人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝)    作:ミスター仙人

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4月の日記①(人類銀河帝国 コリント朝元年)《マジノ線防衛戦①》

 4月1日(前編)

 

 殆ど何の前触れも無く、スラブ連邦との戦争が開始された。

 レリコフ元帥率いるノルデン諸国連合軍15万と、アラン様率いる帝国軍15万がマジノ線の要塞と城壁で迎え撃つ形になった。

 鯨波の声もなく、軍勢がざわめく訳でも無く、ただ淡々とスラブ連邦の駐屯地に居た軍は、まるで躾られた様に順番に駐屯地を出てマジノ線に向けてやって来る。

 スラブ連邦軍の全ての動向は、ヘリコプター部隊の連携によって齎されており、増援軍の状況も詳細に入り始めた。

 最も警戒すべき『テュポン』は、最後方に居る所為もあるがそもそも進行スピードが遅いので、マジノ線に到達するのは恐らく2日後であろう。

 つまり現状駐屯地に居た30万の軍、次に首都からと思われる増援軍約30万の軍、そして最後尾の『テュポン』と云う3つのグループに分かれている。

 常識で考えると、わざと緩急を付けた軍で此方の疲労を誘うつもりなのか、単に指揮官が無能で各個撃破の対象になっているのか、何も考えていないのか判断がつかない。

 だが、もう直ぐにスラブ連邦の先鋒軍と戦う事になるし、その為の作戦は幾通りも用意されている。

 我々は、軍人として忠実にこなしていくだけだ!

 自分自身に気合を入れて、予定通りにガイ達ドラゴン15頭は高空に飛び上がり、滞空状態を保つ。

 やがてスラブ連邦軍の先頭部隊が現れ、特に陣形も整えずにマジノ線に向かって来て、そのままマジノ線の城壁に対して攻撃し始めた。

 レリコフ元帥の幕僚達から散々聞かされていたが、本当に此の先鋒軍は戦奴隷らしく、大半が槍を持っているが中には、鋤や鍬で城壁に取り付いて攻撃している者もいる。

 スラブ連邦軍は想定通りに、戦奴隷による先鋒軍10万と督戦部隊と思われる10万とに分かれていて、両者の間隔が1キロメートルを越えた段階で、我々は動いた。

 

 「プランA実行!」

 

 と、我々帝国軍全員はヘルメットのインカムを通して、城壁上と要塞に待機しているノルデン諸国連合軍には、館内放送やスピーカーで第1段階目の命令が伝えられた。

 

 命令通りに自分の騎乗するガイとドラゴン達は、高空から急降下し戦奴隷部隊と督戦部隊の間に降り立った。

 

 「広域アースウオール展開!」

 

 との自分の命令にガイとドラゴン達は、忠実に応えて高さ30メートル・長さ5キロメートルに及ぶ土壁の断層を、戦奴隷部隊と督戦部隊の間に作り上げた!

 

 「プランB実行!」

 

 続けて第2段階目の命令が出された。

 次の瞬間マジノドーム近くに陣取っている『ビスマルク』の主砲から、魔力カートリッジ弾が戦奴隷部隊の上目掛けて曲射され、戦奴隷部隊の真上50メートル程で爆発して中に封入されていた『遮断魔法』が広域散布された。

 すると、戦奴隷部隊10万は全員動きを止めて直立の状態になった。

 

 「・・・効果確認!

 続いて、プランC実行!」

 

 戦奴隷部隊への効果が確認された為に、戦奴隷部隊の回収作戦であるプランCが実行された。

 マジノ線の要塞に其々配備されたバリアー発生魔道具の最大稼働により、マジノ線からドラゴン達が構築した土壁までを覆うバリアーが展開された。

 続いてマジノ線に設けられていた4つの大門が全開され、準備していたトレーラー部隊と護衛の戦闘バイクが出撃した。

 トレーラー部隊には回収要員が乗っていて、城壁近くで直立不動の戦奴隷部隊に対しバズーカ砲を頭上に撃ち『簡易命令魔法』を広域に展開した。

 すると想定通りに命令を聞く様になった戦奴隷達を、次々とトレーラーに収容しピストン輸送でマジノドームに設けられた捕虜収容所に収容して行く。

 

 この『遮断魔法』と『簡易命令魔法』は、以前から研究されていたアーティファクト『テンプテーション』を、研究していた過程で生まれた魔法で、洗脳又は心身が弱っている人間に対し命令がされて居た場合に、その命令をキャンセル出来るのが『遮断魔法』であり、『簡易命令魔法』は『遮断魔法』によってキャンセルされた命令を上書きし、単純に目の前の人間に従うと云う命令にしてしまうといった内容である。

 

 此処までの作戦で、10万の戦奴隷達は全て無力化して捕虜収容所に収容した。

 残るは約19万のスラブ連邦軍正規軍と、『機械魔獣軍団』1万だ。

 ドラゴン達が構築した土壁に対して、現在敵軍は魔法と破城鎚による攻撃を繰り返していて、土壁そのものがそもそも分厚く無い為に、遠からず崩壊しそうだ。

 既に戦奴隷達をマジノ線の内側に収容出来た段階で、4つの大門は閉じられそれの伴いバリアーも解除された。

 

 「・・・プランD実行!」

 

 まだ土壁を崩せずにいるスラブ連邦軍正規軍に、『遮断魔法』が『ビスマルク』の主砲から魔力カートリッジ弾で広域散布された。

 しかし、戦奴隷部隊と違い一向にスラブ連邦軍正規軍は動きを止める様子が無い。

 

 「・・・効果無しを確認!

 プランE破却!

 土壁崩壊後、防衛作戦プランGに移行する!」

 

 とのプラン変更と、防衛作戦への切り替えが命令された。

 それから30分程経ち、土壁の3箇所に穴が開き其処からスラブ連邦軍正規軍がマジノ線に向けて進軍し始めた。

 その3箇所に向けてビスマルクから魔力カートリッジ弾が発射され、封入された聖魔法『ホーリー・レイン』が降り注いだ。

 しかし、スラブ連邦軍正規軍は全く怯む事無く淡々とマジノ線に向かって来る。

 此の段階で幾つかの事実が確認された、事前にヘリコプター部隊によって『サーモグラフィー(熱源探査)』等を行っていて、戦奴隷部隊以外の部隊には生物の発する熱源や、気(オーラ)等が検出されず、一つの仮説として、ゾンビの使役と云う例のアーティファクト『ゾンビマスター』に類似する物が使用されたのでは?と云うものが有ったのだが、聖魔法が効果が無かった事で此れは否定された。

 すると、死体といって良い状態の人間や動物そして魔物を死霊魔術等で使役しない、他の技術体系によって動かしている訳だ。

 

 「・・・プランG効果無し!

 プランH及びプランI破却!

 迎撃作戦プランJに変更する!」

 

 との命令が全軍に通達された。

 例え、ゾンビで無いにしても死体には違い無く、ならば人として一刻も早く葬ってやるのが彼等の供養になるだろう。

 マジノ線に設けられていた4つの大門が全開され、高機動軍と重機動軍がセリーナ准将とシャロン准将に其々率いられて出撃し、空からはベック・トール・キリコ等に率いられたワイバーン隊とヘリコプター部隊も出撃した。

 いよいよセリーナ准将の乗る新戦闘バイク『ディアブロ号』と、シャロン准将の乗る新戦闘バイク『ジャッジメント号』が、その真価を見せるべく動き出し、戦闘は第2局面に移ろうとしていた。

 

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