人類銀河帝国 コリント朝 功臣列伝資料 「サテライト8班リーダー ケニーの日記」(航宙軍士官、冒険者になる異伝) 作:ミスター仙人
4月1日(中編)
セリーナ准将の乗る新戦闘バイク『ディアブロ号』を先頭とした高機動軍3万は、マジノ線の要塞と城壁からの連装魔導砲による支援砲撃を受けながら、スラブ連邦軍正規軍に対し鋒矢の陣で突進する。
スラブ連邦軍正規軍からは、アラム聖国から鹵獲した物と思われる野砲と銃による攻撃が、高機動軍に対して行われる。
そのタイミングにセリーナ准将は、
「軍団魔法『イフリート2』展開!!」
と命令を発した。
軍団魔法『イフリート2』・・・軍団魔法イフリートは兵士自身が魔法を展開していたが、イフリート2は戦闘バイクと戦闘車両が其々のダイナモから魔法を発動し展開している。
その強度はイフリートの4倍に相当し、ある程度の大砲の砲弾までは燃やし尽くしてしまう。
次の瞬間高機動軍3万は紅蓮の炎に包まれ、スラブ連邦軍正規軍から放たれた銃弾と砲弾は高機動軍に当たる前に、高機動軍を覆う紅蓮の炎によって焼き尽くされて行った。
「フィィーーーーン!」
と『ディアブロ号』の前面左右にあるドリルバイクと同じアダマンタイト製のドリル2つと、バイク両翼に有る丸鋸が、高速回転し始めた。
地面の状態に左右されないホバー走行で、時速100キロメートルを維持したまま『ディアブロ号』を先頭に高機動軍はスラブ連邦軍正規軍に、鋒矢の陣形で突っ込んだ!
両軍がぶつかったと思った瞬間、スラブ連邦軍正規軍は真っ二つに切り裂かれた!
『ディアブロ号』は、其処にスラブ連邦軍正規軍が存在しないかの様に速度を一切落とさず、19万の軍勢を蹂躙して行く。
その直ぐ後ろを高機動軍は、よりスラブ連邦軍正規軍の傷口を開く様に、戦闘バイクと戦闘車両はバズーカ砲でファイアーグレネードを連射して突っ切って行った。
その切り裂かれた道を、高機動軍に比べればゆっくりとした速度(それでも時速50キロメートル)で、シャロン准将の乗る新戦闘バイク『ジャッジメント号』を先頭に重機動軍が魚鱗の陣で突入した。
既にスラブ連邦軍正規軍は重機動軍に対し、有効な攻撃を出来ていない為に重機動軍は軍団魔法を使用せず、ただ攻撃突進を敢行する事になった。
『ジャッジメント号』は、その鳥にも似た両翼に4門ずつの銃口が有り、シャロン准将の搭乗席にも2門の銃口が有る。
その銃口から、パルス魔法弾が凄まじい勢いで連射され、スラブ連邦軍正規軍は為す術も無く倒れ伏して行った。
その直ぐ後ろを重機動軍は、今回初お目見えの『魔導戦車隊』がその巨大な砲列と多連装バズーカ砲で、土地を均すかのように満遍なく、スラブ連邦軍正規軍の立っている部隊に魔法を浴びせて行った。
順調に事態は推移し此の戦闘も先が見えた、と思った瞬間アラーム音(警戒警報音)がヘルメットのインカムから鳴り響いた!
何事か?と思ってヘルメットに表示された画面下を見ると”イレギュラー発生!”の文字が、赤文字で流れてきた。
何事が?
と考えていると、ヘルメットに表示された画面に矢印が示されその方向に視線を転じると、スラブ連邦軍正規軍を切り裂いて、その勢いのまま『機械魔獣軍団』に攻撃をする予定だった高機動軍が、大きく迂回運動をして『機械魔獣軍団』から距離を取っていた。
その予定に無い行動にも驚いたが、何よりも驚愕したのは『機械魔獣軍団』に対してだ。
ものの数分前までは、確かに1万の金属部分が光る魔物や魔獣の群れだったのに、現在は10頭の巨大な魔獣が居るだけだ。
そんな馬鹿なっ!と思いながら10頭の巨大な魔獣を観察して見ると、何やら不気味な蠢動が身体の表面に生じている様だ。
やがて蠢動が収まると、10頭の巨大な魔獣は其々9つの頭を持つ『ヒュドラ』に変貌していた!
「・・・・・エッ・・・・・?!」
という誰かの呟きが、インカム越しに聞こえたが、正に自分の思いと同じだったので、もしかすると自分自身の呟きかも知れなかったが、恐らく帝国軍とノルデン諸国連合軍の9割以上が同じ感想を持った事だろう。
絶対に事前には『機械魔獣軍団』の中には体長30メートルの『ヒュドラ』など、影も形も無かった!
