人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
3月26日
昨日はアラン様の提案された『西方教会圏共栄構想』に、面食らわれたノルデン諸国連合の代表団だったが、1日経ってみるとその莫大な富を得られる仕組みに気付かれた様で、アラン様が連れて来た政務官僚達とかなり詳細な交渉に入った。
ノルデン諸国連合各国は、此処マジノドームからノルデン諸国の首都を巡る鉄道網と道路インフラの環状線の敷設と、其々の国での関税を撤廃し円滑な物流と人流を推進する事に概ね合意した。
後は本国に戻り提示された、条件や諸々の利益試算を王族や貴族の方々と相談する事になるだろう。
そして各国は、其々の首都に『人類銀河帝国銀行』(略称『帝銀』)を置く事にも許可したので、何れはノルデン諸国でもギニーだけでは無く、カード決済によるポイントでの利用が出来る様になるだろう。
既に帝国内では、大口の取引でも嵩張るギニーでの取引は下火で、ポイントによる取引が主流だ(商業ギルド始め職人ギルドと冒険者ギルド、そしてサイラス大商会とタルス株式会社もポイント決済が基本で有る)、大体鉄道運賃がポイント決済しか受け付けないから、魔導列車を使用する人間はカードのポイントが必須なのだ。
その様な今後の帝国と周辺各国の未来を想像し、チラホラと降る雪を陸上空母の飛行甲板上で見上げながら、ペットボトル(最近出来た飲料水等を入れる容器)に入った暖かい珈琲を飲みつつ、次々と偵察任務と訓練の為に飛び立つ、ヘリコプター部隊・ワイバーン隊・ドラゴン達を督促しながら見守った。
3月28日
レリコフ元帥とその幕僚達そしてアラン様始め帝国軍上層部は、かれこれ8回に及ぶ作戦会議を行った。
何といっても此方は防衛する側で有り、殆ど選ぶべき選択肢は無く、敵であるスラブ連邦にキャスティングボードが握られている事は仕方が無かった。
此れが普通の国家であれば、外交による折衝や交易品等の荷留更には他方面の国からの圧力等が、選択肢として存在するのだが、スラブ連邦にはそもそも外交チャンネルが存在せず、貿易すら行っておらず立ち寄った交易船は全て拿捕或いは沈められている。
他に国境を接している国とは全て交戦状態にあり、一体どの様な意図の元で国家運営しているのかサッパリ判らない。
我々が知っているのは、旧ルーシア王国の亡国のアナスタシア王女から齎された情報と、スラブ連邦が成立する前に亡命して来た一握りの人々が噂として聞いていた物だけだ。
そもそもスラブ連邦の首都とされる『エデン』の位置すら判らず、情報に有った『共産主義』とやらもどんな国家体制を構築する思想なのかも把握出来ていない。
只々不気味で有り、同じ人間が存在する国家とは思えない違和感だけが付き纏う。
「・・・・・此の様に、今までのマジノ線での防衛戦では必ずと云って良い程、前面にスラブ連邦がこれまで併合して来た国の人民を戦奴隷として配置し、その後方にその戦奴隷を督戦させるスラブ連邦督戦部隊が続き、更に後方に『機械魔獣軍団』が存在し此処ぞという時に投入されます。
・・・実際の処、戦奴隷による攻撃は見せしめ的な要素でしか無く、殆ど意味を成しません。
ですが不思議な事に、戦奴隷の死体は必ずどの様な状態でもスラブ連邦は、大掛かりな荷馬車に詰め込んで回収して行くのです。
お陰で此方は大量の死体による、疫病発生や腐臭に悩まされる事も有りません。
何度も繰り返されるので、黒魔術や死霊魔術の材料にして、例の元セシリオ王国国王だったルージ愚王がやった様にゾンビを作り出すのでは?と疑われましたが、100年間ゾンビが襲って来る事も無く、ただひたすら肉弾を壁にぶつける様な攻撃を仕掛けて来ました。
しかし、それはあくまでも戦奴隷だけの話でスラブ連邦正規軍と『機械魔獣軍団』は、凄まじい波状攻撃を行って来ます。
中でも機械魔獣軍団は、動物や魔獣がベースですが、明らかに魔道具や金属で以って強化されていて、魔法だけでは無く物理的に此の分厚い城壁や要塞に打撃を与えて来ます。
幸いな事に機械魔獣軍団は、数が少なく多くて3千程しか今までは居ませんでした。
ですが今回動員されている30万の軍勢には、御国のヘリコプター部隊の詳細な偵察により、少なくとも1万の機械魔獣軍団が確認されていて、更に今までに見たことの無い巨大な魔物達が存在しています。
そしてアラム聖国経由で齎された情報で、スラブ連邦首都からの増援軍30万が此方に向かってきており、そして対アラム聖国で猛威を振るった《百の蛇を身体から生やすドラゴン『テュポン』》が、軍勢の最後方でその巨大な身体をくねらせつつ此方に向かってきている様です」
とレリコフ元帥の幕僚総長が、今までの戦いと入手された最新情報を明かしてくれた。
今までの会議で、戦奴隷への対処は作戦が練られたので問題無いが、増援軍の規模と『テュポン』の情報はかなりの状況変化となった。
改めて空軍としては、『テュポン』への対処を検討せざるを得ない。
以前モーガン殿が教えてくれた、スラブ連邦の『機械魔獣軍団』の《魔空旅団》とは、アラム聖国が名付けた名称で『テュポン』を中心とした空飛ぶ魔獣の軍団なのだ。
『テュポン』自身は、そのあまりの巨大さの故なのか飛べないらしいが、『フライングワーム』『ハーピー』『コカトリス』『マンティコア』『キメラ』等が配下に居るらしい。
此の日の作戦会議では、大まかにスラブ連邦が増援を待たずに攻撃して来るか?増援と合流の上で攻撃して来るか?の2通りに対しての幾つかの作戦案を策定して終わった。
何れにしても、増援軍は後3日程で此処にやって来る。
いよいよスラブ連邦との戦争となるのだ!
以前から感じて居る、不気味な予感を吹き飛ばす為に自分自身に気合を入れ直した。