人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
2月5日(後編)
グローリア殿の進化が成功したので、本日は続けて自分の騎竜たる《ガイ》と、ミーシャの騎竜で有る《サバンナ》を進化させる。
手順は先程のグローリア殿と同じだが、なんと云ってもワイバーンからドラゴンに進化するので、自分としては正直不安だ。
自分が不安そうにしているのに、ガイの方は随分積極的で、コクーンの前に向かい用意万端といった様子で、こちらを向いて促す様に「ガウッ」と鳴いた。
「フフッ、ガイ君は随分と乗り気な様ね。
相棒のケニー君は不安そうだけど」
と自分に聞いて来た。
「・・・はい、どうしても不安に思ってしまい、昨日もあまり眠っていません・・・」
と弱気を吐露してしまった。
「大丈夫よ、安心して。
グローリアちゃんも見ての通り成功したでしょう!
貴方の相棒も必ず成功させるわ!」
と力強くモーガン殿は返事してくれた。
コクーンの前面が開き、サッサとガイは入っていった。
何でそんなにやる気なのか、やや呆然としてしまったが、相棒が乗り気なのに自分が怖じ気づくのは、体裁も悪いので、表面上だけでも自信がある様に見せようと、腕組みしてコクーンの中を映すモニターを見据えた。
やがてモニターに《準備完了》の文字が浮かび、
「ワイバーン用進化プログラム開始!」
とのモーガン殿の掛け声と共に、コクーン内に魔力が魔力チューブを通して充填されて行き、アラン様達のヘルメットの顔の透明部分に様々な文字が流れて行く。
15分程の時間が流れ、ヘルメットに文字が浮かばなくなり、魔力の充填も無くなってコクーンがただ淡く光っている状態になると、モーガン殿が、
「今回も成功したわ!
後は、1時間位経てば魔力がガイ君に馴染むし、体積が大きくなった分をナノムの制御の元で、マナとタンパク質等で補填してくれるから、コクーンから出ても大丈夫」
と保証してくれた。
コクーン内のガイを観察すると、今迄が7メートル半といった体長だったのに、15メートルとほぼ倍の体長になり、出会った頃のグローリア殿と酷似した体型に変化している。
モニター上のガイの変化を確認すると、魔力係数と魔力備蓄指数が桁違いに上がり、進化前のグローリア殿とほぼ同等レベルに上がっていた。
「・・・思っていたよりも進化したわね。
恐らくは、ガイ君が想定を越えて自分自身を強化しようと願った様ね。
きっと相棒の貴方の力になりたいと、という思いからだわ」
とモーガン殿が説明してくれた。
1時間経ち、コクーンが開きゆっくりとガイが外に出て来た。
ガイは、珍しそうに周りを見渡し、自分の身体の変化を色々と長い首を傾けて確認している。
やがて、納得がいったのか「ガウガウッ」と話し掛けてきたが、当然自分始め皆には理解出来なかったが、シャロン准将が、
「やっぱりだわ!
ガイ君も喋れてる、今迄の簡単な受け答えで無くて、ちゃんとした意思疎通が出来てる!」
と、クレリア様とセリーナ准将と一緒になって、喜んでいる。
そんな女性陣を眺めながら、やや苦笑したアラン様がガイの前に立ち、
「ガイ、首を降ろしてくれるかい。
翻訳機を付けたプロテクターを、装着するから」
と言われ、アラン様が自分を手招いたので、テーブルに予め用意されていたプロテクターを持って、アラン様の横に移動した。
ガイは大人しく首を降ろし、自分は翻訳機を付けたプロテクターをガイに装着した。
すると装着した途端に、ガイは話し始めた。
「あらんさまありがとう!
おいらはかならず、きたいにこたえてみせるぜ!!」
と思っていたより、かなり幼い感じで会話して来たので、あまり感動出来ないでいると、
「・・・あら、この翻訳機デフォルト(初期状態の事だそうだ)の儘だわ。
イーリス、ワイバーンの時の年齢に合わせた設定に変更してくれる」
とクレリア様が指示された。
以前からモーガン殿始め『ナノム玉3』を飲まれた方々の言われる、《イーリス》とはきっと『ナノム玉3』を飲む事で判る隠語の様なものなのであろうと考えている。
そんな事を思っていると、
「・・・クレリア皇妃様、大変有難う御座います!
某は、以前より皆様と意思疎通を自在にする、グローリア様を羨ましく思っておりました。
此れからは某も、会話を自在に出来るのですね。
ご期待に添える様に精進して参りますので、宜しくお願いします!」
と立派な口上を述べたので、漸く自分も感動出来た。
「・・・うーん、何だか固すぎる物言いだと思うんだけど、ケニー大佐はこれで良いの」
とセリーナ准将が聞いて来たが、
「ええ、これで構いません」
と返事すると、横にいるミーシャが笑いながら、
「良いんじゃ無いでしょうか、ケニー大佐も日頃から固い表現で会話してますし、お似合いですよ」
とセリーナ准将に答えると、此の場に居る女性陣全員が自分を見ながら、「それもそうね」と笑いながら納得し合っている。
そんなに自分は固いのだろうか?と憮然とした気持ちになりながら、ガイに向かい、
「此れからも宜しくな!」
と言うと、ガイも、
「無論です!
ケニー大佐、貴方と共に今後も歩んで参ります!」
と自分好みの答えを聞いたので、この設定が最適だと自分は納得した。