだ。
「怖じ気付かないで!
其れ等の強敵達に対抗する為にこそ、私は此処に来たの。
貴方方の相棒達には、三大国のドラゴン達が上限まで到達してしまった強さと違い、進化し種族の限界を越えて行ける未来が有るの。
その進化を促す要件は、既に貴方達の相棒は備えているのよ。
1つ目は、ワイバーンとして限界まで鍛えている事。
2つ目は、『ナノム玉』によって細胞の隅々まで、魔力を循環させる『身体循環魔法』が使える事。
3つ目は、イーリスによって完全制御された、魔力炉から供給される莫大な魔力。
この要件と、アラン皇帝、クレリア皇妃、セリーナ准将、シャロン准将、そして私の、計5人の『ナノム玉3』服用者による完全同期魔法ならば、貴方達の相棒のワイバーンをドラゴンに進化させられるわ!」
と今まで想像もして来なかった事を教えられた。
自分とミーシャは、思わず背後に居るガイとサバンナに向かって振り向いた。
すると、会話内容を理解してたかの様に、
「ガウ!」
と返事をしてくれた。
その返事と思える鳴き声を聞いてモーガン殿は、
「・・・そうね・・・
こんなレベルで満足せずに、より高みを目指さなきゃいけないわ。
なにせこの『惑星アレス』だけでも、『セリース大陸』だけでは無くて、(東方を向いて)遥か東の『日の本群島』、(南方を向いて)暗黒大陸『アフリカーナ』には強大な魔物が居ると言われているわ。
・・・そして恐らくは、・・・其れ等全てよりも・・・・遥かに強大な・・・・・」
と語尾の方は、呟かれる様に聞こえなくなったが、厳しい眼差しで西方を見ている。
とてもではないが、大陸の西端に有る『魔法大国マージナル』を見ている様には見えず、それよりも遥か遠くの西方を見ている様に自分には思えた。