作戦会議でも散々見せられた、ヘリコプター部隊が詳細な偵察で映した画像や動画には、1頭たりとも存在しなかったのに、今では10頭も居る。
そんな混乱が生じている中、セリーナ准将は武人らしく、スパッ! と思考を切り替えられた様で、迂回運動をしながら、遠距離魔法攻撃をヒュドラ10頭に開始した。
そんな遠距離魔法攻撃に対して痛痒を感じていないのか、身体の至る所に穴を開けたり燃やされながらもゆっくりとではあるが、ヒュドラ10頭はマジノ線に向かって進軍して来る。
この間にシャロン准将率いる重機動軍は、スラブ連邦軍正規軍19万に対して見事な『中央突破背面展開』と云う戦史に残りそうな軍隊行軍を成功させ、マジノ線からの『連装魔導砲』の砲撃と『魔導戦車隊』の砲列と多連装バズーカ砲、そして空軍のワイバーン隊とヘリコプター部隊の対地攻撃による、立体的包囲殲滅戦に移行していた。
殆どスラブ連邦軍正規軍19万は、何の反撃も出来ず終わると見えたが、ヒュドラ10頭が重機動軍の背後に近づいたので、シャロン准将は敢えて包囲陣の一部分を開いて、ヒュドラ10頭とスラブ連邦軍正規軍を合流させた。
成程!敢えて合流させる事で、敵全体を十字砲火出来る様にして、包囲殲滅陣を完成させようとした訳か!
とシャロン准将の臨機応変な戦術眼と行動力に自分は舌を巻いたが、ヒュドラ10頭に起こった現象は我等の予想を尽く裏切った!
倒れ伏していたスラブ連邦軍正規軍19万の身体が、突然形を失い黒いスライムの様なアメーバ状になったかと思うと、ヒュドラ10頭の身体に纏わりついたのだ!
全軍が呆気に取られる中、黒いスライムの様な塊はヒュドラ10頭を取り込むと、今度は5頭のヒュドラになっていた。
どういう意図か皆目検討がつかないが、何とヒュドラの尻尾部分で2頭のヒュドラが融合していて、更に50メートルずつに巨大化して足まで生えている!
もうこの魔獣が、どういう分類になるのかサッパリ判らないが、何れにしても敵である事には変わらないので、攻撃が再開された。
しかし、普通のヒュドラの時は魔法攻撃が当たっていたのに、異形の怪物と化した後は明らかにバリアーと思しき遮蔽効果の有る膜が、全身を覆っていて攻撃を全て弾いてしまっている。
「・・・迎撃軍全てその場から、大きく等間隔に輪を広げよ!
ビスマルクより、『ヴァルキリー・ジャベリン弾』を曲射する!
敵のバリアーが解除され次第、攻撃再開せよ!」
とアラン様からの命令がインカムに聞こえ、迎撃軍は直ぐに包囲殲滅陣を大きく広げ、空軍はより高空に退避した。
その直後、ビスマルクの主砲から『ヴァルキリー・ジャベリン弾』が発射され、放物線を描く軌道で怪物達のバリアーを貫き、深々と怪物の身体奥深くまで突き刺さった。
『ヴァルキリー・ジャベリン弾』・・・・・スターヴェーク王国復活戦の新生ルドヴィーク城攻防戦に使用された、『ヴァルキリー・ジャベリン』を弾頭にして、ビスマルクの主砲から発射出来る様にした物で、あらゆる種類のバリアーを解除する事が出来る。
『ヴァルキリー・ジャベリン弾』のお陰で、怪物達のバリアーは解除され迎撃軍の攻撃が届く様になったが、怪物達は荒れ狂った様に其々の蛇の口から、光線の様なブレスを吐いてきた!
しかし、我々帝国軍の乗る其々の機体には、多少強度に差は有るが物理・魔法両面に対してのバリアーが常時展開されているので、余程の攻撃でなければ機体に攻撃を当てる事は不可能だ。
1頭1頭、怪物達は迎撃軍の凄まじい十字砲火によって倒されて行き、二度と蘇らない様に念入りに燃やし尽くして行った。
最後の1頭を燃やし尽くして、全軍が一息ついていると、ビスマルクから緊急通信が全員に届けられた。
内容は、
此方に進軍して来る、敵の増援軍が最後尾にいた『テュポン』を残し消失、その代わりに『テュポン』は遠距離観察でも判る程体積を増大しており、更に進軍速度を大幅に増していて、本日中に会敵が予想される。
というものであった。
此の場に居る全員は、『テュポン』が増援軍30万を尽く自身と融合させたのだろうと思い、厄介な怪物が更に力を増してやって来る事実に、覚悟を決めて臨む決意を固めた。