人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
2月15日
あれからミーシャの騎竜で有る《サバンナ》を進化させて、翌日にも3頭づつ進化させて、元々のワイバーン隊15頭全てが幼竜(ドラゴン・パピー)まで進化完了した。
他のワイバーン達は幼かったり、キリコ達のワイバーン達の様に経験値が足りなかったりと、進化の要件を備えていないので、暫くは進化を見合わせる事になっている。
早速、従来グローリア殿に装着していた、オリハルコンの装甲を量産していたものを、全ドラゴンに装着し訓練に入った。
ただアラン様の様には、全員ドラゴンに最高速を出された場合騎乗していられないので、新たに風防を強化した搭乗席(コックピットと言うらしい)を設置し、更にそのコックピットは以前使ったパラシュートを大型化した物を標準搭載していて、緊急時には自動でコックピット毎射出してパラシュートが開く様になっている。
其れ等の耐久実験や、新たにドラゴン自身の武器となった『量産型グングニル』を使用した、格闘戦も訓練内容に盛り込み、グローリア殿を始め新たな戦術を試行錯誤しながら訓練に勤しむ事になった。
2月18日
いよいよ北方の情勢がきな臭くなりつつあり、ノルデン諸国連合から正式に援軍要請が帝都コリントにある大使館を通してあった。
『スラブ連邦』との国境線を縦断する形で構築されている、マジノ線(ノルデン諸国連合陸軍大臣アンドレ・マジノが完成させた、強力な対スラブ連邦要塞線)から観測するに、元々展開されていたスラブ連邦軍30万に加えて20万の軍が、スラブ連邦首都『エデン』から派兵された様で、恐らくは雪解けする春先には侵攻してくると推測され、如何にマジノ線が強力であろうとも計50万の兵力には正直耐えられるか判らないという事だ。
直ちに、アラン様と軍上層部そしてモーガン殿による会議が行われた。
アラン様が、
「・・・皆も知っている様に、ノルデン諸国連合から正式に援軍要請が我が帝国に有った。
帝国と同じ西方教会圏に属するノルデン諸国連合は、同盟国でこそ無いが協力体制を築いており、魔導列車構想に参画されている。
このノルデン諸国連合に対して、度々スラブ連邦は宣戦布告も無く不当な侵略を繰り返して来た歴史が有り、恐らく次回の侵略戦争も宣戦布告など無しに行われる公算が高い。
此れまでは、マジノ線によってスラブ連邦の企図は阻めて来たが、あくまでも多くて10万の兵力に対してであり、現在観測されている50万の兵力には心許ないと考えられている。
どうやらスラブ連邦は、3年前まで戦ってきたルーシア王国を完全に併呑し、其処に振り向けた兵力をノルデン諸国連合にぶつける事にした様だ。
漏れ聞く処によると、スラブ連邦代表である『導師(グル)ラスプーチン』は、前身はルーシア正教の僧侶であるにも関わらず、併合したルーシア王国や周辺国に対し、過酷な税と自分の編み出した『共産主義』という思想を強制している様だ。
それに反発した人々を、己を盲信する信者や『共産主義者』によって虐殺しており、虐殺された人数は既に600万に達している。
此の様な人物を推戴している国家とは、我が帝国は共存出来ない!
帝国軍はノルデン諸国連合からの援軍要請に対して正式に受諾し、全面支援を行う事を前提として議論して貰いたい!」
と帝国軍としての指針と、スラブ連邦への対応策を会議する事を望まれた。
以前から、仮想敵国としてスラブ連邦も想定に入っていたが、あまりにも帝国と距離が有り自分もスラブ連邦人など一回も出会った事が無く、辛うじてオスロ港の船乗りにスラブ連邦に併合される前のルーシア王国に貿易に行った事があると聞いた事が有るくらいだ。
自然全員は、賢聖たるモーガン殿に視線を向けられた。
モーガン殿は苦笑されながら、皆の視線に答えてくれた。
「・・・まあ、私もスラブ連邦の全てを知っている訳じゃないけど、元々は大陸北方の地域をルーシア王国を中心にしてマニア、ガリー、ガニスタン等の都市国家群が周辺に点在する、あまり豊かでない地域だから、互いに助け合って生きている『共生主義』とでも云う国家体制をとる国家が多かったわ。
凡そ150年前、都市国家の中でも最底辺と云って良い『スラブ国』という国の端の辺りに、全長2キロメートルに及ぶ金属で覆われた落下物が有ったの、当初は隕石と思われたけど隕石にしては周りに殆ど被害が無くて、明らかに落下する際速度を落としている事が推測されたわ。
暫くの間スラブ国の住民は、その金属で覆われた落下物を警戒して、近づかなかったんだけどある日一人の農奴が、主人の制止を振り切ってそれに近付き、開いていた穴に入り込んだの。
農奴が穴に入ると、金属で覆われた落下物は奇怪な光りを発して穴を塞ぎ、不気味な音を立て始めたそうよ。
三日三晩、奇怪な光りと不気味な音を立てていた落下物は、突然反応しなくなり、穴が再び開いて例の農奴が穴から這い出て来たそうよ。
農奴の主人は、勝手に行動した彼を鞭で打ち据えようと鞭を振り上げたら、途端に農奴の目が怪しく光りだしてその目を見た主人は鞭を手放し、近くの煙突をよじ登り身を投げたの。
その投身自殺した主人を例の落下物の穴に農奴は放り込んだ、暫くしてその主人は死んだ筈なのに生き返って穴から出て来たんだけど、その頭には奇妙な金属の突起が生えていて、何故か農奴に対して頭を下げて隷従する様になり、農奴はその主人の持つ農場の支配者になったわ。
だけど元の主人の上司に当たる貴族にその農場は攻められて、農場は燃え落ち農奴は行方不明になったの。
暫く時が経ち、スラブ国の首都にあったルーシア正教本部に『ラスプーチン』と云う僧侶が、台頭しはじめたの、その僧侶は怪しい能力を使って人々を惑わし、瞬く間にスラブ国のルーシア正教を乗っ取ったわ。
そのままスラブ国の首脳部も怪しい能力で籠絡して、周辺の小国を次々と同じ様に陥落していったの。
そして北方の盟主たるルーシア王国は、この動きに反発して軍事力で対抗したわ。
だけど当初は10倍以上の兵力で、勝利を重ねていたルーシア王国側はある事実に気付いたの。
殺した筈のラスプーチン側の兵士が、次の戦いにも平然と参加していたのよ、然も頭に奇妙な金属の突起が生えていて、明らかに以前より蘇った後の方が強かったの。
そして其れは、人だけでは無かった。
北方は戦争に戦闘用に訓練した動物や魔物を使うんだけど、これらも人と同様に頭に奇妙な金属の突起が生やして蘇ると以前の倍以上に強かったらしいわ。
やがてルーシア王国は中々勝てなくなり、そして3年前に王女『アナスタシア』以外の王族は全て殺されて、ルーシア王国は滅んだわ。
これらの話しは、王女アナスタシアが『魔法大国マージナル』に庇護を求めて来られた際に、教えてくれたわ。」
何とも不気味な話しで、とても普通の国家とは思えない成り立ちだ、こんな怪しい国と戦うのかと、明らかに武者震いとは別の身震いをしてしまった。