人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
2月1日
此の日、『ベルタ公アマド殿下』と魔法大臣マーリン殿の孫娘にして魔法大学教授に就任された『ヒルダ嬢』の結婚式が行われた。
昨年10月頃に内輪で婚約した事を発表されていたらしいが、スターヴェーク王国にて軍務に着いていた自分は全然知らず、かなり後にミーシャから教えて貰ったが、その後帰還した帝都コリントでは、度々ヒルダ嬢がアマド殿下の車椅子を押したり、仲睦まじく過ごされて居る様子を、皆微笑ましく思っていたので今日此の日を迎えられて、我々は皆祝福している。
今回の結婚式も、元王族にしてはかなり質素に執り行われ、帝国上層部と元ベルタ王国貴族(現華族)の方々そして元セシリオ王国氷雪魔術師団の皆さんが出席された。
アマド殿下は先日の奇跡によって、歩く事が出来る様になったのが大変嬉しいらしく、ヒルダ嬢の手を取られて、堂々と歩く姿は喜びに満ち溢れている。
ヨハネ教皇とゲルトナー枢機卿による誓約の儀式が済むと、羽目を外しヒルダ嬢を抱きかかえてクルクルと回られた程だ。
アラン様とクレリア様始め皆は、そのお二人のお姿を暖かく見守り、祝福のお言葉を贈って共に喜んだ。
2月3日
全ての公式行事を終えられて、ヨハネ教皇はルミナス教本拠である『パルテノン市国』に、モーガン殿が貸してくれた飛空船に乗って帰国された。
帝都コリントに滞在中、『ナノム玉』とルミナス教本部ドームに有る巨大な温泉施設のお陰で、来訪した時より明らかに元気になられた様子だ。
ヨハネ教皇は、帝都コリントが大変気に入った様で、側近達にしきりとルミナス教本拠を帝都コリントに移転出来ないか?と相談されていたらしく、去り際アラン様とクレリア様に向かいかなり真剣に要請された様で、流石のアラン様も勝手にルミナス教本拠を移せる筈も無く、
「・・・どうぞ何時なりと来訪されて結構ですし、どれだけの期間滞在されてもよろしいですが、宗教行事の妨げにならない範囲でお願いします」
としか答えようが無かった様だ。
2月5日(前編)
先月から準備していた、グローリア殿とワイバーン達の進化施設が出来上がった。
モーガン殿が長年研究して来て、自分自身を実験材料として得た理論体系は、イーリス殿との出会いにより遂に完成し、いよいよ他者に施せる段階まで来たそうだ。
「さあ、これから始めるけど、心の準備は出来たかしら?」
とのモーガン殿の問に、
「大丈夫です、私もザッハーク戦でギリギリ勝てたのは、アラン様と空軍のみんなのお陰だったのは、良く判ってるし、今後立ち塞がる強敵はザッハークよりも強いから、必ずみんなを守れる位に強くなって見せます!」
と力強く答えて、太い魔力チューブが繋がった巨大なコクーン(繭の様な形で透明な容器)に入られた。
周りにはアラン様始め、クレリア様達『ナノム玉3』服用者が座席に着いて、ヘルメット(兜の様だが細い魔力チューブが付いている)を被っている。
モニターに《準備完了》の文字が浮かび、
「進化プログラム開始!」
とのモーガン殿の掛け声と共に、コクーン内に魔力が魔力チューブを通して充填されて行き、アラン様達のヘルメットの顔の透明部分に様々な文字が流れて行く。
15分程の時間が流れ、ヘルメットに文字が浮かばなくなり、魔力の充填も無くなってコクーンがただ淡く光っている状態になると、モーガン殿が、
「・・・成功したわ!
後は、40分位経てば魔力がグローリアちゃんに馴染むから、コクーンから出ても大丈夫」
と太鼓判を押された。
アラン様達もヘルメットを外されて、モニターでグローリア殿の状態を確認する。
自分もモニター上のグローリア殿の変化を確認すると、グローリア殿は体長が25メートル程に成長し、弱冠腕や両足が太くなっているが、それ程表面上の変化は著しくは無い。
しかし、魔力係数と魔力備蓄指数は桁違いに上がっていた。
魔力係数とは、一度に放出出来る魔力だが、今までの凡そ20倍の係数となっている。
此れは単純に云うと、今までアラン様との協力で放っていた『インドラの矢を』単独で同時に5発放てる事を意味する。
そして魔力備蓄指数とは、そのまま魔力備蓄量を表していて、今までの凡そ100倍の指数になっていた。
「・・・予定通りの結果ね、古竜(エンシェント・ドラゴン)にこそ及ばないけど、十分老竜(エルダー・ドラゴン)の能力を越える事が出来たわ。
今回の進化は、これで充分よ。
いずれ、様々な経験値が積まれて行けば、また進化出来る様になるわ」
とモーガン殿は満足気に頷いている。
モーガン殿の言われた通り、40分後グローリア殿はコクーンから出て来られ、身体の変化を確認されている。
「グローリアちゃん、気分はどう?」
とモーガン殿がグローリア殿に聞くと、
「・・・何だか、自分の身体じゃないみたい・・・
フワフワと身体が浮いてる気がする」
とグローリア殿は答え、実際羽ばたいてもいないのに身体が浮いたままだ。
「フフフッ、成程ね。
じゃあドームの開閉口から外に出て、思いっきり飛んでみたら?」
とモーガン殿がグローリア殿に勧めると、
「ハイッ!
やってみます!」
と答えられ、そのままドーム天井の自動開閉口から空中に躍り出た。
「・・・グローリア、行きます!!」
とグローリア殿が発言した瞬間、赤い流星が空を駆け巡った!
その赤い流星は縦横無尽に空を飛び、時にジグザグ、時に急停止や急加速を行い、更には回転しながら急上昇や急降下し、正に自由自在に空を駆けた!
その速度は今までの比では無く、凡そ5倍は早いのでは無いだろうか?!
「どう、今迄とは段違いでしょ」
とモーガン殿が聞くと、
「驚きました!
無茶苦茶に飛んだり、錐揉みしてみたりしても、一つも酔わないし平衡感覚が狂う事もないです!
此れが新しい力なんですね!」
と興奮気味にグローリア殿は答えられた。
「そうよ、グローリアちゃんは早くその感覚に慣れて頂戴ね。
なんと云っても貴方は、今後も帝国軍の中核でいて貰うんだから!」
とモーガン殿は期待を込めて答えられた。